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2024年4月に実施した日本における生成AI実態調査から枠を広げ、同じ調査項目を用いて米国での生成AIに関わる実態調査を2024年5月に実施しました。本レポートでは日本と米国の活用、ガバナンス実態の比較を行っています。日本企業は生成AIを既存業務効率化に適用することで人手不足解消や人員削減を行い短期的なコスト効果創出に注力しているのに対して、米国企業は生成AIならではの新しい顧客体験を創出しながら、得られた効果を新規事業へ投資し、イノベーションサイクルを回すことで、新たなビジネスを生み、持続的な企業成長と競争優位性を担保することを狙っています。生成AIを活用した新規事業創出や価値創造のために、今後、日本企業は、挑戦する人材に権限を与え、リスク管理を徹底し、マネジメント層のリソースを高付加価値業務へシフトする必要があると考えられます。
PwC Japanグループは、「生成AIに関する実態調査2024 春 米国との比較」を実施し、日本企業と米国企業における生成AIの認知度、活用状況、現状の課題を比較して明らかにしました。
日本企業は世界各国に先駆けて生成AIの業務活用検討が進んでいましたが※1、検討中の企業が多く試行錯誤期であるということ、生成AIの活用ユースケースも社内の業務効率化にとどまっている企業が多く、生成AI活用効果が期待を下回ると答える企業も出始めてきたことが分かりました。中には活用効果が期待を大きく超えている企業も1割ほど存在し、二極化の兆しが見えています。
他方、米国では活用検討と同時にガバナンス面に重きを置いており、活用検討においては日本に後れを取っていました。しかし、今回の調査で活用中の企業割合は日本に追いつき、その活用実態を深堀りすると顧客サービスへの活用や生成AI活用効果の新規事業への還元など日本企業の活用とは違った様相が明らかになり、1/3の企業が期待を大きく超えた成果を感じているという実態が見えました。
本調査は、売上高500億円以上の日米両国の企業・組織の課長以上の方々を対象に生成AIの実態を調査しました。米国と比較することで日本企業における生成AI活用の強み・弱みが一層明確化されました。本調査が日本におけるこれからの生成AI活用の在り方を模索する一助となることを期待しています。
日米比較調査の結果をみると、生成AI活用の推進度合いと関心度で、アメリカに追いつかれていることがわかりました。米国は推進中以上と回答した層が全体の91%以上で日本より+24pt、また他社事例に「とても関心がある」層も+22ptとなり 、高い関心を持って積極的に活用を推進しています(図表1)。
また、生成AIサービスの認知について、日本では主にGPTやAzure関連のサービスが高く認知されている一方で、米国では他のサービスも広く認知されていることがアンケートによって明らかになりました(図表2)。
米国はAI活用の際に、テキスト生成だけでなく、画像、音声、動画などのマルチモーダルなアプローチを積極的に検討しています。この幅広い視点は、より多様なユースケースや業務プロセスにAIを組み込むための柔軟なソリューションの構築を可能にしています。
さらに、生成AI活用において直面している、あるいは直面した課題認識の違いが日米で明確に異なることがわかりました。日本では「必要なスキルを持った人材がいない」「ノウハウがなく、どのように進めれば良いか進め方がわからない」「活用のアイデアやユースケースがない」といった人材や知識面での不足が大きな課題として挙げられています。これにより、日本企業では生成AIの導入や活用に向けた計画が具体的に進まない傾向があります。知識やスキルの不足がボトルネックとなり、具体的なユースケースの検討や試行が停滞していることが見受けられます(図表3)。
米国は既に活用中/具体的な案件を推進中の層において1/3が「期待を大きく上回っている」と回答しています。米国は生成AIに対して高い期待値を設定した上で、それを超えた活用効果を導出 できています(図表4)。
生成AIの活用効果が期待を大きく超えるケースにおいて、日本では全社的な導入基盤を整えた上で、各業務に特化した利用が進んでいることがわかりました。一方、米国では全社的な導入基盤の整備は進んでいないものの、個別の事業部門における具体的なユースケース推進が先行していることが確認できます。特に、「顧客接点業務(70%)」や「経営企画・戦略企画系(51%)」といった、企業の成長や顧客対応に直接関連する部門における生成AIの活用が進んでおり、これらの部門では期待を大きく超える効果が出ています(図表5)。
生成AIの活用効果が期待以上の成果を出した理由は、日本・米国で最も重要な成功要因として「ユースケース設定」が共通しており、他上位の要因(データ品質、開発/利用環境、利活用フロー整備等)も共通していることがわかりました。
一方で、米国の企業では「生成AIガバナンスの整備」を成功要因として挙げた割合が4%となっており、日本の1%を上回っています。これは、米国企業が生成AIの導入において、ガバナンスの整備を重要視していることを示唆しています。特に、生成AIの活用に伴うリスク管理や倫理的な側面を含めた包括的なフレームワークが、期待を上回る成果を生むために不可欠であると考えている企業が多いことがわかります(図表6)。
生成AIリスクへの対応策に関して、米国では「プロンプトインジェクションの監視と抑制」、「コンテンツの有害化・文法エラーの検出」など、具体的な対応策を導入している割合が高く、またリスク対応について生成AIの出力正常化・安定化を実施していない割合は米国が3%に対して日本では20%であり、リスク対応については米国が先進的なポジションであることがわかりました。一方、日本では依然としてリスク対応策の導入が遅れており、ファクトチェックや専門チームによる出力の定期チェックなど、一部の取り組みは行われているものの、全般的な対応が不足している状態です(図表7)。
生成AI活用の指標を調査した結果、日本・米国ともに「生産性」を重要な指標としていることがわかりました。日本では「工数・コスト」を次点で指標としている一方、米国では「顧客満足度」を指標としています。米国は日本に比べて人材面・工数の課題は抱えておらず、社外的・非財務的な効果を期待していると考えられます(図表8)。
生成AI活用の実態から見えたファクトとその解釈を以下に示します(図表9)。
日本では、生成AIの認知は特定のサービス(主にテキスト系)にとどまり、既存業務に対する活用が進んでいますが、進展は緩やかです。一方で、米国は多様なサービスへの適用が広がり、企業の3分の1以上が既に大きな成果を報告しています。特に米国では、事業部門内や社外向けでの活用が積極的に行われ、新たな投資も活発です。
日本では生成AIの導入がコスト削減や効率化に寄与しているものの、従業員の雇用維持や成果の還元には課題があります。対照的に、米国では新規事業への大きな投資と、新たな顧客体験の創出が主な目標となっています。米国はすでに具体的なプロセス改善に着手しており、迅速なサイクルで検証から実装・運用・改善へと進んでいます。
日本は推進する人材やノウハウ不足が顕著であり、生成AI導入における戦略が定まらず、企業全体でのビジョン統一も遅れています。一方、米国では具体的なリスク対応策が整備されており、経営層のビジョンと生成AIの活用が密接に一致しています。この差は、両国におけるAI活用の方向性に大きな影響を与えており、日本はAI活用による革新的なビジネス価値創造よりも、コスト削減に焦点を当てがちです。
これまで日本と米国との差異が目立ちましたが、生成AI活用を推進する上での重要な成功要因は共通しており「生成AIに適したユースケースの設定、経営層ビジョンとの一致」となっています。
日本は既存の社内業務に焦点を当て、コスト削減を主な目標としていますが、米国は新規事業や社外の活用に積極的で、企業価値創出を重視しています。日本が今後の成長を図るには、米国のように迅速な実装とリスク管理を行い、新たな顧客体験や価値創造に取り組む必要があります。
前述の調査結果や解釈から、適切なガバナンスを敷きながら生成AIの活用先を見誤らずに導入を推進し、新規事業や顧客向け活用も視野に入れることが必要と考えられます。これを踏まえて日本企業への提言を以下に整理しました。
調査実施時期 | 2024年4月3日~4月8日(日本) 2024年5月23日~5月28日(米国) |
回答者数 | 912名(日本) 300名(米国) |
調査方法 | Web調査 |
調査対象の条件 |
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[PDF 2,635KB]
PwCは、先端技術を活用した事業構想の実績、AIに関する支援経験、研究機関との共同研究経験を豊富に有しております。これらを基に、生成AI市場への参入判断、生成AI利活用の導入、生成AIに関するガバナンスの構築を支援することで、デジタルディスラプション時代における企業経営の実現に貢献します。