私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下、独禁法)上、同法に定める株式取得等のM&A取引(以下、企業結合)が「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」には、かかる取引は禁止されます※1。さらに、一定規模以上の企業結合については、独禁法の執行機関である公正取引委員会(以下、公取委)に対する事前届出義務が課されています※2。直近5年度(平成30年度から令和4年度まで)においては、毎年度おおむね300件程度の企業結合案件が公取委に対して届け出られ、同委員会の審査を受けています※3。そのうち、寡占化が進んでいる市場におけるライバル同士の企業結合等、競争への影響が比較的強度とみられるような案件については、後述する経済分析を含む種々の専門的な審査手法が用いられています。このような専門的な審査手法が用いられるケースでは、公取委とのコンタクトを開始してからクリアランス※4を得られるまでの期間が長期化し、これに伴ってM&A取引の実行スケジュールが遅延し、競争法上のいわゆるガン・ジャンピング防止の観点から取引実行の準備にも制約が残り続ける事態となりかねません。さらには、公取委側で種々の専門的な審査手法が用いられた結果、当事会社の想定よりも厳しい心証が形成され、公取委の懸念を払しょくするための問題解消措置の履行または企業結合自体の断念を検討しなければならない事態も生じ得ます。
本稿では、まず公取委による企業結合審査の主題が何であるかについて簡単に紹介(後記1)したうえで、近時公取委がその重要性を強調する傾向にある審査手法について実務対応上のポイントを解説(後記2)します。なお、文中の意見に係る記載は筆者の私見であり、PwC弁護士法人および所属部門の正式見解ではないことをお断りします。
企業結合審査の主題は、当該企業結合について「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」に該当するか否かと言えます。「一定の取引分野」とは、競争が行われる場(すなわち市場)のことを指し、案件ごとに「日本全国における〇〇製品市場」といったように地理的範囲と商品の範囲が画定されます(かかる検討のプロセスは「市場画定」と呼ばれます)。そのように画定された市場において「競争を実質的に制限することとなる」か否かが吟味されることになるところ、公取委の企業結合ガイドライン※5によれば、それは「企業結合により市場構造が非競争的に変化して、当事会社グループが単独で又は他の会社と協調的行動をとることによって、ある程度自由に価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することができる状態が容易に現出し得るとみられる場合」を指します。あえて簡略化して述べれば、値上げ、品質の引下げ、新製品の開発を遅滞させる等の行為に出ても、競争者等からその顧客ないし利益が奪われないという状態が当該企業結合によってもたらされると評価できる場合には、競争を実質的に制限する懸念があると判断されるものと考えられます。実際の審査においては、このような競争制限に至るメカニズム(セオリー・オブ・ハーム※6と呼ばれることがあります)の検証を通じて、「競争を実質的に制限することとなる」か否かが判断されます。
図表1は「ある市場で等しいシェアを占めていた4社のうち2社が合併」するというシンプルな設例ですが、このようなライバル同士の統合のケースで検討される典型的なセオリー・オブ・ハームが「企業結合後の恣意的な値上げ」です※7。統合後の市場シェアは50%となり、残る2社の競争者との格差が大きくなることは、例えば競争者は競争よりも統合会社の価格政策に追随することを選ぶ可能性が高まるといった意味で、上記のセオリーを肯定する要素となります。
その一方で、セオリーを否定する要素が十分存在するケースもあり得ます。例えば、残る競争者の供給能力が十分大きく、統合会社の値上げを受けて積極的な販売活動を行う等により市場シェアの奪取が可能な場合です。また、新規参入が容易であり、参入後短期間のうちに有力化するとみられる事業者が存在する場合や、需要者の価格交渉力が非常に強い場合もあり得ます。実際に、合算市場シェアが50%超となるライバル同士の企業結合が無条件でクリアランスを獲得したケースは公表事例上もいくつか存在します※8。
事前届出義務を負う当事会社は、必要事項を記載した届出書を、添付書類とともに公取委に提出しなければなりません。もっとも、これらの必要書類の記載事項は簡素なものであり、特に市場の実態に関する情報としては、市場シェアなどごく限られた情報しか求められません。そのため、図表1で示したようなセオリー・オブ・ハームの検証を本格的に行うべき案件においては、公取委が十分な裏付けをもって結論を導くために必要な追加資料の提出が要請されることになります。最もオーソドックスな情報提出のプロセスは、当事会社が公取委から「お伺いしたい事項」と題する質問票を受領し、これに回答するというものですが、後述のとおり、そこに加えて特殊な資料等の提出要請が加わることに注意が必要です。
このような公取委による審査実務については、従前より企業結合ガイドラインや個別案件について公表された審査結果等を手掛かりとして断片的にその状況を把握するほかない状況にありましたが、令和元年12月の企業結合ガイドラインおよび公取委「企業結合審査の手続に関する対応方針」※9(以下、対応方針)の改定を嚆矢として、近年は具体的かつ詳細な内容が公表される傾向にあります。以下では、これらの公表内容において近時公取委がその重要性を強調する傾向にある審査手法のうち、経済分析の実施、内部文書の検討、第三者への意見募集の3つを取り上げ、かかる審査を受ける企業結合の当事会社側での実務対応上のポイントを含めて解説します。
従前より、経済学等の知見に基づく専門的な分析結果が公取委の審査の過程で考慮されたケースは、公表事例においていくつも存在しています(かかる分析は、当事会社が専門家と協働して行うものと、公取委側において独自に行うものの双方を含みます)。例えば、ライバル同士の統合による「企業結合後の恣意的な値上げ」のセオリー・オブ・ハームとの関係では、当事会社間で特に激しく競い合っていた関係にある場合には、そうでない場合に比べてより結合後の値上げは容易化すると考えられています。そこで、当事会社間すなわち各社の製品間の競争関係の強さを測るため、各社の販売実績データに基づき、一方の製品の価格・数量の変化が他方の価格・数量に影響を及ぼしたか否かを分析することがあります※10。その他、価格や費用に関するデータを用いてCMCR(Compensating Marginal Cost Reduction)やGUPPI(Gross Upward Pricing Pressure Index)といった指標を算定し、企業結合後の値上げのインセンティブの有無を検証する例もあります※11。
公取委は、このような経済分析の実施体制を強化する目的で、令和4年4月に「経済分析室」を設置しました※12。同室にはPh.Dを保有する職員が複数所属しているほか、コンサルティングファームや大学研究者等への外部委託も積極化することが企図されています※13。また、同年5月には「経済分析報告書及び経済分析等に用いるデータ等の提出についての留意事項」※14として、①当事会社側で経済分析報告書を作成する場面に加えて、②公取委側で独自に経済分析を実施する際に当事会社等に対してなされるデータリクエストに対応する場面について、それぞれにおける留意事項を公表しています。
上記①に関しては、分析に用いられたデータに関する説明等の一般的に記載すべき事項を示すとともに、特に「計量経済分析」や「理論モデルを用いた経済分析」等の類型別にそれぞれ特に留意すべき事項を列挙しています。
上記②に関しては、公取委がリクエストするデータの内容は「販売実績データや月次の損益計算書等、一般に、関係事業者等が投資家向けなどとして対外的に公表している財務データ等の情報よりも詳細なもの」であり、「例えば、月次データの場合、5年分以上の長期間のデータを求めることが多い」とされています。公取委はそのような広範囲のリクエストを実施する前に、期間等のスコープを限定したサンプルデータリクエストを実施する旨も対外的に明らかにしており、実務上、かかるサンプルデータの提出状況に照らしてリクエスト対象事業者におけるデータの保有・管理状況(該当データの有無や粒度)を確認し、どのような経済分析を実施するか公取委側で検討する手順が踏まれる例が多いものと考えられます。この点に関しては、リクエストを受けた事業者が公取委のリクエストに適合するデータを保有していない場面等において、公取委が試みる経済分析を経ることなくクリアランスを得られるよう働きかける場面もあり得ます。公表事例において、公取委が分析に必要とするデータの提出ができないため、異なるデータに基づく経済分析報告書を提出するという対応がとられたケースが存在します※15。
内部文書とは、取締役会資料等の事業者内部で作成・利用された文書を指します※16。当事会社に対する内部文書の提出要請は、従前より、特に第2次審査(届出受理後30日間実施される第1次審査の結果、さらなる審査が必要と判断された場合に移行する審査段階のことを指します※17)に移行する際に行われていたものの、当該企業結合の目的等を把握するうえで内部文書を確認する必要性が高いケース(特にデジタル分野の企業結合が念頭に置かれています)が想定されることを踏まえて、令和元年の対応方針改定時に、第2次審査案件に限定せず、提出要請を行うことがある旨が明示されました※18。
さらに、令和4年6月には、公取委は「企業結合審査における内部文書の提出に係る公正取引委員会の実務」を公表し※19、その中で「迅速かつ的確な企業結合審査を実施する上では、企業結合計画に関する正確な事実関係の把握が極めて重要であり、内部文書は、そのための重要な資料の一つ」であると述べるとともに、提出を求める内部文書の範囲・提出時期・提出方法について詳細な実務内容を公表しました。同文書が例示する内部文書は下表のとおりであり、多くの案件で要請時点から遡って2年間程度分の資料提出が要請され、また、当事会社側で提出資料の選定を行う際にはその理由や選定方法についての具体的な説明が必要とされています※20。
出典:公取委「企業結合審査における内部文書の提出に係る公正取引委員会の実務」
実際に、令和2年度以降に公表された審査結果の中では、第1次審査で審査完了した案件や、デジタル分野以外の市場に関する案件※21も含めて、公取委が当事会社グループに対して取締役会等の各種会議で実際に使用された当該企業結合に関する資料一式や議事録等について提出を求め、それらの資料を精査したことを明記するケースがコンスタントに出現しています。
例えば、1で触れた市場画定について、当事会社グループの内部文書から読み取れる、各事業者が提供するサービス間の競争関係に関する事実認識が参考とされた例があります※22。また、当該案件において検討対象となったセオリー・オブ・ハーム(1)の蓋然性を裏付けるような記載が発見された旨が明らかにされたケースも存在します※23。
以上にみるように、公取委は、当事会社グループの内部文書を積極的に活用する傾向にあり、その提出要請に対応するためには相応の負担が想定されます(案件によっては提出資料の収集等の場面でフォレンジックツールを活用することも考えられます)。
また、外部環境に対する認識等について文書の作成主体ごとに認識が異なっている場合も想定されるため、提出する内部資料の記載内容が、他の提出資料の内容と整合しているか否かについても注意を要します。提出すべき資料の中にミスリーディングな記載が含まれていれば、提出時にその趣旨を補足する等の工夫を行うことも十分検討に値します。
従前より、2(2)で触れた第2次審査に移行する際には、その旨が公取委より公表されるとともに、当該案件について第三者からの意見が募集されてきました※24。もっとも、令和4年6月に、必要性が認められる限り、第2次審査に至らなくとも同様の意見募集を行うとの姿勢が明示され※25、実際に同年に2件、令和5年も本稿執筆時点までに2件の案件について公取委ホームページ上にて情報および意見を募集する旨が公開されています※26。なお、上述した公開の意見募集とは別に、公取委が、当事会社にとっての需要者や競争事業者に対して個別にコンタクト※27して、ヒアリングや書面調査(アンケート)を実施することも従前から行われてきました。
以上のような手続を経て公取委に提出された意見や回答の中に、当事会社の主張する内容と相反する内容が含まれる場合には(例えば、当事会社が需要者の価格交渉力を主張したのに対して、かかる価格交渉力を否定する需要者自身からの回答があった場合)、当事会社側での主張を裏付ける追加的な資料提出等の対応が必要となり得ます。また、特に公取委が質問内容を設定するヒアリングや書面調査については、誘導・誤導により当事会社の認識から大きく乖離した回答が導かれるおそれがあるため、質問事項(調査票)の開示を事前に受けて、意見を述べる機会を公取委側に求めることも十分検討に値します。
以上のとおり、公取委が当事会社に対して種々の資料や情報の提出を求めることがありますが、それらの要請は、あくまで任意での提出を求めるものに過ぎません。もっとも、令和4年6月に、公取委は、任意の情報収集が困難な場合には必要かつ相当な範囲において、強制力のある独禁法上の調査権限を行使するとの姿勢を明らかにしています※28。また実際上、より早期のクリアランスを獲得するためにも、公取委からの要請には迅速に対応することが望ましいとも言えます。
なお、世界各国に売上高や資産が存在する当事会社が関係する等の事情から、同一のM&A取引について複数の競争当局への届出義務が発生し、公取委と並行して海外の他の競争当局による企業結合審査を受けるケースがあります。そのようなケースにおいては、個別の案件に関する競争当局間の情報交換が常態化しているとされており※29、公表事例においても情報交換を実施した競争当局が列挙されていることがあります※30。そのようなケースでは、各競争当局に対する説明内容の整合性を維持する目的に加えて、公取委が他の競争当局における審査状況を参考として追加的な審査(そこには上述した経済分析の実施や内部文書の提出要請等も含まれます)を行う可能性等を事前に把握するためにも、他の競争当局での審査状況が公取委による審査対応を担当している当事会社の担当者や専門家等にも適宜共有されるようにすることが望ましいと言えます。
当事会社が公取委に対して事前届出を実施すべき具体的な時期については、法令上特段の制約は存在しません。もっとも、届出実施後に2で紹介した各種の審査手法が用いられることになった際には、第1次審査の審査期間(届出受理後30日間)内の審査完了を見込むことは現実的に困難と言えます※31。そのため、公取委により問題視される可能性が極めて低いと見込まれるような案件を除いては、任意で申し出ることが可能な公取委への届出前相談の機会を活用して、公取委の担当官に対して案件の説明等を行い、届出受理後30日以内にクリアランスが得られるとの見通しが得られた時点で正式な届出に移行するという対応を検討することになります。このような観点を踏まえて、公取委への接触前に、専門家の関与のもと、クリアランス取得の難易度や公取委が実施する審査の密度について事前評価したうえで審査に臨む態勢を整えることが望ましいと言えます。
※1 例えば、株式取得について独禁法10条1項。その他、役員兼任、合併、共同新設分割、吸収分割、共同株式移転、事業の譲受け等の取引形態についても同様の禁止規定が存在します。
※2 例えば、株式取得について独禁法10条2項。
※3 例えば、令和4年度においては306件の届出がありました(公取委「令和4年度における企業結合関係届出の状況」)。
※4 当該企業結合について公取委が排除措置命令を行わない旨の通知が交付されること(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第9条から第16条までの規定による認可の申請、報告および届出等に関する規則9条)を指します。
※5 正式名称は、「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」となります。
※6 例えば、公取委「令和3年度における主要な企業結合事例」事例6や同「令和4年度における主要な企業結合事例」事例7において、この語が用いられています。もっとも、これにより従前と異なる新たな判断枠組みが提示されたわけではなく、この語を明示的に用いるか否かにかかわらず競争制限に至るメカニズムの検証は行われることから、あくまで「適切で具体的な考察を促す」(白石忠志『独禁法講義 第10版』有斐閣、2023年)ためのツールと受け止めれば良いものと考えられます。
※7 このようなライバル同士の統合は水平型企業結合に分類されます。この他に、垂直型企業結合(当事会社間に取引関係がある場合)や混合型企業結合(水平型・垂直型のいずれにも該当しない場合)の類型があり、企業結合ガイドラインにおいては類型ごとに検討されるセオリー・オブ・ハームや考慮事項が整理されています。本稿では、紙幅の制約から、垂直型企業結合および混合型企業結合に関する事例等の紹介を割愛しています。
※8 例えば、令和5年6月28日に公表された「令和4年度における主要な企業結合事例」事例3では合算市場シェアが60%に、事例4では合算市場シェアが100%となるようなライバル同士の企業結合案件について、問題解消措置を伴わず無条件でクリアランスが出されています。ただし、これらの審査結果は、あくまで個別具体的な判断によるものであり、ライバル同士の企業結合案件一般について合算市場シェアが高いことは重視されていないとまではいえないことには注意が必要です。
※9 公取委「企業結合審査の手続に関する対応方針」
※10 例えば、公取委「令和4年度における主要な企業結合事例」事例4
※11 例えば、公取委「令和3年度における主要な企業結合事例」事例3
※12 公取委「デジタル化等社会経済の変化に対応した競争政策の積極的な推進に向けて −アドボカシーとエンフォースメントの連携・強化−」4.(4)
※13 塚田益徳「企業結合審査の当面の課題」公正取引876号5ページ(2023年10月)
※14 公取委「経済分析報告書及び経済分析等に用いるデータ等の提出についての留意事項」
※15 公取委「令和2年度における主要な企業結合事例」事例10
※16 公取委「企業結合審査における内部文書の提出に係る公正取引委員会の実務」
※17 なお、第2次審査に移行する案件の数は、近年では年に数件あるかどうかという程度にとどまり、令和4年度において該当する案件はありませんでした(公取委・前掲注3)
※18 深町正徳編著『企業結合ガイドライン 第2版』(商事法務、2021年)379ページ
※19 公取委・前掲注16
※20 公取委・前掲注16「2 提出を求める内部文書の範囲」
※21 公取委「令和4年度における主要な企業結合事例」事例1
※22 公取委「令和2年度における主要な企業結合事例」事例10および同「令和3年度における主要な企業結合事例」事例6
※23 公取委「令和2年度における主要な企業結合事例」事例10
※24 対応方針4(1)および(2)。具体的には、公取委のホームページ上で当該事案の概要を公表するとともに意見募集を行う旨が告知されます。
※25 公取委・前掲注12「4.(1)」
※26 もっとも、過去にも、第1次審査の段階から公取委のホームページ上で情報の募集を開始したケースは存在しています(公取委「平成23年度における主要な企業結合事例」事例2)。
※27 公取委は、当事会社に対して、ヒアリング・書面調査の対象の候補となる事業者のリストや、コンタクトインフォメーションの提出を求めることがあります。
※28 公取委・前掲注12の4.(2)において独禁法40条に基づく権限の行使について言及があり、同条に基づく提出命令等に違反した場合には300万円以下の罰金が科されます(独禁法94条の2)。この他、独禁法47条に基づく調査権限を行使することも可能と指摘され(白石忠志「令和3年度企業結合事例集等の検討」公正取引865号27–28ページ)、同条に基づく提出命令等に違反した場合には1年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科されます(独禁法94条)。
※29 塚田・前掲注13:5–6ページ
※30 なお、当事会社や需要者等が提出した情報について公取委は守秘義務を負うため、他当局への情報開示は、当該情報の提出元からウェイバー(秘密性の権利放棄)の提出を受けることが前提となります(公取委「他の競争当局との情報交換のためのウェイバー(秘密性の権利放棄)」)。
※31 このような事態に直面した当事会社は、そのまま第2次審査に移行することを避けるため、届出を一度取り下げ、後日再度届出を実施するという選択を採ることが可能です(深町・前掲注18:377ページ)。
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弁護士 阪本 凌