3.要因(2):技術的要因
技術的要因として最も特筆すべき論点は、テクノロジーの活用によって、付加価値を生成するインプットが物理的(支社・営業店、従業員など)なものからサービス化(インターネットを通じた販売、個人や組織にある機能自体の直接活用など)していることと考える。
総務省「通信利用動向調査」によれば、2017年における個人の年齢階層別インターネット利用率は、13歳から59歳までは各階層で9割を超え、端末別のインターネット利用率は、「スマートフォン」が最も高く、「パソコン」の利用率を上回った。従業員はもはやセキュリティの確保を前提に、毎日決められ場所に出社する必然性がなく、保険加入者が商品や会社を理解したり、保険に加入したりする入口も多様化している。会社のバランスシートをスリムにすることも考えられるが、あらためて今あるレガシー資産の活用や対面活動の重要性を再定義し、顧客や社会に対して新しい経験や付加価値を提供しようとしている会社も存在する。
今後の保険会社(特に生命保険会社)において必要となるケイパビリティについては、本連載中の12月3日版(ムクンド・ラジャン)に詳述している。その中では1)高度な分析、2)人材から生み出される収益の管理、3)信頼、4)顧客第一主義—を挙げている。テクノロジーとの関係で言えば、より生産性の高い従業員の確保のためにテクノロジーを活用した柔軟な働き方を提供したり、顧客に対して新しい経験となるテクノロジーの活用をしたりする保険会社が出てきているが、ますますこのような動きが重要になってくると考えられる。
また、今後は組織内の資産や従業員の知恵だけをインプットとして価値を生み出すことから、より広く世の中に会社を開き、他社組織・人材の有益な機能を絞り込んで組織に取り込むことも重要だと考える。技術的にはAPIの活用を通じた他社とのコラボレーションが考えられるが、最近の傾向としては、こういった技術的な検討を含めてイノベーションを目的としたラボを活用することがはやっているようである。このようなラボで20代、30代の方々が他の組織の方々と活発に意見交換する姿を見ると「やりっぱなし」は良くないが、取り組み自体が組織を活性化する効果があり、最初はうまく施策に反映されないものの、徐々に施策に取り込む中長期的な経営陣のコミットメントが重要であると感じる。