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PwCは2023年10月から11月にかけて、第27回世界CEO意識調査を実施しました。同調査では世界105カ国・地域の4,702名のCEO(うち日本のCEOは179名)から、世界経済の動向や、経営上のリスクとその対策などについての認識を聞いています。
本レポートでは、同調査における生成AIの活用状況や期待、リスク等に関する回答と、過去にPwC Japanグループが実施した「2023年AI予測」や「生成AIに関する実態調査2023 秋」などの結果に基づいて、日本企業の生成AI活用が今どのような状況にあり、主要各国と比較してどれだけ進んでいるのか、その差がどういった点にあるのか、などを分析しました。また、それらの要因をふまえ、今後日本企業が生成AI活用を推進していくために意識すべきことについても提言します。
本レポートが、今後の企業における生成AI活用検討の一助になれば幸いです。
自社の業務において生成AIがどれだけ受け入れられているかを尋ねた質問では、世界各国のCEOが40%未満の同意に留まっているのに対し、日本のCEOは50%が「業務での受け入れに同意する」と回答(図表1)。日本の生成AI業務活用は主要各国に先行して進んでいると考えられます。
背景には、既存ビジネスやDX推進での出遅れに対する強い危機感と、日本のサイロ化文化と生成AIとの親和性の高さが影響していると考えられます。
CEO意識調査の「既存ビジネスの今後の持続可能性」に関する質問では、日本のCEOの64%は「10年後に自社が経済的に存続可能ではない」と回答しており、既存ビジネスの変革の必要性を強く意識しています。また、別の質問において「自社の改革を阻む要因」として「テクノロジーに対する自社の技術不足」の回答が上位となっており、DX推進の出遅れに対する強い危機感も感じられます。これらの危機感や変革へのモチベーションがきっかけとなり、生成AIなどの新しいテクノロジーをいち早く導入・活用し、事業変革の加速を狙っていると考えられます。
また、根強い日本の紙文化も要因の一つでしょう。欧米に比べてボトムアップのカルチャーが根強い日本企業では、欧米企業と比べて業務標準化やシステム統合が進んでいないと考えられています。その結果、情報システムでなくドキュメントをベースにした業務プロセスが多く残っています。そのような日本企業の状況が、生成AIの「サイロ化されたデータ・非構造データに強い」という特徴とうまく適合し、日本の生成AI業務活用の推進につながったと考えられます。
しかしながら、生成AI活用による効果創出については、日本のCEOはやや冷ややかであることも分かりました。「生成AIによる従業員の労働生産性、収益性、売上の増減」について尋ねた質問では、「増加する」と回答した日本のCEOはそれぞれ46%、34%、23%に留まり、他国と比べて最も低い結果でした(図表2)。生成AI業務活用が進んだ一方で、生成AIによって「できること」「できないこと」の理解が進み、生成AIに対する過度な期待が薄れていった、いわば「幻想から脱却し、現実解が見えてきている」と推察されます。
また、2023年にPwCが実施した「2023年AI予測」では、日本は米国と比べてAI投資に対するROIやAIモデルによるビジネス効果を十分に得られていないことが分かっており、過去の効果を得られていない経験からAI活用に対し過度な期待が持てない状況であることも一因でしょう。
「生成AIによって今後増加するリスク」について尋ねた質問では、世界全体の結果と比較して、日本のCEOは「サイバーセキュリティのリスク」や「誤情報の拡散」「風評リスク」「バイアスリスク」のいずれにおいても高い同意を示しており(図表4)、日本のCEOが革新的テクノロジーのもたらす負の側面を注視していることがうかがえます。
背景にあるのは、AIリスクに対するガバナンス施策の遅れでしょう。「2023年AI予測」の調査結果では、日本は米国と比べて、AIリスクに対するあらゆるガバナンス施策の取り組みで遅れを取っていました(図表5) 。日本のCEOは、生成AIのリスクに対する危機意識は感じていますが、必要なガバナンス施策が進んでいないために「漠然とした不安感」を抱いていると考えられます。
2023年の「生成AIに関する実態調査2023秋」の結果から、世界の企業と日本企業の生成AI活用状況を比較すると、「ヘルスケア・病院・医薬・医療機器」「自動車」「重工業・産業機械・家電」の業界において、生成AIの活用が先行していました(図表6)。
医薬・ヘルスケア業における生成AI活用が盛んな理由は、主に以下3点と考えられます(図表7)。
医療業界全体として、2022年の「骨太方針」や「医療DX令和ビジョン2030」のもと、日本政府主導でDX化を強力に推進していく動きが存在し、生成AI活用もこの一つに位置づけられます。一方、規制対応や組織のガバナンス維持のために部門間でのデータの分離を促す業界内の独自ルールが存在しており、その結果としてサイロ化されたデータや非構造化データが多く散在しています。このような状況が生成AIが持つ特徴とマッチしていることも、生成AI活用を加速させる一因でしょう。その他、製薬業には世界各国に拠点を構えるグローバルカンパニーも多く、拠点間でのコミュニケーションのために日常的に翻訳作業が発生するため、「複数言語間での翻訳効率化」ユースケースのニーズの高さも想定されます。
自動車業や家電・重工業など、いわゆる「製造業」における生成AI活用を推進する要因は、特に製品の企画・設計工程における生成AIの積極的な検討でしょう。
「生成AIに関する実態調査2023 秋」の結果では、自動車業界で検討されている生成AIのユースケースとして、「イメージに沿ったイラストのデザインや画像の生成」「プログラムコードの生成」「データ収集や調査・リサーチ」などの検討が上位となりました(図表8)。製品デザイン案の作成や、制御プログラムコードの生成、市場ニーズ調査などの場面において、従来業務の効率化や品質向上を目的として、生成AIの活用が推進されていると考えられます。
今回の分析で得られたインサイトと、それを踏まえたPwCからの提言は以下の通りです。
日本は、事業継続への危機感や、サイロ化文化と生成AIとの親和性の高さを背景に、生成AIの活用が「主要各国に先行して進んでいる」ことが分かりました。しかしながら、過去のAI活用で十分なROIを得られなかった経験から、生成AIに対しても過度な期待が持てない状況も明らかになりました。
これを打破するためには、過去のAI活用における二の舞とならぬよう、やりっ放しでなく効果を継続的に創出する事にこだわることが重要です。生成AIの効果を一過性で終わらせないために、業務活用によるROIを正しく、かつ継続的に計測し、常に取り組みの改善を図ることで、効果を最大化する意識が求められるでしょう。
日本は世界と比べて、サイバーセキュリティに限らず、誤情報の拡散、風評リスクなど、生成AIの多様なリスクに懸念を持っていることが分かりました。その背景には、AIリスクへのガバナンス施策が進んでおらず、生成AIに対して「漠然とした不安感」を抱いている状況があると考えられます。
これらが生成AI活用の足枷とならないためには、「漠然とした不安感」を「明確な課題意識」に変えることが必要です。経営者がリーダーシップを取りAIガバナンス体制を構築し、コンプライアンスのためのAIガバナンスでなく、AIにより競争力を獲得するための攻めのAIガバナンスを積極的に推し進めることが求められます。
日本の「医薬・ヘルスケア業」「製造業」において、世界全体と比べて生成AI活用が盛んであることが分かりました。これらの背景には、DX化の遅れ等の社会課題や業界独自ルールの存在、また翻訳作業やデザイン・設計・開発工程での活用など、生成AIの明確なユースケースの存在がドライバーとなっている可能性が示されました。
これら先行業界からの学びとして、規制等による外部制約で非効率になっている業務も、生成AIによるデジタル化では、その制約をドライバーに変えて、劇的な効率化を推し進めることができる事が分かりました。また、現状の業務プロセス・ビジネス習慣を前提にして明らかな効果が見込める効果の小さなユースケースだけでなく、カスタマーエクスペリエンス・業務プロセスを抜本的に変革するような実験的なユースケースにも積極的に着手し、社内にいち早くノウハウを蓄積していくことが、競合他社を突き放す競争力獲得につながるでしょう。
黎明期を迎えた生成AI市場に乗り遅れないために「生成AI市場へどのように参入していくか」もしくはビジネス課題および社会課題解決の観点から生成AIを「どのように利活用していくか」を企業は迅速に判断、実行していく必要があります。
PwC Japanグループではこれらの判断・実行に際し、「事業化支援」「導入支援」「リスク管理支援」の3つのサービスを提供しています。
事業化支援では、クライアントの生成AIに関する事業化案の創出から、事業の推進までを支援します。
既存業務における課題を分析の上、新規業務プロセスの検討、既存システムへの組み込みや組織変革を支援します。
生成AI特有の新規リスクの抽出と対策方針の検討を支援します。