
2022-06-30
PwCコンサルティング合同会社は、厚生労働省令和4年度老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等補助金)の国庫補助内示を受け、下記の事業を実施します。
【事業の概要】
過去に実施された高齢者介護のケア時間に係る実態把握についてみると、平成18年度に実施された「高齢者介護実態調査」では、介護保険施設を対象として、1入所者の状態像調査(要介護認定調査項目等)、2施設介護時間調査(48時間にわたり入所者等にどのようなケアが提供されたかについて、ケアを担当する職員にマンツーマンで配置された外部調査員が1分間ごとに筆記する「1分間タイムスタディ」)が実施された。
しかしながら、直近の高齢者介護の実態を把握するにあたり、上記の他計式タイムスタディによる調査手法は膨大な労力を要し、かつ今般の新型コロナウイルス感染症による影響に鑑みて、多人数の外部調査員が介護保険施設等を訪問して調査することは望ましいものではないと考えられた。
そこで、令和3年度老人保健健康増進等事業では、介護老人福祉施設、介護老人保健施設において、介護スタッフ自身がボディカメラを装着し、そこで録画された動画情報について、画像解析、自然言語処理、機械学習などAI要素技術を活用した上でのタイムスタディを実施し、ケア時間等のデータ等を収集・整理した。あわせて、外部調査員による他計式調査ではなく、動画情報およびAI活用を代替手段とする調査方法の可能性と課題を明確化した。本事業では、どのような状態の高齢者に対して、どのようなケアが、どれくらいの時間にわたって提供されているのかについて、令和3年度老人保健健康増進等事業において収集・整理したデータ(入所者の状態像調査データ、入所者へのケア時間に係るタイムスタディデータ等)を用いて整理・分析し、報告書の取りまとめをすることを目的とする。
令和3年度介護報酬改定において、「寝たきり防止等、重度化防止の取組の推進」として、施設系サービスについて、利用者の尊厳の保持、自立支援・重度化防止の推進、廃用や寝たきり防止などの観点から、全ての利用者への医学的評価に基づく日々の過ごし方などのアセスメントの実施、日々の生活全般における計画に基づくケアの実施を評価する「自立支援促進加算」が新たに創設されたところである。こうした自立支援に係る介護を広く実施していくためには、各施設・事業所が現在独自に行っている取り組みについて、客観的なデータも踏まえつつ、好事例を横展開していくことが求められる。
令和3年度老人保健健康増進等事業では、自立支援促進加算の趣旨・理念の理解促進と普及を目的として、自立支援促進に係る好事例を収集し、事例集が作成された。事例集では、利用者の尊厳の保持と自立支援に資する取り組み等として目指すべき介護の姿を示しているが、これらの取り組みの普及のためには、各算定施設における取組状況や課題等の実態を把握した上で、今後の介護の在り方や普及方策について検討を深めることが必要である。
本事業では、自立支援促進加算を算定している全国の介護保険施設を対象として現在行っている取り組みを調査し、今後推進していくべき自立支援促進に資する介護について、有識者の参加する検討会において検討等を行うことを目的とする。
在宅生活を維持できなかった要介護高齢者にとっての“終の棲家”として位置づけられた特別養護老人ホーム(以下、「特養」と表記)では、昨今、入所者像の重度化が進んでおり、看取りを含む医療対応の必要性が高まっている。
そのような中、特養の配置医師が早朝・夜間、深夜に入所者の急変等の対応を行った際の評価である「配置医師緊急時対応加算」について、8割強の特養で当該加算が算定できていない実態が報告されている(出所:令和2年度「特別養護老人ホームにおける看取り等のあり方に関する調査研究」報告書)。この点に関し、規制改革推進会議の「規制改革推進に関する答申」(令和4年5月27日)では、「特養入所者の施設内における医療ニーズ(特に、特養入居者の急変時及び看取り時)に十分応えられておらず」「配置医師が行うこととされる「健康管理及び療養上の指導」の範囲の明確化や、配置医師制度等の見直し等の措置を検討すべき」との問題提起がなされた。
こうした状況を踏まえ、本調査研究では、配置医師の勤務や診療の実態、特養において入所者に対して行われている医療対応、協力医療機関等との連携、救急搬送・入院の状況、看取りの状況などの実態を把握し、特養における医療ニーズへの対応の在り方を検討することを目的として、調査研究を実施する。
高齢者向け住まい(有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅)は、量的に急増していることに加え、事業者像、入居者像やサービス利用/提供の形態などが多様化し、質的にも大きく変化してきている。こうした変化を定点観測していくため、平成26年度以降、運営実態調査を実施してきた。
本調査研究は、これまでの調査研究を踏まえつつ、高齢者住まい運営事業者の運営実態(定員数、職員体制、施設設備など)や入居者像(要介護度、認知症の程度など)、介護・医療サービスの利用/提供状況といった基礎的情報を把握・分析することを目的として実施する。
また、今年度事業では、昨年度調査で明らかになった事柄を踏まえ、「高齢者向け住まい」における医療対応の実態と、そこで果たしている看護職員の役割について、より詳細に把握することを目的とし、調査・分析を行う。
高齢者向け住まい(有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅)は、年々、量的に増大し、機能的にも多様化が進んでいる。特に、昨今、入所者像の重度化が進んでいることから、看取りを含む医療対応が求められるケースも多く、施設に所属する看護職員の対応に期待が高まっている。
特定施設には常勤の看護職員が配置されており、入居者の医療ニーズに対応する際に重要な役割を担っている。一方で、特定施設は、特別養護老人ホームとは異なり医師の配置は義務付けられていないため、外部の協力医療機関との連携のもと、医師の指示を仰ぎ、対応していく必要がある。特定施設の入居者に対し医療・介護を切れ目なく提供していくためにも、特定施設で働く看護職員が安心して円滑に医療行為を行うことができる環境づくりが求められている。
このため、本調査研究では、本事例集は、特定施設を中心とする高齢者向け住まいにおいて、入居者の医療 ニーズに円滑に対応するための施設・法人の取り組みと、入居者個別の医療ニーズに対応している個別事例を紹介している。これらの事例を、各特定施設へのケア提供の検討において活用することを目的としている。
厚生労働省が発表した「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」では、第8期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づいた都道府県による推計から、令和5年度には約233万人、令和7年度には約243万人、令和22年度には約280万人の介護職員が必要となる見込みであることが示された。令和元年度時点での介護職員数は約211万人であり、将来的に上記必要数を満たすためには介護人材の確保が必要となる。
このような状況を踏まえ、厚生労働省は多様な人材確保策に取り組んでいる。その施策のうちの一つである「介護職の魅力向上」については、平成30年度に大規模イベントを実施したことに続き、令和元年度以降「介護のしごと魅力発信等事業(以下、「魅力発信事業」とする)」として年代や就業状況などセグメント別に多様な手法・チャネルを用いて情報発信をしてきた。魅力発信事業として丸3年が経過する中、その価値を公平な視点で測るとともに、一層良い取り組みとするためには、確立された枠組みに基づいて評価し、必要に応じて戦略やアプローチ方法を更新することが重要である。
上記の背景を受け、本事業は、魅力発信事業の価値を示すとともに、より効果を上げるための改善策検討に資することを目的として実施する。具体的には、「令和4年度の魅力発信事業」および「令和元年度~令和3年度の魅力発信事業」をプログラム評価をベースに評価する。それぞれニーズ、事業構造(セオリー)、プロセス、アウトカムを明らかにしたうえで、有識者によって構成する検討会を通じて価値を判断する。
科学的に自立支援などの効果が裏付けられた介護の実践を目指し、令和3年度介護報酬改定では「介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進」として、LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出およびフィードバックの活用によるPDCAサイクルと、ケアの質の向上を図る取り組みを推進するため、「科学的介護推進体制加算」が新設された。また、既存の加算などにおいても、利用者ごとの計画に基づくケアのPDCAサイクルの取り組みに加えて、LIFEを活用した更なる取り組みが新たに評価された。
このPDCAサイクルの推進にあたって重要となるのが、介護施設の介護サービスの質の評価指標となるQI(Quality Indicators)の確立であり、令和3年度の老人保健健康増進等事業において、文献等からQIの整理を行った。また、介護サービスの質の向上に向けたフィードバックに関し、文献等からその留意点等についても整理を行った。
そこで、本事業においては、これまで検討されてきた介護の質に係る評価指標について、LIFEの事業所へのフィードバックへ実装する方法を検討するとともに、有識者の参加する検討会において実装にあたる課題の整理等を行う。また、引き続き、介護領域で用いる質の評価指標の開発について検討を行う。
高い専門性を有する介護人材の確保・育成が喫緊の課題となっている中、介護福祉士を養成する介護福祉士養成施設(以下、「養成施設」)においては、2019年度からの養成課程への新カリキュラム導入、外国人留学生の増加による学生像の変化などがあり、養成施設教員には、これらの変化を踏まえた教授の視点や指導力が求められている。
そのような中、養成施設の教員を受講対象者とする「介護教員講習会」については、運営の体制や講習会の内容に差があるという課題があり、一定の標準化が必要とされている。
こうした状況を踏まえ、本事業では、介護教員講習会の実態を明らかにするとともに、運営にあたっての課題や、受講者である養成施設教員からの要望などを把握し、適切かつ効果的な講習のあり方の検討を行うことを目的として調査研究を実施する。