
地政学的動向を背景としたロシア系脅威アクターの活動と日本への影響(後編)
2025年における重要なイベントを視野に入れ、日本を標的としたロシア系脅威アクターによるサイバー攻撃のシナリオと対応策をまとめます。
PwCのメインシナリオでは、世界経済が市場為替レート(MER)ベースで約5%拡大する、と予測しています。これは、21世紀に入って最も高い成長率です。私たちの予測は、効果的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの展開と普及が成功すること、財政政策および金融政策の緩和が継続することを前提条件としています。しかしながら、今後3〜6カ月、特に冬を迎えている北半球諸国では、(最近の英国のように)国内の一部または全土でさらなるロックダウンを余儀なくされる可能性があり、厳しい状況が続くでしょう。例えば、一部の先進国の生産高は、今年第1四半期に縮小する可能性があります。私たちは、今年下半期、経済がプラス成長に転じる可能性が高いと考えています。下半期は、先進大国において、国民の大部分へのワクチン接種が完了すると予測されるタイミングでもあります。
PwCは、2021年末または2022年初頭までに、世界経済はパンデミック以前の生産高の水準まで回復すると予想しています。しかし、「回復」と言ってもそのレベルは決して均一ではありません。一方の端にあるのは中国経済であり、すでにパンデミック以前の規模を上回っています。もう一方の端にあるのが、サービス中心(英国、フランス、スペイン)または資本財輸出中心(ドイツ、日本)の先進国の大部分であり、これらの国々が、2021年末までにパンデミック以前のレベルまで回復する見込みは低いでしょう。こうした国々では、生産高は増加しているもののその水準は低く、これが失業率の押し上げにつながる恐れもあります。経済協力開発機構(OECD)による2020年12月の経済見通しでは、加盟国の2021年失業率は約7%(パンデミック以前は同5.5%)と予測しています。影響を受ける仕事の大半が、所得分布の最下部に属する仕事である可能性が高いことから、所得格差が悪化する恐れがあります。したがって各国政府は、COVID-19との戦いから、労働者のアップスキリングや新たな労働集約型分野での雇用創出などによる高失業率対策へと、徐々に重点を移していくでしょう。
2021年は、世界三大経済国・貿易圏(米国、EU、中国)が初めて足並みを揃えて、気候変動との戦いに再注力する年になります。米国はパリ協定に復帰し、今年の早い段階で国際気候サミットを主催すると予想されています。また、EU加盟国は、4月末までに、よりグリーンかつ、よりデジタルな経済への移行加速化プランを最終決定する予定です。その後、欧州委員会は、このプロセスを推進するために、ユーロ圏GDPの約0.5%(または5年間で5%)に相当する金額を、初回助成金および融資として提供すると思われます。最後に、中国では第14次五カ年計画が実施される予定ですが、同計画にはエネルギー効率の向上が含まれています。今年後半にグラスゴーで開催予定の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)では、こうした問題を含む諸課題が議論される予定です。
国際通貨基金(IMF)の最新予測によると、イタリアの2021年GDP予測は2兆ドルラインを上回り、米国、中国、ドイツ、インドなど7カ国のGDP2兆ドル超グループに再び加わると予想されています。インドは、2019年はMERベースで英国、フランス両国を上回る世界第5位の経済大国でした。しかし、パンデミックの影響に伴うMERの変化により、2021年は世界第7位まで順位を下げる(すなわち、英国、フランスの後塵を拝する)と予測されます。ただし、これは一時的なものとなるでしょう。現在のトレンドを考えると、インドは2020年代半ばまでにフランスとドイツを追い越すほどの勢いがあります。
図表2:経済大国のGDP(名目米ドル)
|
2019a |
2020p |
2021p |
米国 |
21.4 |
20.8 |
21.9 |
中国 |
14.4 |
14.9 |
16.5 |
日本 |
5.1 |
4.9 |
5.1 |
ドイツ |
3.9 |
3.8 |
4.3 |
インド |
2.9 |
2.6 |
2.8 |
英国 |
2.8 |
2.6 |
2.9 |
フランス |
2.7 |
2.6 |
2.9 |
イタリア |
2.0 |
1.8 |
2.1 |
ブラジル |
1.8 |
1.4 |
1.4 |
a:実績値 p:予測値
Source: IMF World Economic Outlook
IMFが2020年10月に発表した「世界経済見通し」によれば、G7の公的債務は2021年に合計約4兆ドル増加することが予想され、7兆ドル増となった昨年に比べて大幅減となります。この予測値は、G7の公的債務レベルがGDPの約140%に達することを意味しており、世界が徐々に健康上の緊急事態から脱する中で、労働者や企業が今後も必要とする支援レベルを反映したものとなっています。一方、新興7カ国(E7)の公的債務は約2兆ドル増加すると予測されています。
これは憂慮すべきことでしょうか。公的債務が持続可能であるために最も重要なのは、実質GDPが、公的債務で上昇した実質金利水準を上回る速度で成長することです。経済活動率の「V字回復」および莫大な金融支援の水準を考えると、この条件はおそらく満たされるでしょう。
2020年8月、米連邦準備制度はその責務(マンデート)の見直し作業を完了し、「平均インフレターゲティング」の導入を決定しました。これは、(理論的概念である自然失業率よりも)実際の雇用水準により焦点を当てるものです。実質上、この決定は、連邦準備制度の政策金利目標が従前の予測よりも長期間、低水準に留まる可能性がある、ということを意味します(図表3参照)。欧州中央銀行(ECB)も、金融政策戦略の戦略的見直しを行っています。その結果は2021年第4四半期に発表される見込みですが、ECBも昨年に米国で掲げられた政策と同様の方向に進むことを示す兆候もいくつか見られます。したがって、金融緩和政策は2021年も継続すると予想されます。
CO2排出量軽減に向けた地域レベルの取り組み(EUグリーンディール)および国際合意(パリ協定など)では、今後数十年間に巨額のグリーンインフラ投資が求められています。
環境プロジェクトへの直接融資に用いられるグリーンボンドが世界の債券市場に占める割合は現在、5%未満となっています。PwCは、2021年にグリーンボンドの発行総額が初めて5,000億ドルを超えると予測しています(図表4参照)。
こうした流れは、これらの金融商品に一定の基準を設けるであろう「EUグリーンボンド基準」によって、さらに強まる可能性もあります。
最後に、環境・社会・ガバナンス(ESG)ファンドに対する投資家需要は今後も高まると予測しています。具体的には、私たちの楽観シナリオの場合、欧州においてESG を考慮するミューチュアルファンド残高は、2025年までに最大57%に達すると予測しています。(このトピックに関するPwCの調査はこちら)
PwCは石油価格について、2020年の低水準から最近は回復傾向にあるものの、引き続き軟調に推移する、と見ています。中東でのショックや地政学的展開を除き、特に北半球諸国の石油需要は、(中国では最近回復しているものの)今年上半期は低水準が続く可能性があります。2021年下半期、COVID-19のワクチンが普及し、経済活動が加速すれば、需要は回復する可能性が高くなります。石油生産レベルも同様の動きになると予測されます。今年上半期の石油供給量はCOVID-19危機前の水準を大幅に下回り、需要回復に合わせて次第に増加していくでしょう。
電源に占める化石燃料の割合は圧倒的ですが、EU、インド、中国において太陽光発電容量が増加しており、今後も急速に増加することが予測されます。こうした流れが続いた場合、世界の電力部門において、太陽光発電容量は、2023年には天然ガス、2024年には石炭を上回ることになります。
※本コンテンツは、PwC英国が2021年1月に発表した「Global Economy Watch」を抜粋し、翻訳した要約版です。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。
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