卒業生インタビュー

PwCで培ったファイナンス×グローバルの知見でスタートアップエコシステムに貢献 HOMMA Group, Inc. Head of FP&A 深貝 晋平 (インタビュー当時)

PwC Japanグループでキャリアを積んだ後、新たな道を切り拓いて活躍している卒業生がたくさんいます。どのようなスキルや経験が、その後の仕事に生かされているのでしょうか。卒業生という外部の視点から、PwCでの経験を振り返ってもらうとともに現在のキャリアについて語ってもらいました。

グローバル×スタートアップという軸が転職の軸に

私は2017年にPwCを退職後、株式会社メルカリに入社しました。その後、スイスの国際経営開発研究所(以下、IMD)への留学を経て、現在は米カリフォルニア州シリコンバレーに拠点を構えるスタートアップ・HOMMA Group, Inc.(以下、HOMMA)に転職し、新たな挑戦をスタートさせています。

HOMMAは米国で創業されたスタートアップですが、ファウンダーは日本人の本間毅です。本間は90年代半ばのインターネット黎明期に学生起業したスタートアップを経て、ソニー、楽天といった日本の大手企業で事業開発を担いました。2008年よりアメリカへ赴任し、楽天では執行役員としてグローバル事業戦略を担当していました。そして6年前にHOMMAを起業しています。

HOMMAは独自の建築デザインと、自社開発のスマートホーム技術を融合させたユニークなアプローチで「住宅のイノベーション」を目指すスタートアップです。米国ではこれまで多くのイノベーションが誕生してきましたが、住宅に関しては100年前のデザインと変わらず、利便性や快適さも低いままです。不動産というハードとソフトウェアを融合させることで、「未来の住生活を創造する」ということが当社のミッションです。

HOMMAはまだ社員20名ほどの小さい会社ですが、建築士、デザイナー、不動産のプロ、セールス、ソフトウェアエンジニア、ファイナンスなど、各ファンクション別に多彩なメンバーが集まっています。私自身はHead of FP&A(Financial Planning & Analysis)というポジションで、資金調達やプロジェクトファイナンス、財務会計や管理会計などファイナンス業務全体を担当しつつ、コーポレート業務も兼務しています。

IMDでMBA取得後、次の仕事を探す際にふたつの軸を意識しました。ひとつはスタートアップという軸です。メルカリで経営陣の思いに触れて働いた5年間の経験は私にとって尊いものだったからです。また可能であれば、次はよりアーリーステージのスタートアップに入社したいという気持ちを以前から抱いていました。

もうひとつは、日本市場ではなく、世界を舞台にしているという軸です。

HOMMAはアーリーステージスタートアップ×グローバル、そして日本人が米国で起業した会社というユニークな立ち位置にあります。非常に面白い掛け算になると思い入社を希望しました。

働く会社を選ぶ際には、自分自身が会社のファンになれるか否かという視点も大事にしています。PwCもメルカリも大好きでした。選考過程を通じてHOMMAのプロダクトや会社のカルチャーの魅力にも触れることができ、HOMMAもきっと好きになるという直感を抱くことができました。

PwCで学んだ「良い仕事が次の仕事を呼ぶ」という哲学

私がPwCに入社を決めた理由は、監査法人系税理士法人の中で特にグローバルに強みがあること、そして、それらの中で唯一、会計士試験後すぐに採用の道が拓けていたことです。国際税務のコンサルティング業務は会計・税務・法律等、専門的な領域を多面的に理解した上で行うため、プロフェッショナルとしての成長速度も速く、また英語を使った業務に早くから携われることも魅力でした。

2011年に入社し、金融部に配属されました。入社当初はいわゆる税務申告の仕事がメインでしたが、6年間在籍するなかでタックスマネージャーを任せていただき、終盤には主に国内外の金融機関に対する国際税務や、M&A関連のアドバイス業務を担当しました。案件としては、日本のメガバンクの海外進出や、外資系プライベートエクイティファンド、投資ファンドが日本に投資する際のアドバイスなどに携わっていました。

PwCでは数えきれないほど多くのことを学びましたが、特にメガバンクの海外進出案件は今でも忘れられません。M&Aの現場はハードなことがたくさんあり混乱しがちですが、上司のパートナーとチームが一丸となって最後の最後まで詰め切り、クライアントに対してベストなサービスを提供しました。

当時の上司は、「この目の前の仕事をベストな形で提供することが信頼の構築につながり、次の受注にもつながるから、全力で取り組む」と語っていましたが、その「良い仕事が次の仕事を呼ぶ」という哲学は、今でも私の仕事の指針のひとつになっています。

PwCで得たベースとなる会計・税務に関する知見や能力はもちろん、コミュニケーション能力やグローバルのメンバーを仕切りながらリードする経験は、どの職場でも生きています。特にディール中の高いプレッシャーとどう付き合っていくか、そのなかでお客様にどう価値を提供していくかという考え方やテクニックは、PwC時代に得ることができた貴重な財産です。

外から見たPwCの強みは、本質的な課題の理解に基づく助言力の高さ

メルカリ時代には他のプロフェッショナルファームとお付き合いがあり、PwCと他のファームの違いを肌で感じることができました。当然どのファームも一定の成果物を提供してくれますが、PwCはクライアントの悩みの背景や本質的な問題点をいち早く察知し、早いタイミングから深度あるアドバイスをすることが多いと感じました。また、ファーム内に蓄積されている過去事例や部門を超えた連携をスムーズに行うのも強みだと思います。

PwC在籍時を振り返ると、パートナーの方のコミュニケーションの取り方はとても巧みだったと感じます。クライアントの置かれている立場や環境を理解した上で、問題を解決するために実行可能なステップを丁寧に説明する姿勢から多くを学びました。

PwCで磨いた専門性と経験でスタートアップエコシステムに貢献

現在私たちは会社としてグロースフェーズに差し掛かっているところです。2022年にオレゴン州ポートランドにて18世帯からなるタウンハウス物件をローンチし、HOMMAが追求するスマートホームの理念を具現化することができました(スマートデバイスのビルトイン、センサーによる自動運転、クラウドを介したソフトウェアのアップデート、アプリでの一元管理等)。また大手デベロッパーとパートナーシップを組み、高層マンションにHOMMAのテクノロジーを導入する実証実験も進めているところです。これからは、HOMMAのテクノロジーをより多くの物件に導入し、会社を大きくグロースさせていくことが目標です。

またインドネシアをはじめ、人口や平均収入が増加傾向にあり、テクノロジーと親和性が高い若者の数が多い東南アジアの国々を中心に、ビジネスのグローバル展開を検討しています。また、当然ですが日本での事業展開も大きな可能性を秘めていると考えています。スタートアップであるため、会社のフェーズに合わせてフォーカスすることが大事ですが常にバランスを意識しながら事業機会を探っています。

スタートアップは生き残るのが本当に大変です。数年後会社がどうなっているかは誰にも分かりません。それでも自社が成長し、ミッションを実現させ、社会に貢献することを信じて、全力で目の前のことに注力したいです。

HOMMAに入ってまだ日は浅いですが、日々多くのことを学んでます。やはりグローバルな働き方をアメリカで学べるというのは大きいですし、一つ一つの意思決定が会社の未来を変えていくという手触り感も魅力です。個人の中長期的なキャリアとしても、HOMMAでの経験を通じてグローバル×スタートアップという文脈で自分の専門性を活かしながら、日本のスタートアップエコシステムに貢献していきたいと考えてます。

PwCをはじめとするプロフェッショナルファームはキャリア構築という観点で、非常に良い環境です。さまざまなプロジェクトの機会、個人の成長機会が豊富にあり、パートナーやマネージャーの方々との対話を通じて自分の能力や見識も磨くことができます。プロフェッショナルとしての道を極めていくのもいいですし、培ったスキルは将来他の仕事でもとても役に立ちます。臆することなく飛び込んで、成長に向けてチャレンジしてほしいです。

PROFILE

深貝 晋平

HOMMA Group, Inc. Head of FP&A

2011年12月に税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(現PwC税理士法人)に入所、金融部に配属。国内外の大手金融機関に対して、国際税務アドバイザリー業務を提供。同部およびM&A Taxチームのマネージャーとして、数多くのクロスボーダーM&A案件に従事。2017年7月にメルカリに入社。メルカリのIPO、新インセンティブ制度の設計、M&A/グループ内組織再編、新規事業立ち上げ、海外進出案件に従事。2023年2月にHOMMA Group, Inc.に入社。会社全体のファイナンスおよびコーポレート業務を担当。

公認会計士・税理士・スイスIMD Business School MBA。

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