米国、欧州、アジアの、工業、セメント、化学、ファッション、小売といった分野の製造業のリーダーに幅広くインタビューを実施した結果、製造業におけるサステナビリティについて興味深い発見がありました。環境スチュワードシップを推進しながら財務的な利益を上げ、それによって、サステナビリティによってポジティブな利益を生み出すことに最も成功している企業では、脱炭素化やネットゼロという目標が、組織文化、イノベーション構造、ガバナンス体制、報告制度、そして会社全体の存在意義(パーパス)に組み込まれています。これらの企業は、事業運営モデルに思い切った改革を加えることによって、短期的にも長期的にも価値創出と業績改善をもたらす投資として、サステナビリティに取り組んでいます。余分な運営コスト増加をもたらす施策として取り組んでいるわけではありません。
こうした企業は、サステナビリティの意味を従来の狭いものではなく、より良い地球環境を実現するために顧客や従業員、投資家、政府が要求することへの対応ととらえています。このような視点を持つと、サステナビリティは、現在と将来の両方の直接コスト、間接コスト、そして数量化できないコストを認識し、最初から事業運営に組み込むため、ネットポジティブとなります。唯一のコストと言うべきものは、今日の顧客層向けの製品を作るべく会社を変革することをせず、そのために主要消費者セグメントで市場シェアを失うことです。製造業を運営する企業幹部レベルのリーダーを対象とするPwCの調査によると、回答者の半分以上(52%)が、顧客のニーズと行動の変化全てのうち、事業運営に最も大きな影響を及ぼしているのは、サステナブルな製品への需要の増加であると回答しています。また、そのことを最も強く感じているのは工業と消費財セクターでした。2021年に発表されたPwCのレポートによると、顧客の73%が、CO2排出量を減らすために移動手段を変えたいと考えており、従業員の86%が、自分と同じ問題に関心のある会社で働きたいと回答しています。
「サステナビリティは追加コストだと言う人もいるでしょう。しかし、実践すれば当然のこととなり、事業運営に溶け込んでいきます」と、世界銀行グループの一機関である国際金融公社(IFC)で製造業担当グローバルマネージャーを務めるSabine Schlorke氏はインタビューの中で述べています。「事業を形成する一部と見れば、それはコストではなく機会なのです」
このような考え方の変化は次第に投資家の間でも広まっています。PwC最近の調査で判明した重要ポイントの1つは、投資家は投資先企業が直面しているESG(環境・社会・ガバナンス)関連リスクと機会に今まで以上に注意を払っており、それを行動で示す用意ができているということです。80%近くが、投資の意思決定においてESGは重要要素であると回答し、75%が、企業は短期的な収益性が低下するとしても自社事業に関連するESGの問題に対処する費用は負担するべきだと回答し、また、約50%が、ESGの問題に十分な対策を取らない企業に対しては投資を引き上げる意思があると回答しました。
大手であれ中小企業であれ製造業の企業にとって、特にCO2削減負担が大きく、巨大なグローバルバリューチェーンを有する企業にとっては、上述のような現実は厳しいものと思われるかもしれませんが、前進のために克服できない障壁ではありません。世界中の企業との協働を通じて、PwCは、サステナビリティによってネットポジティブな利益を実現するために焦点を当てるべき3点、すなわち計画策定、ポートフォリオ、インパクトを特定しました。以下で順に見ていきましょう。