現在の厳しい市場では、企業が消費者の購入プロセスの早期から接触を持ち、意思決定に影響を与えることが重要です。
既存の消費者からさらに支出を引き出すことが難しい時代には、早く購入に至らせる、あるいは新しい顧客を見つけることが重要です。2023年6月の世界の消費者意識調査には、25の国と地域から消費者8,975人が回答しました。その結果は、競争上の優位を求める企業にとって、消費者の意思決定に必要なツール、情報、テクノロジー、サポートの提供が必須であることを強調しています。
前回、2023年2月に公開した世界の消費者意識調査のテーマは、販売時点または購入体験における摩擦を取り除くことでした。今回の6月版では購入体験の前に摩擦を取り除くことに焦点を絞り、意思決定の重要な場面にある消費者にリーチする方法を紹介します。その次に、これまでも重要だった分野における消費者の声に注目しますが、これは強い圧力や技術革新を受けて変化しつつあります。生成AIやチャットボットなどのテクノロジーをどのように利用するか、モバイルアプリやSNSなど顧客関係管理(CRM)のどこに投資するか、直接販売(D2C)やサブスクリプション機能をどこに活用するか、環境・社会・ガバナンス(ESG)やサステナビリティの問題についてどのように顧客と接するか、今後の消費者の支出の増加にどう対応するか、などです。
意思決定のポイントに重点とリソースを絞ることで、企業は顧客にもっと寄り添い、有料や無料のロイヤリティプログラムを促進できます。それが市場の効率、責任、利益性の向上につながります。
現代の消費者はハイテク通です。実店舗でもネットショップでも、ショッピングカートに入れた商品を購入するまでに、消費者はすでに多くの重要な決定を下しています。意思決定は、消費者が何か買う必要があると判断した時点で始まります。この後、通常は各種のテクノロジーを使って購入前のさまざまな作業をし、最終的にはフリクションレスで効果的な購入体験となります。
最新の調査によれば、消費者はまず、特定の商品やサービスに関する情報をインターネットで大量に収集し、価格の比較、レビューの閲覧、小売業者の検討を行います。今回初めて、消費者に検索の方法について質問しました。消費者の半数以上(54%)は、購入前の情報収集方法として検索エンジンをトップに挙げています。ショッピングサイトとしてのAmazonが35%で第2位、各小売業者のサイトがほぼ同程度で33%です。回答者の31%はカスタマーレビューも閲覧しています。購入前の消費者の29%は価格比較サイトも利用します。このうち過半数はZ世代です(下の表参照)。
古着やアップサイクルの衣料、手作り品、電子機器、その他の商品を売買するマーケットプレイスは世界的に成長しているにもかかわらず、そのようなウェブサイトやアプリを購入前の調査に利用している回答者は18%にすぎません。
質問:一般に、どこで買いたい商品について調べますか?
全世界・全世代 | 西欧 | アジア太平洋 | アフリカ・中東 | 北米・中南米 | SEAC | 中国・香港 | 日本 | Z世代:25歳以下 | ミレニアル世代:26~41歳 | ヤング・ミレニアル世代:26~30歳 | コア・ミレニアル世代:31~35歳 | マチュア・ミレニアル世代:36~41歳 | X世代:42~57歳 | ベビーブーム世代:58~74歳 | 第二次世界大戦世代:75歳以上 | ||
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価格比較サイト | 0.289 | 0.281 | 0.31 | 0.289 | 0.253 | 0.304 | 0.267 | 0.410 | 0.217 | 0.292 | 0.269 | 0.286 | 0.321 | 0.34 | 0.318 | 0.192 | |
SNS(Facebook、TikTokなど) | 0.308 | 0.222 | 0.348 | 0.392 | 0.259 | 0.481 | 0.424 | 0.180 | 0.433 | 0.351 | 0.38 | 0.37 | 0.303 | 0.212 | 0.095 | 0.058 | |
検索エンジン(Googleなど) | 0.544 | 0.521 | 0.567 | 0.53 | 0.532 | 0.578 | 0.302 | 0.660 | 0.477 | 0.536 | 0.541 | 0.538 | 0.531 | 0.597 | 0.598 | 0.577 | 0.058 |
小売業者のウェブサイト | 0.331 | 0.305 | 0.302 | 0.328 | 0.426 | 0.36 | 0.279 | 0.220 | 0.283 | 0.334 | 0.332 | 0.309 | 0.361 | 0.348 | 0.38 | 0.442 | |
ショッピングサイトの商品レビュー | 0.314 | 0.271 | 0.335 | 0.359 | 0.288 | 0.427 | 0.317 | 0.160 | 0.31 | 0.325 | 0.339 | 0.326 | 0.31 | 0.318 | 0.269 | 0.346 | |
人との会話(友人、家族、同僚など) | 0.298 | 0.336 | 0.275 | 0.34 | 0.272 | 0.311 | 0.267 | 0.190 | 0.323 | 0.294 | 0.314 | 0.298 | 0.272 | 0.267 | 0.334 | 0.231 | |
Amazon | 0.353 | 0.464 | 0.276 | 0.31 | 0.423 | 0.07 | 0.575 | 0.480 | 0.335 | 0.36 | 0.344 | 0.372 | 0.363 | 0.343 | 0.385 | 0.404 | |
再販、アップサイクル、中古製品を販売するウェブサイト/アプリ | 0.175 | 0.161 | 0.155 | 0.238 | 0.19 | 0.191 | 0.133 | 0.100 | 0.189 | 0.196 | 0.188 | 0.218 | 0.182 | 0.146 | 0.128 | 0.154 | |
チャットボット | 0.039 | 0.029 | 0.043 | 0.049 | 0.038 | 0.04 | 0.086 | 0.01 | 0.049 | 0.051 | 0.05 | 0.056 | 0.047 | 0.023 | 0.01 | 0 | |
当てはまるものはない | 0.02 | 0.026 | 0.024 | 0.003 | 0.015 | 0.014 | 0.025 | 0.007 | 0.021 | 0.008 | 0.070 | 0.005 | 0.011 | 0.028 | 0.043 | 0.077 |
次に、消費者がどのデバイスでそのような情報源にアクセスしているのかを尋ねました。当然ながら半数以上の回答者は、ほぼ常に、または頻繁にモバイル機器(特にスマートフォン)とアプリを購入前の調査(56%)やレビュー(54%)に利用しています。移動中の消費者はますますモバイル機器に依存しています。消費者の10人に4人は、実店舗内を歩きながらスマートフォンで商品情報を見たり比較したりしています。3分の1以上(36%)は、商品の前に立って他の小売店やウェブサイトの価格と比較しています。
マーケターや小売店はSNSの利用を拡大し、SNSの利用は意思決定プロセスに大きな影響を与えています。ターゲットを絞った広告やプロモーションは回答者の31%の興味を引きます。Z世代ならその割合は43%にものぼります。どのような広告が購入前の決定に影響を与えるかという質問に対し、37%は、自分の好きなブランドや商品のプロモーションに直接リンクした広告が良いと回答しています。約3分の1(34%)はSNSのスポンサー広告に影響を受けます。そして従来型のテレビという媒体は風前の灯だと言われるにもかかわらず、回答者の35%はまだテレビに影響を受けています。そのテレビ世代の半数近く(49%)がベビーブーム世代というのも不思議ではありません。さらにこれは、デジタルメディアの普及とともに、そのような視聴者を対象としたストリーミングプラットフォームで広告が成長する可能性も示しています(以下の図を参照)。
もう1つのプラットフォーム、メタバースは、極めてフリクションレスなショッピングテクノロジーを実現すると予想されます。アバターが動き回る広大な仮想世界は、まだまだ複雑化と利用の可能性を秘めています。消費者には過去6カ月のメタバースの利用について尋ねました。利用は10%前後にとどまりますが、認知や活動は増えています。さらに回答者の32%は少なくともメタバースを知っていますが、使った経験はありません。
急速に進化するEコマースの世界で、小売業者は常に消費者の購入前の意思決定を促進する革新的な方法を求めています。生成人工知能(AI)は、ビジネスにとって多大な可能性を秘めた斬新なツールです。オンライン小売業者は生成AIにより、消費者が商品を調査、評価し、最終的に購入を決める過程を大きく変えることができます。
意外にもチャットボットを利用するという回答者は4%しかいません。売り手にも買い手にも画期的なツールと広く期待される生成AIプラットフォームの急速な成長を考えれば、この数字は今後確実に大きくなるでしょう。
買物客はチャットボットがデジタルアシスタントとして機能することを期待しているようですが、情報を受け取ることはあまり好みません(以下の図を参照)。AI機能の普及が近い将来の買物に与える影響について、消費者の44%が、購入を決める前にチャットボットを利用して商品情報を検索することに関心があると回答しています。しかしチャットボットに期待する人はわずか3分の1で、その内容は小売業者のカスタマーサービスサポート(35%)、配送時期や在庫についてのアラート送信(34%)、パーソナライズされた情報(31%)、仕事や学校の記述課題(30%)となっています。AIは最先端技術の典型であるため、技術の早期導入を好む「テクノロジー歓迎派」が各シナリオで高い割合を占めることは不思議ではありません(以下の「テクノロジーを利用した意思決定」を参照)。
テクノロジーの利用に関して、PwCでは4つの消費者グループを特定しました。歓迎派は回答者の17%を占めます。全ての新しいテクノロジーに強い興味を持ち、その技術製品を利用して商品を購入することにも積極的です(実店舗内を含む)。
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消費者の3人に1人近くはハイテクファン(31%)またはテクノロジー許容派(30%)で、最終的にはテクノロジーを買物に利用します。一方、22%の回避派は必要なときしかテクノロジーを使用しません。
人口統計的に見ると、テクノロジー歓迎派とハイテクファンの57%はミレニアル世代、テクノロジー許容派とテクノロジー回避派の大半はベビーブーム世代(71%)または第二次世界大戦世代(75歳以上、42%)です。
調査の顕著な結果の1つは、従来の中間業者やマーケットプレイスを避けてブランドから直接購入したいという消費者が増えていることです。消費者の過半数(63%)はブランドのウェブサイトから直接商品を購入した経験を持ち、この割合は増えると予想されます。さらに29%は、まだ経験はないものの、D2C(直接購入)を検討しています。
企業は、適切なマーケティングツールやテクノロジーさえあればD2Cのトレンドを有利に活用し、小売業者を通さずに最終消費者と頻繁に連絡を取ることができます。また、高度なEコマースチャンネルを維持し、デジタルマーケティング技術を最適化できる企業は、顧客体験を上手にコントロールし、有用な顧客データや分析を通じて利益率と収入の機会を増やすことができます。
現時点では、アグリゲーターやEコマース大手が規模、価格、使いやすさの面で優位に立っています。しかしD2Cブランドと企業にも利点があることは確かです。消費者の半数以上はD2Cウェブサイトに惹かれる主な理由として商品の信頼性を挙げています。特に衣料、電子機器、美容・パーソナルケア製品を購入する際はそうです。また半数近く(47%)は商品の選択肢の多さ、43%は価格の安さと在庫の豊富さを挙げています。
最も人気の高いD2Cカテゴリーは衣料とアクセサリー(44%)と電子機器(40%、以下の図参照)です。その上、D2Cを利用したことのある回答者(70%はフルタイムで働くミレニアル世代)のうち、85%は今後6カ月で11の商品カテゴリーへの支出を増やす可能性が高いと回答しています。電子機器のブランドにとってうれしいことに、ブランドのウェブサイトから直接購入する消費者の82%は、最新技術を発売と同時に購入する意思を持っています。
サブスクリプションを利用する決定とは、事実上、所定の期間にわたって商品やサービスを購入する決定と同じです。そしてサブスクリプションの人気は高まっています。サブスクリプション経済(下着からオーディオブックまで)は2012年から2019年までに3倍以上に成長し、D2C企業の4分の3が翌年までにサブスクリプションを提供すると回答しました[1]。そしてコロナ禍でサブスクリプションはさらに成長しました。しかし今はその勢いが衰え、消費者が裁量支出を見直して競争が他のカテゴリーに広がるとともに、ブランドロイヤリティに波及効果が及んでいます。
今回の調査は、消費者がブランドと関わる方法や時期を見直していることを明確に示しています。上位4つのカテゴリー(衣料/ファッション、食料品の宅配、健康関連の商品/サプリメント、コスメ)のサブスクリプション利用者の約12%が、過去にサブスクリプションをキャンセルした経験を持ちます。このトピックの背景を探るため、特定の商品やサービスのサブスクリプションを利用している、または利用を計画している理由を消費者に尋ねました。その結果、最大の理由は利便性(51%)、続いてコスト効果(47%)、ライフスタイル(42%)、パーソナライゼーション(41%)、新しい商品を試す(41%、以下の図を参照)でした。逆にキャンセルした理由を尋ねたところ、上位3つは、商品やサービスが必要なくなった(39%)、商品が高くなった(39%)、予定外の料金が発生した/料金が上がった(31%)でした。
しかしテクノロジー歓迎派は持ちこたえています。現在のサブスクリプション利用者の平均33%は上位4つのカテゴリーの利用者です。そして今後6カ月以内に利用を考えている回答者(特に衣料/ファッション、食料品の宅配、健康関連の商品/サプリメント)のうち30%がミレニアル世代です。
利用の理由
消費者はサステナビリティを重視し、そのためにお金を払ってもよいと考えています。2023年2月の調査では、回答者の70%以上がサステナビリティを考慮して生産された商品に「多少」または「かなり」高い価格を支払う意思を示していました。これは良いトレンドです。消費者には自分の社会に対する考えと購入行動を一致させられるメリットがあります。企業にとっては価格決定力を得られる可能性があります。
6月の調査ではさらに深く探りました。さまざまな商品(農産物市場で販売される地場産食品、低カーボンフットプリントの製品、カスタムメードや特注の商品など)について平均価格よりどれだけ高く払えるかを尋ねました。全体として消費者10人のうち8人は多く払うと回答しています。10人のうち4人以上は平均価格の10%まで、1人は30%まで、7%近くはさらに高くても支払うと回答しました。ミレニアル世代とZ世代は一般に社会問題や環境問題に高い意識を持ち、サステナビリティのためにお金を払うことにも積極的です(以下の図を参照)。
質問:以下の商品にどれだけ平均価格以上を支払いますか?
余計に支払っても良い:
もう1つの重要な決定ポイントは購入の後です。返品は買物につきものです。しかしEコマースの進化により、返品は、実店舗があったときより小売業者にとって複雑な問題となりました。これは主に送料の変動やロジスティクス上の理由です。コロナ禍におけるオンラインショッピングの想定外の成長はこれに拍車をかけました。
PwCは、オンライン小売業者の返品ポリシー、特にどんな要因が消費者からの返品を減らすかについて新しい質問を加えました。回答者の45%は正確なサイズ情報を提供することを挙げ、正確な商品情報を1ポイント上回りました。回答者の40%はカスタマーレビューを読めば返品が減ると考えています。興味深いことにオンラインで買物をする消費者の10%が普通は返品しないと回答しています。
Eコマースのトレンドは流動的で、競争が激しく、一部の裁量支出は減少傾向にありますが、回答者の半数以上は、今後6カ月でオンラインショッピングへの支出を増やしたいと考えています。これは前回の調査の43%から大幅な増加です。
この増加は、効率的な配送サービス(Eコマースの難点の1つ)を提供する小売業者から購入し、クリック&コレクトの利用を増やしたいという消費者の決定とぴったり一致します。しかし同時に、50%は実店舗での買物を継続すると回答し、2月の調査で紹介した「フィジタル」の到来を裏付けています(以下の図を参照)。
質問:以下に関して、今後6カ月にあなたの消費者行動はどのように変わると思いますか?
消費者の行動を選択:
特定の商品カテゴリーにおける消費者の支出は大幅に増えると見られます。半数近く(46%)は食料品への支出増加を予想しています。これは42%からの増加ですが、おそらく食料品の価格の上昇を予想してのことでしょう。必需品以外の買物について、消費者は支出の大幅な増加を予想し、必要でなくても欲しいものを買いたいという意思を示しています。3分の1以上(36%)は衣料や健康/美容関連の商品に使うお金を増やすと回答しました。これは過去2回の調査(28%と27%)から増加しています。
過去と現在の調査結果を比較すると、リフォーム用品への支出予想にも大きな差が見られます。この分野の小売業者は注目したほうがよいでしょう。最近の収益報告によれば、消費者は余分な支出よりも基本支出に重点を置いています。予想される支出の増加(約7%)は、電子機器、スポーツ/フィットネス器具、家庭用エンターテイメント、バーチャルオンライン活動にほぼ共通です。国内、国外の両方の旅行は、今後も消費者の支出を促すと見られます。2月の調査では30%、今回の調査では44%でした。前回の調査で見られた「リベンジ旅行」が続くことは間違いありません。このトレンドは、航空会社やホテル/リゾート業界の収益と雇用の増加にも反映されています。
消費者市場に携わる企業は、有効な戦略を通じて、顧客が重要な選択をする意思決定のポイントに影響を与えることができます。SEOの最適化やD2Cチャンネルにおける能力に加え、情報へのアクセスを容易にする次世代テクノロジーへの投資が、顧客の注意を惹き、売上に貢献する可能性があります。このような機会を理解し、うまく利用することで、企業は重要な意思決定のポイントに影響を与え、消費者を自社の商品やサービスに導くことができるのです。
商品購買を促すにはターゲット毎に宣伝方法を検討する必要
日本の消費者は、グローバルと同様、商品購買前に検索エンジンと小売業のウェブサイトを中心に商品について調べており、Z世代の多く(38%)はSNSも情報源としています。全体の宣伝効果は依然としてテレビCMの影響が最も大きくなっていますが(30%)、ブランドからのプロモーション広告やショッピングサイトのポップアップ広告がより有用な世代も存在しています(Z世代、X世代)。企業はターゲットとする消費者ごとに宣伝方法を検討する必要があります。グローバルとの比較では、スマートフォンを使い、購買前に①返却ポリシーの確認、②メーカーアプリ経由での商品比較、③Chatbotによる商品調査、を行う消費者は少ないという結果になっています。
豊富な在庫と商品の信頼性がD2Cを利用する理由
国内のD2C利用率は45%超ですが、グローバルと比較すると18ポイント低くなっています。ただ、大手ECサイトの商品は在庫切れとなっていることも多く、国内のD2C利用者の多くは「商品に信頼性がある」のほか、「在庫があること」を、D2Cを活用する理由にあげています。
オンラインショッピングは日本でも普及していることから、企業が自社サイトで、大手ECサイトよりもよい購買体験を提供できれば、今以上に消費者の利用を促せる可能性があります。
日本はコストパフォーマンス重視。サブスクリプションは未だ根付かず
日本の消費者のうち85~90%が、商品を問わずサブスクリプションに関心がなく(グローバルでは同45~65%程度)、サブスクリプション文化が根付いていません。ただし、サブスクリプションを利用している消費者の多くは、その利便性やコストパフォーマンスに魅力を感じています。過去にサブスクリプションを利用したがキャンセルした理由として、「必要がなくなった」の他、「契約に縛られるのが嫌だった」をあげる消費者が多くなっています。
企業がサブスクリプション収入を確保するためには、消費者ニーズに今以上にアンテナを張り、契約に縛られてもよいと思える商品を提供していく必要があります。
特注品・サステナビリティ商品には、平均価格より最大10%高い価格まで支払う
日本では40%超の消費者が、特注品やサステナビリティ商品に対して、平均価格よりも最大10%であれば高い価格を支払ってもよいと感じています(グローバルと同等レベル)。ただし、平均価格よりも最大20%高い価格を支払ってもよいと感じる消費者は、グローバル比較で10ポイント程度低く、サステナビリティに対する意識には向上の余地があります。今回の調査では、より商品の詳細を丁寧に消費者に伝えることで、一度買った商品の返品率が低減されることもわかっています。今後さらにD2Cのオンラインショッピングや越境EC等、商品を手にせず購買することが主流になっていくことが予想される中、企業が消費者に商品についてより詳しく伝えることで、①サステナビリティ商品を正当に評価してもらう機会を持ち、②返品率も抑制できる可能性があります。
日本の消費者は出費増に慎重
今後6カ月でオンラインショッピングへの支出を増やしたい消費者は26%となり、前回の調査時の20%から若干増加(グローバルは同50%)しており、オンラインシフトはパンデミック前と同程度の成長率に落ち着いています。また、グローバルではオンライン以外のチャネル(実店舗等)からの購買も増やしたい消費者の比率が高い(30〜40%)ですが、日本では同12〜13%に留まっています。今後6カ月間でみると食料品への支出は増加予想ですが、必需品以外(スポーツ/フィットネス器具、ラグジュアリー品等)の出費は抑えたい消費者(需要の反動増の旅行は除く)が多くなっています。
サステナビリティ意識とテクノロジーの活用比率はグローバル比較で低い
今回の調査において、日本はグローバルのなかでも特に①サステナビリティに対する意識が低く、②新しいテクノロジーを活用する消費者が少ないことが示されています。とは言え、経年で見ると、日本におけるサステナビリティ意識は徐々に高まってきており、平均価格よりさほど高くなければサステナビリティ商品を買う消費者が増えています。また、日常的に利用されるテクノロジー(セルフレジ等)は使うものの、目新しいテクノロジーは進んで利用せず、メタバースを過去半年で利用したことあるのは全体の13%の消費者のみとなっています(国別順位でみると最下位。グローバルで同34%、グローバル/定年退職者で同14%、首位はカタールで63%)。一部小売り企業はメタバースストアを開始しており、メタバースの認知度は高まってきているものの、より多くの消費者に商品を買ってもらうために企業は消費者が使いやすいインターフェースを通じ、商品を提供することが重要となるでしょう。
「世界の消費者意識調査」は、消費者の変化を詳しく観察することを目的とした年に2回の調査です。2023年6月の意識調査では、25の国と地域(オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、エジプト、フランス、ドイツ、香港、インド、インドネシア、アイルランド、日本、マレーシア、メキシコ、フィリピン、カタール、サウジアラビア、シンガポール、南アフリカ、韓国、スペイン、タイ、アラブ首長国連邦、米国、ベトナム)の消費者8,975人から回答を得ました。回答者の条件は、18歳以上かつ前年に1回以上オンラインで買物をしている人です。
[1] Nir Eyal、「3 Reasons Subscription Services Fail(サブスクリプションサービスが失敗する3つの理由)」、Harvard Business Review、2022年10月11日、https://hbr.org/2022/10/3-reasons-subscription-services-fail.html
※本コンテンツは、Global Consumer Insights Survey June 2023を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。