店頭デリバティブ取引報告

日本における店頭デリバティブ取引報告規制の改定対応について

2024年4月、世界的な動向を受けて改定された日本の店頭デリバティブ取引報告規制(取引報告規制)が施行されました。本改定では報告手法の一本化、時価・担保情報の追加、報告項目の変更・追加が行われました。

改定に基づく報告は開始されましたが、2025年4月からは商品識別子(UPI)やデルタの報告が追加されます。さらに、報告データの品質を保つためには、ガバナンス態勢の整備・運用や、国際動向を踏まえながらの継続的な対応が求められます。

PwCは金融規制に係る豊富な知見と支援実績を活かし、規制要件分析・取引報告システムの要件定義書レビュー、報告データの品質チェック、ガバナンス態勢の整備・運用など幅広い領域を支援します。

1. 日本における取引報告規制改定の概要

(1)改定の背景

2008年に発生した世界金融危機と同様の事態の再発を防止するため、2009年11月のG20ピッツバーグ・サミットでは、さまざまな店頭デリバティブに関する規制の整備が合意されました。その合意の中には、取引の透明性を高めると同時に、国際機関が報告されたデータを集計し国際的なリスクを分析することを目的とした取引報告規制の整備が含まれており、欧米において先行して導入が進みました。

しかしながら報告項目などについては法域間で乖離が発生したため、国際機関であるBIS、IOSCOなどが中心となり、当該乖離を縮小するための議論(下図参照)が進められ、規制要件の国際的調和が図られることとなりました。

この流れを受け、米国では2022年12月から、日本およびEUでは2024年4月から改定規則がそれぞれ導入されています。なお、本稿を執筆している2024年8月30日時点では、オーストラリア、シンガポール、香港、カナダでも改定作業が進行しています。

(2)改定の概要

前述の流れを受けて、2024年4月1日から施行された日本の取引報告規制の改定概要は、以下のとおりです。

a. 報告手法の一本化
従来の取引報告規制では、金融庁へ週次で直接報告する、もしくは取引情報蓄積機関(TR)経由で金融庁へ日次で報告する(TR報告)という2つの報告手法が認められていましたが、本改定によりTR報告へ一本化されました。報告時限はT+2、報告方式はXML方式となっています。

b. 時価・担保情報の追加
取引イベント(新規締結や解約など)の際に求められていた従来の報告に加えて、時価・担保に関する日次の報告が必要となりました。

c. 報告項目の変更・追加
国際的な議論を踏まえた報告項目と整合を図るため、国際的に提唱された識別子(LEI・UTI・UPI)を含む報告項目が変更または新規に追加されました。

2. 取引報告規制の今後の動向

(1)UPI・デルタ対応

日本の規制では、2025年4月よりUPIおよびデルタの報告開始が予定されており、現在業界内でコンセンサス形成に向けた議論が進められていますが、当該議論を受けて各金融機関ではシステム開発およびオペレーション態勢の整備が必要となります。UPIおよびデルタの報告は欧米では既に導入されているものの、UPIについては商慣行が各国で異なるため、実務を踏まえた商品分類を日本独自で議論しなければいけない可能性があります。

(2)データモニタリングを含むガバナンス態勢の整備・運用

膨大な報告項目を取り扱う取引報告規制においては、完全に網羅的かつ正確な報告を行うことは困難であるケースがほとんどです。そのため、データモニタリングおよび当該モニタリングにおいて発見した不正確なデータを改善するプロセスの構築・運用が重要となります。

(3)国際動向を受けた継続的な対応

前述のとおり、今般グローバルベースで行われている取引報告規制の改定は、国際的調和の確保を主な目的としています。2023年12月に米国商品先物取引委員会(CFTC)は新たな規制改定草案を公表しており、今後も改定が見込まれます。また、2024年8月1日時点では、香港金融管理局(HKMA)の取引報告規制は改正作業が最終化されていません。そのため、グローバルで活動する金融機関においては、国際的な規制・当局の動向を把握し、継続的にシステムを改修する態勢を構築する必要があります。

3. PwCの支援内容

前述のとおり、本規制においては報告開始後も継続的な対応が必要であることが見込まれます。そのためPwCでは、金融機関が取引報告規制に対応するにあたって、下記のような支援を提供しています。

a. 規制要件分析・取引報告システムの要件定義書レビュー

取引報告規制により、当局が公表する規制条文、ガイダンスや個社レベルの照会、TRから提供される技術要件および業界プラクティスに従い、商品ごとに報告項目やイベントを定義する必要があります。

PwCでは法規制への専門性を活かし、規制要件を統合的に分析することで、取引報告システムの要件定義書がこれらの情報に準拠しているか、レビューすることを支援します。

b. データ品質チェック

報告データを自主的に検証し、改善するプロセスは、規制順守という観点から非常に重要です。膨大なシステム要件の中に含まれる規制要件の誤った解釈や見落としによるエラー、業界プラクティスからの逸脱などによるエラーは、自社検証では発見されないケースが多々あります。そのため、第三者の立場から報告データを検証するアプローチは、正確性を担保するうえで有効です。

PwCは、データアナリティクスの技術・ノウハウを活かし、報告データの品質検証を支援します。

c. ガバナンス態勢の整備・運用支援

取引報告規制を順守するためには、関連するシステムの開発や、フロントからバックオフィスまでの業務フローの整備に加えて、報告データをモニタリングし、不正確なデータを発見した際に適切に社内でエスカレーションされるようガバナンス態勢の整備も必要となります。

PwCは、モニタリング手法を含むガバナンス態勢の設計、関連手続の策定などを支援します。

PwCでは金融規制対応を総合的に支援しています。詳細はこちらをご覧ください。

主要メンバー

橋本 和彦

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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荻野 創平

ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人

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中村 英史

シニアマネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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