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11月になり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者数がまた増加しています。ワクチン開発に関するニュースを頻繁に耳にするようになりましたが、あらゆる人々に接種が行き渡り、流行を食い止めるようになるまではまだ少し時間がかかりそうです。生活様式の見直しやニューノーマルが求められる中で、そのワクチンの開発を進める製薬企業も例に漏れず、いくつもの変革を迫られています。
PwCコンサルティング合同会社が2020年4月に医師を対象に行ったアンケ―ト調査よると、医薬品情報を収集する手段は、COVID-19の流行前は製薬企業のMRなどとの対面によるものが圧倒的多数でしたが、流行後は激減。代わりにウェブセミナーなどを通じて収集するようになったとの回答が2倍以上に増加しており、医師が医薬品情報取得のために利用するメインチャネルは、リアルからオンラインへシフトしていることが確認されました。一方、MRなどとのリモート面談を利用した医師は約10%にとどまっており、その後の状況推察も踏まえると、代替チャネルが伸長してきたというより、目的に適ったチャネル選択を行うことが当たり前となってきたように感じられます。
COVID-19の治療薬やワクチンの開発が望まれ、臨床開発のポートフォリオを見直さざるを得なくなった製薬企業は少なくありません。開発の優先順位が下がった医薬品についても、上市のタイミングが遅くなることでの売上減、そして患者の存在を考えると、その遅れを早急に取り戻す必要があります。つまり、臨床開発にも効率化が求められるということです。1つの解決策として、バーチャル治験があります。患者が必ずしも医療機関に通院することなく自宅でも臨床試験に参加できるため、バーチャルというよりも分散化という意味合いでDecentralized Clinical Trials(分散型臨床試験)という呼ばれ方もしますが、私は「どこでも治験」と呼びたいです。時間と空間を飛び越え、これまでの遅れを一気に取り戻す効果が期待できるからです。この「どこでも治験」を有効に活用するための議論が活発になることを期待したいと思います。
医師への情報提供のあり方、臨床研究の効率化、そしてサプライチェーンの再構築と、いずれにも共通するのは、デジタルを駆使したモデルへの発展です。その実現に際して忘れてはならないのは、進めていく側の私たち自身のマインドセットの変革が必須になるということです。デジタルの波に先んじて私たちが自身の行動変容を起こせるか否かが、生き残りの鍵になります。
堀井 俊介(Shunsuke Horii)
専門分野・担当業界
ヘルスケア/医薬・ライフサイエンス
20年以上にわたりコンサルティング業務に従事。戦略策定・業務改善・経営管理・投資ポートフォリオ管理・リスク管理・プロジェクト管理など幅広い領域を担当し、大規模プロジェクトを率いた経験を豊富に有する。近年は、大手製薬会社におけるグローバルPMI、営業生産性改善やオペレーションモデル構築などのさまざまなオペレーション改革や異業種からの新規参入企業支援関連プロジェクトのリードとして活動。
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