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COOやオペレーションリーダーが取り組むべきこと PwCパルスサーベイに基づく最新の知見
本レポートでは、世界の大企業の経営幹部673人を対象に、経営の戦略や優先順位を調査しました。COOはAIの活用拡大に強いプレッシャーを感じており、関連する人材の採用・育成に注力する一方で、業務に追われ将来のビジョン策定に注力できていない状況が明らかになりました。
自動運転領域において、生成AIを活用したテクノロジーが出現し注目を集めています。米国や中国を中心として自動運転レベル4(L4)を活用した有償サービスが提供され、実証実験から実用化へと既に移行を始めています。自動運転サービスの拡充、品質向上には最新のテクノロジーをうまく取り入れることが必要不可欠であり、生成AIもその一つとして注目されています。
生成AIを活用した自動運転技術は自動運転2.0(Autonomous Vehicle 2.0、以下AV2.0)と定義され、従来の自動運転システムと比較すると多様な走行環境への適応性が高まり、また開発期間の短縮が期待されます。一方、AV2.0には課題が多く、実用化にはまだ時間を要すると考えられています。
生成AIは段階的に適用され、当面は従来の自動運転技術と生成AIを融合させ、それぞれの長所を活用する形での自動運転技術の開発が進むことが想定されます。
現在、自動運転に関する規制・技術・社会・経済の成熟が進んだことにより、世界各地で自動運転サービスの実用化が進んでいます。特に米国・中国においては、自動運転タクシーによる旅客運送や自動運転トラックによる貨物輸送が展開されており、提供地域の拡大や輸送物の制約の緩和など、サービス内容の充実が図られています。日本や欧州においても、米国・中国に追随する形で実証実験、実用化の段階へと移行しています。加えて、生成AIなどの新技術の発展による新規プレイヤー参入や投資の拡大など、一層成長することが見込まれます。
しかしながら、米国・中国といった自動運転先進国においても、サービス展開地域は一部の州や都市に限定されており、サービスの規模やエリアの拡大に向けた対応を迫られています。
自動運転サービスの拡大には、従来の自動運転システムの課題の1つである拡張性の改善が必要となってきます。拡張性とは、過剰な資金や時間を費やすことなく、既に一地域でローンチしている自動運転システムを用いて他地域にて同様のサービスを展開できること、を指します。現在主流となっている自動運転のシステム開発は、運転環境下にて自動運転システムの判断基準となる走行ルールをエンジニアが手作業で定義する、「ルールベース」のアプローチが採られています。ルールベースのアプローチでは、運転環境下で起こり得るあらゆる走行シーンに対して詳細な走行ルールを定義する必要があります。図表1に示すような、発生確率が低く、想定が困難な「エッジケース」までを含めた網羅的な走行ルールの定義に膨大な資金・時間を必要とするため、拡張性が低くサービス展開地域は一部に限定されていました。
図表1:エッジケースのイメージ図
自動運転サービスの実用化が各地域で進行する中、近年急速に発展するAI技術を活用したAV2.0というテクノロジーに注目が集まっています。AV2.0の出現により、従来の自動運転システムはAV1.0として区別されるようになりました。AV2.0では、生成AIがシステムの中核を担い、従来の自動運転システムの構築において人間の手が関与していた工程の大部分を生成AIが代替します。
自動運転システムは人間ドライバーの運転と同様、交通環境において、「認知」「判断」「操作」のタスクを繰り返しながら、運転行動を行っています(図表2)。
図表2:人間ドライバーの運転行動
AV1.0は、「判断」を「予測」「計画」に分解した上で、各機能(「認知」「予測」「計画」「操作」)で自動運転システムを構成しています。機能ごとに「ルールベース」により定義されているため、個々の運転シーンに対する安全証明の容易性(システムの解釈性)が高いといえます。一方、新たな走行エリアにサービスを拡大する際には、発生確率の低いエッジケースに網羅的に対応するために膨大な開発期間を要します。
一方、AV2.0は、「認知」から「操作」に係る一連の運転タスクを、生成AIを活用した単一のモデル(End to Endモデル、以下E2E)で構築しています。AV2.0は、センサーを用いて得られる車外の交通情報をE2Eで処理し、直接「操作」の指示として出力するため、「認知」から「操作」までを相互作用させる人間の運転行動に近いプロセスとなります。。そのため、人間ドライバーによる走行と極めて近い円滑な走行を再現します。また、AV2.0ではE2Eに生成AIを活用しており、運転データセット(運転時の情報に関する学習用データ)を用いた自律学習によりシステム開発が行われます。。また、エッジケースにおいても走行ルールを事前に定義する必要がなく、自律的に運転行動を行うことができます。AV1.0とAV2.0の違いを比較したのが図表3です。
図表3:AV1.0とAV2.0の構成
図表4に示すようにAV1.0は、自動運転時のあらゆる走行シーンに対しエンジニアが事前に走行ルールを定義し、そのルールに基づいて運転行動を行います。また、実際に走行させることでモデルの性能を検証し、修正が必要な箇所についてエンジニアからフィードバックを受けてモデルは学習します。
AV2.0では、多様な運転データを用いて一般的な運転法則を学習させることで、人間が走行ルールを定義することなく自律的に運転行動を実施することが可能となります。また、生成AIを活用して構築した仮想空間にてモデルをテストすることで、モデルは仮想空間における自身の走行結果を基に自律的に運転法則を修正します。これにより、エンジニアの関与が大幅に減るため、自動運転サービスのエリア拡大時における開発期間の短縮が可能となります。
図表4:AV1.0とAV2.0における判断方法と学習方法
一方、現時点ではAV1.0を取り入れた企業が自動運転サービスの実用化に成功しています。AV2.0の実用化には、①安全性、②コスト、③技術に関する課題への対処が必要になります(図表5)。
①安全性:AV2.0では生成AIを活用することから、ハルシネーション(AIが事実に基づかない情報を生成する現象)などのエラーを原因としたシステムの誤判断が想定されるため、誤判断の防止やその対応を考慮する必要があります。また、「認知」から「操作」までの一連のプロセスがブラックボックス化されており、自動運転車両の運転挙動に対する説明が困難になるため、システムの解釈性が低くなります。その結果、規制当局や交通参加者に対し車両の安全性を証明することが難しく、走行許認可取得が難しくなる恐れがあります。
②コスト:モデル学習のため、多様な運転データセットの収集とデータ処理基盤を構築する必要があることから莫大な開発コストが生じます。サービスのローンチ後は、それらのデータを継続的に処理するためのクラウド使用料など、運用コストの確保についても検討する必要があります。
③技術:生成AIを活用したモデルを円滑に機能させることのできる車載用チップのための高性能半導体が現在量産可能な段階になく、半導体技術の進展が求められます。また、サービスのスケール化を見据えた際に、フリートの拡大に伴う計算量の大幅な増加が想定されるため、計算リソースの制限を考慮した省電力化が求められます。
図表5:AV2.0実用化に向けたポイント
AV2.0は、人間ドライバーと極めて近いレベルの自動運転の実現が期待されるテクノロジーであり、自動運転領域に大きなインパクトを与える可能性があります。一方、AV2.0の実現には上記の課題に対処する必要があり、実用化には時間を要することが想定されます。
AV2.0はAV1.0と比べ拡張性に強みを有しますが、実用化に向けた課題が多く存在します。足元の動きとしては、段階的に生成AIが活用され始める形で自動運転技術の進化が進むことが考えられます。その1つの方向性として、AV1.0とAV2.0を併用するハイブリッド型モデルの登場が挙げられます(図表6)。
図表6:AV1.0とAV2.0のハイブリッド型モデル
ハイブリッド型モデルでは、AV1.0では対応が難しいエッジケースなどの例外的な走行シーンにおいてAV2.0を活用することで、AV1.0と比較し拡張性を向上させることができます。また、AV2.0を限定された走行シーンでの活用に留めることで、AV2.0におけるリスクを低減させることが可能です。初期的にはAV1.0を補助する形でAV2.0が活用されますが、技術進歩に伴いAV2.0の活用シーンが増加することで、ハイブリッド型モデルはより高い拡張性を発揮します。
自動運転システムにて生成AIの活用が段階的に進むことが予想される一方、運転時の意思決定を100%生成AIに依存することにはリスクが伴います。AV2.0の実用化のためには、生成AIにおける安全性の課題、特に解釈性の問題の解決が重要になります。解釈性の問題が解決されない限りは、エンジニアにより事前に定義された走行ルールの活用や人間による監視など、人間による判断が部分的に介在し続けることが想定されます。
自動運転は生成AIの利活用領域としても大いに期待されており、今後さらなる拡大が見込まれます。自動運転市場への参入を検討する際には、ローンチするサービスの内容・特性に合ったステークホルダーの適切な選定と、各ステークホルダーとの密接な連携が重要になります。
サービス展開にあたり導入する技術を選定する際にも、AV1.0とAV2.0はどちらにも強み・弱みがあるため、導入を検討する自動運転サービスの規模や形態に鑑み、最適な技術を選択することが求められます。
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