{{item.title}}
{{item.text}}
{{item.title}}
{{item.text}}
PwC Japanグループは2023年12月8日、メディア関係者を対象に、「期待の見直しと成長への備え―グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック 2023―」と題したセミナーを開催しました。当日は社外からも登壇者をお招きし、業界全体の動向やゲーム業界に関する最新トレンドと課題について講演しました。本連載では3回にわたり、その様子をご紹介していきます。
当日の様子を振り返る本連載の第2回からは、エンタテイメント&メディア業界の中でも“ゲーム”に焦点を当てます。PwCコンサルティング シニアマネージャーの藤島太郎が、株式会社バンダイナムコエンターテインメントCX戦略室デジタルテクノロジー部ゼネラルマネージャー田村雄也氏とともに、「グローバル エンタテイメント & メディア アウトルック」のデータから見るゲーム市場のトレンドについて解説する様子をご紹介します。
本セミナーの採録動画はこちらからご覧いただけます。
※法人名、役職、内容などは2023年12月時点のものです。
田村 雄也 氏
株式会社バンダイナムコエンターテインメント
CX戦略室 デジタルテクノロジー部 ゼネラルマネージャー
総合ITベンダーにてクラウド黎明期のサービス開発を経て、2007年にバンダイナムコグループに参画。
その後は一貫して事業系IT部門に従事し、コンテンツ提供対象のデバイスの変化、デジタルテクノロジーの進化の速さに対応しながら、エンターテインメント分野でのインフラを横断的にマネジメント。
近年ではグループ統合データ基盤を設計/構築し、展開中。
藤島:
「グローバル エンタテイメント & メディア アウトルック」ではビデオゲーム・eスポーツを合わせてゲーム市場と定義しています。
2018年からの毎年の変化を見ると、ビデオゲーム・eスポーツ市場規模は高水準の成長率で伸びているのが分かります(図表1)。2022年~2027年のCAGR(年平均成長率)は8.0%を見込んでおり、2022年に2,145億ドルであった総収益が2027年には3,146億ドルの収益を達成すると予想しています。
収益を個人消費と広告の2つに分けて見ると、特に伸びているのはゲーム広告で、14.1%のCAGRで市場全体の成長を牽引していると言えます。
北米、欧州、アジア、中東・アフリカ、中東欧、南米の主要6地域間で市場規模とCAGRを比較してみると、アジア地域が市場規模、成長率ともに北米を超えて最大の市場です(図表2)。また、CAGRに注目すると、南米が最大となっており、注目市場といえます。今後最も成長が見込まれている地域であり、中東・アフリカの市場規模を近々抜くかもしれません。
2022年時点の国別市場規模で上位5カ国を抽出すると、上位から中国、米国、日本、韓国、英国と並びます(図表3)。その推移を見ると、2020年から2021年にかけて中国が米国を逆転し、世界最大の市場となったことがうかがえます。この逆転はゲーム市場における最も大きなターニングポイントの1つであると考えられますが、実際のビジネスの観点から中国・米国のマーケットに対する田村さんのお考えを聞かせてください。
田村:
近年、中国のIP(知的財産)を生み出す力、IPの受容性が非常に高まってきていると感じます。一方で、中国国内の規制など難しい事情もあり、力をつけてきた中国企業が中国国内でリリースできない、という状況から、日本を含む他の国で展開するというケースが非常に増えてきています。こうした状況下で、高い品質を実現できる中国企業と開発パートナーとしてのより良いパートナーシップを築いていくことが重要になってきています。
米国についても、中国とはまた違った形でIPが浸透してきているなと思っています。特定のジャンルではあるものの、いままで浸透していなかったIPが米国市場でも受け入れられています。これはゲームのみならず、トイホビーの分野でも同様です。
藤島:
中国と米国、それぞれの事情を加味しつつ、それぞれに適したパートナーシップが必要ということですね。
国ごとの違いについてもう少し掘り下げましょう。ビデオゲーム市場のみに焦点をあて、先ほどと同じ5カ国における市場規模をコンソールゲーム・PCゲーム・ブラウザーゲーム・アプリ内広告・アプリゲームというセグメント別で分析すると、中国・米国・日本についてはアプリゲーム・アプリ内広告が高い比率を占める一方で、韓国ではPCゲーム、英国ではコンソールゲームが高いという特徴が見えてきます(図表4)。このようにセグメント別の収益比率が国ごとに異なる背景には、どのような理由があるとお考えでしょうか。
田村:
日本でアプリゲームの比率がとても高いのは、通勤電車の中でアプリゲームをするなど隙間時間にスマートフォンを触ることができる環境であることが要因だと思います。一方、米国もアプリゲームの割合が高いものの、日本と違って車通勤の社会である、歩きながらスマートフォンを触る環境ではないなどの理由で、日本ほどアプリゲームの割合は高くならないのではないでしょうか。
藤島:
国や地域によって、ゲーム文化やゲームを取り巻く環境・生活様式の違いが、セグメント別の収益比率の違いを生み出しているということですね。では、こうした違いがあることを前提に、日本企業はどのようなビジネス戦略をとる必要があるのでしょうか。
田村:
これらのセグメントの中で特徴的なのはアプリ内広告の比率が上昇してきている点です。これにはハイパーカジュアルゲームの台頭が大きく影響していると思われます。ハイパーカジュアルゲームとは、簡単で直感的な内容やシンプルなビジュアルのゲームです。そのビジネスモデルは、広告で獲得したユーザーに対し手軽にサクセス体験を与えて継続率を高め、アプリ内広告を見ることでゲームの続きをプレイ可能とするなど獲得費用以上の収益を広告から得るというものです。直感的なため言語もあまり必要とせず、世界中からとにかく人数を集めることで収益が増加していきます。
一方で、日本企業の強みはIPを活用したビジネスにあると考えています。バンダイナムコエンターテインメントでも、ユーザーの好むIPを、最適なタイミング・商材・地域で展開できるように、IPを軸としたさまざまな戦略をとっています。ハイパーカジュアルゲームとは異なり、IPが好きなユーザーに刺さるコンテンツを、いかに高い品質で提供できるかという戦略で勝負している状況ですね。IPの人気度は地域によって異なるため、国・地域ごとのIP浸透度を見極めることが重要です。
藤島:
ありがとうございます。今後もゲーム市場の趨勢が変動する中、ゲーム関連各社のビジネス戦略も変わっていくかと思います。PwCグループとしても、各国・地域の特徴とともに、そうしたビジネス戦略の変化に注目していきたいと思います。
次回は、データから明らかになったゲーム市場のトレンドを踏まえて、エンタテイメント & メディア業界におけるゲームの位置づけの変化や、ゲーム業界の今後と検討すべき論点について考察していく様子をご紹介します。
PwC Japanグループが2023年12月に開催したメディア向けセミナー「グローバル エンタテイメント&メディアアウトルック 2023ー期待の見直しと成長への備えー」の様子を動画でお届けします。
Playback of this video is not currently available