
VRゴーグルで実現するハイブリットワーク時代の新しいコミュニケーション―PwCあらた有限責任監査法人PwC入所式の事例―
2022年12月に新入職員の入所式をメタバース(仮想空間)で開催し、初めての試みとして全新入職員にVRゴーグルを着用してもらいました。今回はその実現に向けた取り組みと、コミュニケーションツールとしてのVRゴーグルの可能性を紹介します。
2022-05-26
PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)は高品質なサービスを効率的に提供するために、さまざまなデジタルツールを通じてAI、機械学習、自然言語処理などの最先端テクノロジーの導入に向けて研究開発を進めています。これらのテクノロジーは機密性の高い重要な情報を取り扱うため、新しいテクノロジーやサービスを導入する際には、堅牢なデジタルガバナンスによりプロジェクトリスクを軽減させることがプロジェクトマネージャーの最も重要な役割の1つとなります。PwCあらたにおいて、法人全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する部署であるアシュアランス・イノベーション&テクノロジー部でプロジェクトマネージャーを務める中で得られた気付きを、新しいテクノロジー導入のための5つのヒントとして紹介します。
プロジェクトの成功に偶然はありません。全ては綿密な計画の賜物です。アシュアランス・イノベーション&テクノロジー部では、全ての開発プロジェクトにおいてWBS(Work Breakdown Structure)と呼ばれる共通のプロジェクト管理フレームワークを使用しています。これは、プロジェクトにおいて必要な作業を分解し、計画・管理するためのものです。アシュアランス・イノベーション&テクノロジー部では、過去のプロジェクトから蓄積したノウハウに基づくWBSを活用することで、自社で開発したテクノロジーを実務で使用するために必要な要件を抜け漏れなく実装することができます。全てのプロジェクトには、チームメンバーの役割の定義、利害関係者の特定、ビジネス要件の定義などの標準的なプロジェクトタスクが含まれます。また、リスク評価手続の特定、カスタマイズのための開発元チームとのコラボレーション、ユーザー受け入れテストの計画など、より複雑なプロセスも含まれます。
新しいプロジェクトを立ち上げる際には非常に多くの検討事項があるため、計画を立てずに進めることは不可能です。WBSのようなフレームワークを使った統一的な計画プロセスは、プロジェクトチームがタスクを整理して立ち上げるだけでなく、全体を統括するマネージャーがリソースの余力を特定し、各プロジェクトの進捗状況を把握することにも役立ちます。
プロジェクトの計画を作成したら、それを共有し、定期的に見直し、更新します。そしてフィードバックを収集し、適宜改善します。これらのプロセスを記録して見える化することは、プロジェクトを細分化された工程に落とし込むのに役立ちます。
ビジネスをより良くするためには、外部のベンダーと良好な関係を築くことが重要です。特にソフトウェアベンダーと契約を結ぶ場合には、ソフトウェアベンダーに自社のテクノロジーをしっかりと理解してもらい、自社のテクノロジーの将来を左右する可能性があることを認識してもらう必要があります。また、ソフトウェアベンダー自身が目標達成に向けた計画を作成できるようにサポートすることも重要です。
ソフトウェアベンダーは、テクノロジーやその機能に関するアイデアやフィードバックを検討しながら開発を進めますが、プロジェクトマネージャーはテクノロジーの導入をリードする役割のみならず、エンドユーザー代表としての役割も担っており、その意見はベンダーにとって非常に貴重な情報源となり得ます。新しいテクノロジーによってユーザーエクスペリエンスを改善するには、ソフトウェアベンダーに積極的にフィードバックを提供することが求められます。
ソフトウェアベンダーとの信頼関係を築く1つの方法として、お互いにWin-Winの関係を築くことが挙げられます。一方通行ではなく、双方向であることが大切です。ユーザーからソフトウェアベンダーに将来のテクノロジーへの期待を伝えることにより、ソフトウェアベンダーはそれに応じたテクノロジーを提供することが可能になります。このようなコラボレーションにより、より将来のテクノロジー導入を確実にすることができるのです。
ソフトウェア要件をソフトウェアベンダーと合意する際には、明確かつ簡潔にコミュニケーションをとることを心がけるべきです。どの機能に課題があり、どの機能が要求水準を満たしているのかを区別することで、ソフトウェアベンダーが対応すべき課題が明確になります。
新しいテクノロジーの開発は1人では成し遂げられません。自社の状況に応じてリスクおよび品質、セキュリティ、法務、ブランド、調達、技術サポートなどさまざまな部門と連携して進める必要があります。プロジェクトマネージャーはこれらの利害関係者を巻き込み、協力関係を築くことが求められます。
関係するチームとは連携する場を定期的に設けるなど、密にコミュニケーションをとることが大切です。例えば、リーガルチェックが必要な場合は法務チームと適時に連携し、エンドユーザーのサポートが必要な場合はユーザーサポートチームと事前に連携する必要があります。関係するチームとの入念な事前準備が開発プロジェクトを成功に導きます。
部門の枠を超えた関係者の利害を調整する必要がある場合には、多くの場合、トップダウンのアプローチが効果的です。リーダーにプロジェクトの初期段階から積極的に参加してもらい、リーダーのコネクションを活用しながら、プロジェクトを優先的に取り組んでもらえるよう関係者の利害を調整していきます。利害関係者も含めたメンバー全員が一致団結することは、開発プロジェクトを成功させるために必要な要素です。
新たにテクノロジーを導入した後は、ユーザーの期待通りに機能していることを検証する必要があります。この機能の検証のやり方はプロジェクトの開発フェーズのなるべく早い段階で検討しておくとよいでしょう。検証項目の例として、次のようなものが挙げられます。
上記の検討にあたっては、これらを測定する方法を決める必要があります。プロジェクトチームでどのように測定したらいいかわからない場合には、外部ソフトウェアベンダーなどの技術者と連携して、どのような検証方法があるか検討することも考えられます。開発フェーズの初期段階ではこれらのことは検証されていないことがほとんどです。
テクノロジーがビジネスに与える影響を測定する際には、主要目標達成指標(KGI)と主要業績評価指標(KPI)が役に立ちます。これらの指標が設定されていない場合には、リーダーと協力してKGIを定義する必要があります。そして次に、KGI達成までの道筋を明らかにするためのKPIを設定します。KPIとKGIの進捗状況を定期的に共有することで、テクノロジーを組織の全体的な戦略に応じたものへ改善することができます。
テクノロジーの品質を維持するには、エンドユーザーからのフィードバックが重要になります。このフィードバックは、新しいテクノロジーやサービスのUX(ユーザーエクスペリエンス)全体を向上させる最良のヒントとなります。
プロジェクトマネージャーは、アンケートやインタビューを通じてエンドユーザーの声を聞く必要があります。そして、収集したフィードバックをもとに改善活動を行います。建設的なフィードバックは開発チームの重要な財産となることを忘れないでください。何を改善すべきかを知ることは貴重なことなのです。エンドユーザーが時間を割いてインタビューに応じてくれたことに感謝するとともに、懸念にどのようにフォローアップするかをエンドユーザーに伝えていくことが重要になります。
新しいテクノロジーの導入には困難が伴います。多くのプロジェクトがあると同時に、1つのプロジェクトの中でも多くのタスクが同時に進行するため、リソース不足や厳しいスケジュールに苦しむこともあるでしょう。プロジェクトの難所に遭遇したときは、まずは小さなところから始めることが重要です。そして小さなところから始めるためには落ち着いてプロジェクトを整理する必要があります。そのような整理に時間を費やすことは、遠回りのように見えて近道なのです。プロジェクトを整理して小さな成功を積み上げることは、チームメンバーの士気を少しずつ向上させ、プロジェクトを大きな成功に導くことにつながるでしょう。
荻野 創平
ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人
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