【クリティカルミネラルを取り巻く現状と課題】―EVバッテリーの開発動向とクリティカルミネラル―(第2回)

2024-08-30

※2024年7月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーション ニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。

1. EVバッテリーに必要なクリティカルミネラル

エネルギートランスフォーメーション ニュースレターの2024年7月号では、EVバッテリーの開発動向についてお届けしました。EVバッテリーの開発競争が進展する中、今後のEVバッテリーの構成がどうなるかによって、クリティカルミネラルの需要量に非常に大きなインパクトがあると考えられます。そこで今回は、EVバッテリーの使用構成によって需要がどのように変化するかをシミュレーションした結果をお届けしたいと思います。

現在、安定調達という観点で懸念されているリチウム、コバルト、ニッケルについては、今後のEVバッテリーの使用構成次第で需要量が大きく変わっていくと想定されます。しかし、電池開発競争の行く末がどうなるかという点についてはさまざまな見解があり、関連するプレーヤーにとっては、判断が難しい部分も多いのではないかと考えます。

本ニュースレターでは、現状のIEAの予測をベースとし、LFP(リン酸鉄リチウムイオン電池)化が現在のEVバッテリーにおける使用割合である約40%より進展するシナリオにおいて、必要な資源量がどのようになるか、リチウム、コバルト、ニッケルの2030年時点で想定される供給量内に収まるバッテリー構成は考えられるのか、考えられるとしたらどのような構成になるのかといった観点で初期的に試算した結果を提示したいと考えます。

2. LFP化がより進展するシナリオのリチウム、コバルト、ニッケルの資源量(初期的シミュレーション)

今回のニュースレターでは、IEAがAnnounced Pledges scenario(図表1参照)において予測しているEV販売台数5,000万台をベースに、LFP化がより進展するケースにおいて、2030年に必要なリチウム、コバルト、ニッケルの量がIEAシナリオに対してどのように変化するのかを試算します。

図表1 世界のEV販売台数見通し

【LFP化がより進展する2030年の予測におけるEVバッテリーに必要な鉱物の量の試算結果】

<試算前提>

  • 30年のEV販売台数(IEA、Announced Pledges scenario):5,000万台
  • 30年時点のバッテリー構成はLFP(リン酸鉄リチウムイオン電池):50%、NCM(ニッケル・マンガン・コバルトを正極材に使用し、三元系とも呼ばれる):40%、NiB(クリティカルミネラルを使用しない、資源量が豊富なナトリウムを活用した電池):10%(PwC推計)
  • IEAによれば、2030年時点のバッテリーストレージは4.4Twhに達するため、1台当たりEVバッテリー容量は88Kwhをベースに、必要な鉱物の量を試算
  • 正極材の低Co・高Ni化が進展すると予測されているため、NCMの種類はNCM811とする
図表2 試算結果

上記の試算結果からは、2030年にLFP化がより進展するシナリオにおいては、リチウムは依然として供給不足の状況ではあるものの、コバルトはIEAが予測している供給量とほぼバランスする結果となりました。また、ニッケルは全体としては供給の範囲内に収まり、EVバッテリーに使用される硫酸ニッケルの供給不足状況が大きく緩和される結果となりました。

この結果を見ると、EVのバッテリー構成によって、リチウム、コバルト、ニッケルといった鉱物の需要が大きく左右され、これらの鉱物の使用量が少ないバッテリーの開発が一段と進展すれば、供給不足が解消されることも考えられます。この観点を踏まえ、NiB(リチウム、コバルト、ニッケル不使用の電池)の開発がより進展してLFPをNiBが一部代替する想定で、供給の範囲内に収まるEVバッテリー構成はどのような構成になるか試算してみました。

EVバッテリーの試算結果は、図表3と図表4に示すとおりです。NiBが40%、LFPが24%、NCMが36%といったバッテリー構成となった場合には、想定供給量の範囲内に収まり、供給不足が解消される結果となりました。

【2030年の供給量の予測範囲内となるEVバッテリー構成と必要な鉱物の量の試算結果】

図表3 試算結果
図表4 2030年の供給量の予測範囲となるEVバッテリー構成

世界のEV販売の伸びは減速傾向にあり、2030年時点のEV販売台数は、IEAのAnnounced Pledges scenarioの5,000万台を下回る可能性があるため、今回の試算結果より重要鉱物の必要量が減少する可能性があります。こうしたことから、今後のEV販売台数動向、LFPもしくはLMFP(LFP正極材に使用する鉄の一部をマンガンに置き換えたリン酸マンガン鉄リチウム電池)化の進展状況、NiBなどのクリティカルミネラル・フリー電池の開発導入状況について注視していく必要があると考えられます。

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【金属資源アドバイザリー・サービス・メニュー(概要)】

図表5 金属資源アドバイザリー・サービス・メニュー(概要)

さらにご興味のある方は、下記のサイトをぜひご覧ください。

『エネルギー転換時代における鉱業界の変革と課題‐重要鉱物の確保をめぐる企業動向と政府の役割』
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/energy-utilities-mine-2023.html

『Mine 2022 A critical transition』(英語サイト)
https://www.pwc.com.au/mining/global-mine.html

執筆者

佐藤 稔

パートナー, PwCアドバイザリー合同会社

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臧 哲

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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