反贈収賄コンプライアンスの最新の動向および企業がとるべき対応

近年、ビジネスの多様化およびグローバル化は未だかつてないスピードで進んでいます。一方、企業に対するガバナンスやコンプライアンス意識への期待は、年々高まってきており、ビジネス上の利益とコンプライアンスとの舵取りに悩む企業は、少なくありません。

加えて、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により世界中で移動が制限される中で、これまで以上に社内や取引先とのコミュニケーションや海外拠点を含む全社的な管理が難しくなり、社内や取引先の管理、海外拠点での不正の検知など、企業におけるガバナンス強化へのハードルが一層高くなりました。

その中でも、海外事業に携わる多国籍企業にとって贈収賄リスク・汚職リスクは、依然として最も懸念されるビジネスリスクの一つです。PwCが2020年に発刊した経済犯罪実態調査では、経済犯罪・不正の被害に遭った日本企業(海外グループ会社を含む)のうち、贈収賄・汚職は、横領と並んで最も多い不正でした。

反贈収賄コンプライアンスにおいては、主に、米国の海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act: FCPA)や英国の賄賂防止法(UK Bribery Act: UKBA)を中心として語られることが多いですが、その他にも日本企業が海外拠点を置く各国・地域に適用される現地法令にも注意を払う必要があります。

2021年6月、米ホワイトハウスが発表した大統領覚書(Presidential Memorandum)において、バイデン大統領は反汚職施策を国家安全保障活動の中核と位置づけ、贈収賄を含むホワイトカラー犯罪の取締り強化およびリソースの増強を行うと表明しました。これに伴い、米国司法省(U.S. Department of Justice: DOJ)は、現行の取締り方針の見直し・強化の一環として、米国連邦捜査局(Federal Bureau of Investigation: FBI)にFCPA調査に特化した専任チームを設置し、データを活用した調査・分析手法の拡大などを進めています。また、FCPA事案においては、対象企業側の調査協力の度合いなどが考慮されて、和解や起訴猶予(Deferred Prosecution Agreement: DPA)などの解決に至るケースが多いですが、直近の方針の見直しにより、リニエンシー要件の厳格化やDPA締結条件遵守に関するモニタリングの強化の動きが見られています。

反贈収賄コンプライアンスの指針は、DOJが発行しているEvaluation of Corporate Compliance Programs(2020年6月改訂)およびFCPAリソースガイド(2012年11月初版、2020年7月第二版)で示されています。例えば、M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)では、ビジネスDDや財務DDに加えて、贈収賄リスクに焦点を当てた反贈収賄DDを実施することが求められています。ディール締結前のDDの場合、相手側の協力が得られず、DDが十分に実施できないケースが多くありますが、そうした場合においても、ディール締結後のアセスメント、またはPMIフェーズにおいてコンプライアンス体制の速やかな整備を行うべきです。

また、自社の事業および活動拠点に照らしたリスク評価を定期的に実施し、贈収賄リスクに特化した内部監査(規程・手続等の確認、遵守状況に関するヒアリングの実施、取引テストによる取引実態・証憑の精査など)、取引先管理(取引開始時のDD、契約書における監査条項に基づく監査の実施など)、研修などを通じて、反贈収賄コンプライアンスを推進する必要があります。

反贈収賄コンプライアンスが複雑かつ困難である理由は、各社の事業内容や活動拠点とする各国・地域のリスク、商慣習などに沿ってコンプライアンスプログラムをカスタマイズする必要があり、日本の本社を基本とした一元的なリスク評価や規程整備だけでは十分ではない点にあります。

また、適切なコンプライアンス施策の実行のためには、自社の事業内容とそのリスクを十分に把握した人材と反贈収賄規制についての専門的知見・ノウハウを持った人材が必要です。

PwCのグローバルネットワークは、世界中のあらゆる地域および業界にかかる贈収賄リスクに関する知見を有しており、個々の企業に沿ったリスク評価や監査の実施、およびコンプライアンスプログラムの策定までの一連の活動を支援することが可能です。

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