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2020-12-09
PwCあらた有限責任監査法人(PwCあらた)は、「デジタル社会に信頼を築くリーディングファーム」となることをビジョンとして掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と個々のデジタルスキル向上に取り組んでいます。
ここでは私たちの監査業務変革の取り組みや、デジタル化の成功事例や失敗を通じて得た知見を紹介します。これからデジタル化に取り組まれる企業やDX推進に行き詰まっている企業の課題解決にお役立ていただければ幸いです。
※法人名、部門名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。
「デジタルツールを開発したものの、当初の意図通りに成果物が作られていなかった」「成果物はイメージ通りだが、継続的な利用を促す上で必要なその後の仕様変更まで検討されておらず、使われなくなってしまった」「プロジェクトリーダーと開発チームとのコミュニケーションが上手くいかず、関与者の負担が増大してしまった」――。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上で、業務の効率化を促進するデジタルプロダクトの開発に取り組まれる企業は少なくないのではないでしょうか。しかしながらそうした現場から、よく上記のような声が聞かれます。PwCあらたは監査業務の自動化・効率化に向けたツール開発を自ら行っており、筆者はこうしたプロジェクトのリーダーを経験していますが、その過程は失敗の連続です。実際の失敗事例と、そこから得た教訓を紹介します。
ツール開発プロジェクトにおける筆者の役割は、監査の現場で開発が求められているツールと機能をリストアップし、開発に必要な資料やデータを開発チームに送付し、同チームからの質問や要望に対応する、いわば「監査現場と制作現場の橋渡し役」でした。また、開発されたツールのテストを実施し、当初の意図通りにツールが作成されていることを確かめることも役割に含まれます。
こうしたツール開発プロジェクトのリーダーを行った筆者ですが、数多くの失敗に直面しました。主な内容を下記に記します。
ツール開発プロジェクトにおいては、要望を出す現場側と実際に形にする開発側の双方に相応の負担が発生するという認識が必要です。プロジェクトチームを編成する際、当初は現場である監査チーム側はマネージャー以上がメンバーに組み込まれており、開発目標も彼らが提案、開発チームとのミーティングもマネージャー以上で行っていました。その結果、プロジェクトは機能不全を起こし、双方の負担は増加しました。マネージャー以上は実際にツールを使用する機会が限られます。そのため、開発チームに提供する資料の内容を業務上で詳細に把握する立場になく、抜け漏れが発生したのです。プロジェクト後半から、実際にツールを使用することになる現場のメンバーに関与してもらいましたが、当初よりそうしていれば、より効率がよかったことは言うまでもありません。
また、スケジュール通りに制作が進んでいるかの管理や各プロジェクトメンバーの一部に負担が偏っていないかのチェックなどにも追われました。開発チームに依頼すればおしまいではなく、工数を削減する詳細な依頼書作りや、開発側から寄せられる質問への迅速な対応など、双方の負担をできるだけ均等かつ削減するための前もっての努力が必要だったと反省しています。
当初から現場のメンバーが関与していれば……
ツールの開発の目的は、監査チームにおけるデータマネジメントや定型業務を効率的に実施できるようにし、同チームの負担を減らすことにあります。ツール完成の暁には監査チームの負担が減り、なおかつツールを反復的・継続的に使用することで、その効果を持続させる必要があります。だからこそ、実際にツールを使用する監査チームのメンバーにプロジェクトに関与してもらうことが欠かせません。実際の業務内容やデータの仕様、ツールの制約を考慮しながら、開発チームと膝を突き合わせて開発を進めることが重要です。私たちが開発目標として設定したツールのうち、完成後の使用イメージはあるものの実際の業務内容を勘案した具体的なものになっていなかったものについては、開発途中で完成を断念する結果になりました。
そもそもツールの開発の目的は何か
プロジェクトにおけるリーダーの主たる業務は、プロジェクトの進捗管理やメンバーのケア、問題点への対応です。筆者の場合、必要なデータの開発チームへの提供や開発上の質問などへの対応も行っていましたが、これにより大幅な工数増加を招いてしまったことは言うまでもありません。適切なリソース確保と役割分担の重要さを思い知らされました。
またプロジェクトリーダーが直面しがちな問題として、開発チームから技術的な制約や成果物の仕様の不具合が報告されることが想定されます。当初、開発チームとのコミュニケーション方法として質問表を用いており、定期的な進捗会議は実施していませんでした。開発チームから質問表に対応内容や依頼事項が記載されるのですが、その内容には専門用語が使用されていたり、何が問題なのか、なぜそのような質問がなされるのかの意図が読み取れなかったりするものが多く存在しました。明確なコミュニケーションの場を設けていなかったことで、これらに対応するのに非常に多くの工数が発生することとなりました。現場の対応が遅くなればプロジェクトは遅延し、開発チームのやる気をそぐことにもつながります。進捗会議やコミュニケーションの場の設定、質問表に記載された問題や追加事項についてのヒアリングとそれを受けてのスピーディーな対応こそ、開発プロジェクトにおける最も重要な点であると感じました。
リーダーが本当に目を配るべきは……