アシュアランス:
アシュアランス事業の収益は1.2%増の171億米ドル(2020年度は164億米ドル)となりました。監査業務はPwCブランドの要として、引き続きアシュアランス事業の成長の重要な推進力となっています。監査が資本市場における信頼を維持するための中心的な役割を担っていることに加え、この1年の間、被監査会社が直面した数多くの財務上の課題への対応を通じて、PwCの監査業務は力強いポジションをマーケットの中で維持してきました。PwCは監査人のローテーションや競争の激化などの市場要因に引き続き対応していく考えで、監査業務は今後数年にわたって着実に成長していくものと予測しています。また、ESG領域にかかる情報開示など、非財務情報に関するアシュアランスサービスに対する需要も高まりつつあり、今後この分野が大きく成長するものと見込んでいます。
2021年度は、リスク関連サービスが再度成長に舵を切っています。特に、COVID-19がもたらすリスクの管理や、パンデミックを発端とするDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を支援するプロフェッショナルサービスの必要性を企業が認識するようになりました。また、テクノロジーリスクおよびトランスペアレンシーサービスに対する需要も高く、サードパーティとの関係性、サステナビリティ関連の情報開示、サイバーセキュリティにかかるフレームワークなどの領域において外部保証を求められる企業がより一層増えています。
アドバイザリー:
アドバイザリー事業の収益は3.1%増の170億米ドル(2020年度は160億米ドル)となりました。この成長を牽引したのは業務改革や経営変革のサービスで、クライアントからは、戦略から実行に至る幅広いケイパビリティを求められました。COVID-19によって、組織のレジリエンスを強化しようとするクライアントが増加し、テクノロジー起点のビジネストランスフォーメーション(財務、顧客対応、人事、サプライチェーン)やクラウド主導のデジタルトランスフォーメーションに対する需要が特に高くなりました。また、第2四半期からディールが活発化し、価値創造(Value Creation)や維持にフォーカスした追加的な案件が生まれており、クライアントはトランザクションとその後のリストラクチャリングから価値の最大化を目指しています。
パンデミックや移動制限による厳しい状況の中でも、PwCのアドバイザリー事業は、世界中から幅広いケイパビリティをバーチャルに結集して、クライアントおよびそのステークホルダーのための価値創造を行い、ゆるぎない成果を実現できるように支援しました。
税務および法務サービス:
2021年度の税務・法務・人事の事業収益は、複雑さと厳しさを増す事業環境の中、パンデミックの影響や国内外の税務政策の変更など、さまざまな要因に牽引され、1.7%増の110億米ドル(2020年度は106億米ドル)となりました。
世界各国で政府と企業がパンデミックの問題とそれに伴う財政赤字の大幅な拡大について協議を続ける中、複雑さを増す税務環境にクライアントが対応できるよう支援するPwCの税務・法務のネットワークに対する需要が高まっています。2021年度は特にディールと人材・組織サービスに対する高い需要が見られました。また、クライアントが、サプライチェーン、オペレーティングモデルや人材基盤を、将来に向けて見直すためのトランスフォーメーションに対する需要も高まりました。税務報告および戦略サービスも、多くの企業がコロナ禍においてリモートで報告義務を履行するという困難に直面したことを受け、コンプライアンスとマネージドサービスを中心として需要が堅調に増加し、税務環境の変化も総合的なコンプライアンスサービスに対する需要を後押ししました。
将来への投資
この1年、経済は厳しい状況にありましたが、PwCは将来を見据え、人材、先端テクノロジー、業務の品質、新しい製品・サービスに優先的に投資を続けました。PwCグローバルネットワーク全体で2021年度は、2020年度の30億米ドルを超える投資に続いて、26億米ドル余りを投資しました。このように将来に向けた投資は果敢に実行していますが、全体的な支出に対してはより慎重な姿勢で臨み、新たなパートナーの選任については人数を抑えています。
2021年度の投資計画の一環として、PwCのメンバーファームは9件の買収(2020年度は3件)、5件の戦略投資(2020年度は4件)を完了し、これによりPwCの専門的ケイパビリティは、データアナリティクス、税務テクノロジー、戦略コンサルティングなどの主要分野で拡大しました。PwCは新たな経営ビジョンThe New Equationを実行する中で、今後5年間に120億米ドルを投資していきます。
品質重視:
PwCでは品質を最重要視しており、1人ひとりがその責任を負っています。徹底した品質重視は、信頼を築く上で欠かすことができません。PwCはグローバルなプロフェッショナルサービス事業者として初めて、品質検査の結果を公表しており、監査の品質については4年連続で向上していることが示されています。もちろん、完璧な品質を常に確保できるとは限らず、なすべきことは常にたくさんありますが、完璧ではない場合でも、そこから教訓を得るように心がけています。新たな経営ビジョン「The New Equation」では、PwCの品質向上のために30億米ドルを投資し、そのうちの10億米ドルを監査関連の主要テクノロジーに充当することを表明しています。PwCは最先端のデジタルスキルやAI搭載ツールにも投資を惜しまずに、人間とテクノロジーの協働のあり方を変革していきます。
人材基盤の拡充
PwCの事業を牽引しているのは、世界156カ国に及ぶ295,000人以上のプロフェッショナルスタッフです。パンデミックにより困難な状況が続いていますが、PwCでは2021年度に24,800人のインターンを含む90,273人を新規に採用しました。これは前年度から8,721人の増員です。人財戦略としては2026年までに10万人(純増)を新規採用する計画です。
ボブ・モリッツは次のように述べています。
「私たちはThe New Equationを実現するために、クライアントが直面する重要課題に対応する上で求められる専門家チームであって、税務からディール、テクノロジー、ESGまで多岐にわたる領域のプロフェッショナルが能力を結集して問題解決にあたるチームの構築に力を入れています。人材を育成し、新しいケイパビリティに投資することで、私たちは分野横断的なチームを動員し、クライアントの信頼構築とゆるぎない成果の実現を支援することができるのです」
前向きで健全な楽しい職場環境
将来に向けて強靭な礎を築くためには、自分は任せられている、支えられているとスタッフが感じられるように前向きな職場環境を整えることが何よりも大切です。つまりそれは、多様でインクルーシブな人材基盤の構築を継続しつつ、しばしば両立が難しい仕事とプライベートについて柔軟なマネジメントをスタッフに認め、パンデミックや在宅勤務から得た教訓を生かして世界中で通常勤務に戻す計画を立て、新しいスキルを習得する機会を与えるということです。
今年度、PwCはスタッフの満足度を調査するにあたり、その測定方法を改善した最新の「ピープル・エンゲージメント・インデックス」を発表しました。調査回答者の大多数が、PwCで働くことに誇りを持っている(84%)、PwCを働きやすい職場として勧める(74%)、PwCで働くことが楽しい(74%)と回答しました。また、73%の回答者がPwCに帰属意識がある、74%が経営陣は多様でインクルーシブな職場環境を積極的に整えているとも答えています。
今後も、経歴や経験に関係なく、全スタッフが機会を利用できるように力を入れていきます。また、広く社会の中でも行動を起こし、インクルージョンの構築に役立つ取り組みを支援していきます。PwCではさまざまな人材に機会を創出するため多額の投資を行っており、順調に進展していますが、まだまだすべきことはたくさんあります。
社会にインパクトをもたらす取り組み
PwCは科学的根拠に基づき、2030年までに全世界で温室効果ガス(GHG)排出量をネットゼロにするとのコミットメントを表明し、排出削減目標についてSBT(Science Based Target: 科学的根拠に基づく温室効果ガス排出削減目標)イニシアチブ(SBTi)から認定を受けました。出張時の航空機利用はPwCにとって最大の炭素排出源ですが、国内線・国際線ともに渡航制限が続いていることを受け、予想通り昨年度から92%減と大幅削減となりました。今後数年にわたり、出張時の航空機利用による排出量をパンデミック以前の水準と比較して削減していく計画です。2021年度、PwCは総GHG排出量を前年度比で80%削減し、電力の83%を再生可能エネルギーから調達しました*。
PwCはまた、インクルーシブな意識を高めるとともに、誰もが自分の可能性を発揮する機会を得られるようにする活動にも力を入れています。PwCのNew world. New skills.プログラムは、デジタル世界に対応し、将来活躍するために必要となるスキルを、より多くの人々が習得できるようにするものです。昨年度だけでも、世界の300万人近くにこのプログラムを提供しました。2018年度には、2022年度までに1500万の人々をはじめ、NGO、社会的企業、小規模事業者にプログラムを提供するという野心的な目標を掲げましたが、その目標を2021年度に達成し、これまでにこのプログラムを通じて支援した人々、組織、団体の数は1800万を超えました。
PwCはプロフェッショナルサービスファーム業界の一員として世界経済フォーラムと連携し、一連の「ステークホルダー資本主義の指標」(the Stakeholder Capitalism Metrics)の特定を支援し、気候変動のテーマを主導しました。2021年1月には、このメトリクスの導入を公式に支持する最初の1社となりました。透明性のある比較可能な報告を促進するというコミットメントの一環として、PwCでは「ステークホルダー資本主義の指標」に基づく開示事項の概要をグローバル・アニュアル・レビューの中に盛り込んでいます。