【2020年】PwCの眼(7)既存事業におけるDXの活用

2020-11-05

前稿では、デジタルトランスフォーメーション(DX)を踏まえた新規事業を考える上での着眼点を、完成車メーカーと部品メーカーそれぞれの視点から提示した。本稿では、既存事業におけるDXの活用を、製品品質の切り口で提示する。

年々高度化・複雑化する製品品質を担保する上で、開発段階での早期品質確保(開発/生産準備フェーズ)と、品質保証の自働化(量産)は重要なテーマであり、どちらにおいてもDXがキーワードとなる。

開発領域においては、古くより「品質を工程で作り込む」という自工程完結の考え方が提唱されてきたが、昨今のソフトウェア比率の増大に伴い、「品質を構造で作り込む」という考え方(どの部品構造が複雑で他部品に影響を与えやすいか、その影響範囲はどの程度かなどを明確化し、解決策を構造に織り込む)の重要性がより高まっている。この「工程」と「構造」の品質レベルがどの程度なのかを定量的に可視化するとともに、そのためのデータ収集・蓄積・分析を行うことにおいて、デジタルツール・システムがより必要不可欠な要素になってきている。

また、製造領域における早期品質確保とは、開発・試作段階で早期に製造要件や良品条件を設計図や工程表に落とし込むことを言う。早い段階で量産ライン(工法/工順)を確立しておくことが必須となり、それにはDXが欠かせない。従来はモノづくり(試作)がベースであり、試作を通じて製造要件を抽出することが中心だったが、試作に時間を取られて製造要件の提示が遅れ、設計図に反映されない課題が多くあった。結果として造りにくい設計図が出来上がり、製造側が苦しむ事になる。
これを打開するのに重要なのが、開発領域同様、デジタルツール・システムである。モノづくりベースからモデルベースにより移行していく必要がある。具体的には、BOPによる量産工程のモデル化や、VRやMRによる試作のモデル化、開発領域~製造領域までを一貫して繋ぐPLMによる製品/工程のモデル化等が挙げられる。

次に、品質保証の自働化は、製造現場を例に取ると、作業者に依存した品質保証を排除して、人によるミスや改ざんを防ぐことを言う。それには、DXを活用した品質の「自働化」と「視える化」が必要となる。「自働化」は、文字通り従来の作業者による手作業や検査の自働化のことだが、従来困難だった目視や聴覚といった官能検査をAIを活用して自働化する技術レベルも上がっており、人の検査と比べて検査精度向上やミス・改ざん防止などのメリットがある。「視える化」は工場内外のあらゆる設備やセンサーをIoTで接続し、得られたデータを相関分析することで、製造品の品質保証を行うことである。リアルタイムでライン情報を分析することで品質問題を検知・予防することが可能になる。

このように、既存事業の推進において、今回は製品品質の切り口で述べたが、DXの活用は必要不可欠である。

執筆者

寺島 克也

寺島 克也

ディレクター
PwCコンサルティング合同会社
katsuya.terashima@pwc.com

※本稿は、日刊自動車新聞2020年10月24日付掲載のコラムを転載したものです。

※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。

※法人名、役職などは掲載当時のものです。

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}