新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応に関するCFOパルスサーベイ

日本分析版‐2020年6月15日

PwCは、2020年3月より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する企業の懸念や課題、対策について、CFOを対象に継続的な調査(パルスサーベイ)を行っています。グローバルでは5回目となる今回の調査では、6月1日と6月8日の週に、23の国と地域のCFO989名を対象に調査を行いました。日本での本調査の実施は今回で3回目となります。

第2波への懸念を抱えつつ、新しい働き方への移行と収益源の追求へ

2020年4月に世界中のCFOを対象にCOVID-19がビジネスに与える影響について調査した際には、約半数近く(45%)がリモートワークによる生産性の低下を予想していました。

当時、多くの企業は危機対応の初期段階にあり、復旧のための戦略を考える段階にありませんでした。今日では世界中でロックダウンが解除され、各国や企業の指導者たちが経済を再開し、常に脅威となっているCOVID-19と共存することを受け入れ始めています。

この現実に直面して、CFOは、根本的に変化した職場にどのように従業員を復帰させることができるかに注力してきました。今回の調査では、世界のCFOのうち、直近でリモートワークによる生産性の低下を予想する回答は2カ月前の45%から26%に減少しました。

多くの企業は当面の危機を乗り越え、安全対策を実施し、リモートワークを含む新しい働き方に移行しており、現在は生き残って前進するために何が必要かを考えています。当然ながら、社会的緊張が高まっている今、リーダーシップが非常に重要となる時期でもあります。本調査はCOVID-19の蔓延度合いやそれに対する政府の対応が異なる国や地域を対象としていますが、それでも共通のテーマがいくつか浮かび上がっています。

その共通テーマは、「感染の第2波が懸念される中で、人々の安全をいかに守るか」「世界的な景気後退に対応して顧客を再開拓するためのアジャイルな計画の必要性」「イノベーションによる新たな収益源の追求」となります。

エグゼクティブサマリー

  • 日本のCFOは、職場復帰を進めていく中で、「世界的な景気後退の影響」(64%)、「自社への財務的影響」(64%)、「第2波の発生の可能性」(48%)を最も懸念している。
  • 日本企業は新しい働き方を受け入れており、88%が「リモートワークを恒久的な働き方の選択肢として導入する」予定であり、68%が「リモートワークの環境を改善する」予定であると回答した。
  • 日本のCFOの72%が、新たな収益源を再構築するために、「製品やサービスの変更」を計画している。また56%のCFOが、「合併、買収、ジョイントベンチャー、アライアンス」などの外部との提携や協業に意欲的である。

日本のCFOの懸念は、世界的な景気後退と財務的な影響

多くの国が段階的な経済再開に乗り出し、徐々に商業活動やその他の活動が可能になってきてから数週間が経過しました。経済の本格的な再始動のための決定が進む中、CFOは、いつ、どのように、どの程度、従業員を出社させるかを判断しながら、職場への復帰を計画しています。日本のCFOにとって、これらの計画を実行する際の最大の懸念事項は「世界的な景気後退の影響」(64%)、「経営成績、将来の業績、流動性・資本力への影響を含む財務上の影響」(64%)です。また、「COVID-19の第2波の発生の可能性」(48%)も少なくありませんが、グローバル全体(58%)と比較すると相対的に低く、日本における感染者数が各国と比較して少ないことが影響している可能性があります。

多くのCFOは今年の収益/利益の減少を予測

CFOの収益/利益の減少の予想は、主要な経済指標と合致しています。世界銀行は、2020年には世界のGDPが5.2%縮小し、世界経済は第二次世界大戦末期以来の深刻な不況に陥ると予測しています。影響度は異なりますが、ほとんどの国や地域がCOVID-19の影響を受けてマイナス成長が予測されており、日本は6.1%の縮小が予測されています

このような状況を背景に、日本のCFOの88%は収益/利益の減少を予想しており、過去3回の調査では最も多い割合となっています(4月14日調査:81%、4月28日調査:86%)。これは、世界的な景気後退や財務への影響に対する懸念とも一致する結果です。

一方、減少幅についての調査結果は、グローバル全体では53%のCFOが「最大25%の収益/利益の減少」を予想しているのに対し、日本のCFOの40%は「減少幅は不明」と回答しています。

COVID-19により新しい働き方の導入が加速

今回の調査では、日本のCFOの大多数が、リモートワークを恒久的な働き方として導入しようとしていることが分かりました。「一定距離を保ち、業務を行うための職場環境の見直し」(76%)の他、「リモートワーク環境の改善」(68%)にも力を入れるとしており、グローバル全体と比較して、リモートワークを積極的に推進しようとしています。

これらの調査結果は、リモートワークの機能的な問題による生産性の低下を懸念する回答が減少したこととも関係しています。リモートワークによる生産性の低下を懸念する日本のCFOは、4月14日調査では52%と半数以上でしたが、4月28日調査では43%、今回の調査では16%と減少しました。この数カ月間でリモートワークの問題点が解消され、従業員の新しい働き方への適応が進み、生産性への懸念が大幅に緩和されました。

企業の回復にとって重要となるのは、イノベーションへの注力と外部との提携

新しい収益源の再構築や強化のために、多くの日本のCFO(72%)が、「新しい製品やサービスの導入や強化」を最も重要視しています。

危機対応時においては、自粛生活によって困窮する人々や医療の現場で働く人々を救うための製品やサービスの提供が重視されましたが、回復期においては、新しい生活様式や価値観に応じたイノベーションが重要な要因となることを示しています。

その他の選択肢としては、日本のCFOは「合併、買収、ジョイントベンチャー、アライアンス」といった外部との提携や協業に意欲を示しています(56%)。感染の拡大下、同業種や異業種の企業、学術機関、スタートアップ企業などと提携し、新製品や新技術の開発、新たな形態でのサービスの提供に取り組む企業が既に見受けられます。

CFO/財務担当責任者による危機対応の進化を振り返って

2020年3月にCFOを対象にCOVID-19に対する認識や対応について調査を開始して以来、PwCは、CFOが安全性に注力しつつ健康管理や経済・社会危機に対処し、急速に変化する状況にビジネスモデルを適応させていく様子を注視してきました。最終的にCFOは、今後数カ月、場合によっては数年にわたって継続するCOVID-19の脅威と共存しながらビジネスを発展させる方法を見つける必要がある、という認識に至っています。感染の第2波に備えるとともに収益源の強化に取り組む一方で、CFOは、引き続きアジリティを優先しながら、この新しい世界においてビジネスを前進させていくことになるでしょう。

最後に、本調査にご協力いただいたCFOの皆様にあらためてお礼を申し上げます。

PwC’s COVID-19 CFO Pulse Survey

PwCは、COVID-19のビジネスおよび経済への影響を特定するために、CFOおよび財務担当責任者を対象としたグローバル調査を隔週で実施しています。2020年6月1日の週から8日の週にかけて行われた調査では、23の国と地域の989名に回答いただきました。参加国は、中央アフリカおよび南部アフリカ、ブラジル、カリブ海諸国※※、中国/香港、キプロス、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、日本、リトアニア、マレーシア、メキシコ、中東※※※、オランダ、ポルトガル、シンガポール、スウェーデン、タイ、トルコ、米国、ベトナムです。

※ガーナ、ケニア、モーリシャス、ナミビア、ナイジェリア、南アフリカ、トーゴ、ウガンダ、ジンバブエ
※※バハマ、バミューダ諸島、ジャマイカ、トリニダード・ドバゴ
※※※バーレーン、エジプト、ヨルダン、サウジアラビア、クウェート、レバノン、オマーン、カタール、アラブ首長国連邦

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