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PwCの調査によると、生成AI(人工知能)の社内および社外における活用に着手している企業、または活用を検討している企業のうち約4分の1が、数億から数十億円規模の予算投下を計画しています*1。企業がAIを活用した画期的なビジネスを展開するためには、今後のAI法規制動向を見越した対応が必要です。AIによるさまざまなリスクへの懸念から、グローバルで法規制が強化されていくことが確実なためです。
企業内でAI利活用を推進するリーダーが世界の法規制動向を把握するためには、G7サミット(主要7カ国首脳会議)で合意された「広島AIプロセス」に関連する文書の内容を理解することが効率的と言えます。本稿では、2023年12月に公開された広島AIプロセス関連文書の概要を解説するとともに、日本企業への示唆を提示します。
広島AIプロセスとは、G7の関係閣僚が中心となり、AIの活用や開発、規制に関する国際的なルール作りを推進するために、2023年5月のG7広島サミットで立ち上がった議論の枠組みです。AIは、創造性や革新性を高める可能性がある一方で、事実と異なる情報の流布や著作権侵害などのリスクも伴うため、その安全性や信頼性を確保するためのガバナンスが求められています。特に生成AIは経済および社会に対する影響力が大きく、G7が一致して切迫感をもって対応すべき課題としています。
そして2023年12月、G7は広島AIプロセスの成果として、以下の文書を策定しました*2。
これらの文書の中には「枠組み(Framework)」があり、下位文書として開発者から利用者まで全てのAI関係者が守るべき責務の概要を示した「指針(Principle)」と、開発者向けに責務をより具体化した「規範(Code of Conduct)*3」が存在します。また、補完文書としてOECDレポート「G7 Hiroshima Process on Generative Artificial Intelligence(AI)*4」と、18カ国で合意した「セキュアAIシステム開発ガイドライン*5」があります。
「広島AIプロセス包括的政策枠組み」は、安全、安心で信頼できるAIを世界に普及させることを目的として策定されました。この枠組みには以下の4つの要素が含まれます。
「全てのAI関係者向けの国際指針」は、一般的な利用者と開発企業の両方を対象とした指針です。当初は開発企業だけを対象に11項目が定められていましたが、利用者に情報共有を求める要件が追加され、最終的には全12項目が示されました。
「高度なAIシステムを開発する組織向けの国際行動規範」は、AIを活用した画期的なビジネスを展開しようとする組織に向けた手引きです。AI開発企業を対象とした11項目に対して、詳細な対策例が記載されています。
広島AIプロセス関連文書に基づき、今後は各国・地域が詳細な法規制やガイドラインを整備していくこととなります。日本では、各省庁が分野ごとに策定してきたAIガイドラインを1つにまとめ、統合ガイドラインとして整備する取り組みが進行中です。一方、米国ではAIの安全性に関する大統領令に基づき、新しい基準が検討されています。EUは2024年にAI規則案を採択する予定であり、2026年の施行に向けて具体的な検討が始まります。中国は2023年の国家立法計画*7に「人工知能法」の制定を盛り込んでおり、個別アルゴリズム規制*8から包括的な規制を目指しています。
国際的な視点では、OECDはAI原則を見直し、新たな課題や技術の進展に対応するための枠組みを整備しています。また、G7では2024年にイタリアが議長国を務め、引き続きAIに関する議論を行い、新興国へ拡大させる見通しです。今後のAI安全サミット(AI Safety Summit)は、韓国とフランスで開催予定であり、産官学での活発な議論が期待されています。
このように、今後もAI規制に関する国際的な動きが加速する見込みであり、幅広い視点で注視する必要があります。
今後のAIに関する法規制がより一層整備されることを見越し、AIを活用してビジネスを展開する日本のAI開発企業は、以下の対策を検討することが推奨されます。
このように、国際的なAI法規制動向を把握するためには「広島AIプロセス」に関連する文書が非常に参考になります。日本国内においても、今後AI法規制の策定や施行が検討されていますが、これらの文書がベースになります。AIシステムに関する審査制度や認証制度が強化された場合、企業は多大なリソースを投資して対応しなければなりません。そのために、今後のAIの法規制整備を見越した対応が必要です。
*1 PwCコンサルティング、2023、生成AIに関する実態調査2023秋、 2023/12/7閲覧、
https://www.pwc.com/jp/ja/press-room/generative-ai-survey2023_autumn231207.html
*2 総務省、2023、G7デジタル・技術大臣会合の開催結果、2023/12/7閲覧、
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin06_02000283.html
*3 外務省、2023、広島AIプロセスに関するG7首脳声明、2023/12/7閲覧、
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page5_000483.html
*4 OECD、2023、OECD G7 Hiroshima Process on Generative Artificial Intelligence (AI)、2023/12/7閲覧、
https://www.oecd-ilibrary.org/science-and-technology/g7-hiroshima-process-on-generative-artificial-intelligence-ai_bf3c0c60-en
*5 内閣府、2023、セキュアAIシステム開発ガイドラインについて、2023/12/7閲覧、
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20231128ai.html
*6 Global Partnership on AIの略称
*7 中国国务院、2023、国务院2023年度立法工作计划的通知、2023/12/8閲覧、
https://www.gov.cn/zhengce/content/202306/content_6884925.htm
*8 PwCコンサルティング、2023、中国におけるAI関連規制、2023/12/8閲覧、
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/awareness-cyber-security/generative-ai-regulation05.html
*9 PwCコンサルティング、2023、NIST「AIリスクマネジメントフレームワーク(AI RMF)」の解説、2023/12/7閲覧、
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/awareness-cyber-security/generative-ai-regulation04.html
*10 Originator Profile 技術研究組合、2023、2023/12/7閲覧、
https://originator-profile.org/ja-JP/