【エネルギー業界における税務領域でのAI活用の可能性】―競争力のある税務戦略と企業の成長へ―

※2024年10月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーションニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。

エネルギー業界における税務領域でのAI活用の可能性

エネルギー業界は、再生可能エネルギーの普及や環境規制の強化、国際的な事業展開など、急速に変化する環境下で多様な税務対応を求められています。一方、税務業務は複雑化・専門化が進んでいます。このような状況において、AI（人工知能）の活用は、税務業務の効率化と精度向上において大きな可能性を秘めています。以下、いくつかの税務領域におけるAIの活用について考察します。

大規模な固定資産の税務管理

エネルギー業界は発電所や配電網など、巨大な固定資産を保有しています。これらの資産に対する減価償却や資産評価は複雑であり、税務処理において大きな負担となります。AIを活用することで、資産のライフサイクル管理や減価償却計算を自動化し、効率的な税務申告を進めることが可能となるでしょう。さらに、資産の老朽化や更新タイミングを予測し、最適な税務戦略を立案することもできます。

税額控除や優遇措置の最適化

再生可能エネルギーへの投資や環境対策に対する税額控除や各種の税制優遇措置が存在します。AIを活用することにより、最新の税制情報を常にアップデートし、自社が適用可能な控除や優遇措置を自動的に提案させることができます。また、税制優遇や補助金申請の手続きを自動化することで、業務効率を向上させることもできます。これにより、税負担を最小限に抑えつつ、企業の投資効率を最大化することができるでしょう。

間接税への対応強化

エネルギー製品やその販売は、消費税や燃料関連の税など、多くの間接税の対象となります。国や地域によって税率や適用条件が異なるため、正確な税額計算とコンプライアンスが求められます。AIを活用することにより、税制改正や新たな規制への迅速な対応も可能となり、リスクの低減につながります。

AIによる国際税務対応

エネルギー企業は国際的な事業展開が多く、各国の異なる税制への対応が必要です。AIは多言語の税務資料や各国の税制情報を迅速に翻訳・解釈します。これにより、移転価格税制や源泉徴収税など、国際税務の課題に対して適切な戦略を立案する上で大きな助けとなります。

予測分析と財務計画の精度向上

エネルギー価格の変動や市場動向を考慮した将来の税負担のシミュレーションをAIが行うことで、財務計画の精度を高めることができます。例えば、石油価格などの変動が税務に与える影響を予測し、適切な対策を事前に講じることが可能です。

リスクと注意点

AIの活用にはデータの正確性とセキュリティが重要です。エネルギー業界は機密情報を多く扱うため、データの取扱いには高度なセキュリティ対策が求められます。また、AIの判断に過度に依存せず、最終的な確認や意思決定は人間の専門家が行うことが重要です。これにより、AIのもたらすリスクを最小限に抑えつつ、そのメリットを最大限に活用することが可能です。

実際の活用事例

PwCグローバルネットワークでは、OpenAI Startup Fund（※1)が支援する生成AI企業Harveyと協業しています。これを受け、PwC税理士法人では、税務に特化したカスタムAIモデルを開発しました。日本の税法にも対応しています。このモデルは、大量の税務データと専門知識を組み合わせて、高度な税務アドバイスを提供します。エネルギー業界においても、こうした高度なAIツールを活用することで、複雑な税務問題への対応がより効率的かつ的確になります。
PwC税理士法人は、これらの経験と知見を活かし、エネルギー業界の生成AI活用による税務業務の最適化および業務価値の創出に係る支援を行っています。

まとめ

エネルギー業界における税務領域でのAI活用は、多大な可能性を秘めています。大規模な固定資産の管理、税額控除の最適化、間接税への対応強化、再生可能エネルギーに関する特有の税制対応など、業界特有の課題に対してAIは有効な解決策を提供します。
エネルギー業界の経理税務部門の皆様にとって、AIは強力なパートナーとなり得ます。変化の激しい業界環境において、AIの活用を検討することで、競争力のある税務戦略を構築し、企業の成長に寄与することができます。未来の税務業務を見据え、AIの可能性を探求してみてはいかがでしょうか。

＜生成AIプラットフォーム「Harvey」イメージ図＞