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2020-10-21
PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)は、「デジタル社会に信頼を築くリーディングファーム」となることをビジョンとして掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と個々のデジタルスキル向上に取り組んでいます。
ここでは私たちの監査業務変革の取り組みや、デジタル化の成功事例や失敗を通じて得た知見を紹介します。これからデジタル化に取り組まれる企業やDX推進に行き詰まっている企業の課題解決にお役立ていただければ幸いです。
※法人名、部門名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。
PwCあらたの企画管理本部の傘下にあるAssurance Innovation & Technology部(旧監査業務変革部、以下AIT)は、デジタル社会にあるべき監査プロセスへの見直しと標準化、デジタルツールの開発と導入、デジタル人財の育成、デジタルブランド確立などを目指しています。監査とデジタルへの知見が深いメンバーで組成された同部が、デジタル化推進に向けた活動を始めて2年。当初は失敗の連続で、成果を上げるのに苦労しました。何が起こっていたのでしょうか。
PwCあらたの主たる業務である監査、すなわち公認会計士による会計監査とは、企業が開示する財務諸表の内容について、一定程度の保証を与えるものです。伝統的な監査業務は、被監査会社から入手した多くの資料について手作業で検討する、というものでした。監査法人から膨大な数の資料依頼が来て、監査対応に苦労された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
他の業界と同様に、監査業界でもデジタル化、さらには人工知能(AI)の導入が進んでいます。私たちが見据える先にはリアルタイム監査という未来があります。その世界においては、高度に標準化された業務と、人たる監査人による高度な判断とが共存しているだろう、というのが、一つの考え得る姿です。そうした未来の実現に向けて、PwCあらたは2018年にAITを立ち上げ、デジタル化を進めてきました。いえ、進めようとしてきました。そこには想像以上に高い壁と抜け落ちた部分があったのです。
当時、監査業務は多くの工程を手作業に依存していたため、一部工程を自動化するツールを開発すれば各監査チームの負担は大きく軽減されるだろう、と考えていました。そして、そういったツールを作ればチームは積極的に利用するだろう、とも。
しかし、いざツールを開発しても、現場で活用してもらうまでには時間を要しました。よいものを作れば使ってもらえる、という感覚が開発側にはあったものの、日常の業務に追われている各職員に開発したものを認知してもらうこと自体が難しかったからです。「新しいツールを作りました」とメールで紹介したところで、その他の膨大な数のメールの中に埋もれてしまいます。開発すること以上に、認知してもらう、利用してもらうことが難しく、そこを意識して手当てする必要があったのです。
さらに、開発したツール自体も、必ずしも現場で求められているものとは言い切れませんでした。開発チームには監査に携わっているメンバーが複数名いるため、現場のニーズに即したツールを開発できるだろうと私たちは考えていました。しかし、監査の形は被監査会社の数だけあります。チームによって抱えている課題は同じとは限らず、結果的に部分最適な自動化ツールが出来上がってしまっていました。
未来のためにと立ち上がり、現場を変えるために生まれた部署なのに、いつの間にか現場の声に耳を傾けることを疎かにしてしまっていたのかもしれません。現場が何を求めているのかを把握することが重要だと気付かされました。
私たちは心を新たに、現場が抱えている監査業務上の課題を徹底的に把握することにしました。全職員に対してアンケートを実施し、各部署の職員に対して個別にインタビューを行うことで、現状の把握に努めました。今の技術では無理だとしても、将来であれば解決できそうな課題についても掘り起こし、今後の検討に生かすことにしたほか、こうしたヒアリングを定期的に行って現場の声を拾い、舵取りを行っていくことにしたのです。
その上で、各現場が抱えている課題について気軽に相談できる窓口を設け、情報を吸い上げると同時に、特に多く聞かれた課題から効率化・自動化するべく、ツールの開発に着手しました。開発の際には現場の担当者と口頭でやり取りする場を設け、認識のずれが生じないよう、今でも心がけています。さらに、こうした直接のコミュニケーションの際、別のツールの紹介や効率化のための有用な情報も伝達することで、ツールの認知度を高めたり、各職員の意識向上を図ったりすることも行っています。
ツールを開発したから使ってくれ、だけではなく、各職員にこちらから歩み寄り、実際に直面する課題も解決する――。これが、私たちが失敗からたどり着いた、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進における、あるべきスタンスです。私たちの日々の活動は、デジタル化を後押しする上では微々たる貢献なのかもしれません。しかし、こうした地道な取り組みを積み重ねていくことでいつしか組織カルチャー変革の大きな波が起こり、その力を上手く利用することで未来への推進力を加速させ、デジタル社会に信頼を築くリーディングファームに近付くことができると信じています。