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PwC弁護士法人のジェネラル・コーポレート・プラクティスニュースレターでは、企業において日々生起する法的な課題の解決に有益と思われるトピックを取り上げて、情報を発信して参ります。
今回は、以下の4つのトピックを紹介します。
トピック1:「企業買収における行動指針」の策定
トピック2: 吸収合併を承認するための株主総会に先立つ反対の旨の委任状の送付が会社法785条2項1号イに定める反対通知に当たるとされた事例(最一小決令和5年10月26日)の解説
トピック3:労働条件明示ルール等の改正の概要
トピック4:オーストラリアの外国投資規制における新たな通知義務 - Register of Foreign Ownership of Australian Assets
昨年の企業買収検討に係る大きな動きの一つとして、経済産業省が「公正な買収の在り方に関する研究会」(以下「本研究会」といいます。)における議論等を踏まえて2023年8月31日付で策定した、「企業買収における行動指針―企業価値の向上と株主利益の確保に向けて―」(以下「本指針」といいます。)があります。本指針では、上場会社の経営支配権を取得する買収を巡る当事者の行動の在り方を中心に、M&Aに関する公正なルール形成に向けて経済社会において共有されるべき原則論及びベストプラクティスが提示されています。
2024年は昨年と比較して日本企業が関与するM&Aの件数及び金額がともに増加するとの見方もある中で、以下では、改めて本指針策定の経緯、本指針の位置付け及び本指針の概要を確認します。
従来から、経済産業省は、M&Aに関する原則や視点、ベストプラクティスなどを整理する指針及び報告書を策定しています。
2005年には、法務省と共同して「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」(以下「2005年指針」といいます。)を策定し、企業価値ひいては株主共同の利益を害する買収に対する合理的な買収防衛策についての原則を提示しました。
また、2008年には、企業価値研究会として、「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」(以下「2008年報告書」といいます。)を作成しています。
さらに、2019年には、「公正なM&Aの在り方に関する指針」(以下「公正M&A指針」といいます。)を策定し、MBO及び支配株主による従属会社の買収を対象に、こうした買収取引で生じる構造的な利益相反への対応の観点から考え方を整理し、実務上の対応を提示しています。
近時、日本企業及び資本市場を取り巻く環境には、法規制の改正を含め、さまざまな変化が生じており、買収を巡る当事者等にとっての予見可能性を向上させ、ベストプラクティスを提示するため、2022年11月、本研究会が設置されました。本指針は、諸外国における法制度や実務等に関する本研究会における議論を踏まえて、策定されています。
上記1.のとおり、経済産業省は従来、さまざまな指針等を策定しています。本指針は、新たに策定されたものであり、過去の指針等を改訂するものではありませんが、その内容としては、公正M&A指針、2005年指針及び2008年報告書を踏まえつつ、以下のとおり、その原則論や考え方を継承し、あるいは発展させ、新たな観点から一部見直しを行うものとなっています。
まず、公正M&A指針は、構造的な利益相反(対象会社の取締役会が一般株主より買収者の利益に配慮するおそれ)と情報の非対称性が類型的に存在する取引が対象とされていますが、本指針では、取締役会と買収者が異なる利益を有している通常の買収取引(独立第三者間取引)を念頭に置いています。
また、2005年指針及び2008年報告書は、買収防衛策(本指針では「買収への対応方針・対抗措置」と表現が見直されています。)を対象としていましたが、本指針は、2005年指針の運用状況、その後の裁判例、機関投資家の議決権行使行動の変化等を踏まえ、買収への対応方針・対抗措置の在り方について見直しを行っています。本指針において、2005年指針の内容が見直された部分については、注釈等でその旨が記載されていますが、本指針と2005年指針の内容が整合しない部分については、本指針の内容が優先することが想定されていることに留意が必要です。
本指針は、買収者が上場会社の株式を取得することでその経営支配権を取得する行為を主な対象としています。ここでは、対象会社の経営陣からの要請等を受けて買収が提案される場合のみならず、いわゆる敵対的なものを含め、経営陣からの要請等が行われていない中で買収提案が行われる場合も、その対象に含まれています。
また、買収の方法については、現在の実務に鑑み、金銭を対価として、公開買付け、市場内買付け、相対取得等により株式の取得を行う場合が主に念頭に置かれていますが、株式を対価とする株式の取得や、合併、株式交換、株式交付等の組織再編によって経営支配権を取得する場合も、本指針の対象となり得るとされています。
本指針では、上場会社の経営支配権を取得する買収一般において尊重されるべき原則として、以下の3つが提示されています。なお、第2原則及び第3原則は、第1原則を実現する前提として求められるものと位置付けられています。
第1原則 |
企業価値・株主共同の利益の原則 望ましい買収か否かは、企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、又は向上させるかを基準に判断されるべきである。 |
第2原則 |
株主意思の原則 会社の経営支配権に関わる事項については、株主の合理的な意思に依拠すべきである。 |
第3原則 |
透明性の原則 株主の判断のために有益な情報が、買収者と対象会社から適切かつ積極的に提供されるべきである。そのために、買収者と対象会社は、買収に関連する法令の遵守等を通じ、買収に関する透明性を確保すべきである。 |
これらの原則で触れられている重要な内容のうち、いくつかの点については、以下のとおり基本的視点が示されています。
① 「望ましい買収」(第1原則)
買収者や対象会社、株主が合理的に行動し買収取引が行われることを通じて、シナジーによる価値向上や経営の効率の改善を促すことが期待され、加えて、買収の可能性があることは、現在の経営陣に対する規律として機能するとされています。望ましい買収、すなわちこれらの買収が持つ機能が発揮され、市場が経済的な効果を上げるためには、買収の当事者・関係者が尊重し遵守すべき行動規範が求められると指摘されています。
② 「企業価値の向上と株主利益の確保」(第1原則)
企業価値とは、企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローの割引現在価値の総和を表す概念であり、資本の調達源泉の側面から見れば、株主価値(市場における評価としては時価総額)と負債価値の合計として表されます。
一般に、買収が実行される場合には、対象会社の企業価値を向上させ、かつ、その企業価値の増加分が当事者間で公正に分配されるような取引条件で行われるべきであるとされています。また、理論的には、株主に対して公正に分配すべき利益(株主が享受すべき利益)としては、「買収を行わなくても実現可能な価値」が最低限保証された上で、「買収を行わなければ実現できない価値」の公正な分配としての部分も保証されるべきであると指摘されています。
したがって、特に取締役会が買収に応じる方針を決定する場合には、会社の企業価値を向上させるか否かの観点から買収の是非を判断することに加えて、株主が享受すべき利益が確保される取引条件で買収が行われることを目指して合理的な努力が行われるべきであるとされています*1。
③ 「株主意思の尊重と透明性の確保」(第2原則・第3原則)
通常、買収における株主意思の尊重は、公開買付けへの応募等を通じて株主の判断を得る形で行われるものであり、そのために必要な情報や時間を確保するための制度枠組みが構築されているため、基本的には、買収者と対象会社がこうした制度を遵守することを通じて、透明性を高め、株主の適切な判断が行われることが期待されています。他方で、上記のような制度枠組みによる対応では十分でないと考えられる例外的かつ限定的な場合に、同意なき買収に対して、会社の発意で買収への対応方針・対抗措置を用いることがありますが、その賛否を巡っては、株主総会における株主の合理的な意思を確認することが基本となるとされています。
本指針第3章では、経営支配権を取得する買収提案を巡る取締役・取締役会の行動規範について、局面(すなわち、以下の「①買収提案を受領した場合」及び「②取締役会が買収に応じる方針を決定する場合」)に応じた考え方の整理が行われています。また、検討・交渉に関する視点については、本指針別紙1にも記載されています。
なお、本来、会社の取締役・取締役会には、平時から企業価値を高め、それが時価総額に反映されるための取組み*2を行うことが求められています。こうした取組みは、買収提案を受けた際に、取締役会において、現経営陣が経営する場合の企業価値向上策と買収提案の内容を速やかに比較検討することに資するとされています。
① 買収提案を受領した場合
経営陣又は取締役は、経営支配権を取得する旨の買収提案を受領した場合には、速やかに取締役会に付議又は報告することが原則とされています。取締役会に付議すべき買収提案と言えるかどうかは、外形的・客観的に判断されるものであり、口頭の提案ではなく提案書の形式を取っている、匿名での打診ではなく買収者が特定されている、買収価格や買収時期について記載があるなどの具体性を有していることが重要な判断材料として挙げられています。
付議された取締役会では、「真摯な買収提案」(具体性・目的の正当性・実現可能性のある買収提案)*3に対しては「真摯な検討」をすることが基本とされています。取締役会が「真摯な検討」を進める際には、買収後の経営方針、買収価格等の取引条件の妥当性、買収者の資力・トラックレコード・経営能力、買収の実現可能性等を中心に、企業価値の向上に資するかどうかの観点から買収の是非を検討することになるとされています。また、取締役会の判断の合理性について、(事後的に)説明責任を果たせるように行動する重要性についても強調されています。
② 取締役会が買収に応じる方針を決定する場合
特に、現金対価による全部買収(最終的に100%の株式を取得することに買収者がコミットしている買収)の提案である場合には、株主が対象会社株式への投資から利益を得る最後の機会となるため、株主にとっては価格面での取引条件の適正さが特に重要になるとされています。他方、部分買収の提案である場合には、価格面での取引条件が良いとしても、株主が株式の全てをその価格で売却できるわけではないため、部分買収であることによる問題が大きいと考える場合には、取締役会としては、全部買収の提案へ変更することを買収提案者に求めるといった交渉も考えられるとされています。また、買収後に一部の株主は少数株主として残ることになるため、買収後の企業価値向上策等に関する情報提供の重要性も指摘されています。
取締役会は、買収者との交渉を行う際、株主にとってできる限り有利な取引条件で買収が行われることを目指して、真摯に交渉すべきであり、具体的には、企業価値に見合った買収価格に引き上げるための努力を尽くすこと、競合提案があることを利用して競合提案に匹敵する程度に価格引き上げを求めることなどが挙げられています。
③ 公正性の担保-特別委員会による機能の補完・留意点
本指針では、株主の利益がより確保されやすくするため、個別の事案における利益相反や情報の非対称性の程度等に応じて、特別委員会*4の設置や外部のアドバイザーの助言等の公正な手続を講じることの有用性*5が指摘されています。他方で、構造的な利益相反が存在する取引以外の一般的な買収においては、買収が行われる蓋然性が低い場合もあり、常に特別委員会の設置を必要とすることは、対象会社の負担を過度なものとするおそれがあることから、特別委員会の設置は、個々の事案に応じて検討すべきこととなります。
特別委員会の設置が有用である場合として、具体的に、以下のような例が挙げられています。また、このような場合には、特別委員会の判断内容を適切に理解・把握した上で、これを最大限尊重して取締役会における意思決定を行うことが望ましいとされています。
本指針第4章では、上記3.(2)の第2原則及び第3原則を実現するために、買収者及び対象会社の双方の観点から、買収に関する透明性の向上の在り方が提示されています。また、株主の意思決定を歪める行為の防止についても言及されており、強圧性に関する検討が本指針別紙2に整理されています。
①買収者による情報開示・検討時間の提供
買収者が株式の取得を進める場合には、取得割合に応じた各段階(すなわち、5%以下で株式を取得する段階、5%超の株式を取得し、大量保有報告書を提出した後の段階、市場内での株式取得や公開買付けの実施等により経営支配権を取得する段階など)によって、投資の性質や市場への影響、求められる透明性が異なると考えられ、各段階において、大量保有報告書制度や公開買付制度等の遵守により、透明性を高め、株主に十分な情報や時間を提供することで、株主の適切な判断が行われることが期待されています。例えば、買収者が、公開買付けに先立って市場で株式の取得を進めるに当たり、その後に公開買付けを実施する意向が確定的な場合には、その旨の情報提供を資本市場や対象会社に対して行うことが望ましいものとされています。
②対象会社による情報開示
買収が実施される場合には、金融商品取引所の適時開示規制による開示制度を遵守するにとどまらず、自主的に、取締役会や特別委員会における検討経緯や、買収者との取引条件の交渉過程への関与状況に関し、充実した情報開示を行うことが望ましいとされています。また、対抗提案があった場合には、賛同した買収提案がより望ましいと判断した旨とその理由を開示すべきであり、対抗提案が公知となっていない場合においても一定の開示をすることが望ましいとされています。
本指針第5章では、これまでの裁判例も踏まえ、「株主意思の尊重」、「必要性・相当性の確保」、「事前の開示」、「資本市場との対話」という観点から、買収への対応方針・対抗措置の総論について言及されています。また、詳細は本指針別紙3に整理されています。
① 株主意思の尊重
対応方針に基づく対抗措置の発動は、会社の経営支配権に関わるものであることから、株主の合理的な意思に依拠すべきであり、対応方針の導入の段階又はこれに基づく対抗措置の発動の段階で株主総会における承認を得ること*6は、株主の合理的な意思に依拠していることを示すための措置といえるとされています。
② 必要性・相当性の確保
対応方針に基づく対抗措置の発動は、株主平等の原則、財産権の保護、経営陣の保身のための濫用防止等に配慮し、必要かつ相当な方法*7によるべきであるとされています。
③ 事前の開示
対応方針を平時に導入し、開示することによって、一定以上の株式を取得する場合には対抗措置が用いられ得ることについて、買収者、株主等の事前の予見可能性が相対的に高まると考えられ、対応方針の内容を見て投資の意思決定を慎重に行う、買収の手法を工夫して買収を試みるなどの対応が可能となり得ることが指摘されています。
④ 資本市場との対話
対応方針を平時に導入し開示する場合、株主総会決議や取締役の選解任等を通じて株主の意思が反映されるため、機関投資家等をはじめとする資本市場の関係者の理解と納得が得られなければ、実際には導入することが困難であることから、個々の会社の規模や状況等に応じて、対象会社と機関投資家との間で建設的な対話がされることが望ましいとされています。
本指針は、いわゆるソフトローであり、買収を巡る当事者等に対して直接の法的拘束力を有するものではありません。もっとも、本指針により提示されたベストプラクティスを踏まえた対応を取ることにより、取締役の忠実義務・善管注意義務違反のリスクを下げるとともに、当事者間で合意した取引条件が裁判所において尊重されやすくなることが期待されるなど、企業買収の実務には大きな影響があるものと考えられます。会社法や金融商品取引法等のハードローに加えて、随時更新されるソフトローについても注視していく必要があります。
株式会社が吸収合併等の株主の利益に重大な影響を及ぼす可能性のある一定の行為を行おうとする場合には、これに反対する少数株主に投下資本の回収を認める制度として、株式買取請求権(株式会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる権利)が会社法上認められています。
例えば、吸収合併を行おうとする株式会社において、吸収合併をするために株主総会の決議を要する場合には、株主総会に先立って吸収合併に反対する旨を株式会社に対して通知した上で、株主総会において反対の議決権を行使する必要があります(会社法785条2項1号イ)。
今回取り上げる最高裁決定(最一小決令和5年10月26日)(以下「本決定」といいます。)は、吸収合併消滅株式会社の株主が、吸収合併を承認するための株主総会に先立って会社に対して反対の旨の委任状を送付したことをもって、反対する旨の通知があったものと認めたものです。
そこで、以下では、本決定について、その概要を示すとともに、今後の展望について解説します。
本決定は、X社を吸収合併消滅株式会社としY社を吸収合併存続株式会社とする吸収合併(以下「本件吸収合併」といいます。)に際して、X社の株式を有する株主(以下「抗告人」といいます。)が、X社に対して株式買取請求権を行使したが、その価格の決定につき協議が調わなかったため、会社法786条2項に基づく価格決定の申立て(以下「本件申立て」といいます。)を行った事案です。
原審は、以下の事実関係を基礎として、抗告人の本件申立ては不適法であるとして、本件申立てを却下すべきものとしました。
【事実関係】
【判断の概要】
本件委任状は、代理人となるべき者に対して議決権の代理行使を委任する旨の意思表示をした書面であり、本件賛否欄の「否」に〇印を付けた部分は、上記の者に対する指示であってX社に向けられたものであるということはできない。
また、本件委任状の宛先がX社とされているのは、代理権を証明する書面が株式会社に提出されなければならないとされていること(会社法310条1項)からすると不自然ではない。
さらに、本件付記があることからすると、本件吸収合併に反対する旨の抗告人の意思が本件委任状に表明されているということもできない。
したがって、抗告人がX社に対して本件委任状を送付したことは、反対通知に当たらない。
上記のとおり、抗告人の申立てを不適法で却下すべきとした原審に対し、抗告審である最高裁は、概要以下のとおり判断し(下線は筆者ら加筆)、原々審に差し戻すこととしました。
①会社法785条1項、2項1号イは、吸収合併等をするための株主総会において議決権を行使することができる株主が反対株主として株式買取請求をするためには、上記株主総会に先立って当該株主が反対通知をすることを要する旨規定している。その趣旨は、消滅株式会社等に対し、吸収合併契約等の承認に係る議案に反対する株主の議決権の個数や株式買取請求がされる株式数の見込みを認識させ、当該議案を可決させるための対策を講じたり、当該議案の撤回を検討したりする機会を与えるところにあると解される。
②そして、本件のように、株主が上記株主総会に先立って吸収合併等に反対する旨の議決権の代理行使を第三者に委任することを内容とする委任状を消滅株式会社等に送付した場合であっても、当該委任状が作成・送付された経緯やその記載内容等の事情を勘案して、吸収合併等に反対する旨の当該株主の意思が消滅株式会社等に対して表明されているということができるときには、消滅株式会社等において、上記見込みを認識するとともに、上記機会が与えられているといってよいから、上記委任状を消滅株式会社等に送付したことは、反対通知に当たると解するのが相当である。
③これを本件についてみると、本件委任状は、X社が、抗告人に対し、宛先を自社とする本件委任状用紙を送付して議決権の代理行使を勧誘し、抗告人が、これに応じて、本件委任状用紙の各欄に記載をするなどして作成し、X社に対して返送したものである。そうすると、抗告人が本件賛否欄に記載したところは、代理人となるべき者に対して議決権の代理行使の内容を指示するだけのものではなく、上記勧誘をしてきたX社に対する応答でもあったということができ、本件委任状の送付は、X社に向けて本件吸収合併についての抗告人の意思を通知するものでもあったというべきである。そして、本件賛否欄には「否」に〇印が付けられていたのであるから、本件吸収合併に反対する旨の抗告人の意思が本件委任状に表明されていたことは明らかである。なお、本件付記は、その記載内容等からすると、本件議案に反対する理由を記載したものとみるべきであって、本件付記があることは、本件吸収合併に反対する旨の抗告人の意思が本件委任状に表明されていたとの上記判断を左右するものではない。
以上からすると、本件委任状の送付は、本件吸収合併に反対する旨の抗告人の意思をX社に対して表明するものということができる。
上記①のとおり、本決定は、株式買取請求権を行使するための要件として反対の旨の通知が必要とされている趣旨として、「消滅株式会社等に対し、吸収合併契約等の承認に係る議案に反対する株主の議決権の個数や株式買取請求がされる株式数の見込みを認識させ、当該議案を可決させるための対策を講じたり、当該議案の撤回を検討したりする機会を与えるところにある」としています。この点は、学説*8とも整合するものといえます。
なお、通知の方式は会社法上で特に定めがないところ、書面に加え、ファクシミリや電子メール等でも可能と解されています*9。
上記②のとおり、本決定は、委任状であったとしても、当該委任状の作成経緯等や記載内容等を踏まえ、「吸収合併等に反対する旨の当該株主の意思が消滅株式会社等に対して表明されているということができるときには」、反対通知に該当するものと判断しています。
学説上では、反対通知は、会社に対する明示的かつ確定的な異議の表明であることが必要とされており、委任状に「否」と記載して送付した場合であっても、受任者(代理人)を通じた意思表示であり、会社に対する確定的な通知ではないとして、反対通知の該当性は否定的に考えられています*10。
今後は、上記③のとおり、反対の旨の記載がある委任状について、その作成経緯等や記載内容等を踏まえ、会社に対する確定的な異議の表明に該当するかどうかを実質的に判断する必要があります。
本決定は、あくまでも吸収合併の際の消滅株式会社等に対する反対通知に関して判断したものではありますが、株式買取請求権が認められている他の行為にも適用があるものと考えられます。
今後は、本決定が示した内容に従い、会社に対して株主からの反対の旨の記載がある委任状が送付された場合には、その記載内容等を踏まえて、反対通知に該当するかどうかを判断することが必要になるものと考えられます。
他方で、本決定でも「消滅株式会社等に対して表明されているということができるときには」としており、およそ「会社に対して」表明されていない通知までを反対通知として取り扱うことまでを許容したものではない点には留意する必要があります。
2023年3月30日、「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令」(令和5年厚生労働省令第39号*11。以下「本省令」といいます。)及び「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準の一部を改正する件」(令和5年厚生労働省告示第114号*12)が公布・告示され、2024年4月1日より施行されます。これにより、労働基準法施行規則(以下「労基法施行規則」といいます。)及び有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(以下「雇止め基準」といいます。)が改正され、労働条件の明示事項に新たな事項が追加されることになりました(以下「本改正」といい、本改正後の労基法施行規則を「改正労基法施行規則」、本改正後の雇止め基準を「改正雇止め基準」といいます。)。
労働基準法(以下「労基法」といいます。)上、使用者は、労働契約の締結に際し、書面の交付等により、一定の労働条件*13の明示をしなければならないとされているところ(労基法15条1項、労基法施行規則5条1項、3項、4項)*14、改正労基法施行規則5条1項においては、書面の交付等によって明示すべき事項として、以下の事項が追加されることになります。
対象となる労働者 |
追加される明示事項
|
全ての労働者*15 |
|
有期契約労働者 |
|
現行法では、「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」(労基法施行規則5条1項1号の3)が労働条件の明示事項の一つとして定められていますが、現行法における「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」では、雇入れ直後の就業場所及び業務で足りるとされていました*16。
しかし、近年、労働者の権利意識が向上し、また、労働契約の多様化・個別化が進む中で、労働者と使用者の権利義務関係を明確化することにより、双方が予見可能性をもって納得した上で行動できるようにし、紛争を未然に防ぐという観点から、雇入れ直後の就業場所及び業務のみならず、それらの変更の範囲も明示事項として追加することが適当であるとの指摘がなされていました(厚生労働省令和4年3月30日公表の「多様化する労働契約のルールに関する検討会 報告書」*17参照。以下「本報告書」といいます。)。
こうした背景を踏まえて、本改正により、文言が追加され(下記太字部分)、「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)」となります(改正労基法施行規則5条1項1号の3)。ここでいう、「変更の範囲」とは、今後の見込みを含め、その労働契約の期間中に想定される就業場所や従事する業務の変更の範囲をいいます(厚生労働省令和5年10月12日基発1012第2号*18(以下「本通達」といいます。)の第1の1(1)イ③)。また、有期労働契約において、契約期間が満了し更新された後の新契約期間中に命じる可能性がある就業場所及び業務については、改正労基法施行規則上、明示が求められるものではないものの、労働者のキャリアパスを明らかにする等の観点から、積極的に明示することは考慮に値する対応とされています(令和5年改正労働基準法施行規則等に係る労働条件明示等に関するQ&A*19(以下「本Q&A」といいます。)の2-1)。
なお、本改正により変更されるわけではないものの、「就業の場所及び従事すべき業務」とは、労働者が通常就業することが想定されている就業の場所及び労働者が通常従事することが想定されている業務をいい、配置転換及び在籍型出向が命じられた場合の就業の場所及び業務は含まれるが、臨時的な他部門への応援業務や出張、研修等の一時的な変更先の場所及び業務は含まれないとされています(本通達第1の1(1)イ②)。また、テレワーク(労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務)については、労働者がテレワークを行うことが通常想定されている場合には、テレワークを行う場所が就業場所の変更の範囲に含まれるが、テレワークを行うことが通常想定されていない場合には、一時的にテレワークを行う場所はこれに含まれないとされています(本通達第1の1(1)イ④)。
「就業場所・業務の変更範囲」の明示要領については、厚生労働省により、本改正を反映したモデル労働条件通知書(以下「モデル労働条件通知書」といいます。)が公表されており*20、「変更の範囲」に関する具体的な記載例については、厚生労働省パンフレット「2024年4月からの労働条件明示のルール変更備えは大丈夫ですか?」*21(以下「厚生労働省パンフレット」といいます。)の4頁から6頁が参考になります。
同一の使用者との間で、有期労働契約の契約通算期間が5年を超える場合は、労働者は、当該使用者に対する申込みにより無期労働契約に転換できるとされています(労働契約法18条1項)。この点、実務上、有期労働契約の更新上限(通算契約期間又は更新回数の上限)を設けることで、無期転換申込権が発生する前の雇止めを図る例も広くみられるところです。更新上限の設定自体は、違法になるものではありませんが、更新上限の有無が不明確な場合、労働者が契約更新や無期転換の期待を抱く可能があり、労使の間で紛争の原因になりやすいとの指摘がありました(本報告書参照)。
そこで、本改正により、有期労働契約の締結及び契約更新のタイミングごとに、更新上限に関する事項を明示することが求められることになりました(改正労基法施行規則5条1項1号の2)。なお、仮に更新上限がない場合、改正労基法施行規則上、そのことを明示することまでは要しないとされていますが、労働条件の明確化の観点から、モデル労働条件通知書は、更新上限が無い場合にはその旨を明示する様式とされています(本Q&Aの3-2)。
また、有期労働契約締結後に、当該労働契約の変更又は更新に際して、更新上限を新設・短縮しようとする場合には、あらかじめその理由を労働者に説明することが求められるようになります(改正雇止め基準1条)。ここでいう「理由」には、プロジェクトの終了や事業の縮小なども含まれるとされています(本通達第2の1(2))。
更新上限の新設・短縮の理由を説明する場合は、文書を交付し、個々の有期契約労働者に対し面談等により説明することが基本であるものの、特定の方法に限られるものではなく、説明すべき事項を全て記載した労働者が容易に理解できる内容の資料を交付する方法や、説明会等において複数の労働者に同時に説明する方法でも差し支えないとされています(本通達第2の1(3))。なお、労働条件に係る紛争の防止や労働契約法第4条の趣旨の観点から、理由の説明に当たり、労働者に対して新たな更新上限の内容を書面の交付等の方法により明示することが望ましいとされています(本通達第2の1(4))。
前述のとおり、有期労働契約の契約通算期間が5年を超える場合は、労働者に無期転換申込権が発生しますが、かかる無期転換ルールの労働者の間での認知度は依然として低く、十分に活用されていないため、労働者に対する無期転換ルールの更なる周知が課題として指摘されていました(本報告書2(2)参照)。
そこで、本改正により、労働者に無期転換申込権が発生することとなる契約更新のタイミングごとに*22、当該有期労働契約の契約期間の初日から満了日までの間に無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)を書面の交付等により明示することが必要になります(改正労基法施行規則5条5項及び6項)。
また、同時に、無期転換後の労働条件を書面の交付等により明示することも必要になります(同項)。無期転換後の労働条件の明示は、事項ごとにその内容を明示する方法のほか、改正労基法施行規則5条1項に基づき明示すべき有期労働契約の労働条件からの変更の有無及び変更がある場合は、その内容を明示する方法で行うことも差し支えないとされています(本通達第1の1(1)ウ③)。
なお、無期転換後の労働条件の明示は、①上記の無期転換申込権が発生する契約更新時のみならず、②無期転換申込権行使による無期労働契約の成立時においても必要となります。ただし、①の時点で、無期転換後の労働条件に関して、改正労基法施行規則5条5項により明示すべき労働条件を事項ごとにその内容を明示する方法で行っており、かつ、当該明示した労働条件と②により成立する無期労働契約の労働条件のうち同条1項の規定に基づき明示すべき事項がすべて同じである場合には、②の時点においては、その旨を書面交付等の方法で明示することで差し支えないとされています(本通達第1の1(1)ウ④)。
労働者に対して無期転換後の労働条件を明示する場合においては、当該労働条件に関する定めをするにあたって、労働契約法3条2項の規定の趣旨を踏まえて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項について、説明するよう努めることが求められます(改正雇止め基準5条)。具体的には、他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者及び無期雇用フルタイム労働者)の待遇を比較対象として、業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲等の事項について説明するよう努めることが求められます(本通達第1の2(3)及び(4))*23。
本改正は、2024年4月1日より施行されます。(本省令附則1条)。既に雇用されている労働者に対して、本改正により追加された事項を明示する必要はありませんが、有期契約労働者については、契約の更新は新たな労働契約の締結であることから、2024年4月1日以降の契約更新の際には、本改正に従うことになります(本Q&Aの1-1)。また、労基法15条の労働条件の明示は、労働契約の締結に際し行うものであることから(同条1項)、契約の始期が2024年4月1日以降であったとしても、契約締結がそれより前である場合は、本改正は適用されません(本Q&Aの1-2)。
本改正により追加された明示事項を含め、労働条件の明示に義務違反があった場合、当該行為を違反した者及び事業主に対して、30万円以下の罰金が科せられることになります(労基法120条1号、121条)。
本改正は、労働契約開始後の実務運用に広く委ねられている就業場所・業務の変更や有期雇用契約の通算契約期間・更新回数の管理や無期転換について、労働者に対する明示や説明に関する新たな義務を企業に課すものです。2024年4月1日の本改正の施行に向けて、各企業においては、本改正について十分把握した上で、本改正に即した労働条件通知書(雇用契約書)等の書式や実務運用の方針を整備することが求められます。
オーストラリアの外国投資規制の改正により、外国投資家によるオーストラリア国内の土地、水利権、法人などに対する投資に関する新たな通知義務が導入されました。
2023年7月1日から、オーストラリアの外資規制法であるForeign Acquisition and Takeovers Act 1975 (Cth)(以下「FATA」といいます。)の改正(以下「本改正」といいます。)が施行され、Register of Foreign Ownership of Australian Assets(オーストラリア資産の外国投資家所有登録簿)(以下「外国投資登録簿」といいます。)が新設されました。
これまで、オーストラリア国内における投資についてForeign Investment Review Board(外国投資審査委員会)(以下「FIRB」といいます。)の事前承認を得る必要がなかった行為については特段の義務が課されていませんでしたが、本改正により、新たな通知義務の対象となる場合があります。
外国投資登録簿は、外国投資家がオーストラリアの土地、水利権、法人、その他の資産に関して行った一定の行為を記録するものです。
Australian Tax Office(オーストラリア税務局)(以下「ATO」といいます。)が運営していた、従来の水利権、農地、住宅用地の登録制度が置き換えられることとなりました。
本改正に基づく通知義務は、既存のFIRBの事前許可に関する制度と併存するものであり、投資に対してFIRBの承認が必要でない場合でも、外国投資登録簿への通知が必要となる場合があります。
外国投資登録簿への通知義務は、FATAにおける「外国投資家」に適用されます。「外国投資家」の定義には、以下のものが含まれます。
外国投資家は、以下の権利等を取得した後、外国投資登録簿に通知しなければなりません。
これらの権利を取得した者は、原則として、上記の権利等を取得した後30日以内に、外国投資登録簿に通知しなければなりません。
以下の変更については外国投資登録簿に通知を行う必要があります。
これらの事情が発生した場合、関連する当事者は、変更を認識した日または認識すべきであった日から30日以内に外国投資登録簿に通知しなければなりません。
原則として、投資家は2023年7月1日以前に取得した資産(またはその変更や処分)について通知する義務はありません。
ただし、2023年7月1日以前に取得していた資産であっても、同日以後にFATAにおける「外国投資家」となった場合、「外国投資家」となった時点で有するすべての通知義務のある資産について外国投資登録簿に通知しなければなりません。
また、ATOにより運営されていた従来の水利権、農地、住宅用地の登録制度に登録済みの資産に関して上記の変更があった場合、外国投資登録簿に通知しなければなりません。
個人である外国投資家とその代理人は、オーストラリアにおける個人に固有のデジタル識別子であるmyGovIDを申請した上でATOのオンラインサービスを通じて外国投資登録簿への通知を行うことができます。個人である外国投資家はこのサービスを利用するために、まず自身を登録するとともに、自身を代理して通知を行う代理人を指定することができます。
法人である外国投資家の場合、法人の取締役またはパブリックオフィサー(税務担当役員)は、各個人のmyGovIDを取得した後、これを用いてATOのオンラインサービスに法人を登録する必要があります。登録が完了した後、法人の秘書役、弁護士、外国投資登録簿コンプライアンス担当の従業員などが法人を代理して通知を行う代理人を指定することができます。
外国投資登録簿の登録内容は非公開ですが、外国投資登録簿を管理するATOのみならず、他のオーストラリア政府機関と共有される場合があります。
FATAにおける外国投資登録簿に関する義務に違反した場合、7万8250豪ドル(執筆当時のレートである1AUD=97円の場合:約760万円)以下の罰金が科せられます。この罰金は、違反行為の度に適用される場合があります。
本改正は、オーストラリアに土地所有権を有する企業やオーストラリアでM&Aを行う企業にとって特に重要であり、事業にどのように影響するかを検討すべきです。
日系企業による投資であれば、FIRBの事前承認が必要がとなる閾値が高いため、現在までオーストラリアの外国投資規制の対象となる取引が比較的限定されていましたが、本改正による外国投資登録簿の導入により、プラクティスの見直しが必要となります。
例として、FATAにおける「外国投資家」である日系企業のオーストラリア法人の子会社が5年以上のオフィスの賃貸契約を締結した場合、外国投資登録簿への通知義務が発生する場合があります。また、日系企業が、オーストラリアでM&Aを実行する際に、対象会社が外国投資登録簿への通知義務の対象となる資産を保有している場合、M&Aの実行に伴い当該対象会社が「外国投資家」となることにより、外国投資登録簿への通知が必要となる場合があります。
外国投資家が新しい資産を取得した場合には、外国投資登録簿への通知の要否の検討、オーストラリアにおける土地や有価証券の所有の記録などが必要となりますので、複数の子会社を有する企業は、外国投資登録簿に対するコンプライアンス体制の構築が重要となります。
※記事の詳細については、以下よりPDFをダウンロードしてご覧ください。
*1 対象会社のこうした行動に際しては、経営陣の利益相反の問題への対応や、取引条件の改善の観点から、社外取締役が重要な役割を果たし、また、個別の事案における状況に応じて、特別委員会の設置や外部のアドバイザーの助言等の公正な手続を講じることが指摘されています。特別委員会の設置については、本指針3.3に詳説されています。
*2 具体的には、取締役会の構成を独立性の高いものとする(例えば社外取締役の比率を過半数とする)こと、事業計画や資本構成の検証、定期的な事業ポートフォリオの見直し、投資家との対話や情報開示の充実、株式の流動性を高める取組み、経営陣の交代・強化やM&A、その他の課題の洗い出し等が挙げられています。
*3 具体性・目的の正当性・実現可能性が合理的に疑われる場合の考慮要素は、本指針3.1.2に例示されています。「真摯な買収提案」該当性の判断に迷う場合などには、情報管理を適切に行った上で外部のアドバイザーの助言を受けることも検討されるべきであると指摘されています。
*4 特別委員会の構成としては、①会社に対して法律上の義務と責任を負い、②取締役会の構成員として経営判断に直接関与することが予定された者であり、③対象会社の事業にも一定の知見を有している、社外取締役を中心とすることが基本であるとされています。
*5 特に、取締役会の過半数が社外取締役でない会社においては、取締役会の独立性を補完し、取引の公正性を確保するために、独立した特別委員会を設置し、その判断を尊重することが有益であると指摘されています。
*6 これまでの裁判例を踏まえると、株主総会における決議を経ることで、対抗措置の発動の適法性が相対的に認められやすくなるものと考えられると指摘されています。
*7 従前より日本の裁判所は、対抗措置の発動の差止め事由である不公正発行又は株主平等原則違反に該当するかについて、必要性と相当性の観点から審査を行っているものと考えられると指摘されています。
*8 江頭憲治郎『株式会社法〔第8版〕』(有斐閣、2021年)874頁
*9 落合誠一編『会社法コンメンタール12』(商事法務、2009年)107頁(柳明昌)
*10 落合編・前掲(注9)107頁(柳明昌)
*11 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001080102.pdf
*12 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001080103.pdf
*13 特定の事項(①労働契約の期間、②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準、③就業の場所及び従事すべき業務、④始業及び終業の時刻・休憩時間・休日等、⑤賃金・昇給並びに⑥退職)については常に明示(上記のうち昇給以外の事項については書面による明示)が必要である一方、使用者が定めを置く場合に限って明示が必要となる事項(⑦退職手当、⑧臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与及び最低賃金額等、⑨労働者に負担させるべき食費、作業用品等、⑩安全及び衛生、⑪職業訓練、⑫災害補償及び業務外の傷病扶助、⑬表彰及び制裁並びに⑭休職)もあります。
*14 書面の交付が求められる明示事項について、労働者が希望した場合は、ファクシミリの送信、電子メール等の送信により明示することも可能です(労基法施行規則5条4項但書)。
*15 無期契約労働者だけでなく、パート・アルバイト、契約社員、派遣労働者、定年後再雇用の労働者を含む、すべての労働者に適用されます。
*16 「労働基準法の一部を改正する法律の施行について」(厚生労働省平成11年1月29日基発第45号)
*17 https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000936727.pdf
*18 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156120.pdf
*19 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156119.pdf
*20 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html
*21 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156048.pdf
*22 例えば、1年間の有期雇用契約の更新が繰り返されて通算5年間経過した後、「6回目の1年契約」に向けた更新において明示義務の対象となるとともに、仮に無期転換権の申込がなされずに「7回目の1年契約」に向けた更新がなされる場合も明示義務の対象となります。
*23 説明の具体例として、厚生労働省パンフレットの11頁「対象となる労働者への説明例」が参考になります。