リスク&ガバナンス法務ニュースレター(2024年4月)

PwC弁護士法人のリスク&ガバナンス法務ニュースレターでは、企業において日々生起するリスク管理やガバナンスに関する課題の解決に有益と思われるトピックを取り上げて、情報を発信して参ります。

今回は、以下の2つのトピックを紹介します。

トピック1:重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律

トピック2:「外国公務員贈賄防止指針」の改訂

トピック1:重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律

1. はじめに

2024年2月27日、重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案1 が閣議決定され、国会に提出されました。その後、同法案は、衆参両院での審議を経て5月10日に法律として成立しました(以下、「本法」といいます。)。セキュリティ・クリアランス制度とは、国家における情報保全措置の一環として、政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報に対して、アクセスする必要がある者のうち、情報を漏らすおそれがないという信頼性を確認した者の中で取り扱うとする制度を指します。諸外国の例では、政府としての重要な情報を指定し、政府の調査を経て信頼性の確認を受けた者の中で取り扱うという厳格な管理や提供のルールを定めた上で、漏えいや不正取得に対する罰則を定めることが通例とされています(図表1参照)。

なお、我が国においては、特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法)2が防衛・外交・スパイ行為等及びテロリズムの防止という安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度を規定している既存の法律となります。同法による特定秘密制度は、諸外国との情報保護協定において、トップ・シークレット(Top Secret)及びシークレット(Secret)に相当する政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報(Classified Information)(以下「CI」といいます。)を対象とするものです。本法は、経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議における検討の結果である「最終とりまとめ」3を踏まえ経済安全保障に関する分野において、コンフィデンシャル(Confidential)に相当するCIに関するセキュリティ・クリアランス制度を導入するものです。

図表 1

(出典)前掲注1、13頁を元にPwC作成

2. 重要経済安保情報の指定

(1)重要経済安保情報の要件

本法では、セキュリティ・クリアランス制度の対象となる情報として、行政機関の長は、重要経済安保情報を指定するものとされています(第2条、第3条)。重要経済安保情報は、次のすべての要件を満たすことが必要となります(特別防衛秘密及び特定秘密に該当する情報は除かれます4。)。また、指定の対象となる情報は、政府が保有している情報であり、政府が保有するに至っていない民間の情報を政府が秘密指定することは想定されていません(図表2参照)5

  1. 重要経済基盤保護清報であること
  2. 公になっていないもの
  3. その漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿する必要があるもの
図表 2

(出典)前掲注1、14頁を元にPwC作成

(2)重要経済基盤保護情報

本法において、重要経済基盤保護情報とは、重要経済基盤に関する情報であって、次の事項に関するものを指します(第2条第4項)。

  1. 外部から行われる行為から重要経済基盤を保護するための措置又はこれに関する計画又は研究
  2. 重要経済基盤の脆弱性、重要経済基盤に関する革新的な技術その他の重要経済基盤に関する重要な情報であって安全保障に関するもの
  3. ①の措置に関し収集した外国の政府又は国際機関からの情報
  4. ②③に掲げる情報の収集整理又はその能力

(3)重要経済基盤

本法は、重要経済基盤保護情報に該当し得る重要経済基盤について次に掲げるものを指すものとしています(第2条第3項)。

  1. 我が国の国民生活又は経済活動の基盤となる公共的な役務であってその安定的な提供に支障が生じた場合に我が国及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがあるものの提供体制
  2. 国民の生存に必要不可欠な又は広く我が国の国民生活若しくは経済活動が依拠し、若しくは依拠することが見込まれる重要な物資(プログラムを含む。)の供給網

(4)指定の有効期間

重要経済安保情報の指定は、行政機関の長が指定の日から5年を超えない範囲内で有効期間を設定するものとされています(第4条)。なお、有効期間は、30年まで延長することが可能とされ、やむを得ない事情があり、その理由について内閣の承認を得た場合には30年を超えることも可能とされています。ただし、その場合でも、外国との交渉に不利益を及ぼすおそれがある等の例外事由に該当しない限り、60年を超えることはできないものとされます。

3. 適合事業者に対する重要経済安保情報の提供

行政機関の長は、我が国の安全保障の確保に資する活動の促進を図るために必要があると認めたときは、適合事業者との契約に基づき、当該適合事業者に当該重要経済安保情報を提供できるものとされています(第10条)。適合事業者とは、我が国の安全保障の確保に資する活動を行う事業者であって重要経済安保情報の保護のために必要な施設設備を設置していること等の政令で定める基準に適合する事業者を指します。

なお、行政機関の長が適合事業者と締結する契約には、次の事項を定めなければならないものとされており、適合事業者は契約に従い、重要経済安保情報の適切な保護のために必要な措置を講じ、その従業者に取扱いの業務を行わせることが求められます(第10条第3項、第4項)。

  1. 当該適合事業者が指名して重要経済安保情報の取扱いの業務を行わせる従業者の範囲
  2. 重要経済安保情報の保護に関する業務を管理する者の指名に関する事項
  3. 重要経済安保情報の保護のために必要な施設設備の設置に関する事項
  4. 従業者に対する重要経済安保情報の保護に関する教育に関する事項
  5. 行政機関の長から求められた場合には重要経済安保情報を行政機関の長に提供しなければならない旨
  6. 適合事業者による重要経済安保情報の保護に関し必要なものとして政令で定める事項

4. 重要経済安保情報の取扱者の制限

重要経済安保情報の取扱いの業務は、適性評価において、重要経済安保情報の取扱いを行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者に限定されます(第11条)。

5. 適性評価

行政機関の長は、重要経済安保情報の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないとことについての評価(適性評価)を実施するものとされます。適性評価は、評価対象者の同意を得た上で、以下の事項を調査し、その結果に基づき実施されます(第12条)。なお、直近に実施した適性評価(結果の通知から10年を経過していないものに限ります。)において、重要経済安保情報を漏らすおそれがないと認められた者については、改めて調査を受けることなく、適性評価を受けることができるものとされています(同条第7項)。

(1)調査の内容

適性評価における調査事項は次の通りです(第12条第2項)。

  1. 重要経済基盤毀損活動との関係に関する事項(評価対象者の家族(配偶者、父母、子及び兄弟姉妹並びにこれらの者以外の配偶者の父母及び子。)及び同居人の氏名、生年月日、国籍及び住所を含む。)
  2. 犯罪及び懲戒の経歴に関する事項
  3. 情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項
  4. 薬物の濫用及び影響に関する事項
  5. 精神疾患に関する事項
  6. 飲酒についての節度に関する事項
  7. 信用状態その他の経済的な状況に関する事項

(2)重要経済基盤毀損活動

重要経済基盤毀損活動との関係に関する事項が調査事項とされていますが、重要経済基盤毀損活動とは次の活動を指すものとされています(第12条第2項第1号第1括弧書)。

  1. 重要経済基盤に関する公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動等の活動であって外国の利益を図る目的で行われ、かつ、重要経済基盤に関して我が国及び国民の安全を著しく害するおそれのある活動
  2. 政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で重要経済基盤に支障を生じさせるための活動

6. 罰則

重要経済安保情報の取扱いの業務に従事する者が、その業務により知り得た重要経済安保情報を漏らしたときは、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するものとされます。重要経済安保情報の取扱いの業務に従事しなくなった後においても同様であり、また、未遂犯及び過失犯も処罰対象とされています(第22条第4項、第5項)。

7. おわりに

本法は、公布の日から起算して1年を超えない範囲において、政令で定める日から施行されるものとされます。セキュリティ・クリアランス制度は、民間企業にとり、同盟国等の政府調達等への参加等の場面やクリアランス・ホルダーのみに参加が認められるセミナー・コミュニティへの参加等の場面において有益となることが想定されています。
一方、国会審議の過程における附帯決議においても指摘されていますが、まず重要経済安保情報の指定の対象となる情報の範囲や制度の適用を受ける民間事業者の範囲等に注目する必要があります。また、制度の適用を受ける事業者については、適性評価調査等に関連した労働者との労使間の問題、情報の適切な保全のために要求される専用の区画や施設の整備といった課題に対処しなければなりません。前者については、適正評価調査等に関連した不利益取扱いの問題が従前より指摘されていましたが、附帯決議にて、労使間での適切な意思疎通のためのガイドライン等の策定を検討することとされています。後者については、詳細が政令で定められるところ、附帯決議においては、施設設備の基準等を作成・公表すべきこととされており、今後公表される詳細な基準等の内容に留意する必要があります。加えて、事業を継続するために適合事業者の基準を満たす必要が生じる中小企業等への支援の在り方に関する検討を行うべきことも附帯決議にて指摘されています。
また、附帯決議においては、「外国による所有、管理又は影響」(FOCI: Foreign Ownership, Control or Influence)を管理する制度の整備について検討した上で、適切な措置を講ずることも指摘されました。FOCIについては、最終とりまとめ4(2)③において、米国の国家産業保全計画(NISP: National Industrial Security Program)等への言及がなされていましたが、今後、適合事業者の組織的要件として、外国籍の株主や役員に関する規定が設けられる可能性にも留意する必要があります。

トピック2:「外国公務員贈賄防止指針」の改訂

1. はじめに

2024年2月、経済産業省は「外国公務員贈賄防止指針」(以下「本指針」といいます。)を改訂しました6(以下「本改訂」といいます。)。「外国公務員贈賄防止指針」については、これまで数次にわたり改訂が行われていますが、本改訂の主なポイントは、以下のとおりです。

(1) 外国公務員贈賄罪に係る法改正事項の反映
(2) スモール・ファシリテーション・ペイメントに関する記載の修正
(3) 法人の責任に関する記載の明確化等

2. 本指針の位置付け

外国公務員等に対する贈賄は、当該外国公務員等が所属する国の現地法に基づく規制の対象となり得るとともに、日本の不正競争防止法に規定される外国公務員贈賄罪(同法第18条第1項)の違反ともなり得る行為です。グローバルに事業を行う企業にとっては、これらの刑事罰の対象になるか否かを問わず、不正や腐敗を招いていると誤解されないような行動をとることが求められます。このような行動にあたっては、問題が顕在化した後では、企業にとって回復しがたい悪影響が及ぶおそれがあるため、予防的アプローチが極めて重要となります。

このような認識のもと、本指針は、国際商取引に関連する企業における外国公務員等に対する贈賄防止のための自主的・予防的アプローチを支援することを目的として策定されています。具体的には、外国公務員贈賄防止対策を講じるにあたっての参考となる情報を提供しており、各企業においては、本指針を参考としつつ、既存の対策を見直し新たな対策を導入することや、企業内の国際商取引に関連する部署への普及・教育活動を行う等具体的な行動につなげていくことが、強く期待されています。

3. 本改訂の主な内容

(1)外国公務員贈賄罪に係る法改正事項の反映

外国公務員贈賄罪は、1997年、OECD(経済協力開発機構)において、「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」(以下「外国公務員贈賄防止条約」といいます。)が採択されたことに伴い、1998年、日本において不正競争防止法を改正することにより導入されたものです。具体的には、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、外国公務員等に対し、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をすることを要件として成立する犯罪です。

上記の導入後、OECDからの勧告(以下「OECD勧告」といいます。)7も踏まえ、外国公務員贈賄防止条約をより高い水準で的確に実施するため、以下のとおり、外国公務員贈賄罪の罰則を強化・拡充する法改正(2024年4月1日施行)が行われ、本指針についても、これに伴い本改訂が行われました。

改正事項 改正前 改正後
行為者(自然人)の法定刑 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその併科 10年以下の懲役若しくは3,000万円以下の罰金又はその併科
法人の法定刑 3億円以下の罰金 10億円以下の罰金
公訴時効 5年 7年
海外単独贈賄行為 海外での贈賄行為は日本人のみ対象
→日本企業に両罰規定不適用

海外での外国人従業員の行為も対象

→日本企業に両罰規定適用

(2) スモール・ファシリテーション・ペイメントに関する記載の修正

スモール・ファシリテーション・ペイメント(以下「SFP」といいます。)については、一義的な定義があるものではないものの、例えば、通常の行政サービスに係る手続の円滑化のための少額の支払とされることがあります(本指針13頁脚注42参照)。典型例としては、税関の通関手続の際の公務員に対する支払などがあります。本指針上のSFPの扱いについては、2015年改訂以前には不明確ながら外国公務員贈賄罪に該当し得る旨の記載がなされていたところ、同年の改訂により記載自体が削除された後、2021年の改訂では原則禁止である旨を社内規程に定めるべきとのスタンスに変わるなど、本指針の内容も従来から変化してきていたところです。

本改訂では、OECD贈賄作業部会からの指摘を踏まえ、①OECD理事会勧告の記載(企業におけるSFPの使用の禁止又は防止を奨励)を引用するとともに、②外国公務員贈賄防止条約のコメンタリー9を根拠(SFPは腐敗現象であり、それが支払われる国では一般的に違法)とする、OECD理事会勧告の背景を追記する旨の修正を行っています。具体的には、以下のとおりです。

① SFPについては、2009年に採択され、2021年に改訂されたOECD理事会勧告が指摘するSFPの「持続可能な経済開発及び法の支配に対する腐敗的影響(corrosive effect)」に鑑みて、SFPを原則禁止とする旨社内規程に明記することが望ましい(本指針第2章2.(3)(ii))。

② 条約のコメンタリー9において、SFPは、「『商取引又はその他の不正な利益を得る又は維持する』ための支払には相当せず、したがって犯罪とはならない」とされているものの、SFPが腐敗現象(corrosive phenomenon)であることが指摘されている。そのため、OECD理事会勧告は、OECD加盟国に対して、SFPの活用を禁止又は防止するように企業に奨励することを勧告している。なお、我が国の不正競争防止法においてSFPに関する規定は置かれていない。したがって、SFPに該当するか否かではなく、外国公務員等に対する利益供与が「営業上の不正の利益を得るため」に該当すると裁判所が判断した場合には、不正競争防止法第18条違反となり得る(本指針脚注42)。

(3) 法人の責任に関する記載の明確化等

経済産業省は、OECD勧告等を踏まえ、「産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会外国公務員贈賄に関するワーキンググループ」を設置し、外国公務員贈賄罪の制度課題に関する議論を進めていました。2023年3月、同ワーキンググループは「外国公務員贈賄罪に係る規律強化に関する報告書」8(以下「本報告書」といいます。)を公表しました。

本報告書では、外国公務員贈賄防止指針における法人の責任に関する記載の明確化及び充実化が指摘されていた9ことから、本改訂においては、以下の修正が行われました。

① 法人の「従業者」の範囲についての項目を新設

両罰規定10における「従業者」とは、直接、間接に事業主の統制、監督を受けて事業に従事している者をいい、契約による雇人でなくても、事業主の指揮の下でその事業に従事していれば、「従業者」である、と明記されました。

具体的な例として、海外現地子会社の従業員が外国公務員等に対する不正の利益の供与等を行った場合に、日本の本社に両罰規定が適用されるか否かについては、当該従業員が通常行っている業務への本社の関与の度合い、当該従業員に対する本社の選任・監督の状況などの個別具体的な状況を踏まえて判断されるとした上で、当該従業員が実質的には日本の本社の「従業者」であると認められ、不正の利益の供与等が日本の本社の業務に関して行われたと認められる場合には、日本の本社に対して両罰規定が適用される可能性があると考えられる、とされています(本指針第3章3.(2)③)。

② 「海外子会社」と「支店」の区別

本改訂以前は、「海外子会社等(支店)」や「代理店(エージェント)」などと記載されていたところ、本改訂においては、本文において「海外子会社」と区別されるべき「支店」の記載を削除するとともに、「代理店(エージェント)」を削除し、海外子会社の従業員又はそれ以外の第三者による贈賄行為として適用関係が整理されました。

上記を踏まえ、本改訂では、法人格を有しない海外支店・営業所等については、国内本社から独立した業務主体ではなく、単に本社に従属する営業上の物的施設にすぎないため、海外支店・営業所等に勤務する者は、国内本社の従業者であると考えられる旨が明記されました(本指針脚注90)。

③ 海外公務員贈賄防止体制の構築(リスクベース・アプローチ)

本指針では、本改訂以前からリスクベース・アプローチに関する記載がされていたところ、本改訂において、リスクベース・アプローチを採用する趣旨が追記されました。具体的には、企業が直面する贈賄リスクに対し、効率的かつ実行可能な防止体制を構築するためには、各事業部門・拠点において一律の体制を構築・運用するのではなく、贈賄リスクの程度に応じた対策を講じるべきであるとした上で、国際機関・海外当局発行のガイドライン等(本指針第4章3.(3)参照)においても、贈賄リスク11の程度に応じた措置をとることを推奨している旨が追記されています(本指針第2章1.(4)②、脚注22)。

また、本改訂においては、贈賄リスクの特定・評価の重要性とその具体的な手法についても追記されています。リスクベース・アプローチの実施にあたっては、各企業における事業活動の規模・内容、現地の事業環境、商習慣等の個別の事情を踏まえた贈賄リスクの特定・評価を行う必要があることから、例えば以下を実施し、残存する贈賄リスクに対する対策が、既存の防止体制では不十分であると判断されたものに対しては、防止体制の更なる強化や事業内容の変更等を検討することが指摘されています。

  • 贈賄リスクの特定にあたっては、進出国の贈収賄罪に関する法令や贈収賄の実態を含め、社内外から十分な情報を収集する。外国の法令や慣習の情報収集を個々の企業が行うことが困難な場合には、各国の事情に詳しい現地の商工会議所を活用することや、進出先国毎に企業が参集して研究を行い、情報を収集・整理することも考えられる。また、社内での情報収集にあたっては、海外の事業部門・拠点の役職員に対するヒアリングやアンケート調査による情報収集を行うことが考えられる。
  • 特定された贈賄リスクの高低の評価にあたっては、各贈賄リスクの顕在化の可能性や顕在化した際の影響度をもとに判断を行う。
  • 贈賄リスクの評価結果を適切に記録し、企業の事業活動やビジネス環境の変化、防止体制に対する監査結果等を踏まえて、評価結果を定期的に見直し、防止体制の改善を図る。

4. おわりに

外国公務員等に対する贈賄に係る規制については、その摘発リスクが近年飛躍的に高まっており、日本の不正競争防止法に基づく外国公務員贈賄罪に加え、外国公務員等が所属する国の現地法に基づく規制及び域外適用のある海外法規制(米国FCPA等)についても留意が必要となるため、違反の抑止及び処罰の軽減等の観点から、リスクベース・アプローチに基づく適切なコンプライアンス体制の構築が有益です。また、構築した体制については、継続的に有効性を検証していくことも重要となります。グローバルに事業を展開する企業及びそのグループにおいては、各国の法規制に加え、本指針も踏まえた対応が求められます。

1 内閣官房「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案について」「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」(2024年2月27日)https://www.cas.go.jp/jp/houdou/240227keizaianzenhosyo.html

2 平成25年法律第108号。

3 経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議「最終とりまとめ」(2024年1月19日)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keizai_anzen_hosyo_sc/pdf/torimatome.pdf(以下、「最終とりまとめ」といいます。)

4 特別防衛秘密は、日米相互援助協定等に伴う秘密保護法(昭和29年法律166号)によって保護される米国から供与された装備品等に係る秘密であり、特定秘密は、特定秘密の保護に関する法律第3条によって指定された情報であり、同法によって保護されます。

5 前掲注3、6頁等参照。なお、民間の保有情報が政府に提供され、当該情報を行政機関の長が重要経済安保情報に指定された場合には、政府から当該重要経済安保情報の提供を受けた適合事業者に限り、適性評価業務や罰則の対象となります。

6 https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/zouwai/pdf/GaikokukoumuinzouwaiBoushiShishin.pdf

7 外務省「OECD贈賄作業部会による第4期対日審査報告書の公表」(2019年8月27日)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/oecd/page22_003284.html

8  https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/chiteki_zaisan/fusei_kyoso/gaikoku_komuin_wg/pdf/20230310_1.pdf

9 本報告書第6章(2)参照。

10 不正競争防止法第22条第1項の規定により、法人の代表者又は法人の代理人、使用人、その他の従業者が当該法人の業務に関し違反行為をした場合には、当該違反行為者自身を処罰するだけでなく、その法人に対しても10億円以下の罰金刑が科されます。

11 贈賄リスクとしては、①進出国、②事業分野及び③第三者が例として挙げられています。

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