上下両院の租税委員会、事業者および個人に係る税制救済措置の合意を公表(米国)

2024-04-15

2023年1月16日、下院歳入委員会のジェイソン・スミス委員長(共和党)と上院財政委員会のロン・ワイデン委員長(民主党)は、事業者および個人の税制救済措置に関する両党・両院の税制枠組み合意を公表した。 提案された「2024年米国家族・勤労者税制救済法」では、米国内の研究開発(R&D)投資に係る内国歳入法(IRC)Section 174の即時控除(注)、Section 163(j)に基づくEBITDA(earnings before interest, taxes, depreciation, and amortization)ベースの事業関連利子制限、およびSection 168(k)に基づく100%の特別減価償却を、2025年末まで遡及的・継続的に復活させることになる。なお、米国外でのR&Dについては、Section 174の即時控除は適用されず、引き続き15年の償却となることに留意が必要である。本法案には、児童税額控除の拡充も含まれているほか、税制パッケージとして、台湾との二重課税の救済(本誌2023年9月号参照)、低所得者向け住宅税額控除の拡充、災害税制救済、Section 179に基づく小規模事業に係る適格資産の即時償却の拡充(上限129万ドル(インフレ調整前。現在は100万ドル(インフレ調整後116万ドル))、およびForm 1099(独立請負業者や下請業者の特定サービス関連)に係る情報報告の閾値の引上げが含まれる。税制パッケージの財源は、新型コロナウイルス関連の雇用維持税額控除(ERTC)の申請期限を2024年1月31日に前倒しすることで賄われる(7百億ドル超の歳出減見込み)。本枠組み合意には、以下の主要な事業関連規定が含まれる。

  • Section 174の即時控除:本枠組み合意では、2021年12月31日後で、2026年1月1日前に開始する課税年度に支払われ、または発生する米国内の研究開発費用は、即時控除できよう(現行は5年間で控除)。米国外での研究開発については、引き続き15年間での控除となろう。
  • Section 163(j)の利子控除:本枠組み合意では、EBITDAベースでの利子控除の適用を、2023年12月31日後(納税者の選択により、2021年12月31日後、に遡及適用)で、2026年1月1日前に開始する課税年度まで延長することになろう(現行は2022年よりEBIT相当額の30%が控除上限)。
  • Section 168(k)の特別減価償却:本枠組み合意では、2022年12月31日後、2026年1月1日(製造期間が長い資産や特定の航空機は、2027年1月1日)前に使用開始される適格資産などについて100%の特別減価償却が延長されよう(現行は、2023年より毎年20%逓減(2023年80%、2024年60%、2025年40%、2026年20%))。また、2025年12月31日後、2027年1月1日(製造期間が長い資産や特定の航空機については2028年1月1日)前に使用開始される適格資産などに係る20%の特別減価償却が維持されよう。

(注)Section 174の特定研究・開発(SRE)支出に係る資産計上に関して、2023年9月8日、IRS(内国歳入庁)は、暫定ガイダンス(Notice 2023-63)を公表している(本誌2023年11月号参照。2023年12月22日には、これに関連するNotice 2024-12およびRev. Proc. 2024-9を公表)。この中で、委託研究取決めに関しては、研究受託者が、研究委託者との契約で財務的なリスクを負わない場合(例: 米国外の親会社からの受託研究)、原則として、本規定による資産計上の適用は受けないとみられる(なお、Notice 2023-63の公表の際、Section 41(研究税額控除)の受託研究(funded research(Section 41(d)(4)(H))との関連や、国外関連者である研究受託者や委託者との契約に係る特別規定の要否などについてコメントを募集しており、今後の規則案の公表などの動きに留意が必要)。なお、Section 41に関して、米国外の研究(foreign research)に加え、受託研究なども原則として本規定の適用対象外となるが、他のグループメンバーからの受託研究に関しては、当該研究活動を行うグループメンバーにおいて適格試験研究費として研究税額控除の適用が受けられる可能性がある(Reg. Section 1.41-6(i)(2)。例えば、米国子会社(受託者)が米国外の親会社(委託者)のために米国で行う受託研究)。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2024年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修