
Worldwide Tax Summary 2025年2月号
本稿では、海外税制(オーストラリア、ベトナム、オーストリア、ハンガリー、EU、アフリカ、OECD)の動向を解説しています。(月刊国際税務 2025年2月号 寄稿)
2024-10-28
2024年7月23日、財務相は、2024-25年度連邦予算案を公表した。成長率見通しは6.5%から7%としており、2047年までに、同国が先進国になるための詳細なロードマップを示している。本予算案では、インフラストラクチャー、技能開発、製造業、エネルギー安全保障、都市開発、技術革新と研究開発、ならびに労働、土地、外国直接投資をめぐる次世代改革などに重点を置いている。なお、税制面では、安定性と確実性が引き続きテーマとなっている。本予算案における税制案には、現行法を簡素化、合理化し、ビジネス活動を容易にし、コンプライアンス負担と税務争訟を軽減し、法律に確実性をもたらすことを意図した措置が含まれている(8月中にも法案成立の見込み)。また、財務相は、新税法を6カ月以内に公表する見込みとしている(政府は、本新税法を、簡潔、明瞭で、読みやすく理解しやすいものにすることを目指している)。
外国法人の税率改正 – 2024-25事業年度より、特定所得(ロイヤルティーや技術サービスフィー等)を除く外国法人の所得に対する法人所得税率が40%から35%に引き下げられる。サーチャージ、健康教育目的税を含め、その他の税率に変更はない。
平衡税(Equalization Levy)の廃止 – 現在、国外事業体による電子商取引やサービスに対して、2%の平衡税が適用されている。本予算案では、本税を2024年8月1日より廃止することを提案している(オンライン広告に対する6%の平衡税は引き続き適用)(注)。
株主への株式発行に係る濫用防止規定の廃止 – 現在、税法上の濫用防止規定として、非公開会社が株主から時価を超える株式を発行する際に受領する額に課税されることになっている。本予算案では、本規定を2024年4月1日から廃止することを提案している。
租税紛争解決に係る恩赦制度(Tax Amnesty Scheme)の再導入 – 2020年に実施された税恩赦制度(2021年終了、約14万7千件を解決)を受け、また税務訴訟の削減という税務アジェンダを推進するため、本予算案では税恩赦制度を再導入する。2024年7月22日時点で係争中のものについて、利子とペナルティーの免除が提案されている。なお、同様の恩赦制度が物品サービス税(GST)法にも導入され、GST実施の初期(2017-18~2019-20年度)に生じた様々な解釈上の問題を解決する。
自己株買戻しに対する課税の仕組みの改正 – 現在、インド法人は、自己株買戻しの際、その買戻しに伴う分配所得に対して20%の税率で課税されている。本予算案では、2024年10月1日より、株式買戻しに対する課税の仕組みを、現在の配当に対する課税の仕組みと同様に改正することを提案している。買戻し収入は、みなし配当(総額ベース)として株主レベルで課税対象となる。なお、取得費用はキャピタルロスとして扱われ、キャピタルゲインと相殺できる。
個人またはヒンズー合同家族(Hindu Undivided Families)以外の贈与等は免税対象外 – 現在、法人による贈与がキャピタルゲイン税免除の対象となるか否かについて訴訟が続いている。本予算案では、個人およびヒンズー合同家族以外の者による贈与等はキャピタルゲイン税の免除の対象外である旨の明確化を提案している。
キャピタルゲイン税制の合理化と簡素化 – インドのキャピタルゲイン税制は、複数の資産区分と税率があり複雑なものとなっている。資産区分や新たな金融商品の追加により、複雑さと混乱を招いている。この問題に対処するため、本予算案では、キャピタルゲイン税制(長期短期の判定期間や適用税率など)の簡素化を提案している(株式譲渡益(居住者および非居住者)について、長期は12.5%(国外ポートフォリオ投資家の保有する一定の証券を除く)、短期は証券取引税の対象となる上場証券について20%の税率になる(長期の場合の取得価額に係るインフレ調整の廃止や、為替変動に係る調整なども提案されている)。
国際金融サービスセンター(IFSC)内の金融会社に対する利子制限 – 現在、非居住者である関連会社に対する利子控除は、EBITDAの30%に制限されている。本予算案では、2024-25事業年度より、一定の条件のもと、IFSC内の金融会社についてこの制限を適用しない。
クルーズ船を運航する非居住者に対する新税制 – 本予算案では、クルーズ船を運航する非居住者に対する新税制の導入が提案されている。非居住者がクルーズ船を運航する場合、みなし所得税制により、収入額の20%が所得として扱われる(グループ会社へのリース料支払いに係る若干の緩和措置がある)。
連絡事務所(liaison office)による所定の書類の不提出に対するペナルティーの導入 – 本予算案では、連絡事務所が税法上の所定の書類を提出しなかった場合、ペナルティーを課すことを提案している。ペナルティーは、不提出が3カ月以下の場合、毎日1,000インドルピー(その他の場合は10万インドルピー)である。
(注)本予算案の公表前の2024年6月28日、米国とインドは、2021年11月24日の共同声明で示された政治的妥協案を2024年6月30日まで延長する旨を公表した。インドは、第1の柱(利益A)の一部に留保を表明しているものの、既存の平衡税から「新たな多国間解決策」(利益A)へ、そして「建設的な対話を通じて本件に関する議論を継続する」意向があるとみられる。本合意では、延長された「暫定期間」(2022年4月1日から2024年6月30日まで)において、第1の柱の適用範囲に含まれる米国企業が負担する税額の大部分は、利益Aの下で将来発生する税額から控除できる。これに対応し、米国はDST(デジタルサービス税)に係る301条調査で採用された現在停止中のインド製品に対する追加関税を解除することに合意している。なお、2024年3月31日に失効した前回の合意においては、電子商取引に対する2%の平衡税(2020年創設)のみが対象であったため(インド財務省の2021年11月の声明にその旨記載)、本暫定合意の延長は、オンライン広告に対する6%の平衡税(2016年創設)には影響しないとみられる。しかしながら、インドの平衡税はいずれも、第1の柱のMLC(多国間協定)草案の附属書Aに、利益A協定が締結された場合、撤廃の対象となるユニラテラル措置として記載されている。米国、オーストリア、フランス、イタリア、スペイン、英国は以前、DSTに関する妥協案について同様の延長を公表している(その後、同じ条件がトルコのDSTにも適用されることが合意)。これらの協定はすべて2024年6月30日に失効しており、現在の状況を考えると延長されるかどうかは不明である(Source: PwC, Latest digital tax byte)
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2024年9月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
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