Worldwide Tax Summary 2025年3月号

2025-04-11

Worldwide Tax Summary 2025年3月号トピックス

  1. 新大統領就任日におけるグローバル税制および貿易政策の転換(米国)
  2. 第2の柱 - GloBE執行ガイダンスのパッケージを公表(OECD)
  3. グローバル租税政策における役割の強化(国連)
  4. 2025年予算法でデジタルサービス税に係る5.5百万ユーロのデジタル収益閾値を撤廃(イタリア)

新大統領就任日におけるグローバル税制および貿易政策の転換(米国)

トランプ新大統領(第2期)は、政権初日(2025年1月20日)に、グローバル税制および貿易政策に関してバイデン政権からの明確な方向転換を示す2つの大統領令(Executive Orders)(法的効力を持つ大統領の指令)に署名した。最初の大統領令は、OECDの二本の柱によるプロジェクト(‘global tax deal’と呼称)を標的にし、基本的に、米国のこのプロジェクトへの合意を無効にするものである。二つ目の大統領令は貿易政策(‘America First Trade Policy’)を実施するための一連の指示を含んでいる。これには、米国市民や企業に対して差別的とみなされる外国の法律に対して、発動されれば外国企業や個人の米国所得に課される税率を倍増させる可能性のある、これまで使用されたことのない米国税法の報復条項(Section 891)(注)への言及が含まれている。税制問題に関する初日の大統領令は非常に異例であり、トランプ政権が米国の租税政策を自らが最適と考える形でコントロールできることを重視していること、そして米国企業に対して差別的な税制や域外課税の賦課を支持しない意向を示している。貿易に関する焦点は、トランプ大統領の第1期の強調点と一致しているが、他国の貿易慣行や、国家安全保障に有害または不公平とみなされる慣行に対する米国の対応策について、より広範な検討を示唆している。大統領令によって求められる調査と報告の結果を待つ間、企業(および米国に拠点を置くそれら外国企業幹部)は、米国の今後予想される動きの影響を評価し、トランプ大統領の大統領令に対する他国の反応を注視する必要があろう。

Global tax dealに関する大統領令

Global tax dealに関する大統領令では、財務長官および米国のOECD常駐代表に対し、バイデン政権のGlobal tax dealに関するいかなるコミットメントも、議会がその条項を採択する行動を取らない限り、米国内では効力を持たないことをOECDに通知するよう指示している。また、財務長官および米国通商代表に対し、外国の租税条約の遵守状況や、米国企業に対して域外適用的または不均等に影響を与える税制が制定されているか、または検討中であるかを調査し、米国がそれらに対して採用すべき保護措置の選択肢リストを60日以内に作成するよう指示している。

貿易政策(America First Trade Policy)に関する大統領令

America First Trade Policyに関する大統領令では、財務長官を含む大統領の閣僚メンバーに対し、他国の貿易慣行、中国との関係、およびその他の経済安全保障に関する事項をレビューするようにとの広範な指示を含んでいる。また、関税等、およびその他の外国貿易関連収入を徴収するための‘External Revenue Service’の設立を検討する指示も含まれている。商務長官および米国通商代表と共に、財務長官はSection 891に基づく外国政府の域外適用的または差別的な税制を調査する責務を負っている。この条項では、外国企業および個人の米国所得に対する税率を倍増させることが可能となる。財務長官は、2025年4月1日までに、External Revenue Serviceの設立、差別的税制の調査結果、およびその他の事項に関する報告書を提出するよう指示されている。

(注)Section 891(Doubling of rates of tax on citizens and corporations of certain foreign countries)は、1938年にできた規定で、未だ適用例はないとされる。なお、下院共和党における第2の柱の一部(域外適用効果のある軽課税所得ルール(UTPR)を指すとみられる)、およびユニラテラル税(デジタルサービス税(DST)などを指すとみられる)への対処法案(2023年5月提出のDefending American Jobs and Investment Act)(本誌2023年7月号参照)について、2025年1月22日、ジェイソン・スミス下院歳入委員会委員長(共和党)は、当該法案を一部修正して再提出している。

【お知らせ】上記の(注)の冒頭にある「Section 891(Doubling of rates of tax on citizens and corporations of certain foreign countries)は1938年にできた規定で、」の部分につきまして、次のとおり説明を追記します。
Section 891の原型は1934年にできた旧Section 103であり、その後1938年の改正などを経て、最終的に1954年にSection 891となりました。

出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2025年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
 

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