贈収賄防止関連規制の対応支援

PwC Japanグループのフォレンジックサービスは、海外で蓄積した事例分析・調査経験を基に、企業が直面する贈収賄リスクに対応し、適切なコンプライアンス体制を構築・維持するための専門的支援を提供します。複雑な規制環境下であっても法的リスクを最小限に抑えつつ、事業の持続可能性と成長をサポートします。

贈収賄防止関連規制とは

贈収賄防止関連規制とは、公共の利益を守るために設けられた反贈収賄関連の法律や規制を指します。国際的な規制の代表例にはForeign Corrupt Practices Act (FCPA※1)、UK Bribery Act(UKBA※2)、OECD贈賄防止条約などがあり、日本では不正競争防止法の中で、外国公務員贈賄罪※3が規定されています。さらに、EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD:Corporate Sustainability Reporting Directive)は適用対象企業に対し、過去の贈収賄罪で受けた制裁や罰金に関する情報の開示を義務付けており、今後のESG投融資においても、贈収賄防止に向けた取り組み状況は重要視されることが予想されます。

※1 FCPA(連邦海外腐敗行為防止法):公正な商取引などを目的として、1977年に米国で制定された外国公務員などに対する贈賄などを禁止する法律。同法の対象となる米国企業や、米国でビジネスを行う外国企業(特に米国証券取引委員会の登録企業や米国に事業所を置く日本企業など)には対応が必要となります。

※2 UK Bribery Act(英国贈収賄法):2011年に施行された英国における贈収賄に関する罰則を定めた法律。公務員に対する贈賄だけでなく民間部門の贈賄についても禁止している点、また贈賄と収賄の両方を犯罪行為としている点、ファシリテーションペイメント(円滑化のための少額の支払い)を禁止している点が特色として挙げられます。

※3 外国公務員贈賄罪:外国公務員に対する日本国内における贈賄、あるいは日本国外における日本企業従業員による贈賄行為を禁止する犯罪。OECDからの勧告を踏まえ、2024年4月1日より改正法が施行、厳罰化されました。自然人・法人に対する法定刑が引き上げられたほか、外国人従業員による国外での贈賄行為も新たに処罰の対象となりました。

贈収賄関連規制違反のリスク

海外におけるビジネス構造の複雑化が進むに伴い、仲介業者やM&Aの買収先など、取引先の実態を把握しにくくなってきているという現状があります。また、規制当局による取り締まりが活発化しており、贈収賄規制、その他規制違反に係るリスクが、企業にとって避けて通れないほど大きな問題となっています。これらの規制違反による罰金は数十億円から数百億円にも達し得る一方、当局対応には多くの経営資源を割かなければいけないため、経営にとって重大な負担となります。特に、世界銀行をはじめとする国際開発金融機関(MDB)による腐敗行為禁止条項に基づく調査は近年増加傾向にあり、違反が発見された場合、金銭的ペナルティだけでなく、融資の中止や入札参加資格の剥奪など、事業展開に致命的な影響が及ぶ可能性があります。

加えて、米国のFCPAなどに基づく賄賂や腐敗行為に対する取り締まりが強化されており、企業は適切な反汚職コンプライアンスプログラムの構築・運用を強く求められています。経営者の責任は重大であり、米国の連邦量刑ガイドラインでは、適切なコンプライアンスプログラムの設置企業には量刑を軽減する規定があるほか、UK Bribery Actでは企業に汚職防止を目的とした「適切な手続き」の実施を要求しています。グローバルで事業を展開する企業には、コンプライアンスプログラムの策定・周知・モニタリング・見直しなどのマネジメントサイクルの構築、およびそれを支える人員や権限などの経営資源の手当、組織の自浄作用の発揮、リスクが顕在化した場合の迅速な対応体制の整備が求められています。

贈収賄リスクと贈収賄防止規制執行の現状

2024年にPwCが実施したグローバル経済犯罪実態調査の結果によると、約7割の経営者が過去12カ月の贈収賄に関するリスクについて、12カ月前より「増加、またはより厳しくなった」または「同じ水準を維持」と回答しています。また、8割以上の経営層は事業を展開している国における当局の贈収賄防止規制の執行についても「増加、またはより厳しくなった」あるいは「同じ水準を維持」と回答しています。

図表1:贈収賄リスクと反贈収賄規制の変化

出所:「グローバル経済犯罪実態調査2024」を基に作成

日本企業の取り組み

贈収賄防止対策は、海外で事業を展開する日本企業にとって不可欠です。FCPAの施行以来、摘発された事案は全て日本国外での公務員への贈賄行為であり、特に違反が生じやすい国に所在する海外子会社や取引先に対しては、反贈収賄コンプライアンス管理を適切に実行する必要があります。

特にグローバル展開する日本企業には、贈収賄防止ガイドラインを策定し、それは何を意味するのかという理解を深めたうえで、ガイドラインに準拠してビジネスを運営することが求められます。贈収賄のリスクから企業を守ることで、健全で持続可能な成長を目指すことが可能となります。

サービス内容

PwCのフォレンジックサービスでは、贈収賄防止規制への準拠をはじめとするコンプライアンス関連の課題解決に向け、深い知識と豊富な実績をもって支援します。私たちは、ガイドラインの策定からリスク評価、改善計画の実施まで、企業が直面するさまざまな課題に対して、具体的な解決策を提供します。また、PwCの海外のネットワークを活用したグローバルな視点から、海外でのビジネス展開における複雑な法規制に対応し、企業のコンプライアンス体制の強化と持続可能な成長を支援します。

平時:防止体制の構築支援

贈収賄防止関連規制に関するコンプライアンスプログラムの構築支援

PwCは企業の反贈賄・反汚職コンプライアンスプログラムの導入をサポートしています。海外市場で蓄積した豊富な事例分析と調査実績を基に、企業が直面する賄賂や汚職に係る複雑な課題に対応するための実践的ソリューションを提供します。これには、コンプライアンスプログラムの策定から社内浸透、モニタリング、定期的な評価までを網羅するマネジメントサイクルの構築支援が含まれます。PwCのサービスは、組織がコンプライアンスプログラムを効率的に管理し、倫理基準を向上させ、リスクへ迅速に対応可能な体制を築くこと支援します。

図表2:反贈収賄規制に関するコンプライアンスプログラムの流れ

その他平時支援

モニタリングプロセスの構築と実施

企業はコンプライアンスプログラムの構築後、定期的に贈収賄関連の法令遵守が継続的に実施されているかどうかを確認する必要があります。PwCは贈収賄規制に対する内部監査支援を行っており、海外子会社や取引先に対するリスク評価や贈収賄リスクの高い子会社に対する贈収賄監査の実施を中心に、独自のデジタルツールを用いるサードパーティ管理も含め、さまざまなサービスを提供しています。

図表3:反贈収賄監査の全体像

図表4: 反贈収賄監査の全体像

有事:発見体制構築支援

贈収賄防止関連規制に係る不正調査

贈収賄やその他の規制違反に関する事実調査や分析を支援します。これには、関係者へのインタビューや、会計記録および電子データの分析が含まれ、社内外ステークホルダーとのコミュニケーション、当局報告、再発防止策の策定と実行、そしてコンプライアンス施策の改善をサポートします。

図表5:規制違反とインシデントに対する主な支援項目

支援例

支援例①外資系企業の日本の拠点に対する反贈収賄内部監査

外資系企業の日本子会社に対し、反贈収賄内部監査を支援することが可能です。

まず、本社と子会社の反贈収賄ポリシーにおける解釈・運用のギャップを発見し、子会社にとって実務上運用が難しい手続きを特定します。そのうえで、改善策の提案と発見事項に合わせた研修の提供により、コンプライアンスプログラムの改善につなげることが可能です。さらに、内部監査を実施することで、子会社の社員に対して規定・ルールを周知させ、反贈収賄への意識を向上させることができます。

支援例②反贈収賄コンプライアンスプログラムの再構築支援

グローバル展開する日本企業の反贈収賄コンプライアンスプログラムの再構築を支援することが可能です。

FCPAの知見があり当局対応経験の豊富なPwCの米国チームと日本チームが協力し、コンプライアンスプログラムの再構築において実務上有効かつ効率的なアドバイスを提供できます。さらに、後続的な支援として反贈収賄内部監査を実施するにあたっては、PwCグローバルネットワークを活用し、クライアントの各子会社の所在地における法規制の更新状況、法執行の状況などに関する知見を適時に提供することができます。

主要メンバー

池田 雄一

パートナー, PwCリスクアドバイザリー合同会社

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辻田 弘志

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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竹内 秀輝

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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平尾 明子

ディレクター, PwCリスクアドバイザリー合同会社

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奈良 隆佑

ディレクター, PwCリスクアドバイザリー合同会社

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