マネーローンダリング防止およびテロ資金供与対策関連サービス

マネーローンダリング防止*1(Anti-Money Laundering:AML)およびテロ資金供与対策(Counter Funding of Terrorism:CFT)に係る法規制に違反するリスクは増加の一途をたどっています。近年の企業に多額の罰金が課される事案や、当局による注目度の高い調査が証明しているように、企業はマネーローンダリングおよびテロ資金供与に係るリスクをより効果的に管理するため、新たな対応に迫られています。国内においてこれらの法規制は当初、麻薬関連犯罪をはじめとする犯罪対策の一環として整備されてきましたが、2000年代には組織犯罪対策・テロ資金供与対策を含む概念として拡大し、昨今では拡散金融対策(Counter Proliferation Financing:CPF)の観点が加わることによって、より複雑かつ広範囲な領域として進化し続けています。

PwC Japan有限責任監査法人のマネーローンダリング防止およびテロ資金供与対策関連サービスでは、リスク管理・コンプライアンス態勢を一元的に整備する観点から、AML/CFTプログラムの策定、リスク評価方法の検討、AML/CFTに関するシステム対応など、金融機関のマネーローンダリング防止態勢の整備を幅広く支援しています。

マネーローンダリング防止およびテロ資金供与対策に係る規制への対応の重要性

FATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)は日本に対する第4次相互審査の結果を2021年に公表し、日本は「重点フォローアップ」という位置づけとなりました。これは監視対象国には該当しなかったものの、法令等整備状況40項目のうち11項目、有効性審査で11項目のうち8項目が合格水準に達しなかったため、重点フォローアップの基準に抵触し、日本の当局の施策に大きく影響を与えることとなりました(参照:「FATF第4次対日相互審査結果と今後のAML/CFT対策」)。

上記のとおり、FATF第4次対日審査では一定の評価を得たものの、金融機関の監督強化や金融機関等のリスク認識・リスク低減策に関する課題が示されました。特にリスクの理解および評価、継続的顧客管理、取引モニタリング、実質的支配者などの点で課題が浮き彫りになりました。

公表されている判定基準の見直し案からも、FATF第5次審査においては有効性評価にさらなる重点が置かれ、第4次審査よりも厳しい水準の審査となることが想定されています。FATFの動向も踏まえ、第5次審査に向けた国内金融機関の具体的な取り組み課題としては特に以下の領域が重要視されています。

図表1 第5次審査に向けた国内金融機関の具体的な取り組み課題

日本政府はこれに対して行動計画を策定し、金融機関に対しては金融庁と財務省が中心となり各種施策を推進しています。

  • 関連法令の厳格化(外為法改正、外為検査ガイドライン、マネロン罪処罰、資産凍結など)
  • 金融庁AML/CFTガイドライン:2024年3月末までの期日設定、整備態勢の実効性確認など

具体的な動きとして、検査・監督体制の強化が行われており、今後リスクが高いとされる業態において、優先的にリスクベースでの検査・監督が行われることが想定されます。

  • 各金融機関は、AML/CFT対応を重要な経営課題として位置づけ、リスク低減策の実施状況を自ら検証し、説明することが必要となる見通し

また、AML/CFTの高度化・効率化に向けてはテクノロジーの活用が重要視されており、各金融機関等による共同システムの実用化も検討されています。

  • 取引モニタリング・取引フィルタリングに関わるシステムの強化など

整備すべき社内態勢の全体像

AML/CFTプログラムの全体像

マネーローンダリングを効果的に防止する態勢を確立するには、金融庁ガイドラインなどの各種法規制に対応し、かつ自社事業内容に鑑みた施策を一元的に管理するAML/CFTプログラムを整備する必要があります。

リスクベースアプローチが浸透していることが根幹となり、そのためには金融機関が自らマネーローンダリングおよびテロ資金供与に係るリスクを特定・評価することが第一歩です。

下記のAML/CFTプログラムの基本概念にて整理しているように、自社が直面する「リスクの特定・評価」を踏まえ、「リスクの低減」において顧客管理措置(CDD)、制裁者フィルタリング、取引モニタリングなどを中心としたリスク低減措置を行うことが求められます。また、その全体に対しての「管理態勢の整備、検証と見直し」において、カバナンスを含む組織体制の強化に向けた取り組みを推進することにより、金融庁ガイドラインに沿った適切なAML/CFT態勢を構築することができます。

図表2 AML/CFTプログラムの基本概念

PwC Japan有限責任監査法人が提供するサービス

PwC Japan有限責任監査法人では、金融業界の規制・リスク・コンプライアンス領域における高い専門性と実績、経験を活かして、企業の経営レベルから業務基盤レベルにまで、規制対応、ガバナンス、リスク管理、コンプライアンスに関するコンサルティングサービスを幅広く提供しています。また、国外企業に対する支援経験を有する人材がPwCネットワークを活かしてグローバル案件に数多く携わっており、英語・中国語・韓国語などでの対応も行っています。

リスクベースアプローチ/リスク評価手法の検討支援

  • 各社・各金融機関のリスク特性を踏まえたリスク評価手法の整備・高度化
  • 特定事業者作成書面(リスク評価書)などの策定および高度化
  • AML/CFTにおける高リスク分野の特定
  • リスクに応じた顧客への対応方針(謝絶すべき取引内容など)の検討
  • グループベースのリスク評価および管理態勢の構築・高度化

顧客管理(カスタマー・デュー・ディリジェンス:Customer Due Diligence)

  • オンボーディングおよび取引開始時の対応に係る支援
  • 継続的顧客管理(定期レビューなど)に係る態勢整備
  • 簡素な顧客管理(SDD:Simplified Due Diligence)を適用した効率的な管理態勢の構築
  • 顧客リスク格付け(カスタマー・リスク・レーティング:Customer Risk Rating)に係る態勢の整備および高度化

取引モニタリング・取引フィルタリング

  • 取引モニタリングの適切な態勢の整備(アラート処理や意思決定を含む業務フローなど)
  • 疑わしい取引の分析に基づくモニタリングルール(シナリオ)および閾値などの策定およびレビュー
  • 取引フィルタリングの適切な態勢整備(アラート処理や意思決定を含む業務フローなど)
  • 取引フィルタリングに関するリスト管理の整備

疑わしい取引の届出

  • 疑わしい取引の届出に係る適切な態勢整備
  • 疑わしい取引の該当性に係る検討・判断プロセスの高度化

ITシステムの活用/データ管理(データ・ガバナンス)/記録保存

  • AML/CFT関連システムの導入および見直し
  • データガバナンスの構築・高度化
  • 本人確認資料の証跡や記録などに関する保管環境整備およびアクセス管理に係る支援

海外送金/貿易金融に関する措置

  • 国際的な標準を踏まえた海外送金に係るリスク低減措置の構築および高度化
  • コルレス先や委託元金融機関などに対するリスク評価
  • 貿易金融に係るAML/CFTリスクの特定および評価

管理態勢とその有効性の検証・見直し

  • テスティング(有効性検証)態勢の構築および高度化(規程類の整備、PDCA年次サイクルの策定など)
  • 全社統制(グループ統制)に係るテスティング
    • 会社、組織レベルにおいて内部統制が有効に機能することを可能にするような仕組みや体制など、組織全体に適切な統制が存在していることを保証するための全社的なAML/CFTに係る内部統制
  • 業務プロセス統制に係るテスティング
    • AML/CFTに係る内部統制のうち、一業務上の手続・処理の流れに組み込まれた内部統制(承認、照合、職務分離、検査・レビュー、分析など)
  • IT統制に係るテスティング(システムテスティング)
    • 業務プロセス統制における個々の統制活動のうちシステムの機能に依存する内部統制(ITアプリケーション統制:ITAC)、およびITアプリケーション統制が健全かつ有効に機能する基盤・環境を保証する内部統制(IT全般統制:ITGC)
  • 第1線における運用状況の検証とモニタリングに係る支援

AML/CFTに関する内部監査支援(3線管理)

  • 内部監査のコソース(監査計画の策定、監査手続の実施および監査調書の作成など)
  • 内部監査部門向けAML/CFTトレーニングや内部監査プログラムの作成

研修プログラムの整備支援および研修の実施

  • AML/CFT対策関連の研修プログラムの構築・高度化
  • 経験豊富なコンサルタントを講師とした研修の実施

PwCでは金融規制対応を総合的に支援しています。詳細はこちらをご覧ください。

脚注

*1:マネーローンダリングとは一般的に、犯罪者が犯罪収益の不正な出所を隠し、捜査当局による摘発や逮捕を免れようとするプロセスを指します。日本では、組織的犯罪処罰法、麻薬特例法、テロ資金提供処罰法などにより規制されています。マネーローンダリングは隠密な活動であるため摘発は極めて困難であり、通常3つの段階(プレイスメント、レイヤリング、インテグレイション)を経て、最終的に合法的な金融システムに洗浄された資金を放出するプロセスと考えられています。


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主要メンバー

西川 嘉彦

エグゼクティブアドバイザー, PwC Japan有限責任監査法人

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