
シリーズ「価値創造に向けたサステナビリティデータガバナンスの取り組み」 第1回:サステナビリティ情報の開示により重要性が増すデータガバナンス・データマネジメント
企業には財務的な成果を追求するだけでなく、社会的責任を果たすことが求められています。重要性が増すサステナビリティ情報の活用と開示おいて、不可欠となるのがデータガバナンスです。本コラムでは情報活用と開示の課題、その対処法について解説します。
PwCが定義する「広義のサーキュラー化」すなわち「採取と拡散の極小化」をビジネスにおいて実践するために押さえておくべき未来トレンド6つのうち、本コラムでは「キーワードは『リジェネラティブ』」「ASEANの成長を取り込む」の二つを紹介します。
リジェネラティブとは「再生可能」という意味です。地球環境は、自然の力で再生可能な可逆的要素(植物や生態系の営み)と、再生に数千から数億年かかるため人間の時間軸では実質的に不可逆な要素(鉱物資源など)とで成り立っています。人間がこれまで経済活動を通じて積み重ねてきた「採取」と「拡散」によって、不可逆な影響が急速に拡大したことにより、地球の再生能力の多くが限界を超えてしまっています。産業革命以前は、大気中に放出されたCO2は森林や海がゆっくりと吸収し、もとの大気の状態に戻っていきましたが、現代のように人間の経済活動によって大量のCO2が放出され続けると、かつてのように自然の能力では吸収しきれません。
サーキュラービジネスとは、地球の再生能力の限界を理解し、その範囲内で経済活動をすることです。これを企業の活動に落とし込むと、「不可逆な要素の採取・拡散を最小化し、再生可能な要素に置き換えていく」ということになります。そのように考えると、今後は、エネルギーや食品に限らず、すべての産業でリジェネラティブがキーワードになっていくはずです。リジェネラティブというと「市場が小さく、スケールしない」イメージがありますが、すべての産業に該当すると考えると、その先に広がる市場は巨大であるといえるでしょう。
日本企業にとって、採取と拡散を最小化しつつ、かつ、ビジネスチャンスの大きな地域の一つは、欧州でも、北米でもなく、ASEANでしょう。日本企業は欧州でのルールメイキングに入り込めておらず、米国企業のように成長領域に一気に投資し、スピーディに事業化を進めていく推進力に欠けています。他方、ASEAN地域への市場参入という点では、現地企業との関係性でも、欧州や北米の企業に比べて日本企業に一定の優位性があると考えられます。また、日本とASEANでは企業環境の類似点も多く、サステナビリティをめぐる課題やソリューションで互いに利害が一致する部分も多くあります。互いに手を取り合ってルールメイキングをしていける可能性が高いと言えます。
さらに、日本経済の大きな成長が望めない中、ASEAN市場の成長ポテンシャルは魅力的です。経済成長率は日本の2.5倍以上あり、2029年にASEANのGDPは日本の2倍を超えると予測されています(図表①)。当然、サステナビリティ関連の市場も大きく、ASEAN市場の成長を取り込めるように関係を強化していくことが、日本企業が持続的に成長できるかどうかの分かれ道になると言ってもよいでしょう。
今後、大きな経済成長が見込まれるASEANには、より多くのエネルギー、資源、食料が必要であり、何も対策を講じなければ経済成長に伴って現状より何倍もの大量のゴミも発生すると予想されます。地球環境が限界を迎える中、従来と同じような「大量採取・大量拡散」で経済成長していくことは、ASEANの国々も望んではいないうえ、地球環境を考えれば絶対に避けなければなりません。求められるのは、採取と拡散を最小化したサステナブルな経済成長であり、その核となるのがサーキュラー化なのです。
サーキュラーエコノミーの基本的概念として「クローズドループ」と呼ばれるものがあります。消費された製品や廃棄物を新たな資源と捉え、そこから再び製品を生み出す流れが「閉じた輪」に見えることからこの名がつけられており、クローズドループは地球環境に極めて大きな貢献を果たすと考えられています。
欧州では今、脱炭素の次にサーキュラーエコノミーが注目を集め、法整備も含め、取り組みが進められています。しかし、世界の工業製品の原材料調達の主要なループは、ASEANから始まり、ASEANで終わっています。ASEANでループを閉じなければ、真の意味で、世界レベルでのサーキュラーエコノミーは達成できません。また現在、中国やシンガポールなどの企業も、ASEANのサステナビリティ市場に急速に進出しつつあります。この重要市場に対して、日本企業は採取と拡散を最小化した新しいサプライチェーンをこの地域でいち早くつくり上げ、サステナブル成長産業の育成と市場の確保を急ぐ必要があるのです。
次のコラムでも具体的なサーキュラービジネスを考えるにあたって押さえるべきトレンドをご紹介します。
なお、本コラムの内容の詳細については、2024年7月に発売の書籍『必然としてのサーキュラービジネス「利益」と「環境」を両立させる究極のSX』をご参照ください。
企業には財務的な成果を追求するだけでなく、社会的責任を果たすことが求められています。重要性が増すサステナビリティ情報の活用と開示おいて、不可欠となるのがデータガバナンスです。本コラムでは情報活用と開示の課題、その対処法について解説します。
2024年3月期の有価証券報告書における「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」「男女間賃金差異」の3指標を開示している企業を対象として、開示状況の調査・分析を行いました。開示範囲、開示期間、開示内容や業種別傾向などについて解説します。
PwCが定義する「広義のサーキュラー化」すなわち「採取と拡散の極小化」をビジネスにおいて実践するために押さえておくべき未来トレンド六つのうち、 「キーワードは『リジェネラティブ』」「ASEANの成長を取り込む」の二つを紹介します。
PwCが定義する「広義のサーキュラー化」すなわち「採取と拡散の極小化」をビジネスにおいて実践するために押さえておくべき未来トレンド六つのうち、末来のビジネスを考えるうえで重要となる「バリューチェーンの改革者になる」「システミックチェンジを起こす」の二つを紹介します。
PwC Japan有限責任監査法人は4月11日(金)より、表題のセミナーをライブ配信します。
本レポートでは、世界の大企業の経営幹部673人を対象に、経営の戦略や優先順位を調査しました。COOはAIの活用拡大に強いプレッシャーを感じており、関連する人材の採用・育成に注力する一方で、業務に追われ将来のビジョン策定に注力できていない状況が明らかになりました。
日本の保険会社は競争力を維持し、グローバルに成長するために、変革を続けなければなりません。本稿では、今日の課題を乗り越えながら自ら変革しようとする日本の保険会社の2025年における必須事項のトップ10について解説します。
サステナビリティ情報の開示への要求が国内外で高まっています。本書籍では、国内外のサステナビリティ第三者保証の最新情報を踏まえ、サステナビリティ報告と保証に対する実務対応について解説します。(中央経済社/2025年3月)