データマネタイゼーション実態調査2024 - アジア動向調査

はじめに

PwCコンサルティング合同会社のAnalytics Insightsチームは、2022年より3年間にわたり、企業が保有するデータの活用と事業活動への付加価値創出を目指す「データマネタイゼーション」の検討状況や課題を明らかにすることを目的に、「データマネタイゼーション実態調査」を発表してきました。

近年は、生成AIに代表される新たなテクノロジーの台頭、国際的なデータ流通の動きを背景に、日本国内に限らず世界的にデータ流通・データマネタイゼーションへの関心が高まっています。本調査は、これらの外部環境の変化を踏まえ、アジア各国における企業のデータマネタイゼーションの検討状況、活動の実態を明らかにすることを目的としています。

本調査結果が、現在データマネタイゼーションならびにデータ流通に取り組んでいる企業や、今後取り組む予定である企業の一助となれば幸いです。

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ハイライト1:タイ・中国・インドはデータマネタイゼーションによる「新たな収益源の創出」を重視

タイ・中国・インド・インドネシア・フィリピン・シンガポールのアジア6カ国を対象にしたデータマネタイゼーションの検討状況に関する質問では、データマネタイゼーションを「実現できている」と回答した人が36%以上となり、日本での回答(25%)*1を上回りました(図表2)。なかでもタイ・中国・インドは、データマネタイゼーションに取り組むうえで「新たな収益源の創出」をより強く意識しており(それぞれ61%、84%、58%)、日本においても注目が集まるデータマネタイゼーションを積極的に検討・推進していることが伺えます(図表3)。

ハイライト2:データ・デジタルとの親和性はデータマネタイゼーションのキードライバー

タイ・中国・インドの3カ国を対象に、業界別の回答者の分布を確認したところ、タイ・中国では「製造業」、インドでは「テクノロジー」に所属する回答者が最も多くみられました(図表4)。日本での調査結果においても製造業とテクノロジー業はデータマネタイゼーションとの親和性が高い業界であることが示されており、日本に限らず業界・業種の特性やデータやデジタルとの親和性は、データマネタイゼーションを加速させる共通のドライバーとなり得ることが分かります。

ハイライト3:グローバル規模でのデータ流通の意識が検討を後押し

データマネタイゼーションを検討する上での関心事項について、タイ・中国・インドの「グローバルでの企業間のデータ連携、利活用の推進方法」への関心度合いは日本の結果*1を最大24pt上回っており、グローバルでのデータ連携の意識に大きなギャップがあることが分かりました(図表5)。製造業におけるグローバル展開やアジア地域への生産拠点展開等を一因として、国を超えた情報連携が進んでいると推察されます。

グローバル展開への意識の高さは、別の観点からも読み取ることができます。「データ流通プラットフォーム・イニシアティブの利用状況」についての質問のなかで、タイ・中国・インドは95%以上が何らかのプラットフォームやイニシアティブを利用中(または利用検討中)と回答し(図表6)、日本の結果(39.8%)とは大きな差が見られました*1。タイ・中国・インドでは、民間企業が提供するデータ流通プラットフォームだけでなく、Catena-XやThe International Data Spaces, e.V.(IDSA)等の国際的イニシアティブについても利用(または利用検討)しており、個社単位だけでなく国としてもグローバルでのデータ流通を推進していることが伺えます。

ハイライト4:目先の「効果創出」にとらわれない姿勢がデータマネタイゼーションを加速させる

データマネタイゼーションに取り組む上での課題として「費用対効果・データマネタイゼーションにおけるメリットを感じない」を回答したのは、日本では46.7%に対してタイでは5.5%、中国が18.4%、インドが22.6%と、最大で41.2ptもの差が示されました(図表7)。要因の一つとして、データマネタイゼーションが積極的に推進され、既に一定の効果を得られているといったことが考えられます。また、前述のグローバル規模でのデータ流通やマネタイゼーションを意識しており、中長期での事業創出を見据えているがゆえに、目先や短期間での効果創出に対して強い課題感を持っていないことなどが想定されます。

日本が学ぶべきこと

本調査を踏まえた、アジア各国におけるデータマネタイゼーション取り組み状況は以下の通りです(図表8)。

  • データマネタイゼーションに対する意識はいずれの国でも高く、特に日本で注目を集める「新たな収益源の創出」を重視しているのはタイ・中国・インドの3カ国
  • 日本と同様、業界・業種やビジネス内容とデータ・デジタル活用との親和性の高さはデータマネタイゼーションを牽引するキードライバー
  • データ流通プラットフォームやイニシアティブの活用検討などの国としての取り組みや、それらを通じたグローバル規模でのデータ流通意識の醸成が検討を後押し
  • 目先での効果創出にとらわれない、中長期的な検討の姿勢がデータマネタイゼーションを加速させている

またこれらを踏まえ、日本でのデータマネタイゼーションをさらに加速させるために必要な要素は以下三つです(図表9)。

  • 製造業やテクノロジー業など、データマネタイゼーションを牽引する業界については、検討の歩みを止めないため、個社の努力だけでなく国としての働きかけが重要
  • アジア各国と日本の間で、特にグローバル規模でのデータ流通・マネタイゼーション検討推進の意識に大きな差がある現状を正しく理解し、その差を埋めるための具体的なアクションに起こす必要がある
  • データ・デジタルビジネスの大前提である「Think big, start small」な行動を念頭に、大きなマイルストンを描きつつ、小さなトライアンドエラーを繰り返して検討の精度を高めていく

調査概要

調査実施時期 2024年5月31日~6月7日
回答者数 618人
調査方法 調査会社パネルを活用したインターネットモニター調査
調査対象の条件 シンガポール、インド、タイ、インドネシア、中国、フィリピンにおけるデータマネタイゼーションやデータ流通に対する意思決定、方針検討、企画・検討・立ち上げ、情報収集・アドバイスを行う立場の方(原則として調査対象各国の在住者を想定)

*1 データマネタイゼーション実態調査2024
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/data-monetization-survey2024.html

データマネタイゼーション実態調査2024 - アジア動向調査

執筆者

河野 美香

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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辻岡 謙一

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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宿院 享

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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中村 凌子

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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