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2022-09-20
リモートワークの浸透により、ハイブリッドワーク環境、またはフルリモート環境で新入社員を受け入れる企業が増えてきています。PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)でも、リモート環境を前提として、従業員のエンゲージメントを向上させるためのさまざまな施策を行っています。
今回はその中から、内定者インターン(以下、学生パート)の経験者が主体となり、リモート環境下において職員のエンゲージメント向上に取り組んだ「学生パートケアプロジェクト」についてご紹介します。
会計士試験の合格者に占める学生の割合は近年上昇傾向にあり、PwCあらたでも学生内定者が増えています。PwCあらたには学生内定者のうち、希望する者を有期雇用契約職員として採用し、大学または大学院卒業後に雇用形態を正職員に切り替える「内定者インターン(以下、学生パート)」という制度があり、私たちはこの制度を利用し、2020年の4月にPwCあらたに入所しました。
コロナ禍において私たちはオンライン環境下において新社会人としてのスタートを切ることとなり、その中で業務に慣れるだけでなく、人間関係を構築する必要がありました。それに加え、私たち学生パートにとっては試験期間や卒業論文の執筆期間など、一時的に業務を離れることも多く、細々とした悩みの相談相手を探すのにも苦労するなど、困難に直面する場面が幾度もありました。
今回は、そんな学生パートの不安を少しでも解消するため、当時学生パートとして勤務していたメンバーが中心となって立ち上げた「学生パートケアプロジェクト」の取り組みと、その運営を通じて得た気づきについて紹介します。
リモートワーク環境下で入所した私たちにとって、研修や業務を通じて同期の職員と知り合う機会は非常に限られていました。本来気軽に話し合い、不安を解消し合えるはずの身近な拠り所となる存在が少なく、大きな不安を抱えていました。
また、身近な同期職員の不在に加え、業務の現場に出てからもリモート環境にあったため、上司との信頼関係を築くことにも苦戦していました。そのため、周りから見ればささいな悩みかもしれませんが、気軽に相談することもできずに抱え込んでしまい、孤独を感じることもありました。
しかし、他の学生パートとコミュニケーションを図るにつれ、その悩みは「同じような孤独感を抱える職員は周りにもたくさんいるのではないか」という課題意識へと徐々に変わっていきました。
私たちが感じていた課題としては、以下の3つが挙げられます。
これらの課題を解消し、「自分はPwCあらたの一員である」という帰属意識や心理的安全性を醸成するため、「多様な学生パートの自由な拠り所を作る」をコンセプトのもと、「学生パートケアプロジェクト」を立ち上げました。「学生パートケアプロジェクト」とは、学生パート経験のある若手職員が中心となり、学生パートに対して包括的なサポートを提供する取り組みです。
このプロジェクトでは、オンラインでさまざまな部門のメンバーとの交流の場を設け、新たなネットワークを構築しました。ケアの機会を平等に提供できるという、リモートワークならではの強みを活かした点が特長です。
今では40名ほどが所属するプロジェクトに成長しましたが、発足のきっかけは上司に不安や悩みを相談したことでした。PwCには職階にとらわれず意見を発信できる「Speak Up」というカルチャーが根付いているのですが、上司に不安や悩みを相談したことで(Speak Up)、不安や悩みを聞き入れてくれて(Listen Up)、またそれと同時に執行役の方々へのプレゼンの機会と助言を頂き(Follow Up)、プロジェクトの発足に至りました。
このプロジェクトで私たちは以下の4つの施策に取り組みました。
同期職員との関係構築という課題に対応する施策として、学生パート同士でコミュニケーションを取るためのチャットルームを作成しました。これはリモートワーク環境下で希薄になりがちな同期同士の横のつながりを構築する場を提供することを目的としています。
相談先の確立という課題に対応する施策として、若手職員と学生パートで構成されたチャットルームを相談窓口として作成しました。また、若手職員では解決できない悩みに対しては、適切な職員を紹介するなどの対応も行っています。
縦横のつながりの構築という課題に対応するもう1つの施策として、月に1度の頻度で学生パートケアルームをオンラインで開催し、講演会や勉強会、懇親会など学生パートにとって学びとなるような機会を提供しています。同期職員や学生パートケアプロジェクトメンバーのほか、通常業務では接点がないと考えられる職員を講演者として招くことで、コミュニケーションを図る機会を学生パートに提供しています。
情報の入手先が散在しているという課題に対応する施策として、ナレッジを集約したインターナルサイトを学生パート向けに公開しました。業務上での悩みとそれに対する解決策を蓄積し、困った時に立ち返ることのできるサイトとして機能しています。
これらをまとめたものが図表1です。
プロジェクト開始から約1年後に実施したアンケートの結果によれば、4つの施策の中で、最も高評価だったのは定期的な学生パートケアルームの開催でした。オンライン開催ではあるものの、リアルタイムで他の参加者と対話できることで、不安の解消や安心感の醸成につながったと感じています。
その一方で、同期チャットルームへの評価はあまり良くなく、アンケート調査でも「有用」と回答したのは38.5%に留まりました。その要因として、直接の面識もない相手とのコミュニケーション手段として、相手の反応のわかりづらいチャットを活用することに一定のハードルがあったと考えられます。
その他の2つの施策については、オンボーディングパッケージは69.3%、サポートチャットは61.6%が「有用であった」と回答しています。どちらも先輩にわざわざ聞くのはためらってしまうようなちょっとした困りごとの解決に効果があったと思われます。困りごとがあった際に最初に参照すべきインターナルサイトが立ち上がり、仮にそこで解決できなかったとしても、適切な相談先を確保できたことで、孤独感の解消につながったと考えています。
プロジェクト全体の評価としては、回答者の84.7%から「次年度以降もプロジェクトの必要性を感じている」という回答を得られました。この活動によって、「多様な学生パートの自由な拠り所をつくる」ことへの一定の成果を示せたと思います。一方、満足度が高くなかった施策については翌年度の取り組み内容へと反映させ、プロジェクトのブラッシュアップを続けています。
学生パートケアプロジェクトでは、リモート環境下であっても、オンタイムで縦横のつながりを作る機会を提供することで、新入職員を身近な相談先とつなげることができました。その結果、直接会ったことのない職員であっても心理的安全性の確保された関係を構築でき、積極的かつ自発的なコミュニケーションの促進につながったと感じています。
組織への帰属意識を醸成していくことは一朝一夕に達成するものではありませんが、個々の関係を積み重ね、継続的なコミュニケーションを図り続けていくことが肝要ではないかと考えています。
オンライン環境下で職員の定着率向上を目指す皆さんの参考になれば幸いです。