
2040年 未来シナリオ―「望ましい未来」をつくる技術戦略より(7)「予測ではなく、描き、実現する未来を」
未来に登場する個々の技術や個別の事象は、時として実現しなかったり、別のものに置き換わったりする可能性があります。しかし、私たちが伝えたかったことは、「未来を予測し、当てにいく」ことではなく、「望ましい未来を描き、実現していくこと」にあります。
2021-07-02
VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性、の頭文字を組み合わせた造語で、社会やビジネスを取り巻く環境が劇的に変化し、不確実で予測困難な状況を表す)といわれる現代、そして未来は、どのように形づくられるのでしょうか。
過去の事実や、そこから導き出される傾向などから、現在の延長線上にある未来を予測するということはこれまで広く行われてきました。そして、私たちはこれまでの経験に基づいて、未来の予測を試みてきました。しかし、多発する自然災害や感染症の流行などにより、これまでの環境は一変しつつあります。こうしたVUCAと表現される時代において、社会の在り方や個人の価値観は絶え間なく変化し続け、現在を起点とした将来予想は困難を極めます。
また、世界中で生まれ続けるスタートアップ、新たな技術および特許、大手企業の革新的な取り組みにより、遠くかなたにあるはずだった壮大な未来が、ある日、突然に実現可能かつ現実的な未来に落とし込まれるという現象も見られるようになりました。最近では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした急速なデジタル化がその象徴的な例といえるでしょう。
この変化は、永続的なものでしょうか。未来を見通すためには、時代の潮流を読んでさえいれば良いのでしょうか。
人が人として存在する限り、未来はより望ましい形に変えられます。私たちは社会課題から把握したメガトレンドをもとに予測するというアプローチと、今後登場が期待されている技術を起点にしたアプローチを掛け合わせることで2030年から2040年頃の未来を検討することにしました。それにより、可変要素がある前提で未来のシナリオを描くことができると考えたのです。
将来の定量的な見通しの確からしさは、人口の増加、エネルギーの増加といった需要に基づき、ある程度予測可能です。その前提は、さまざまなところが出てきますが、価値観、技術の使い方、技術から見た生活の変化は、一方向ではなく他との双方向の結びつきによって紡がれるものであると考えます。
PwCコンサルティングは、このようなコンセプトに基づき、12の未来像を描き、この12の未来それぞれに紐づく105の技術の展望についてまとめた書籍『「望ましい未来」をつくる技術戦略』を発刊しました。
本コラムシリーズでは、同書からエッセンスを抽出し、望ましい未来の在り方の一編を紹介します。文中では、読者の以下のような問いに答えることを企図しています。
これらへの回答を通して、未来を見通し、導かれるいくつものシナリオから次の一手を見定め、迅速に行動を起こせるヒントと幅広い可能性を読者に提示できればと考えています。私たちが紹介する未来は、数ある視点の一つです。ベースとなる世界観を見ながら、これから先に待つ、より望ましい未来を一緒につくっていきましょう。
『「望ましい未来」をつくる技術戦略 社会課題の解決に貢献する有望技術105 望ましい2040年へのシナリオ』(日経BP刊)では、2040年をターゲットとした「12の望ましい未来」を描くとともに、社会課題の解決に貢献し得る、有望な105の技術を抽出し、技術解説や研究の動向を示したうえで、生み出す市場、その規模、市場化の課題を分析しています。
未来に登場する個々の技術や個別の事象は、時として実現しなかったり、別のものに置き換わったりする可能性があります。しかし、私たちが伝えたかったことは、「未来を予測し、当てにいく」ことではなく、「望ましい未来を描き、実現していくこと」にあります。
教育の分野にフォーカスし、望ましい未来とそれを実現する技術を考察します。
街づくり・モビリティの分野にフォーカスし、望ましい未来とそれを実現する技術を考察します。
エネルギーの分野にフォーカスし、望ましい未来とそれを実現する技術を考察します。
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PwCは、市場をリードする調査やデータ、専門的な分析を用いて、ビジネスに影響を及ぼす要因を特定します。グローバルのマクロトレンドや業界固有のパラダイムシフトを検証し、変化を生み出す最新のテクノロジーツールを特定して、クライアントが豊かな未来をつくり出せるよう支援します。
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