
【2024年】PwCの眼(8)EV化における競争優位のポイントの変化
EV化が進む中、自動車業界の利益獲得の源泉は機械系/ハード系から半導体やソフトウェアといったデジタル系/ソフト系に移行しつつあるため、自動車メーカーやサプライヤーには事業戦略の再構築が求められています(日刊自動車新聞 2024年8月26日 寄稿)。
2024-06-18
商品やサービスが「地球にやさしい」とうたわれていれば、多くの人はその企業は環境に配慮していると感じ安心して商品やサービスを利用するであろう。しかし、それら環境主張の中に実際には環境への配慮が行われず環境負荷を増やしているものがあるとすれば、それは環境課題の解決につながらないだけではなく事態を悪化させ、さらには消費者を裏切ることにもなる。
地球や環境にやさしいという表現やカーボンニュートラルに関する主張などの「環境主張」について欧州委員会が2020年に実施した調査では、それら主張の53%はあいまいなものや誤解を生む可能性があったとされ、そのうち40%は根拠なしとの結果が示された。気候変動や生物多様性など、喫緊の対応が必要な環境課題にあたかも対応しているかのように説明しながら事実は異なっているとすれば、環境課題の解決につながらず必要な対応を遅らせることとなり、またそれが大企業などであればネガティブなインパクトも大きくなる。
これを問題視した欧州理事会は、24年2月20日に「環境にやさしい」などとしながら根拠が示されていない誤解を生む環境主張やグリーンウォッシュに該当する事案から消費者を保護するための指令を採択した。この指令は22年3月欧州委員会が構築した持続可能な製品政策枠組みのパッケージ第1弾として提案され、現行の不公正な取引を禁止する指令を改正するものである。今後EU加盟国は2年以内に国内法を制定することが求められる。
この規制では「環境にやさしい」「グリーン」などの環境訴求の際にその根拠を実証できない場合や、一部の製品や環境活動のみで企業全体の環境訴求を行うこと、カーボンクレジットによるオフセットのみで環境負荷を低減したと訴求することなどのマーケティングが禁止される。加えて製品の循環性に関しても規制しており、例として耐用期間や強度などの耐久性に関する虚偽訴求や、正規メーカー以外の製品を使用すると故障するなど虚偽の訴求などのマーケティングも禁止される。違反した場合はEU域内年間売上高の4%以上が罰金として科される。また類似の規制は、対象や定義に違いはあるものの英国や米国などにも事例があり、今後、他地域にも導入が拡大していく可能性がある点にも留意が必要だ。
いわば"グリーンウォッシュ"を巡っては、環境NGO/NPOが企業に対して個別訴訟を展開しているケースもあるが、NGO等が自ら持つ課題意識に基づき、政策立案者や世論への働きかけ制度形成を促進している点を考慮すると、NGO等の動向を注視することも将来グリーンウォッシュとみなされる可能性を排除しリスクを低減する上では有効といえる。
このような話を続けていると、環境訴求ができなくなってしまうと思われる方も多いかもしれないが、これら規制が導入されても、実質を伴う環境主張であれば問題なく認められる。そのためには、今後、製品やコーポレートレベルなど、環境主張を行おうとする際に自社が留意すべき事項(あわせて開示すべき根拠など)を社内ガイダンスなどで整理、最新動向をアップデートするしくみを整備するなど、根拠を伴う環境訴求を行うための体制構築を進めていくことがより重要となる。
本多 昇
ディレクター, PwCサステナビリティ合同会社
※本稿は、日刊自動車新聞2024年5月27日付掲載のコラムを転載したものです。
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