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2022-09-15
西松建設株式会社(以下、西松建設)は2022年7月1日に、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する準備が整っている事業者を経済産業省が認定する「DX認定」を取得しました。
「空間」のイノベーションを目的にDXに取り組む西松建設のDX戦略室DX企画部部長・増田友徳氏と、「DX認定」取得を支援したPwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)のマネージャー・小形洸介との対談では、全社的にDXを持続的に推進するにあたっては、トップの関与のもと、DXの推進態勢をアップデートしながら、その状況を継続的にモニタリングすることの重要性が浮かび上がってきました(本文敬称略)。
対談者
西松建設 DX戦略室 DX企画部 部長 増田 友徳氏
PwCあらた有限責任監査法人 マネージャー 小形 洸介
※所属・肩書は当時のものです
(左から)増田 友徳氏 、小形 洸介
西松建設 DX戦略室 DX企画部 部長 増田 友徳氏
小形
DX認定の取得、おめでとうございます。西松建設ではDXに取り組む方針と空間のイノベーションに対する強い決意を打ち出されていますが、西松DXビジョンで掲げられている「現場力がシンカしたスマート現場」「仮想と現実が融合した一人ひとりが活躍できるワークスタイル」「エコシステムで新しいサービスや空間を創り出すビジネス」という、空間にイノベーションをもたらすための3つのポイントをぜひ、教えてください。
増田
ありがとうございます。まず、「現場力がシンカしたスマート現場」についてですが、西松建設にとっての現場力とは、施工管理能力に加えて、お客様や社会の課題を見出して新たな施策を企画する能力、そして現場で問題を提起して自律的に解決策を提案する能力を指しています。そこでキーワードとなるのが、2つの意味での「シンカ」です。今ある現場力をDXによってさらに質の高いものに「深化」させ、今までになかった新たな現場力の獲得すなわち、現場力の「進化」につなげていきます。例えば、QCDSE(Quality:品質、Cost:原価、Delivery:工期、Safety:安全、Environment:環境)を「深化」させた施工空間を実現しつつ、お客様のニーズを捉えて、デジタルとデータを活用した建物や構築物の長期的なシミュレーションを行うことで、期待を上回る提案を行い、価値ある空間へと「進化」させ、高性能な現場を実現していきます。
次に、「仮想と現実が融合した一人ひとりが活躍できるワークスタイル」については、働き手にとって魅力ある産業へのイノベーションを目指していきます。建設業にとっての課題である働き手不足を解決するためには、生産性を高めていくことが大切であり、西松建設では、各個人が生き生きと働ける快適な空間の提供を目指しています。「西松DXビジョン」のマップに仮想空間上のオフィスが描かれているように、従業員には働く場所を問わず、楽しく付加価値の高い仕事ができるような環境を提供していきたいですね。
そうした現場とワークスタイルの変革の先に、「エコシステムで新しいサービスや空間を創り出すビジネス」へのイノベーションがあると考えています。私たちの持つ建設に関するデータを活用するだけでなく、さまざまな業種の事業者と連携し、彼らが持つデータも循環させるエコシステムを形成することで、お客様や社会に対し、今までにない理想的な空間を提供していきたいです。
小形
「西松DXビジョン」ではビジョンマップがとても特徴的です。自然、近代的な建設物、デジタルな世界観の3つが融合しており、まさに西松建設の空間のイノベーションを象徴していますね。
現場力の「シンカ」を体現した事例としては、施工DXの「BIMを基盤とした作業のロボティクス化」や、「AIモデルを活用したシールドマシンの掘進方向制御の支援システム」などが挙げられるかと思いますが、現場の自動化・遠隔化の技術開発に積極的に取り組まれているようですね。
増田
はい。例えば、現場力の「シンカ」が目指す空間価値の1つとして、「安全」が挙げられます。現場で事故が起こらないようにするためには、作業をできるだけ省人化する必要があります。そのため、センサーデータなどを活用し、現場の状況を正しく把握するための遠隔監視技術や、施工を自動化する技術の開発を進めています。西松建設が特に強みとしているトンネル施工については、掘削の自動化がかなり実現していきます。こうした、遠隔化や自動化などの各種施策において取得されるデータは、QCDだけでなく、ESにも寄与し、未来のよりスマートな現場づくりに結びつくものだと考えています。
PwCあらた有限責任監査法人 マネージャー 小形 洸介
小形
まさに、デジタルやデータの利活用による変革ですね。一方で、DX推進体制や人財の育成も、デジタルおよびテクノロジーの活用、変革には重要だと理解しています。特にプロジェクト推進体制・人財育成に対する部分は、今回のご支援の中でも、増田さんの強いこだわりが垣間見えました。DX認定取得に至る道のりの中で、DX推進の経営管理態勢や推進体制を検討するにあたっては、どのような点を重要視してプランニングしてこられたのでしょうか。
増田
これまではICT部門が中心となり、業務システムの入れ替えや新規導入を通じて、一部のDX施策は推進していました。しかし、必ずしも事業部門を含む全社的な推進体制でDX施策に取り組めていたわけではありませんでした。実際は業務領域のDXにとどまり、本来取り組みたい施工や新規ビジネスの領域にまでDXを発展させ、ビジネス変革を目指すのは困難な状況でした。その背景には、DX推進体制と人財の確保・育成に課題があったことが大きいと思います。
そこで、スピーディーに、かつ全社的にDXに取り組むため、社長を委員長とする「DX推進委員会」や、独立組織としての「DX戦略室」を設置しました。ここで重要なのは、組織を立ち上げるだけではなく、具体的な推進体制としてDX施策のミッションに応じたプロジェクトチームを組成し、そこに参画するメンバーが当事者意識を持つことだと考えています。さらには、外部連携を含むDXプロジェクト推進チームの方針を打ち出すことで、組織全体でのDXの有機的連携を高めるとともに、DXを推進する組織風土を継続的に醸成することにチャレンジしています。今回は「西松DXビジョン」の打ち出しと同時に、DX推進体制も同時に整理することで、1つの大きなスタートを切ることができました。
小形
今回のPwCあらたの支援についても忌憚のないご意見をいただければと思います。
増田
中長期的なDX課題の可視化には、デジタルガバナンス・コードとDX推進指標を用いたPwCあらたとの課題検討が効果的でした。組織設計上の役割・権限を具体化することの重要性や、DX推進のストーリーを作ることの重要性に気付くことができました。認定取得のためのみならず、全社的に納得感を持ってDXを進めるにあたって、ビジョンの策定から推進体制、IT、ガバナンスの構築まで、ストーリーを作ったことの意義は大きかったです。それが認定のスピーディーな取得にもつながったと考えています。
また、監査法人である強みを活かし、ガバナンスにおける対外公表の要点や、DX認定取得の審査のポイントについて客観的に助言していただいたことで、自分たちにはない目線を持つことができ、社内検討の後ろ盾として大変役立ちました。今後も、第三者の目を入れながら、KPIや自己診断ツールなどを用いてDX推進状況を定期的にモニタリングしていきたいですし、それこそが持続的にDXを進めるためには重要になると感じています。
小形
貴重なご意見と大変嬉しいお言葉をありがとうございます。クライアントごとに戦略の考え方やステークホルダーに打ち出したいミッション・施策が異なる中、DXの準備に一番重要なのは、現時点のDX施策の推進状況や社内のガバナンス実態など、DX成熟度を把握することだと感じています。定点モニタリングによって、デジタルガバナンス・リスクマネジメントの高度化に資するご支援ができるよう、当法人もバリューアップしてまいります。
小形
少子高齢化により労働人口の減少が続き、労働環境の是正要請や、建設内需の純化など、対処すべき課題は増える一方ですが、建設業界が国内の社会インフラ機能に対して果たす役割は普遍的であると理解しています。
増田さんは今回の「西松DXビジョン」の策定に合わせてDX企画部長に就任されましたが、DXを推進することで建設業界のビジネス、そして業界そのものはどのように変革が進むとお考えでしょうか。また、それに対し、創業150年の歴史を誇る西松建設は社会・お客様とどのように向き合っていくのか、その展望を最後にお聞かせください。
増田
経済活動や生活の下支えとなるインフラを提供し、社会に貢献することは当然のこととして、働き住まう人々のさまざまな活動・生活をより快適にできるような空間を提供することこそが、西松建設の価値であると考えています。そのためには、「建設会社」ではなく「サービス提供会社」へ変革が必要であると思っています。「インフラ」としてのモノづくり・まちづくりだけでなく、住んでいる人々にサービスを提供できるスマートシティやコンパクトシティなど、「インフラサービス」を創っていきたいと考えています。例えば、異業種の各プレイヤーと協力しながら、メタバースを活用することで、地方のスマートシティにおいて都心と同じサービスを提供できるプラットフォームを提供できないかなど考えています。
建設データは人々の暮らしに紐づいています。デジタル・テクノロジーを活用し、ヒトが快適だと思う空間・働き方へのアクセス、パーソナライズを可能にすることで、人々の暮らしを豊かすることができると考えています。今後も価値ある建造物とサービスを社会に提供することで、安心して暮らせる持続可能な社会・環境づくりに貢献していきます。
小形
現実世界とデジタルの仮想空間が融合することで新しい空間やマーケットが生まれるということですね。PwCあらたとしてもこうした新しい事業におけるガバナンス・リスクマネジメントの高度化を通じて、デジタルガバナンスや地域DX推進などの支援にもチャレンジしていきたいと考えています。
本日はどうもありがとうございました。