リモートネイティブ世代が業務のデジタル化を語る ―リモート環境を活かしたイノベーションの好循環【前編】

2021-11-16

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い、急速に導入が進んだリモートワーク。働き方が変化したことで新たな問題点が顕在化し、その解決に向けてさまざまな議論が行われてきました。しかし、一方でリモートワークは、チームコラボレーションの形を変えることで、今までとは異なるイノベーションの創出をもたらすという側面も持ち合わせています。

本稿では、PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)の入社3年目と2年目の若手職員が、リモートワーク環境下だからこそ実現可能性が広がるイノベーションとその効用、そしてその好循環について議論した様子をお届けします。

対談者

PwCあらた有限責任監査法人 システム・プロセス・アシュアランス部

アソシエイト 下村 有乃(入社3年目)

アソシエイト 小菅生 草太(入社2年目)

※法人名、部門名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。

若手職員が感じるリモート環境下による業務の変化

下村:
PwCあらたでは、COVID-19の感染拡大に伴い、リモートワークを原則とする勤務形態が1年以上続いていますよね。小菅生さんはリモート環境での勤務について、正直なところ、どう感じていますか。

小菅生:
リモートワークを善だ、悪だ、と一刀両断することは難しい、というのが現時点での所感です。敢えて困難だと感じた面を挙げると、対面でこまめにコミュニケーションをとることが難しくなり、細かいニュアンスの伝わりにくさや、お互いの体調や表情などが直接見えづらさを感じるようになりました。結果として相手に寄り添ったコミュニケーションが難しくなり、新たな気づきを共有するなど、一歩踏み込んだ対話のきっかけをつかむのが難しいと感じる場面がありました。また、以前はミーティングの前後のちょっとした雑談を通じて仕事に繋がるようなインスピレーションが得られていましたが、リモート環境下ではコミュニケーションの余白が少なくなり、決められた会議時間の中でしか会話がないため、画期的な発想が生まれにくいと感じています。

下村:
ありがとうございます。私は、リモートワークのポジティブな側面について話してみたいと思います。私はリモート環境において、より効率的に業務を進められる可能性を感じました。リモートワークに移行すると、今までの業務の進め方ではうまくいかない部分が発生します。そこで、既存の業務の進め方についてゼロベースで問い直した結果、業務を効率化できただけでなく、業務の質も改善できたという経験があります。リモートワーク環境下での業務の進め方はまだ手探りですが、従来の業務の進め方を抜本的に見直すことで、作業の効率化と品質の向上が図れるのではないかと感じています。

小菅生:
既存の業務の進め方について「ゼロベースで問い直す」ということは、リモート環境下におけるデジタル化において重要な考え方かもしれませんね。

リモート環境下では、コミュニケーションの難しさがある一方で、メリットがあったことも事実だと考えます。そこで今回は、リモート環境におけるコミュニケーションのメリットとデメリットに触れつつ、監査のデジタル化に対して、リモート環境下におけるコミュニケーションがどのように貢献できるのかについて考えていきたいと思います。

若手職員が感じる リモート環境下による業務の変化
リモートワークならではの メリットとは

リモートワークならではのメリットとは

下村:
ここまでの議論をまとめると、リモート環境について語る上でのポイントは、「コミュニケーション」と「必然的に行われるゼロベースでの検討」、といったところでしょうか。

小菅生:
はい、そうですね。

例えば「コミュニケーション」については、雑談のようなカジュアルなコミュニケーションの場が減ってしまったと思いますが、一方で直接的に業務に関わる会話についてはリモートワークに移行したことでこれまで以上に明示的に行われており、認識の相違などから生まれるミスコミュニケーションは減ったように感じます。

また、「必然的に行われるゼロベースでの検討」に関しても、過去から引き継がれてきた方法論について、いい意味で問い直すきっかけとなったのではないでしょう。私たちのように、良くも悪くも業務の経験、監査の経験が少ない立場からの率直な意見をSpeak Upする後押しとなったのではないかと思います。

下村:
なるほど。リモート環境のネガティブな面が注目されることも少なくないですが、ポジティブな面も大いに体感されているということですね。

小菅生:
はい。リモート環境だからこそ得られるものも多くあると感じています。だからこそ、COVID-19の流行状況が変化し、勤務形態を改めて検討する際にも、「ゼロベースで検討」し、対面とリモートそれぞれのワークスタイルの良いとこ取りをできると嬉しいです。

組織文化と研修が後押しした監査のデジタル化

小菅生:
下村さんはリモート環境下でデジタル化にも興味を持たれたとのことですが、その経緯はどのようなものでしょうか。リモート環境下でのデジタル化、と聞くと難易度が高いようにも思えますが。

下村:
「リモート環境なのに」ではなく、「リモート環境だからこそ」ゼロベースで既存業務のあり方について考え直すことができ、デジタル化に向けて行動を起こせたと考えています。行動を起こすきっかけとして重要だった要素としては、すべてのパートナーおよび職員を対象としたデジタル研修の存在と「こうあったらいいな」というちょっとした課題意識だと感じています。

リモート環境へ移行した際に、自己研鑽も兼ねて前年の業務内容を復習するとともに、改めて分析してみました。内省を兼ねた業務内容のゼロベースでの検討といったところでしょうか。その際に役に立った知識が、昨年必須研修として受講したデジタル研修で得たデータ分析ツールの基礎知識でした。この時点ではデータ分析ツールについて全く詳しくなかったのですが、「こんな風に業務を進められたら良いな」とぼんやりと考えていた時に、「データ分析ツールがあればできるかもしれない!」とふと閃き、そこで持った希望からデジタル化への糸口を掴むことができました。まさに点と点が繋がり線になる、という感覚でした。

そして、個人的にはリモート環境だからこそ、ゼロベースでの検討結果をSpeak Upしやすかったなと感じています。変化の中でこそ自身も変化できる、といったところでしょうか。

小菅生:
すごいですね。こうお話を聞くと、デジタル化は誰にでもできそうに聞こえますが、実際のところ難しくはなかったのでしょうか。

下村:
挑戦さえすれば誰にでもできると思います。

挑戦してみる、といった点では、私は昔から高校留学に行ったり最近もいろいろなスポーツを始めたりと、行動力はある方だと思います。ただ、PwCあらたには誰にでも挑戦できる文化と仕組み(Professional Culture)があるので、特に挑戦しやすかったなと感じています。

Professional Culture

  • Speak Up & Action - 常に“正しいこと”を行うために声を上げ、個々人が主体となって行動をする
  • Listen Up - 新しいこと・違うことを、まずは受け入れ、新たな挑戦へとつなげる
  • Follow Up - Speak Upで上がった声について、皆で支援をする

小菅生:
まさに私たちが今行っている、「対談記事の執筆」も、Speak Up & Actionした結果ですからね。やや話が本題から逸れてしまいますが、業務の見直しを図った結果、少し余裕ができ、このような対外的な情報発信に関わってみたいと考えたことがきっかけとなり、このような対談に関与できました。社内の監査のデジタル化推進に関するアンケートで「デジタル化に興味があります」とSpeak Upした結果、今回のように対外的な情報発信というActionを起こす機会をいただくことができました。

下村:
そこから私にも声をかけていただき、このような対談が実現しました。とても嬉しく、恵まれていると感じます。

さらに補足すれば、先ほど話題となった「リモートワークによってコミュニケーションの余白が少なくなる」というデメリットについても、工夫さえすれば、対面で会話したことのない私たち2人でもこのような対談コンテンツを発信できる程度には、その影響を無くせるということですよね。

小菅生:
おっしゃる通りだと思います。コミュニケーションの余白が減ることに立ち向かうためには、「手段を確保すること」と「その手段を生かそうとする意識を持つこと」の2点が重要だと考えます。

手段についてはさまざまな方法が考えられますが、例えば、ビデオ会議システムを利用して、プロジェクトのメンバーが自由に出入りできるバーチャルな作業部屋を作っているチームがあります。プロジェクトのメンバー全員に入室しながらの作業を強制するのではなく、何か話したいことがあればいつでも入室し、どのような内容でも相談できるようにしています。

また定例会議も、特定の目的のために随時設定される会議と比較すると、その業務以外の話をしやすい傾向にあります。もちろん、業務と関係のない話をし過ぎることは効率的な会議運営の妨げとなりますが、相手が今どのような業務に取り組んでいるのか、どのような意識で各業務に取り組んでいるか、といったことを共有することはチーム運営上も重要な観点だと思います。定例会議を単なる業務報告の場とせず、ともすれば失われてしまうコミュニケーションの余白を生み出す場所とするという意識が重要です。

下村:
確かに、別の業務の内容をそういった空間で共有すれば、活動の横展開など業務のさらなる発展につながるケースも考えられますよね。定例会議での工夫は、バーチャルな作業部屋の設定よりも容易で、意識すれば誰でも取り組めますね。

小菅生:
はい。一言でまとめると、意識すれば取り組める部分について、各々が意識的にコミュニケーションの余白を生み出すことが重要なのだと考えています。

 

前編では、リモートワーク環境に移行したことにより、業務にポジティブな変化とネガティブな変化の両方が生まれたこと、またそれが既存業務のあり方についてゼロベースで問い直す契機となったことについて説明しました。後編では、リモート環境下だからこそ生まれた好循環について、実例を挙げながら紹介します。

後編はこちら

組織文化と研修が後押しした 監査のデジタル化
PwCあらたのツール活用に関するインサイトについては以下もご覧ください。

大量のデータからいち早く有益な情報をつかみ取るにはーデータ可視化ツールの活用事例

詳細はこちら

もしもあなたがツール開発プロジェクトのリーダーになったら―陥りがちな失敗と教訓【前編】

監査業務のデジタル進化

詳細はこちら

執筆者

小菅生 草太

アソシエイト, PwCあらた有限責任監査法人

下村 有乃

下村 有乃

アソシエイト, PwCあらた有限責任監査法人

※法人名、部門名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}