【2020年】PwCの眼(4)モビリティトランスフォーメーション実現への道筋

2020-08-03

前稿では、自動車・モビリティ市場のメガトレンドの変化やそれを受けた将来シナリオとして、ヒト移動の抑制とモノ・サービス移動の拡大、また自動運転等の新技術による自由な移動の拡大シナリオを提示した。本稿では、既存の移動関連事業者の成長機会や、変化に乗じたモビリティトランスフォーメーション(移動のあり方改革)の実現への道筋を論ずる。

移動関連事業者はこれまでヒト・モノの運送事業を核に不動産・レジャー・小売等の周辺事業を展開し、また一部補助金を活用し事業を運営してきたが、今後の成長は、「継続成長」「V字成長」「付属成長」の3つに大別されると考える。このうち物流は、移動が抑制され自動運転が普及する環境下でも成長する「継続成長」領域となる。一方ヒトの交通に関しては自動運転が普及するまでは成長が抑制される「V字成長」領域となる。これらに従前の周辺事業等の「付属成長」領域を組み合わせた新たな事業成長バランスの形成が今後要求される。

これら成長機会の獲得にはモビリティトランスフォーメーションの実現が不可欠であると考えるが、実現には移動体・移動対象・空間などのフィジカル面やサイバー面においてモビリティテクノロジーやサービス技術の取り込み、それらを事業モデルの中に取り入れる戦略や実現に導くリアリティのある事業計画の策定・実行がキーとなる。

例えばある配車アプリは、料金の不明瞭さなど不確定要素のあったタクシー移動を「安心な移動手段」として提供するタクシー配車サービスから始まり、その後もマッチング技術やUI/UXを改良し、さらに組織の成長や需要、法的要件を加味して段階的に自家用車・二輪車配車や宅配サービス・シャトルバスなどを取り込むことで「ヒト・モノの総合モビリティサービス」へと進化し、モビリティトランスフォーメーションを実現しつつある。

つまりモビリティトランスフォーメーションにおいて、「どの技術を導入するべきか?」といった技術戦略に加えて、技術の導入可能性など自社のケーパビリティ、市場の動向や需要、対象とする地域の規制の方向性、調達すべき外部リソースや協業可能性、さらには事業フェーズや事業モデリングの構築、事業計画策定など多様で複雑な要素を取りまとめ、評価・実行することが求められる。

我々はそれら複雑に関係する要素を、事業シナリオ・事業性・技術可用性・法的課題・社会受容性・オペレーションリスク・コンソーシアム(運営体制)・実証実験(PoC)の8つに分類し、分類ごとにゴールと解決プランを作成することでボトルネックを確実に管理し、事業を成功させるアプローチを展開している。本アプローチのポイントの一つは、実証実験を最大限活用して技術、事業性、オペレーションの評価・改善や参加企業の定着を促進し、事業競争力や事業計画の精度の向上により収益化を実現、さらに周辺事業者を取り込むことで新たな「付属成長」の可能性を狙う点にある。

執筆者

藤田 裕二

藤田 裕二

シニアマネージャー
PwCコンサルティング合同会社
yuji.fujita@pwc.com

※本稿は、日刊自動車新聞2020年7月11日付掲載のコラムを転載したものです。

※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。

※法人名、役職などは掲載当時のものです。

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}