Worldwide Tax Summary 2025年1月号

2025-02-14

Worldwide Tax Summary 2025年1月号トピックス

  1. 2025年の税制改正関連(米国)
  2. 欧州委員会、第2の柱の実施を簡素化する提案(DAC9)を公表(EU)
  3. ECOFIN、デジタル時代のVATパッケージを承認(EU(2))
  4. OECD報告書「温室効果ガス排出プライシング2024」の公表(OECD)
  5. OECD報告書: 不動産に関する国際的な税の透明性向上のための措置を提案(OECD(2))

2025年の税制改正関連(米国)

2024年11月5日の選挙において、トランプ氏が次期大統領(2期目)に選出された。共和党は、上院で過半数(53議席)を確保し、下院の過半数(218議席以上)も維持することになった。この選挙結果を受け、トランプ氏が選挙期間中に提案した税および貿易政策が前進するとみられる。2025年は重要な「要成立」税法案の年であり、2017年の税制改革法(TCJA)の主要な個人関係条項が2025年末に期限切れとなり、いくつかの重要な事業関係税条項が改正されることとなっている。対応がなされない場合、事実上全ての個人納税者に対する全面的な増税、および一部の事業関係税の自動的な増税となろう。なお、大統領府と両院議会のいずれもが共和党支配となることで、2017年にTCJAが成立したときと同様に、2025年に共和党の票だけで税法案を成立させるための「予算調整」手続きの使用が可能になるとみられる(ただ、期限切れとなるTCJA税規定やトランプ次期大統領の選挙中の諸提案等への対応に係る合意形成のために調整法案に係る対応が2025年後半になる可能性)。

トランプ氏の税制提案 - トランプ次期大統領は、2025年末に期限切れとなるTCJA個人所得税(最高税率39.6%(2026年予定)から37%への引下げなど)および遺産税条項を恒久化することを求めている。また、米国内で製品を生産する法人に対する法人税率を21%から15%に引下げ、100%の特別減価償却を復活させ、米国内の研究活動に対するインセンティブを強化することを提案している。また、選挙期間中に、多くの個別の個人税制優遇措置を提案しており、チップ収入や社会保障給付に対する課税の廃止、州および地方税に係る連邦項目別控除の復活や、自動車ローン利息の控除まで幅広い提案を行っている。また、現行法では、2025年末に主要な国際事業関係税の税率が引き上げられる予定であり、これにはGILTI(global intangible low-taxed income)(10.5%→13.125%)、BEAT(base erosion and anti-abuse tax)(10%→12.5%)、およびFDII(foreign-derived intangible income)(13.125%→16.4%)が含まれる。また、特定の被支配外国法人(CFC)所得に係るルックスルーの取扱いも期限切れとなる予定である。次の議会では、第2の柱(グローバルミニマム税制)により、米国法人が他国でより高い全体的な税率負担となる可能性への懸念に対処することを目指す可能性がある。共和党議員は、第1の柱(課税権の再配分)と、第2の柱(グローバルミニマム課税)に関するOECD/G20の枠組み合意を支持するバイデン政権のアプローチに強く反対している。一部の民主党議員も、これらの提案について懸念を表明している(特に、第2の柱のガイドラインに基づく米国の研究税額控除の取扱い)。さらに、他国がデジタルサービス税や類似の措置を導入することに対しても、主に米国企業に影響を与えると考えられているため、超党派の反対がある。なお、トランプ氏は、過去数カ月にわたってさまざまなイベントで公表してきた主要な税制提案の詳細をまだ公開していない。今後、大統領府と財務省は、トランプ次期大統領の具体的な提案を議会に提出することになる。米国内で製品を生産する法人に対する15%の法人税率の提案に関しては、TCJAによって廃止されたSection 199の国内製造控除が、適格法人の適格所得に対する税制優遇措置のモデルとなる可能性があるとの見方もある。この他、次の議会では、他のTCJA条項にも対処する可能性がある。2024年8月1日、上院は、H.R. 7024の法案を阻止している(本誌2024年3月号および10月号参照)。この法案は、2025年末までの米国内R&D投資に対するSection 174に係る損金算入、Section 163(j)に係るEBITDAベースの事業関連利子控除制限、およびSection 168(k)に係る100%特別減価償却を選択的に遡及的かつ継続的に復活させるものであった。H.R. 7024には、児童税額控除の一時的な強化や、災害税制救済措置および台湾との二重課税の救済措置(本誌2023年9月号参照)を含む他の条項も含まれていた。トランプ次期大統領は、経済成長により自らの税提案のコストを相殺するとしている。また、全ての外国製品に対して10%~20%の基準関税、中国からの輸入品に対して60%(超)の関税を提案している他、メキシコで製造された車両に対して100%から200%の関税、および全てのメキシコ原産品に対して25%の広範な関税を提案している(選挙期間中)。なお、米国大統領は多くの条件により議会承認なしで関税を課すことができるが、予算調整手続きにおいて、歳入として公式に織り込むためには、立法措置が一般的に必要となろう。トランプ次期大統領はまた、バイデン政権下で2022年のインフレ抑制法の一環として制定されたクリーンエネルギー税額控除およびインセンティブの廃止を求めており、大規模な大学基金に係る連邦税増税を提案している。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2025年1月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
 

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