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2022-07-05
気候変動対策は、世界共通の課題として日々注目度が高まっています。日本では、政府が2050年までに温室効果ガスの排出を全体として実質ゼロにするカーボンニュートラルを実現すること、2030年度に温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減することを宣言し、脱炭素化に向けた積極的な取り組みを表明しています。
2050年のカーボンニュートラル実現のために、地方自治体には地域循環共生圏の考え方に基づいた地域の脱炭素化と経済活性化の両立が求められています。
また、2021年の地球温暖化対策推進法の改正に伴い、地方自治体は地方公共団体実行計画を策定し、複数のステークホルダーと連携して地域の脱炭素化を積極的に推進することが義務化されました。
地域の脱炭素化を実際に推進するには、地方自治体が自らの地域特性を把握し、これに応じた取り組みを実施し、事業者、市民など、地域のステークホルダーと密接に協働することが不可欠です。
本コラムでは、地方自治体の気候変動政策の担当者へのインタビュー結果などをもとに、①地方自治体の地域特性を反映した打ち手の明確化、②施策の推進に向けたデータ活用の有用性、③持続的な地域脱炭素の取り組みを実現するためのインセンティブスキームの在り方について、全3回にわたり議論します。今後の地域脱炭素のさらなる加速化に向けた検討の一助になれば幸いです。
第1回では、地域の脱炭素化を推進するには地域特性を把握することが重要であり、その特性に応じて推進方針を定め、取り組みを推進することが重要であること、第2回では、推進上の5つの論点(データ収集、インセンティブ設計、推進体制、自治体連携、金融機関連携)について検討し、具体的な施策を展開していくことが重要であると述べました。
第3回では、地域の脱炭素化を持続的な取り組みとするためのインセンティブスキームの在り方と取り組むべきアクションについて議論します。
地域の脱炭素化の実現に向けては、地域の主要なステークホルダーを巻き込み、持続的な取り組みを促すためのインセンティブスキームを設計し、継続的な運用を通じて、その取り組みを拡大していくことが重要です。
すでに地球温暖化対策推進法の下で、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度が運用され、一定規模以上の排出事業者に対して温室効果ガス(GHG)排出量の算定および報告が義務付けられています。今後、脱炭素化の取り組みが進展するにつれて、事業者⾃らの事業活動に関連するサプライチェーン上の排出量(原材料調達・製造・物流・販売・廃棄などから発⽣するGHG排出量)を算定し、対外的に情報開示することが強く求められるようになります。
ここで重要なポイントは、脱炭素化への取り組みが求められるのは大企業だけではなく、大企業と取引関係にある中小企業も同様であるということです。
具体的には、地域の中小企業を含むメーカーおよびサプライヤーは、安定的な取引を継続するために、CO2排出量の定量的な把握だけでなく、削減も求められるようになります。脱炭素化への取り組みが遅れることで、大企業との取引規模が縮小し、地域経済にさまざまな負の影響が発生する恐れがあります。
このため、地域の中小企業は、脱炭素化の取り組みの必要性を自分事として捉え、早急に着手する必要があります。他方で、大企業に比べると、中小企業は資金面や体制面で脆弱で、十分な対応が取りにくい状況にあります。このため、中小企業の脱炭素化を加速させるためには、取り組みを支援するためのスキームを構築することが求められます。
具体的には、CO2排出量など、ESG関連データの情報開示を行い、対策実施を通じて排出削減を達成した事業者などに対して、行政による補助金交付や、金融機関による投融資等を提供するインセンティブスキーム(図表1)を設計し、運用することが望ましいと考えられます。
図表1のスキームにより、行政側は地域脱炭素化に向けて施策の実効性を高められるとともに、事業者側は情報開示および排出削減によって資金調達が有利になるという好循環が生まれ、地域の脱炭素化を強力に推進することができます。同時に、金融機関は、グリーンファイナンスの領域で投融資の機会拡大が望めます。
これらの動きは、これまでとは異なる資金の流れを作ることから、地域経済活性化の一つの方法として期待されます。
ここまで、地域における中小企業の脱炭素化を進めるためのインセンティブスキームをご紹介しました。一方、インセンティブスキームの実現にはいくつかの壁があります。スキームの構築には次の4ステップ(図表2)を踏む必要があります。
まずは、市区町村が地域の実情をデータを基に把握することです。次に継続的にデータを確認できるような一元管理の仕掛けを構築します。この際に、情報提供を行う事業者に対し、脱炭素施策の具体的な提案や補助の優遇などのインセンティブを実現することも欠かせません。次に、取り組みを進める事業者に対して補助金等を交付し脱炭素化に向けた設備投資実績を蓄積するとともに、事業者に情報開示のメリットを体感してもらう必要があります。最後に、事業者による情報開示が進み、金融機関による投融資における評価スキームが確立されることで、上記に掲げたインセンティブスキームが実現するものと考えられます。
PwCでは、先に述べたステップのうち、ステップ1と2にあたる「地方自治体が現状把握しているデータを可視化・一元管理し、事業者に対して脱炭素施策の具体的な提案」することを支援するソリューション開発を進めています(図表3)。
具体的には、地域内におけるGHG排出量の現状把握と、施策実施による削減ポテンシャルなどを可視化し、地方自治体の脱炭素化の取り組み推進を加速するためのダッシュボードを開発しています。
これにより、脱炭素化の実現に向けた施策の実効性を向上させるとともに、首長をはじめとした庁内の関連部門との認識合わせ、脱炭素化に向けた他自治体や事業者とのコミュニケーションの促進に貢献し、より実践的な戦略策定を支援する想定です。
なお、脱炭素の関連データは秘匿性の高い情報です。開発にあたっては、情報の取り扱いに十分留意し、情報セキュリティ面も万全を期して開発を進めています。
ダッシュボード導入に関心をお持ちの自治体のご担当者は、お問い合わせください。
地域の脱炭素化の推進に向けて、地方自治体がとるべき推進方針、推進課題と推進のポイント、地域の脱炭素化推進に向けたデータ活用の可能性などについて、計3回のコラムで議論してきました。
日本全国ではカーボンニュートラルの実現に向けて、離れた自治体同士が連携し再生可能エネルギーを連携する事例、域内のステークホルダーに対して積極的なインセンティブ付与を行う事例、脱炭素化を好機と捉え地域経済活性化に向けた座組構築を行う事例など、さまざまな先進的な取り組みを通じて新たな価値創出が始まっています。
PwCは、「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というPurpose(存在意義)に基づき、地域の脱炭素化を単なるコスト負担ではなく、地域経済の発展・新たな産業の創出機会と捉え、全国で進む取り組みの主体者との連携を通じて、地域の脱炭素化推進を支援していきます。