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2020-03-09
英国政府は2017年3月29日にEU条約(リスボン条約)50条を発動し、正式にEU側に離脱を通告しました。
英国とEUは2017年6月から本格的な離脱交渉を開始し、2018年11月に離脱の条件をまとめた離脱協定案について英EU間で合意に至りました。しかし、英国内での議会承認において、北アイルランドとアイルランドの国境管理のために設けられたバックストップ(安全策)に関する反発が多く、2019年1月の英議会において大差で否決されました。さらに、その後も修正案を採決したものの否決され、英国内で離脱の方向性がまとまりませんでした。そのため、英国側は3月と4月に2度にわたりEUに離脱日の延期を要請し、2019年4月のEU首脳会議で、最長で10月31日までの離脱延期が承認されました。
延期期間に、メイ首相は野党である労働党との協力や離脱協定の修正などに取り組んだものの、閣僚を含め党内の支持を失い、党首を辞任すると発表しました。それに伴い与党である保守党内で党首選が行われ、7月24日にジョンソン首相が就任しました。
ジョンソン首相は、「合意なき離脱」も辞さず、必ず10月末に離脱するという姿勢で交渉に臨みました。しかし議員たちの合意なき離脱への反対は根強く、10月19日までに離脱協定案を英議会で承認できなかった場合、英政府に離脱の延期を義務付ける離脱延期法が9月に成立しました。
その後、ジョンソン首相は、懸案となっていたバックストップに関する代替案を含んだ離脱協定案に関する新たな提案を行い、協議の末、10月17日にEUと合意しました。しかし、英議会では、関連法案が成立するまで新離脱協定案の採決を保留するという動議が成立したため10月19日までの離脱協定案承認が不可能となりました。新離脱協定案の採決見送りを受けて、ジョンソン首相は法律に基づき離脱日の延期をEUに対して要請し、最長で2020年1月31日までの離脱延期が承認されました。
10月29日、英下院では解散総選挙を行う法案が通過し、12月12日に解散総選挙が実施されました。結果、ジョンソン首相の率いる保守党が過半数を超える議席を獲得して圧勝しました。これにより、英国は新離脱協定案を議会で承認し、2020年1月31日に正式にEUから離脱しました。
2月1日からは、通商を含む将来関係を交渉する期間である「移行期間」に入っています。
今後、英EU間での自由貿易協定(FTA)などの新たな枠組みについての協議が開始される予定ですが、貿易協定の妥結には、一般的に数年程度かかるとされています。
そのため、離脱した後の金融機関や企業に与える影響を軽減する目的で、経過措置として移行期間が設けられました。2018年以降、英EU間で移行期間について協議が開始され、2018年3月のEU首脳会議で承認されました。
移行期間は離脱の翌日(2020年2月1日)から2020年12月31日までで、この期間中は、英国は欧州単一市場や関税同盟に暫定的にとどまることになり、EU法の適用を受けることになりますが、加盟国ではないので政策決定などには参加できないとされています。
詳細はBrexit移行取り決めのゆくえ~閣僚理事会交渉指令をご参照ください。
なお、英EU間での交渉がまとまらず、合意なき離脱をする場合には、移行期間は適用されません。
英国でEU離脱への関心が高まった背景に、他国からの移民の急増が大きな要因として挙げられています。英国は2000年代、東欧などEU新規加盟国から移民を積極的に受け入れました。しかし、2008年にリーマンショックが起きた後に状況が一転します。英国の失業者を中心に「移民に職を奪われている」という不満が高まり、また、シリア内戦長期化による難民対策やEUの分担金の予算配分へも不満が高まり、英国のEU離脱問題へと発展していきました。
そしてキャメロン首相(当時)が2016年6月23日に実施した英国のEU離脱の是非を問う国民投票において、離脱派:残留派が52%:48%となり、EU離脱派が勝利しました。投票率は71.8%、約3000万人以上が投票を行いました。
2016年7月、英政府は、保守党のベテラン議員、デイビッド・デイビス 氏を欧州連合離脱担当相に任命し、英国のEU離脱のため新省を発足させました。
国民投票の際に離脱を推進した、リアム・フォックス前国防長官を国際貿易担当相に任命、またEU離脱派の中心人物であったボリス・ジョンソン 氏を外相に任命しました。
また、対するEU側では、欧州委員会が英国との交渉担当者にフランスの政治家ミシェル・バルニエ 氏を指名し、離脱交渉を行ってきました。
2018年7月、メイ首相(当時)が閣内合意を取りまとめたEU離脱後の方針に抗議し、デイビスEU離脱担当相と離脱派を代表するジョンソン外相が突如辞任することになり、新しい離脱担当相にドミニク・ラーブ 氏、また外相にはジェレミー・ハント 氏が任命されました。
2018年11月、英国とEU間で暫定合意した離脱協定案の内容に反対し、英EU離脱担当相のドミニク・ラーブ 氏、マクベイ労働・年金相ら4名の閣僚らが辞任しました。その後、マクベイ労働・年金相の後任にラッド前内相、EU離脱担当相にはバークレイ保健担当閣外相が任命されました。離脱担当相は2018年の間に3人が担当しました。
2019年7月、ジョンソン新首相が就任し、新内閣が発足しました。EU離脱担当相はバークレイ氏が留任しましたが、英国のEU離脱に伴い、ジョンソン首相はEU離脱省を解散しました。
第1段階として、以下の分野について優先して議論が開始されました。
十分な進展があれば、2017年秋ごろから第2段階として通商協定などの交渉が開始される予定でしたが、交渉は難航し、2017年12月に合意に至りました。
2018年以降は、まず離脱後の経過措置として設けられる「移行期間」について協議され、11月には離脱協定案について合意されましたが、その中に含まれるバックストップ(安全策)について英議会での承認が得られず、見直しについて英EU間で協議が続けられてきました。
これまでの交渉の詳細については、英国とEU離脱交渉~これまでの進捗をご参照ください。
「意味のある投票」とは、2018年EU離脱法第13条で定められている投票に付けられた名前であり、EUとの交渉の結果を英国議会が承認しなければならないことを保証するメカニズムです。
英国議会において、議員の意思を確認するために一定数の支持が得られる複数の選択肢について投票し、支持の多い案を確認する制度です。ただし、この示唆的投票には政府への政治的拘束力はありません。
EUの予算は加盟国が分担して負担しています。離脱により、未払いとなる分を債務としてEUが清算請求しており、手切れ金とも呼ばれています。
支払額について折り合いがつかず交渉は難航しましたが、2017年12月に2020年までのEU予算の割り当てを英国が支払うことで合意しました。結局、英国が譲歩する形となり、英首相官邸によると総額は約400億~450億ユーロとされています。
加盟国間での貿易で関税をなくし、加盟国以外からの輸入品に共通関税を設定する同盟のことです。
EU離脱により英国が関税同盟を抜けると、EUへの輸出品に関税が復活し、特に製造業などの企業活動に影響がでる可能性があります。
製造メーカーなどにとって、英国とEUの間の輸出入で高い関税がかかるようになると、生産拠点としての有利性は失われる可能性があります。
EEA(欧州経済領域)は、EUの単一市場28カ国と、EFTA(欧州自由貿易連合)のうちスイスを除いた3国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー)から構成されています。EFTAの3国は財政への貢献と人の自由な移動を受け入れることと引き換えに、単一市場への完全なアクセス権を持っています。4つのEFTA加盟国は関税同盟に属しておらず、第3国との貿易協定を交渉することができます。
2019年3月、英国政府は、合意なき離脱となった場合、さまざまな商品の輸入関税を引き下げると発表しました。英国政府が発表した暫定関税では、英国への輸入総額の87%が無関税の対象となります。これは暫定的な措置として、合意なき離脱から最長で1年間適用されるとしています。
2018年12月、EU司法裁判所は、英国のEU離脱をめぐり、他の加盟国の同意がなくても一方的に離脱通知を撤回できるとの正式な判断を示しています。EU司法裁判所によると、離脱撤回は離脱協定の発効前か、離脱協定の合意がない場合は2年間の離脱交渉期間中としており、また、離脱撤回は「民主的プロセス」によって決定されなければならないとしています。
将来の自由貿易協定(FTA)では、英国側、EU側ともEUとカナダが合意した「カナダモデル(EUカナダ包括的経済貿易協定:CETA)」を希望するとしています。ただし、EUは英国に対して、関税ゼロの貿易協定を結ぶことと引き換えに、労働、環境、国家援助規制、競争、税制などでEUと同レベルの水準の保護を要求するとしています。
詳細は以下のページを参照してください。
2国間または地域間(多国間)で協定を交わし、輸入割当や関税などの貿易障壁を撤廃し、自由貿易を行うための取り決めのことです。モノだけでなく、サービスや投資なども対象とした広範囲な分野での取引の自由化が含まれる場合もあります。英国とEU間のFTAは、第50条に基づく離脱後の将来の関係を定義するものとなります。
EUとカナダによる「EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)」をベースとする通商協定です。カナダとEUとの自由貿易協定(CETA)は、物品のほとんど全ての関税は廃止されていますが、英国にとって重要な食品や化学など一部の産業や、サービス部分は十分にカバーされていません。そのため、英国はカナダプラス型として、カナダ型にさらに重要な産業における標準の相互承認や、サービス部分の強化などを求めています。
欧州経済領域(EEA)に加盟することによって、従来同様に単一市場への自由なアクセス権と「移動の自由」を確保するという選択です。しかし、EUの政策決定に関与できないにもかかわらず、EU予算への拠出を求められます。そのため、離脱強硬派の要望には沿わないモデルと言われています。
「カナダ・プラス・プラス・プラス」はデイビット・デイビス 氏(前EU離脱担当相)が提唱した、カナダ型のFTAを大きく拡充した通商協定で、金融などサービス分野でのアクセスも含めたいとしています。ボリス・ジョンソン 氏(前外相)が提唱する、「スーパーカナダ型」は全ての輸出入の関税が廃止され、サービス分野もカバーし、規制の完全な相互承認も含まれるという案です。
WTO(世界貿易機関)は貿易に関する一般的なルールを定め、多国間貿易体制の維持・強化を担う国際機関です。もしEUと英国間でFTAが締結できなければ、将来の英EU間の貿易はWTOのルールに従い実施されることとなります。WTO協定での取引は、製品の承認や税関検査など、事務手続きや物流に関する問題が起こると予想されます。
現在、共にEU加盟国である英国領北アイルランドとアイルランドの国境は、自由に人やモノの行き来ができます。しかし、英国がEUを離脱することにより、今後、国境管理をどうするのかという課題がありました。
メイ首相の保守党に閣外協力する北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)はEU離脱を支持し、英国への帰属を重視しているため、アイルランド国境管理を厳格化しないことに反対し、交渉は難航しました。
2017年12月の合意では、北アイルランドとアイルランドの国境に検問などは設けず、自由な行き来を維持することになりましたが、どのような方法で人やモノの流れを管理していくかなど具体策は盛り込まれておらず、多くの課題が先送りされています。
バックストップとは防御策、安全策の意味です。英国とEUは北アイルランドとアイルランドの国境に厳格な国境(ハードボーダー)を設けないところまでは合意していますが、その詳細な方法については、今後決めていくことになっています。もしその方法が決まらなかったり遅れたりした場合でも、北アイルランド/アイルランド間に開かれた国境を維持するための保障案が「バックストップ案」です。バックストップ案は離脱協定の一部に含まれており、2018年11月の合意内容では、北アイルランドの物品と農産物をEUの単一市場内にとどめ、明確な境界線を回避する「代替的な取り決め」が見つかるまで、英国全体がEUの関税同盟内にとどまることとしています。
与党の保守党に閣外協力する北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)は、北アイルランドだけがEUの制度に残るのは、英本島との間に事実上の国境が引かれることになり、「国家の一体感が損なわれる」として反対しています。また、離脱派の議員は「バックストップは英EU双方の合意がない限り、終了できない」との定めによって、英国が無期限でEUの関税同盟内に封じ込められて関税自主権が損なわれる可能性があるとして反対しています。
そのため、2018年12月のEU首脳会議では、バックストップを一時的な措置とする方針を表明する共同声明が採択され、2019年1月には、EU側が英EU間の将来の貿易関係についての合意を2020年末までに目指すという確約を守ると表明しましたが、その後、離脱協定案は英議会において大差で否決されました。そのため、メイ首相(当時)はEUとバックストップについて引き続き協議するとしましたが、EU側は一度合意した離脱協定案の修正には応じない姿勢を示し、2019年3月11日に、英国が永久にバックストップに拘束されないように、離脱協定とは別の共同文書を設けることで合意しました。しかし、英議会はこの修正にも納得せず、再度、離脱協定案を否決しました。
7月に就任したジョンソン首相は、バックストップの代替案を提案し、修正した離脱協定案でEUと合意しました。
2018年7月に首相の別荘(チェッカーズ)で行われた閣僚会合で合意したEUとの将来の関係に関する方針です。主にEUとの貿易協議に臨む英国の方針について合意した離脱案であり、次の要素を含みます:1.アイルランド国境には物理的な国境を設置しない、2.共通ルールに基づくモノの自由貿易地域の設置、3.新たな通関手続きを導入し、関税障壁の無いサプライチェーンの維持、4.他の国々との自由貿易協定(FTA)を念頭に置いた独立した通商政策、5.紛争解決の制度的取り決め、6.人の自由移動の制限。後日、これらの詳細内容を含む交渉指針としてBrexit白書が発表されました。
英国が、EU市民に対して現在第三国からの労働者に対し実施している制度と同様の労働許可システムが適用されるかどうかに依存します。
詳細は以下のページを参照してください。
単一パスポート制度とは、金融機関が同じ免許で単一市場内で自由に業務ができる制度のことです。
域内では、銀行だけでなく保険会社、投資運用会社も免許を取得すれば業務可能となることから、単一パスポート制度と単一市場によって欧州の金融業は大きく発展しました。
しかし、離脱後は英国で取得した免許がEUで通用しなくなる可能性があります。
そのため、金融機関は英国の離脱に備え、欧州大陸側でも免許を取得し、英国と大陸の双方に拠点を確保するという動きが出ています。ドイツのフランクフルト、オランダのアムステルダム、アイルランドのダブリンなどの都市が、移転候補先として挙げられています。
EUは英国の離脱に伴い、現在英国に拠点があるEU機関の欧州医薬品庁(EMA)をオランダのアムステルダムに、欧州銀行監督機構(EBA)をフランスのパリに移転することを決定しました。
新薬の承認や医薬品の安全性の監督を担当するEMAが移転することで、英国とEU加盟国との共同研究機会の減少や、移転に伴う人材の流出に伴う英国の研究開発力の低下などが懸念されています。
一方、移転先の都市にとっては、関連する産業企業の誘致や雇用拡大などの効果が期待されています。
両機関とも、当初の英国のEU離脱予定日であった2019年3月に移転しました。
PwCによる英国経済の主な見通しは以下のとおりです(PwCのマクロ経済チームが年3回発行している英国経済についてのレポートの最新版、UK Economic Outlook November 2019より)。
英国の経済成長率は、2019年に1.2%、2020年には1%程度と緩やかなものにとどまり、長期平均の約2%をやや下回ると予測されます。この見通しはEUからの秩序ある離脱を前提としていますが、英国のEU離脱がより不安定になる可能性や世界経済減速のリスクがあるため、この期間の下方リスクに重み付けされています。
個人消費は、過去1年間の実質賃金の上昇に後押しされ、景気をけん引し続けています。しかし、英国のEU離脱関連の不透明感から住宅市場は冷え込み、事業投資は減少傾向にあります。7‐9月期の雇用も過去最高水準からやや減少しました。
消費者物価上昇率は、イングランド銀行(英中央銀行)が英国のEU離脱および世界経済の状況が明確になるまで金利を据え置くとの見通しに伴い、2%前後ないしはやや下回る水準にとどまると予想されます。
詳細はUK Economic Outlook November 2019[English]をご参照ください。
財務省関税局は、以下のように説明しています。
離脱協定に基づき、英国のEU離脱後、一定の期間、「移行期間」が設けられ、同期間中は日本を含む第三国とEUとの間で締結している国際約束を含むEU法が英国に適用されます。そのため移行期間中は、引き続き日EU・EPAが英国に適用されます。
詳細は英国のEU離脱後(移行期間)における日EU・EPAの適用についてをご参照ください。
英国のEU離脱に関する政府タスクフォースが中心となって作成されたものです。タスクフォースは内閣官房が中心となり、各関係府省庁から構成されます。要望書の中には日本企業からの要望に関する部分がかなりの割合を占めており、その内容について、要約すれば「現状の枠組みの維持」を要求しています。
具体的には、現行の関税率や通関手続きの維持、英国籍・欧州大陸籍の労働者へのアクセスの維持、金融サービスの提供・開業などに関する自由の維持、配当課税などの資金移転に係る非課税の維持など、さまざまです。
英国側にはこれがかなり強いメッセージと受け取られたようです。
英国に欧州拠点を有する日系企業が、このBrexitによって、拠点を英国から欧州大陸に移転するかもしれない、と各英国メディアが大きく報じていました。この要望書は外務省ホームページに掲載されています。
原文は首相官邸ホームページをご覧ください。