PwCコンサルティング、「電力・ガス小売市場意識調査2017」の結果を発表

消費者の料金割引への関心が一段落、低額使用者が引き続き電力会社乗り換えの中心

2017年11月29日
PwCコンサルティング合同会社

PwCコンサルティング合同会社(東京都千代田区、代表執行役CEO:足立 晋)は、11月29日、全国の一般家庭における消費者を対象に実施した「電力・ガス小売市場意識調査2017」の結果を発表しました(調査期間:2017年9月8日~9月18日、Webによるアンケート形式、有効回答件数:電力契約未変更者1,100件、電力契約変更者137件、ガス契約者932件)。

本調査の結果、電力会社の乗り換え意向は、2016年から大きな変化はなく、5%の割引率では乗り換え比率は約7%、10%割引では約26%など、昨年同様の水準に推移しました。過去5年間の調査結果も踏まえ、消費者が乗り換えに踏み切る意向と割引率との関係性は、一定の値に収斂してきたと言えます。また、電力契約変更者の過半数は月額電力料金8,000円以下の比較的低額な使用者で、低額使用者の乗り換え意向が強い傾向も続いています。

これまで以上に乗り換えを促進するためには、割引率の増加や、それに相当する値ごろ感のあるサービス(家庭内サービスや省エネ・エコ関連機器との組み合わせなど)の提供、さらには、低額以外の使用者を刺激する策の導入を検討する時期にきていると言えます。

「電力・ガス小売市場意識調査2017」主な調査結果

* 資料は「電力・ガス小売市場意識調査2017」からダウンロードすることができます。

割引率と乗り換え意向の関係

本調査の結果、各「料金割引率」に対する「会社乗り換え率」の割合は、電力では2016年とほぼ同水準となりました。過去5年間の調査結果の推移から、料金割引率と会社乗り換えの関係性は一定の水準に収斂し,5%の割引率での乗り換え比率は約7%、10%割引では約26%に落ち着いてきました【図1】。

2013年の規制緩和にかかわる政府発表後は、消費者の自由化への関心が高く、わずかな割引率でも新しい会社へ変更してみたいとの意向が強い傾向にありましたが、自由化後2年目にあたる本年の調査では、消費者が乗り換えに踏み切る現実的な割引感が形成されてきたと言えます。このことは、消費者の期待に反して魅力的な料金プランが市場に提供されていないことの裏返しとも考えられます。現在、大多数の新電力各社が提示する割引率は3~5%程度であることから、これまで以上にスイッチングを促進するためには10%程度の割引率か、それに相当する値ごろ感のあるサービスを提示する必要がありそうです。

一方、ガス会社変更の意識は、2016年に比べ同等または微減で推移しています【図2】。初期段階から各割引率における変更意識に大きな変動が見られない結果になりました。1年先行して導入された電力自由化を経験したことが影響しているものと考えられます。

【図1】「電力料金割引率」と「電力会社乗り換え率」の相関
Q.今よりも安い電力会社に変更を考え始めるのは、どのくらいの割引料金からですか。サービスの質は同じ、会社変更に伴う出費はないものとしてお答えください。

【図2】「ガス料金割引率」と「ガス会社乗り換え率」の相関
Q.今よりも安いガス会社に変更を考え始めるのは、どのくらいの割引料金からですか。サービスの質は同じ、会社変更に伴う出費はないものとしてお答えください。

電力会社変更と月額利用料金の関係

電力会社変更済みの137名の内訳を見てみると、半数以上となる67%が月額電力料金8,000円未満となり(未変更者の同率は51%)、昨年から10ポイント増加しています。低額使用者の方が電力会社を変更する割合が高い傾向は強まったと言えます。電力使用量の高い消費者を狙いたい新電力の思惑と消費者嗜好には、引き続きかい離があることがうかがえます【図3】。

契約電力会社を変更しなかった理由については、「しばらく様子を見たい(31%)」が昨年と比較して6ポイント低下するも第1位、一方で、第3の理由として「現在の電力会社に満足している(22.7%)」が昨年から3ポイント増加し、順位を4番から3番に上げています【図4】。乗り換えを促すには、この意識をどのように切り崩していくのかが課題と言えます。

【図3】電力会社変更の有無と月額平均電気料金の相関
Q.あなたのご家庭の電気料金は毎月平均してどのくらいですか?

【図.4】契約電力会社を変更しなかった理由
Q.電力会社の変更を検討したが、変更しなかった理由は何ですか?(複数回答可)

電力会社未変更者の省エネ機器の利用

次に、「契約電力会社を変更しなかった理由」の上位3つに回答した消費者に、使用している省エネ機器を尋ねたところ【図5】、「エコキュート」の購入率はそれぞれ50~60人台、「太陽光発電」は30人弱の結果となり、相当額の先行投資が発生するものについても、選択・購入していることが読み取れます。また、数は少ないものの、「エネファーム」「家庭用蓄電池」を選択・購入した消費者も見受けられます。環境省は当該領域において2018年度も補助金対象としており、消費者は嗜好に適合するサービスであれば、追加費用が発生する機器の購入も許容することがうかがえます。

現在の自由化の環境では、電力・ガスの単一の料金メニューでは差別化しにくいことから、将来環境においては、政策・技術革新による省エネ・エコ関連機器や、スマートスピーカー、監視カメラなどの家庭内サービスなどと組み合わせたメニューに市場変革の要素が含まれているのではないかと推測します。

【図5】「使用している省エネ機器」と「電力会社を変更していない理由」のトップ3との相関
Q. あなたはご家庭で省エネやエコに関連する製品を利用していますか?当てはまるものを全てお選びください。

「電力・ガス小売市場意識調査2017」調査概要

本調査は、2016年4月の電力の小売り全面自由化後1年半が経過したことから、一般家庭における電力会社乗り換えに関する意識を調査したものです。電力需要家の住環境、年齢、家族構成、世帯年収などの属性を背景として、「電力料金割引率」と「電力会社乗り換率」に関する相関関係を明らかにしています。

  • 調査項目
    1. 電力契約変更者の変更のきっかけ、および年平均月額料金別の乗り換え割合
    2. 電力契約未変更者の未変更の理由
    3. 電力契約未変更者の電気料金割引率と電力会社乗り換え率の相関(年平均月額料金、世帯年収、世帯人数、居住形態、世代、性別)
    4. 電力契約未変更者の原子力発電を利用しない供給サービスへの関心
    5. 電力契約未変更者のクリーンエネルギーのみによる供給サービスへの関心
    6. ガス料金割引率と電力会社乗り換え率の相関(年平均月額料金、世帯年収、世帯人数、居住形態、世代、性別)
    7. 電力・ガス会社に対する不満
  • 調査期間:2017年9月8日~9月18日
  • 調査対象:日本全国の一般家庭における消費者
  • 調査方法:Webによるアンケート方式
    • 男女均等割付
    • 20代、30代、40代、50代、60代以上の5段階で均等割付
    • 電力契約未変更者:電力会社10社各社に対して110件ずつ割付
    • 電力契約変更者:同期間で集まった137件
    • ガス契約者:同期間で集まった932名
  • 有効回答件数
    • 電力契約未変更者:1,100件(総配布件数: 89,183件、総回収件数: 2,990件)
    • 電力契約変更者:137件(上記期間に該当した電力契約変更者数)
    • ガス契約者:932件(上記1,237名のうちオール電化契約者等のガス未契約者を
      除くガス契約者件数)

本調査では、「電力小売市場意識調査 2013」(調査期間:2013年8月9日~15日。有効回答数:990件)、「電力小売市場意識調査 2014」(調査期間:2014年8月22日~9月1日。有効回答数:1,100件)、「電力小売市場意識調査 2015」(調査期間:2015年8月6日~14日。有効回答数:1,100件)、および「電力・ガス小売市場意識調査 2016」(調査期間:2016年8月22日~9月1日。有効回答数:1,199件)の結果との比較を行っています。

※本調査結果を転載・引用の際は、出典の明記をお願いします。PwCコンサルティング合同会社「電力・ガス小売市場意識調査結果2017」

「電力・ガスシステム改革支援室」概要

2013年11月1日に当社内に設置した組織。電力・ガス小売りの自由化・発送電分離などシステム改革の動きに対応する電力・ガス会社、および新規参入を計画する企業に対し、戦略策定や制度変更対応などの領域において、総合的なコンサルティングサービスを提供。

  • 提供サービス:戦略策定、制度変更対応、組織変革、小売り事業参入、内部統制/リスク管理などの領域におけるコンサルティング、海外市場調査
  • 主な対象業界:既存の電力・ガス会社、新規参入を計画する国内外の企業など
  • 室長:PwCコンサルティング合同会社 パートナー 野口 功一
  • 体制:国内約70名(PwCあらた有限責任監査法人、PwC税理士法人のメンバーを含む)

以上

PwCコンサルティング合同会社について

PwCコンサルティング合同会社は、経営戦略の策定から実行まで総合的なコンサルティングサービスを提供しています。PwCグローバルネットワークと連携しながら、クライアントが直面する複雑で困難な経営課題の解決に取り組み、グローバル市場で競争力を高めることを支援します。

詳細を見る

PwC Japanグループについて

PwC Japanグループは、日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーファームおよびそれらの関連会社の総称です。各法人は独立した別法人として事業を行っています。

複雑化・多様化する企業の経営課題に対し、PwC Japanグループでは、監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、そして法務における卓越した専門性を結集し、それらを有機的に協働させる体制を整えています。また、公認会計士、税理士、弁護士、その他専門スタッフ約6,300人を擁するプロフェッショナル・サービス・ネットワークとして、クライアントニーズにより的確に対応したサービスの提供に努めています。

詳細を見る

PwCについて

PwCは、社会における信頼を築き、重要な課題を解決することをPurpose(存在意義)としています。私たちは、世界158カ国に及ぶグローバルネットワークに236,000人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスを提供しています。詳細はwww.pwc.com をご覧ください。

詳細を見る