ET-IS(Enterprise Transformation-Industry Solutions)※は「インダストリー視点でビジネステーマ・ソリューションを解く共創者になる」をビジョンに掲げ、2023年1月に発足しました。現在は、エンジニアリングチェーン領域を専門とするコンサルティング、クラウドトランスフォーメーションを専門とするコンサルティング、スマートモビリティ領域へのコンサルティングなど複数のCoEを形成し、クライアントの支援を行っています。ET-ISが設立された背景、目指す未来、組織のカルチャーなどについて、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)パートナーの矢澤嘉治、寺島克也、中山裕之が語り合いました。
※ET-IS(Enterprise Transformation-Industry Solutions):インダストリーの視点から重要課題(業界課題・業務課題・IT課題など)を解決し、クライアントのトランスフォーメーションを支援する組織。
左から中山裕之、矢澤嘉治、寺島克也
矢澤:
私は大学院卒業後、新卒で大手自動車メーカーに入社し、生産管理部門に配属されました。その後、IT企業へ転職し、ITコンサルタントとして経験を積んだ後、他のコンサルティングファームを経て、2016年にPwCコンサルティングへ入社しました。当時は、Industryサイドの自動車・製造・エネルギー部門(IPS)に所属し、自動車業界や製造業の支援のためのソリューション開発をリードしました。そして、開発したソリューションを進化させ、他の業界へ展開できるよう、SolutionサイドにIndustry Solutionチーム(IS)を2023年1月に立ち上げました。現在はリードパートナーを務めています。
寺島:
私は大学卒業後IT企業へ入社し、3D CAD/PDMのプリセールス、立ち上げ支援業務に従事していました。しかし、入社4年目に在籍していた企業がコンサルティング会社を設立したことに伴い、そちらに出向・転籍しました。その後は一貫してエンジニアリングチェーンと呼ばれる研究・設計開発や生産技術・生産準備関連を専門とし、各種支援を提供しています。
その後、領域を広げサプライチェーンまで紐付けることで、製造業の開発からものづくりまでを総合的に支援したいと思い、2018年にPwCコンサルティングに入社しました。当時、PwCコンサルティングは総合系コンサルティングファームのなかでも、先んじてエンジニアリングチェーン領域の支援に取り組んでいたため、そのチームの立ち上げに関わり、より支援の幅を広げていきたいと考えたのが入社の理由です。私も入社時はIPSに所属しており、ISの設立を機に異動し、現在はサブリードパートナーを務めています。
中山:
私は、新卒で外資系のコンサルティングファームに入社し、ERPやERPソリューションの設計から導入、AIサービスに関するコンサルティングに従事してきました。20年以上在籍しましたが、一度他の会社でチャレンジしてみようとクラウドコンピューティングサービス企業へ転職し、クラウドを使った事業開発・促進などに携わりました。ビジネスを進めるにあたり、こういった最先端のIT技術を使いこなすには組織や人を変える必要があると感じたことからコンサルティング業界に戻ることを決意し、2020年にPwCコンサルティングに入社しました。現在は、ISの中のCloud transformation CoEをリードし、クラウドを日本企業でどう活用するか、またアジャイルを活用して他のCoEとコラボレーションを模索しクライアントサービスに携わっています。
矢澤:
私が入社した当時、当社は自動車業界の支援体制をどう構築するか模索していたと思います。クライアントの悩みや期待にどう応えるのか。どうしたら他社との差別化は図れるのか。そういったことをパートナーと議論したのを覚えています。そして、製造業の中でも特にコアな“生産や設計”に精通したコンサルタントは少なかったので、事業会社で設計や生産の現場で働くプロフェッショナルを採用し、コンサルタントに育成していくことを決めました。当時、このやり方を明確に戦略として打ち出したのは当社が初めてだったと思います。
ここ数年、製造業を取り巻く環境は厳しさを増しており、インダストリーの視点から重要課題やテーマを解決するソリューションを、スピーディに提供することが求められていたことから、ISが創設されました。製造業のバリューチェーンを見ながら業務改革支援を行うのはもちろん、今後はITの部分もサポートしていくことで、製造業におけるさまざまな課題を、業務領域からITまで一貫して解決していくことを目標にしています。
寺島:
ISが設立された背景について、もう少し詳しく話しましょう。まず、当社には大きく分けて「縦」と「横」と呼んでいる2つの事業部があります。縦は「インダストリー」で、具体的なクライアントを担当し、業界・クライアントごとに即したビジネス、サービス提供を行う部門です。一方、横はソリューションやサービスを軸に、さまざまな業界・クライアントに対してサービスを提供している部門となります。
ビジネスを進めるうえでは、ソリューションがなければ具体的な支援には結び付きません。私や矢澤は、縦の部分であるIPSに所属していた中で、横の機能であるソリューションを開発・提供していましたが、特定のインダストリーであるIPSに留まらなくなってきたとともに、会社全体の「横の機能」を担ってほしいという要望が高まってきたことから、23年1月にさまざまなインダストリーに関わる新しい組織としてISを設立しました。
矢澤:
「インダストリーをしっかり理解したプロフェッショナルが、ソリューションという武器を使ってビジネスする」ということを謳ったわけです。例えば、「自動運転」という課題に向き合うときには、国として自動運転のルールを整備したり、自動運転のプラットフォームをつくったりと、すでに自動車業界だけでは社会課題を紐解けられなくなっています。そのため、さまざまな業界にまたがった課題に対して私たちコンサルタントが支援する必要がある。そうした大きな動きに対して中心になって動ける組織としてISを立ち上げたわけです。
寺島:
今は業界を飛び越え、複合的にコラボレーションしながらソリューションを提供することが求められている時代です。そのような中、ISは一歩先に動きだせるよう、組織を作り、取り組んでいます。
中山:
ISの大きな特徴として、専門性の高い人材を採用していることも挙げられます。CoEが7つあり、ものを新しく創出する際に必要な研究開発に関わる深い知識はR&D/PLM CoEが持っています。Smart mobility CoEでは、新しい移動手段に関わる課題について政府や自動車業界を支援するような深い専門性を有しており、即座に課題解決のお手伝いに着手できます。従来、専門性の高い人同士は交わりにくいと言われていましたが、ISでは、その専門性の高さを掛け合わせることで大きな価値を提供したいと考えています。
寺島:
メンバーにとっても、専門性の高い人が近くにいるメリットは大きいです。例えば戦略のプロフェッショナルがITの知識を深めたり、ITのバックグラウンドを持つ人が自動車業界の最新の情報を理解できたりと、他分野の専門性を有したスタッフと協働することで自身のケイパビリティの幅を広げることができます。自身の専門性を生かしつつ、さらなる領域の知識・知見を深めていきたいと考えている人には、魅力的な職場だと思います。
矢澤:
PwCコンサルティングには多くのプロフェッショナルが集まっており、それぞれの分野に特化した先鋭的な研究・分析を日々、行っています。その成果を発表する場としてIndustry Solution Garage(ISG)を設立しました。ソリューションを紹介する展示場ですね。例えばIndustrial advanced technology CoEはミニチュア工場をつくり、実際の利用シーンや使い方までを提示して、将来の工場の姿をクライアントに提案することができます。クライアントのニーズに合わせてアップデートすることで、職員の提案のスキルも向上していきます。このように、個人の想いや能力を実現させることにも惜しみなく投資をし、機会を作るのもPwCコンサルティングの大きな特徴です。
中山:
各チームの専門性の高い人材が独自のソリューションを持ち寄り、コラボレーションし、その能力を掛け合わせていくことが、ISGでは何より重要だと考えているからです。
矢澤:
職員一人ひとりができることは多くありませんが、それぞれの力を出し合えばより良いパフォーマンスを発揮することができます。それをISGで展示することで他の部門とコラボレーションできるようになり、さらにいいものになっていく。まさにPwCの強みである「掛け算の力」だと感じています。
矢澤:
入社後、必要なコンサルティングスキルをしっかり身に付けてもらうための教育体制はしっかりできています。
寺島:
ベーシックなコンサルティングスキルを身に付けるトレーニングのほかに、専門知識の習得のトレーニングにも注力しています。ここでは、ISに所属するさまざまな専門性を持ったコンサルタントが講師となります。自動車業界出身のメンバーが生産方式についてレクチャーしたり、生産技術に携わっていたメンバーが飛行機のつくりかたを教えたりするなど、自身の知識・知見を発信し、メンバーと共有・議論し、相互学習することによって一緒に成長していくわけです。外部の方を招いて講義を行ってもらい、普段なかなか得られないような知識を習得する時間などもつくっています。
矢澤:
L&D(ラーニング・アンド・デベロップメント)は、ティーチングではないので、受け身の姿勢の人は、成長することはできません。一方で、「学びたい」とポジティブに動く人はいくらでも学べる機会が与えられるので、自ら成長したいと思う人には最高の環境です。
寺島:
キャリアパスに関しては、PwCには法人や部門を越えて異動することができる「Open Entry Program」という制度があります。ISでは、個々の専門領域を深めながらもその領域をより広げていく上で、他のCoEに興味を持った場合、個人の希望によって新しい領域やCoEにチャレンジすることが可能です。逆に言うと、異動などに関して辞令が出るわけではなく、あくまでも「キャリアは自分自身で描く」というのがISの方針です。その分、望んだことに対してはパートナーを筆頭に、周囲が精一杯のバックアップをしていきます。
中山:
マネージャー以上が管理職ですが、リーダー業務の経験は、比較的早い段階からできます。チャレンジしたいことを提案し、承認されれば新しいチームをつくることが可能で、そのプロジェクトを進めることで自然とリーダー業務が発生します。つまり、パートナーや管理職だけがリーダーなのではなく、スタッフでもリーダー経験を積める機会があります。また、昇進に関しても、試験があるわけではなく、PwCプロフェッショナルに沿った評価に基づき、管理職以上で議論します。プロジェクト内や所属チームだけではなく、関わる人皆に認められてステップアップできるという形です。
寺島:
私たちPwCはチームで動くカルチャーなので、個人で突っ走ってしまうより、協調性のある方と一緒に働きたいと思います。クロスオーバーで他のCoE、部門、法人のメンバーたちと協働し、積極的なコラボレーションを通してサービスを提供できるのも、PwCの大事なカルチャーだと感じています。
矢澤:
「組織を越えてクライアントに価値を提供しよう」という社風なので、クライアントや知見を1人で抱え込むことが推奨されない雰囲気があります。個人の経歴やスキルなどは、グローバルで、オープンになっていますし、部門ごとにさらに詳細に把握しているので、互いのスキルを持ち寄ってプロジェクトにアサインすることが可能になっています。
寺島:
今後は、自分たちの専門性を生かしながらコラボレーションをより進めていき、ISのような組織を会社全体に広げていくことが目標です。会社からもそのような期待をされていると思っています。世の中やクライアントが取り巻く環境の変化に合わせて、また自分たちの成長に合わせて、CoEの数も固定化せず、統廃合していきます。可能性が見いだせれば新しいCoEを作り、リーダー業務も若い世代に担ってもらいます。そのように、時代の変化に合わせてフレキシブルに進化していくことは大事ですし、むしろ楽しいことだと思います。
中山:
元々、コンサルティングの手法は海外から輸入されたモデルが多く、欧米から日本に入ってきたときには、すでに3年ほど遅れているというケースもあります。その点、今回のISモデルは日本発のコンサルティング手法として、グローバルに発信できるものだと感じています。
矢澤:
日本の製造業の高い専門性を持ちながら、コンサルタントとして成長していくというのは、世界的にも大変珍しいことだと思います。PwCのグローバルネットワークを最大限に活用し、世界中の仲間とともに私たちのソリューションで、多くの社会課題を解決し、クライアントのビジネスを拡大させることにつなげられればと思います。
PwCコンサルティング合同会社 パートナー 矢澤 嘉治
日系大手自動車メーカー、外資系コンサルティング会社を経て現職。20年超、製造業における業務改革・業務標準化に従事、特にデジタルを活用したソリューション提供に強みを持つ。現職では特に工場領域におけるIoT活用や製造業のサイバーセキュリティ領域に関するプロジェクトを多く手掛け、データ活用や法規・ガイドライン対応を含めたセキュリティ対策まで幅広く支援を実施。
PwCコンサルティング合同会社 パートナー 寺島 克也
日系コンサルティング会社を経て現職。20数年にわたり、自動車業界を中心に製造業 R&D領域のコンサルティング業務に携わり、業務改革に向けたビジョン策定・プロセス構築、新規事業創出、MBD/MBSEプロセス構築、組織改革・人材育成、PLM/ALM等の基幹システム導入等、数多くの支援を実施。セミナーでの講演やWebへの執筆等多数あり。
PwCコンサルティング合同会社 パートナー 中山 裕之
外資系コンサルティング会社、外資系ITコンサルティング会社、外資系クラウドベンダーを経て現職。コンサルティング会社においては10年以上にわたりCRM、ERP、コグニティブ領域での事業責任者を務める。外資系クラウドベンダーにおいては、エンタープライズ領域における事業開発責任者としてクラウドの普及に携わる。専門領域は、クラウド、コグニティブ/AI/機械学習、モバイル、ERP、CRMにわたり、これらのテクノロジーを活用した企業および業務変革に25年以上従事。