
VRゴーグルで実現するハイブリットワーク時代の新しいコミュニケーション―PwCあらた有限責任監査法人PwC入所式の事例―
2022年12月に新入職員の入所式をメタバース(仮想空間)で開催し、初めての試みとして全新入職員にVRゴーグルを着用してもらいました。今回はその実現に向けた取り組みと、コミュニケーションツールとしてのVRゴーグルの可能性を紹介します。
2022-04-05
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するために専門部署を設置したものの、DX推進部署以外の事業部署やその他管理部署でのDXが進まないといった課題を抱える企業は少なくないのではないでしょうか。
今回はそういった課題を解決するために、法人全体のDX推進を担う部署が社内向けサービスを展開する際に活用可能な事業部署での普及活動におけるマーケティング戦略を、PwCあらたの事例を交えながら紹介します。
多くの企業がDX推進を主導する部署を設置し、調査研究・開発、事業部署の支援、社内環境整備、文化醸成などの活動に取り組んでいます。PwCあらたでは、法人全体のDXを推進する部門として「アシュアランス・イノベーション&テクノロジー部」を設置しています。私たちは、事業部署を巻き込みDXを推進するためには、トップダウン型の変革だけでなく事業部署発のボトムアップによる変革も必要であると考え、ボトムアップ型の変革を加速させるために重要な事業部署への支援活動を担うチームを同部内に組成しました。
PwCあらたの事業部署は1,000を超える企業に監査業務を提供していますが、被監査会社の使用する会計システムやERPパッケージごとにデータの仕様が異なっており、提供されるデータには形式や項目のばらつきが存在します。データの標準化が容易ではない中で、事業部署のDXを強く進めるには、全世界共通の監査システムでは対応が難しい事業部署の細やかなニーズに応えるツールが必要であり、事業部署にはそれを使いこなすためのデジタルリテラシーが求められます。そこで、デジタルリテラシーの向上を目的として、全職員向けのデジタル研修を継続的に開催しています。また、実務に合わせて構築したRPA、データ分析ツール、データ可視化ツールを法人全体に共有するプラットフォーム「Digital Lab」を導入しています。
しかし、事業部署ではDXにかける時間が確保できない、日常の業務に追われて業務変革に意識を向けることが難しい、ツールを導入したくてもユースケースが分からず導入できないなどの理由により、事業部署のDXは思うように進みませんでした。
このことから、私たちはツールを提供したりトップダウンのメッセージを発信したりするだけでなく、事業部署に歩み寄り、事業部署が直面する課題に寄り添うことが重要であると学びました。そこで、全社的なDXの施策と事業部署とのギャップを埋める施策として、社内向け「事業部署DX支援コンサルティングサービス」を開始しました。
「事業部署DX支援コンサルティングサービス」は、監査チームを直接訪問し、チームのニーズに応じて、課題の掘り起こしと整理、自動化・効率化のサポートなどを行うものです。
本サービスは「Last One Mile」というコンセプトのもと、全社的なDX施策が届かない最後の一手を担います。プロダクトドリブンではなく、チームに応じたデジタルツールの導入支援と、チームメンバーに対するユーザー教育を通じて、チームのDXを支援します。
このサービスでは、アシュアランス・イノベーション&テクノロジー部に所属する会計士、およびテクノロジーのスキルと監査実務の経験を持つテクニカルスペシャリスト(TS)が業務変革のコンサルティングを行います。会計士が監査業務の観点から解決策を提案する一方で、TSがDXソリューションを提供します。領域の異なる2つの専門家のコラボレーションにより、全社的なDX施策を踏まえた上で、事業部署の実情に沿った形で課題を解決します。
このサービスは、数チームでのトライアル・改善を行った後に、全社にリリースしましたが、当初は想定よりも支援の件数は伸びませんでした。そこで、以下のような戦略で社内マーケティングに取り組みました。
デジタルツールの導入を進めるにあたっては、社内向けサービスだからといって全社向けのコンテンツ発信だけで満足するのではなく、ターゲットとなるチームに個別にアプローチすることが重要です。そのためには、DXを推進する部署は自社を深く理解し、セグメンテーションを行った後にターゲットを絞る必要があります。
前述の通り、PwCあらたは約1,000社以上の多種多様な会社の監査を行っており、被監査会社の数だけチームが存在します。そのため、私たちが提供するサービスをどのチームに利用してもらえばPwCあらたのDXを最大化できるかを検討する必要があると考え、各部署のツールの利用状況を把握する活動を実施しました。
これまで事業部署におけるツールの利用状況はツールの実行数やサービス利用の申込数で把握していましたが、どのチームでどのツールやサービスが利用されているかまでは分かっていませんでした。
そこで、まずは監査チームのツールの利用状況を把握するため、アンケートを実施しました。全社向けのアンケートは回答率が低くなる傾向があったため、最初はチームごとに依頼し、リアルタイムで回答状況と結果を可視化して共有することにより、回収率を高める工夫をしました。その結果、全監査チームの約8割から回答を得ることができました。
分析を進めるにつれ、被監査会社の業種によってデータ量が異なることがわかってきました。例えば一般的に保険会社では、数理計算を行うために大量のデータを取り扱っています。そのため、保険業界を担当する部門ではデータ加工を効率化したいというニーズが強く、データ加工のデジタル化が比較的進んでいることが分かりました。各部門の特性を知るだけでも、これまでの画一的なアプローチでは事業部署のDXは実現しないことを実感しました。
事業部署の業務や課題を適切に把握しDXを進めるために、売上規模や監査時間、上場か非上場かなどの観点から分類することが効率的であると考え、被監査会社を約50のセグメントに分類しました。
各部門のDX推進リーダーと分析結果を共有し、多角的な視点で分析することで、ある程度の利用状況の傾向が見えてきました。それは、大規模チームであれば十分なリソースが確保できデジタル化が進んでいる一方で、中・小規模チームであればリソースが確保されずにデジタル化が進んでいないということです。私たちの目標は事業部署のDXを支援することではあるものの、全てのチームに一度にコンサルティングサービスを提供することは不可能であるため、中・小規模チームを中心に支援することを決めました。
社内向けのサービスやデジタルツールであっても、事業部署ですぐに導入を開始してもらえるわけではありません。そこで、階段設計による事業部署の心理的ハードルを下げることが重要となります。
事業部署DX支援コンサルティングサービスのマーケティングにあたっては、階段設計を用い、コンテンツ発信→事例セミナー→案内メール送信→導入相談→本導入の段階を踏みながらプロモーションを実施していきました。案内メールは送る時期によってはチームからの反響が少なくなることをこれまでの経験から学んでいたため、少しでも多くの反響を得られるよう事業部署の繁忙期を避けて発信するなどの工夫をしました。また、受信者の心理的ハードルを下げるために、各部門のDX推進リーダーやアシュアランス・イノベーション&テクノロジー部のメンバーのうちアプローチ先の部門に所属していたことがある人など、部門ごとに関係性の強い人から送付することにしました。
アンケートの実施や、事例セミナーのファシリテーター、各部門の分析において強力にサポートしてくれたのが、以前私たちと活動を共にしたDX人財でした。また、PwCあらたには「デジタルチャンピオン/デジタルアンバサダー」と呼ばれる各部門のDX推進リーダーが存在します。デジタルチャンピオン/デジタルアンバサダーからは、各部門向けに業務変革の方針を打ち出し、サービスを紹介してもらいました。監査には閑散期が存在するため、そのタイミングでDX人財やデジタルチャンピオン/デジタルアンバサダーからも発信してもらうことで、効果的にアプローチを実践しました。
現在、私たちは自社ビジネスおよび事業部署への理解と、マーケティング戦略により、多くの監査チームからDXに関する相談を受け付け、デジタルツールの導入、そして業務改革を実現しています。
以前にも増して事業部署とのコミュニケーションの機会が増え、より多くのインサイトを得ることができています。さらに、アシュアランス・イノベーション&テクノロジー部内の研究開発などの取り組みへのフィードバックをもらうことで、ボトムアップ型の変革の循環が生まれています。今回生まれた事業部署とのコネクションを継続させ、新規ツール情報やツール活用のコツを定期的に事業部署に直接発信することが可能となりました。
事業部署は日々の業務で余力はなく、思うようにDXが進まないことがあるかもしれません。法人全体のDX推進を担う部署は社内向けの活動が大半とは思いますが、事業部署の状況を把握し、各部署のDX推進リーダーや協力者を募り、ターゲットを絞った上で伴走していくことが重要なのではないでしょうか。
一つ一つの変化は大きくはありません。ですが、地に足の着いた対応の積み重ねが、将来につながる結果を生み出していけると考えています。
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