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2021-03-12
基幹系システムのオープン化プロジェクトを成功裏に終えた肥後銀行。同行の代表取締役頭取および九州フィナンシャルグループ代表取締役社長を務める笠原慶久氏をお迎えした対談後編では、行内でのデジタルトランスフォーメーション(DX)をグループ企業さらには地域へと波及させ、地域経済の活性化に貢献する地方銀行の役割について、PwCあらた有限責任監査法人(以下PwCあらた)パートナーの宮村和谷と意見を交わしました。(文中敬称略)
笠原 慶久 氏
肥後銀行代表取締役頭取および九州フィナンシャルグループ代表取締役社長
宮村 和谷
PwCあらた有限責任監査法人 パートナー
(左から)笠原 慶久氏 、宮村 和谷
宮村:
地域経済における地方銀行の役割を考えると、基幹系システムの更改に始まる行内DXの促進やIT人材の育成には、貴行やグループ内に留まらない波及効果が期待されるのではないかと思います。地域DXに向けた将来像をどのように見据えていらっしゃいますか。
笠原:
おっしゃる通りで、このプロジェクトは地域DXの足がかりとして重要なものになると考えています。そのためには、まず行内・グループ内のDXをさらに進めていかなければなりません。地方銀行であっても、フィンテックをはじめとするデジタル化への対応は当然ながら必須です。取引のデジタル化やペーパーレス化、データサイエンスを活用したマーケティングなど、あらゆるところにDXを推進する余地がありますので、現在全社を挙げて取り組んでいるところです。
基幹系システムの更改はそのための第一歩でもありました。九州フィナンシャルグループは肥後銀行と鹿児島銀行を傘下に持っていますが、後者のシステムはすでにオープン化していましたので、今般の肥後銀行の更改によって、両行共に最先端のシステムへと移行したことになります。肥後銀行では基幹系システムの更改と並行して進めてきた管理会計システムや口座分析システムの構築も完了し、統合的なデータ分析を実現できる環境が整いましたので、今後はCIF(顧客情報ファイル)ベースのマーケティングに注力していきます。
宮村:
組織面でもDXを強化する体制を整備されていますね。
笠原:
はい。2018年10月に全社横断組織としてデジタル・イノベーション委員会を立ち上げ、DX戦略の策定に着手しました。その後、2019年4月には経営企画部内にデジタル技術を活用した商品・サービスの開発や業務プロセスの改革を推進するデジタル・イノベーション室を、2020年10月には事務統括部内に窓口のデジタル化を進めるオペレーション改革室を設けています。
加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受けてテレワークの本格的な導入にも踏み切りました。現在は営業部門の全行員がテレワーク可能な体制となっています。合わせて、テレワークを考慮した人事制度の変更も進めています。徐々に運用上の課題も明確になりつつあるので、これからも改善を重ねていきます。
お客様向けのサービスとしては、2020年10月から店頭でタブレットを使った口座開設の受付を開始し、身分証明書の読み取りやQRコードを用いたデータ連携などによって迅速な窓口対応を可能にしました。また、11月には相続に関する手続きを電話、メール、郵送、テレビ会議システムで受け付ける相続手続きセンターを開設して非対面ニーズにも対応するなど、テクノロジーを活用して、お客様の利便性向上に努めています。
肥後銀行代表取締役頭取および九州フィナンシャルグループ代表取締役社長 笠原 慶久 氏
PwCあらた有限責任監査法人 パートナー 宮村 和谷
宮村:
貴行内のDXは着々と進捗していますね。では、冒頭で「足がかり」とおっしゃっていた地域DXの取り組みについて、現在のステージを教えていただけますか。
笠原:
地域DXが差し迫った課題であるとの認識は、広く日本全体が共有しているものだと思います。ただし、その認識には濃淡があり、必要性に気付いていない企業も多いのが実情ではないでしょうか。とりわけ地方の企業の中には、「このままでも大丈夫なのではないか」といった、どこか危機感に欠けた面も見受けられます。
しかし、私は地方にこそDXが必要だと考えていますし、そのために地方銀行が果たすべき責務は大きいと思っています。継続的な啓発活動を通じて地域のDXを推進していくことで、地方経済の維持と持続可能な社会の実現に貢献できるはずです。
そのための重要な施策の1つが、グループ会社である肥銀コンピュータサービスの新規事業です。同社はこれまで主に肥後銀行のシステム開発を担ってきましたが、今後、地域経済を担う企業のDXや地域DXを推進する組織へと生まれ変わります。自治体や経済団体、システムインテグレーター(SIer)、通信事業者などと連携するほか、九州フィナンシャルグループ内のシンクタンクとも綿密に協力しながら、グループ全体で地域DXに取り組んでいきます。
宮村:
総合的な地域貢献を掲げる九州フィナンシャルグループならではの先進的な取り組みですね。地方創生は日本社会にとって喫緊の課題ですから、地方銀行がその中核となって地域DXをコーディネートしていくという貴行の取り組みが1つのロールモデルになり得ると感じます。
宮村:
地域DXにおいて具体化している取り組みがあれば、ご紹介いただけますか。
笠原:
直近では、自治体との連携が進展しています。通常、自治体によるGDP統計は発表まで3カ月ほどかかりますが、コロナ禍のような非常事態にあって、迅速な経済対策を打つための検討材料を数カ月も待つわけにはいきません。そこで、当行のシステムを活用して熊本市にGDP速報を提供する取り組みを始めました。
肥後銀行の口座分析システムでは、口座の入出金情報を業種別に分析しているため、この情報を集約することで、熊本市全体のGDPを推計できるのです。グループ内のシンクタンクである公益財団法人 地方経済総合研究所と連携してこうした分析を行い、確度の高いGDPをタイムリーに提供しています。熊本市ではそのデータに基づいてCOVID-19の拡大が地域経済にどの程度の影響を与えているかを判断し、施策の立案に役立てています。
宮村:
金融機関によるデータビジネスはメガバンクでも最近始まったところですが、いち早くデータを自行のビジネスと地域経済への貢献の双方に活用できているという好例と言えますね。
笠原:
このほか、グループ会社の肥銀カードが運営する地域ICカードや、鹿児島銀行が提供しているキャッシュレス決済サービスでは、利用データを独自のスキームで収集・分析し、各行の事業や自治体の業務に活用することを計画しています。そのためにはまず普及の拡大が重要ですので、これらが各地域のキャッシュレス決済の主要通貨となるよう、利用の促進に努めていきます。
宮村:
さまざまな組織をつなぎ、地域全体のレジリエンスを高めるという点で、地方銀行が果たす役割は大きいとあらためて認識しました。そのためには、データの共有やそれを可能にするプラットフォームの構築がカギになります。PwCはDXを推進する専門家の立場から、今後もそうした仕組みづくりや連携のサポートができればと思っています。本日はありがとうございました。
肥後銀行 取締役常務執行役員
德永 賢治 氏
(笠原取締役頭取<当時CIO>の後任として当プロジェクトの全体統括を担当)
今回のプロジェクトでは、PwCあらたから私たちの問題意識と合致する的確な助言をもらえたことが奏功しました。DXの推進には、これまで以上に外部の知見を上手く取り入れながら、さまざまなプレーヤーと連携していくことが重要だと感じます。地方では都市部に比べてDXに対する意識がまだ十分に浸透していないため、そうしたギャップを解消するためにも、PwCのグローバルネットワークや幅広い実績を生かした支援に期待しています。
肥後銀行 経営企画部長
桐原 健寿 氏
(2019年9月までIT統括部次期システム開発室長として当プロジェクトを現場でリード)
地方銀行として、当行はこれからも地域のお客様や地元企業と共に地域経済の持続可能性を追求していきます。そのためにもDXは必須ですが、地方ではそれを可能にするための人材が不足しています。まずは自行のDXを推進し、それを土台として地域の皆様と連携することで、地域DXを先導する役割を果たしていきたいと思います。
PwCあらた有限責任監査法人 ディレクター
高橋 卓也
(PwCあらた側のモニタリング管理者として当プロジェクトを担当)
肥後銀行は地銀として地域企業の成長に大きな期待を持つと同時に、その課題もよく理解されており、COVID-19の影響を受けた企業に対してテレワーク導入支援を行うなど、さまざまなアプローチで課題解決に貢献されています。PwCの「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というPurpose(存在意義)を体現するためにも、地域DXの推進という意義ある取り組みを今後も支援していけたらと思っています。
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。