
顧客が真に求めるパーソナライズされたロイヤルティ体験を提供するには 金銭的報酬だけではない顧客一人一人に合わせた価値ある体験を提供することの重要性
顧客とのロイヤルティを育むことは、組織に価値をもたらし、収益性を高めます。本稿では、PwCが実施した顧客ロイヤルティに関する調査からの洞察を紹介するとともに、日本企業が取るべき対応策を解説します。
CEOの70%が、破壊的な技術革新が自社の業界の収益性に影響を与えると予測*1
顧客の82%が、優れたカスタマーサービスを理由にその会社を推奨*3
オーストラリアの消費者が問題解決のために費やした保留時間は、合計9,650万時間*5
変化するコンタクトセンターの状況:今日、オーストラリアの主要企業は重大な課題に直面しています:
顧客の期待の充足は依然として主要な課題となっており、CEOの86%が、今後10年間、顧客の志向の変化が自社の業界の収益性に影響を与えることになると考察しています*1
オーストラリア企業の60%が、近年の顧客データの漏洩に応じたコンプライアンスとセキュリティ強化のため、2023年のサイバー予算を増額しています*2
従業員のバーンアウト(燃え尽き症候群)とスタッフの定着が引き続き懸案事項となっており、CEOの82%が、今後10年間、労働力/スキルの不足が自社の業界に影響を与えることになると予測しています*1
3分の1超のオーストラリア人が「リモートワークを犠牲にするなら退職する」と答えており、効率的なリモートチーム管理が必須となっています*1
顧客の志向の変化に従い、多数の組織がコンタクトセンターを自国内に戻しているため、多くのオーストラリア企業にとって管理費が課題となっています
技術の進歩への対応は今後10年間においても課題であり続け、AI、メタバース、ブロックチェーンのような破壊的技術革新が引き続き勢いを増していくと考えられます
貴社のコンタクトセンターでは、事業の将来を守るためにどのような取り組みを実施していますか?
顧客サービスに求められる水準が以前よりはるかに高くなっています。顧客の82%が、顧客サービスがどれだけ素晴らしいかを基準として他人に企業を薦めていると答えています*3。組織は、非常に優れた顧客体験と経営効率のバランスをいかにとるかの問題に直面しています。私たちは顧客体験の向上と効率性の強化を同時に達成するにあたり、5つの必須事項を特定しました。
コンタクトセンターのパフォーマンス指標は、顧客や従業員の期待、経営モデルの変化に合わせて進化させる必要があります。
Harvard Business Reviewによると、ネスプレッソは従来の有効性の基準に疑問を投げかけ、顧客との通話時間を増やすことを従業員に奨励しました。これにより、従業員はネット・プロモーター・スコア(NPS:顧客推奨度)を上昇させただけでなく、顧客を支持者としても育て、販売チームの一員にしました。
従来の指標は、営業成績の理解にあたって現在も一定程度有効ですが、それ単体ではオペレーターによる顧客体験の提供が不十分になってしまう恐れがあります。これらの指標に対して新たにエンドツーエンドとクロスチャネルの指標を盛り込むことで、より包括的にパフォーマンスを捉えることができるようになります。以下に例を挙げます。
貴社のパフォーマンス指標は望ましい結果や行動を動機づける設計になっていますか?
コンタクトセンターの運営が効率的ではないことは把握していても、どこから手を付ければいいのか分からないかもしれません。
コンタクトセンターの複雑さと規模に応じて、PwCオーストラリアは、2日間のヘルスチェックから開始して課題と機会を特定するか、2週間の診断でパフォーマンスの点数化、ベンチマーキング、能力向上の達成のための具体的な提案を行います。
PwCオーストラリアではどのような課題であっても、戦略から実行までを整合し、全ての要素に優先順位をつけて提案するコンタクトセンター能力モデル成熟度評価(Contact Centre Capability Model Maturity Assessment)に基づいたアプローチを行っています。
この最高クラスのコンタクトセンター戦略は、7つの能力に関するパフォーマンスを取り扱います
コンタクトセンターは顧客価値や顧客体験に多大な影響を与えるため、企業戦略の支援において中心的な役割を担う必要があります。
PwCオーストラリアのアクセラレーターは、事業、技術、顧客、従業員にまたがる成果を出すことができます。コンタクトセンターサービスは、以下の6分野を深く掘り下げています。
経営モデル
経路戦略
セールス&サービス能力向上
従業員の取り組み
PwCの実行メソッド
サービス設計
ジャーニーマッピング
CX測定
変更管理
デジタルイネーブルメント
エンドツーエンド工程設計・最適化
工程自動化
CRM、事例管理、電話通信ソリューション
システム統合
PwCのデジタルツイン
ここまででご紹介した内容は、2023年にPwCオーストラリアが発行した記事を日本語に翻訳したものです。記事で根拠とされている調査は日本を含むグローバルを対象に行ったものであり、提示されている課題や必須対応事項については、日本の企業も同様に向き合う必要があります。
一方で、必須対応事項の実現には、多数の関連部署との連携や、オペレーターの既存業務の抜本的な変更、新たなスキルの習得を求められる側面があり、実行のハードルが高いと感じられた方も少なくないのではないでしょうか。
私たちは着実に変革を起こすために、構想は大きく持ちつつも(Think big)、できるところから着実に進める( Start small)ことが重要だと考えます。大きな目標を掲げることは、その達成までに課題に直面したり、過程が長期に及んだりしたとしても、迷いなく進むための道標となります。その一方で、プロセスとしては、ステップを細かくし、試行錯誤を繰り返すことを推奨します。早い段階でフィードバックを受けることで柔軟にアプローチを改善することができ、小さな成功体験を積み重ねることで、従業員のモチベーションの向上や、周囲の理解の醸成につながります。
一例として、収益貢献型の変革のために、まずコンタクトセンターの顧客接点としての重要性を明確化し、収益への貢献度を定量化することから始めるアプローチを提案します。
ソーシャルメディアが普及し、顧客からの評価が企業価値を大きく左右する現代において、多くの顧客と接触する部門であるコンタクトセンターが企業の収益において極めて重要であることは、容易に共通認識とすることができるでしょう。そのうえで、例えばNPS(Net Promoter Score)などの収益に直結する指標をKPI化して示していくことは、社内の関心を得ることにつながり、ひいては全社変革の推進力を得ることにつながるのではないでしょうか。
最後に、このアプローチを用いて収益貢献型の変革を実現した事例を紹介します。
Step1:試行錯誤のスピードを上げる環境づくり
Step2:顧客の困りごとをブレイクダウンし、優先度順にテクノロジーで解決
Step3:顧客対応部門の業務効率化と収益貢献可視化で変化を加速
Step4:データに基づく継続的な改善サイクルを構築
あくまで上記は一例となりますが、PwCコンサルティング合同会社ではクライアントの戦略に沿った具体的なアプローチを検討し、それに基づいた計画策定および実施の支援を行っています。
出所:
*1 第26回世界CEO意識調査
*2 信頼度調査2024
*3 Salesforce ‘State of the Connect Customer 5th Edition’
*4 ANZ ‘Older AustraliansBegin to Bridge the Digital Divide’
*5 ServiceNow ‘Customer Care Report conducted’ by Lonergan Research
※本コンテンツは、PwCオーストラリア『Exceptional customer service is the new industry standard.』を翻訳したものにPwC日本独自の内容を追加したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。
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