
来たるべきSDV時代――次世代モビリティ改革に挑むHonda
Hondaのソフトウェアデファインドビークル事業開発統括部コネクテッドソリューション開発部のキーパーソンをお迎えし、来たるべきSDV時代を見据えたHondaのビジネスモデル変革について語り合いました。
自動車業界においては、大きな潮流であるCASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)をはじめとするユーザーニーズおよび市場環境の変化への対応や、UNR156(SU/SUMS:Software Update and Software Update Management System)、UNR157(ALKS:Automated Lane Keeping System)といった法規制への対応が求められており、その中でソフトウェア情報管理の重要性が認知されつつあります。
「CASE時代におけるソフトウェア更新のあり方―静的管理から動的管理への転換―」ではソフトウェア更新の実態、PwCが考える更新のあり方について解説しました。本稿では、自動車業界におけるソフトウェア開発の動向を踏まえてソフトウェア情報管理における課題を整理し、新たな管理手法の軸となるALM(Application Lifecycle Management)の必要性および導入のポイントについて説明します。
CASE時代におけるソフトウェア開発の主な動向として、自動運転や電動化による車載制御の複雑化・大規模化・高度化のほか、コネクティッド技術の進化によるOTAアップデート仕様の量産適用が挙げられます。今後開発される車両にはより高度な制御が必要であることから、ソフトウェアに求められる要件は複雑化し、これに伴ってソフトウェアのモジュール数やプログラムコード数など、ソフトウェアの開発規模が増大すると考えられます。また、法規制も強化されつつあり、UNECE WP29(自動車基準調和世界フォーラム)が定めた国際基準UNR156においては2022年7月から新型車両に適用されるなど、各メーカーには確実かつ安全なソフトウェア開発のプロセスを構築し、運用することが求められています。
さらにOEMの中には、市場へのリリース後や顧客への販売後にもソフトウェアのアップデート(市場アップデート)を高頻度に行うことで、品質観点での車両機能の修正や改善を行うにとどまらず、機能やコンテンツの追加を通じて顧客満足度の向上や、自動車という高価格商品の価値の向上を戦略として狙う企業も既に現れています。
このように車両開発におけるソフトウェア領域では、複雑化や開発規模の増大、更新の高頻度化に対応するため、自動車OEMにおいてもアジャイル開発が適用され始めるなど、開発スタイルの変革に取り組む動きが見られます。
技術の進化と市場ニーズの変化に伴い、ソフトウェアが持つ商品価値は増しています。これまではハードウェア開発を軸とし、そこに付随する形でソフトウェア開発が行われてきましたが、これからはソフトウェアの特性を熟知し、開発の軸をソフトウェアとするやり方への転換が必要です。ソフトウェアは自動車という製品をリリースした後にも更新し続ける、すなわち商品を提供し続けることができるため、これに付随するさまざまな課題への対応が必要となります。
多くの自動車OEMおよびサプライヤーにおいてはハードウェア開発を中心にした情報管理のためにPLM(Product Lifecycle Management)システムが導入されています。しかし、PLMはソフトウェア開発プロセスにおける要件管理、ソフトウェア構成管理、ビルドデプロイ管理、テスト管理といったワークフローの統合的な管理に適していません。ソフトウェア関連情報を効率的に管理し運用するためには、複雑化と大規模化が進み、継続的かつ高頻度に更新することを想定した仕組みが求められます。さらに、今後の技術革新への追従や開発の加速を通じた競争力向上のために車載OSそのものを内製化する動きもあり、扱われるソフトウェアの種類は多様化し、その規模が拡大するという点においても、ソフトウェア情報に対する新たな管理手法が必要となっています。
新たな管理手法の軸となるのがALM(Application Lifecycle Management)と呼ばれるソフトウェア情報管理システムです。主な特色としては以下が挙げられ、このようなシステムおよび機能を用いることによりソフトウェア情報管理の精緻化が可能となります。
ALMシステムはPLMシステムと同様にプロジェクト管理、変更管理、問題解決管理などの機能を併せ持っています。システムを活用する上では、ソフトウェアを軸にした管理を得意とするALMと、ハードウェアを軸にした管理を得意とするPLMを全く別々のツールとして二重に運用する形は望ましくありません。ALMツールの導入においてはPLMツールと情報連携させ、運用を集約することで、管理負担を最小限とするマネジメントシステムを構築していくことが重要となります。ここにテストツールの連携を加えることも可能です。また、より早いサイクルで設計変更の実施にも対応ができます。PLMによる従来のメカ開発に合わせた情報管理手法では、複雑な情報管理が求められるアジャイル開発に対応することは困難です。そのため、ALMシステムを連携して運用するなど、各領域に適した管理手法やツールを導入することで、メカ、エレキ、ソフトウェアが相互に連携できる環境を整備することが望ましいと考えられます。
複雑化および加速化する今後の車両開発において、管理システムに求められるポイントとしては以下が挙げられます。
システムによって扱われる情報の中でも特に“ソフトウェア関連情報”は競争力の源泉として管理・運用される中心的な要素として位置づけられるため、ALMシステムは大きな役割を果たすことになります。これまで以上に車両の機能性が拡張し、複雑化が進むとともに、車両販売後においても迅速な不具合対応やユーザの利便性向上を目的とした車両のソフトウェアアップデートを積極的に実施する未来においては、既存の開発システムとも連携し、ソフトウェア関連情報を効率的かつ効果的に管理・運用ができるALMシステムを選択することが好ましいでしょう。
ALMシステムの導入に向けては、ALMシステムを含めPLMシステムや各開発システム/ツールによる情報管理およびその連携に関して、各開発現場で稼働するシステム/ツールが各種業務プロセスの中でどこまでの管理を担うのか、どのような情報を連携させるべきなのかなど、業務プロセスに沿って運用方法を明確化した上でシステム構築を行うことが求められます。また車両システム全体における要求および要件の管理とそのトレーサビリティについては、前述したUNR156/157などの法規対応やISO26262などの規格準拠も十分に考慮する必要があります。
これからの自動車開発において、競争力の源泉となると考えられるソフトウェア関連情報を管理・運用するにあたってALMシステムの導入は必須と言えるでしょう。その導入にあたっては、PLMシステムをはじめとした各開発ツールと適切な粒度で連携できるように、システムの構成、運用を考慮していくことがポイントになると考えられます。
また、自動車OEMにおいては、これまではサプライヤーに依存していた領域や車載OS開発の内製化、OSSの活用などが進められています。持続的に高品質の製品を生み出し続ける体制を整備するためには、早期にALMシステムを導入し、組織において活用することが肝要です。
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