もしもあなたがツール開発プロジェクトのリーダーになったら―陥りがちな失敗と教訓【後編】

2020-12-16

PwCあらた有限責任監査法人(PwCあらた)は、「デジタル社会に信頼を築くリーディングファーム」となることをビジョンとして掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と個々のデジタルスキル向上に取り組んでいます。

ここでは私たちの監査業務変革の取り組みや、デジタル化の成功事例や失敗を通じて得た知見を紹介します。これからデジタル化に取り組まれる企業やDX推進に行き詰まっている企業の課題解決にお役立ていただければ幸いです。

※法人名、部門名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。

「デジタルツールを開発したものの、当初の意図通りに成果物が作られていなかった」「成果物はイメージ通りだが、継続的な利用を促す上で必要なその後の仕様変更まで検討されておらず、使われなくなってしまった」「プロジェクトリーダーと開発チームとのコミュニケーションが上手くいかず、関与者の負担が増大してしまった」――。

デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上で、業務の効率化を促進するデジタルプロダクトの開発に取り組まれる企業は少なくないのではないでしょうか。しかしながらそうした現場から、よく上記のような声が聞かれます。PwCあらたは監査業務の自動化・効率化に向けたツール開発を自ら行っており、筆者はこうしたプロジェクトのリーダーを経験していますが、その過程は失敗の連続です。実際の失敗事例と、そこから得た教訓を紹介します。

円滑なプロジェクト推進のためにリーダーがやるべきこと

ここからは、ツール開発プロジェクトを管理するための注意点や実際の対応方法を、1.チームの組成、2.開発目標の設定、3.進捗管理、4.ツールの納品とテスト、5.効果測定のそれぞれの段階で記載します。筆者が取り入れた方法は世の中でよく言われているアプローチではありましたが、実際に経験するまでは、その意味や効果を理解できていなかったと感じます。

円滑なプロジェクト推進のために リーダーがやるべきこと

1. プロジェクトチームの組成

前述の通り、プロジェクトチームにはリーダーのほか、完成後のツールを実際に使用するメンバーに参加してもらう必要があります。彼らは取り扱うデータに詳しく、開発チームから寄せられる質問にもスムーズに答えることができるため、チームへの参加は必須です。

気を付けるべきは、プロジェクト参画メンバーの業務負担のマネジメントです。彼らは通常の業務に加えてプロジェクトに従事する場合が多いため、プロジェクトに十分に関与できるよう、社内やチームのリソースを整備しておくことが重要です。またプロジェクトのスムーズな進行のために、それぞれの役割をあらかじめ明確にしておくことも大切です。

事前のリソース確保と役割分担が大切

2. 開発目標の設定

開発するツールは反復的かつ継続的に使用されるものであればあるほど、その効果は高まることになります。これを実現するためには、プロジェクトが始まる段階から実際に業務を行うメンバーに関与してもらい、その仕様を設定する必要があります。これは、プロジェクト進行中の仕様変更による時間のロスを防ぐために非常に重要です。

ツールを実際に使用する人間を巻き込む

3. 進捗管理

ツール開発においては、開発チームからデータに関する多数の質問や再提出が求められることが想定されます。

また、開発が進む段階で、成果物であるツールの仕様変更といった重大な問題が発生することがあります。こうした事態は当初のスケジュールを大きく狂わせる可能性があります。リーダーはプロジェクトのリスケジュールやリソースの再配分など全体的な調整を行うと共に、報告される問題の原因を分析し、一時的な仕様変更で解決を図るのではなく、その後のツール運用に支障を来さないかも検討することとなります。開発チームとの定期的な進捗会議の設定や現場での密なコミュニケーションを通して、状況を適時に把握し、問題点や対応策を話し合う必要があります。

開発チームとの密な連携が欠かせない

4. ツール納品と作業テスト

ツールのドラフトが作成され、実際に業務に適用できるかをテストする段階では、当初の開発の意図を満たしているか、網羅的にデータが取り込まれた上でアウトプットがなされているかなどを確認する必要があります。その際にテストを行うのはリーダーだけでなく、現場でツールを使用するメンバーであることが重要です。リーダーの役割はメンバーに改善点の有無を確認し、開発チームに追加の依頼や修正を迅速に依頼することです。

検証するのは現場のメンバー

5. 効果測定

開発したツールを用いて実際に業務を実施し、どれくらい効率化したのかを分析することも重要な業務です。効果測定を通じて、チームのリソースの再配分やローテーションを検討し、より効率的にチーム運営がなされるように改善に努めるのがリーダーの役割です。また、効果測定の結果を開発チームと共有してツールのブラッシュアップを図り、ツールを他の業務にも流用できるかを検討することも求められます。

筆者が実際に開発プロジェクトのリーダーとなり、最も強く感じたのは、プロジェクトの成否はリーダーの手腕にかかっているということです。筆者が有効だと実感した対応策が必ずしも正解とは限りませんが、この経験が、これからツール開発のプロジェクトに携わられる皆様の一助になれば幸いです。

PDCAを回し続けるのがリーダーの役割

執筆者

坂井 嘉兵衛

シニアマネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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