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2022-06-14
連載「メタバースのビジネスモデルを考える」の前編「既存のメタバース空間でビジネスを行う場合と、インフラやツールを提供する場合」と後編「参入企業が押さえておきたいハードルやリスク」で紹介したように、メタバースの世界では多種多様なビジネスが可能です。あらゆる機会を逃すまいと事業者の参入は後を絶たず、ベンチャー企業はもちろん、既存の大手企業も迅速な動きを見せています。
今回はBtoBを中心にメタバースビジネスの事例を紹介しながら、予測されるビジネスの動向を考えます。
現実の世界をそのまま仮想空間に移行するデジタルツインが活況を呈しています。企業はデジタルツインを用いることで、工場の設備や生産ラインのシミュレーションなどが可能になります。
例えば通信大手のEricssonはNVIDIAが提供するオープンプラットフォーム「Omniverse」を活用することで、5G製品のモデリングやシミュレーション、可視化を実現しました*1。またNVIDIAとLockheed Martinは山火事対策のため、デジタルツインで火災を再現し、被害の最小化に役立てています*2。他にもCannonDesignやEpigraphといった空間家設計を手掛ける企業、航空機から消費財に至る各種製造企業、さらにはエネルギー企業が製品の設計改善や点検・保守を目的にOmniverseを活用しています。
TrendForceの予測によると、いわゆるスマートファクトリー市場の2021年から2025年までの年間成長率は15.35%で、2025年の売上高は5,400億米ドルに達する見込みです*3。長期的には、各企業の作ったメタバース工場が他社のそれと相互に接続され、運用されるようになると予想されています。つまり、サプライチェーンに組み込まれている企業が一体となり、全体を見据えて設計最適化や運用状況をモニタリングし、保全活動をメタバース空間でシミュレーションし、運用できるようになると考えられます。
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが始まってから急激に普及したリモートワーク。今ではオンライン会議が当たり前になったほか、メタバース空間にアバター同士が集まって協働するバーチャルオフィスも広がりつつあります。
WorkplaceやTeamsなどが具体的なワークプレイス環境として挙げられますが、アバターを使ったメタバース空間でのやり取りは「離れていても近く感じる」コミュニケーション手段として、今後さらに重宝される可能性があります。ちなみにWorkplaceとTeamsは連携可能となっており、別々のシステムを使っていても同じメタバース空間で会議を行えるようになる時代は遠くないと考えられます。
上記の2つ以外にもオフィス空間を提供するツールはいくつもあります。トレーニングやイベントといった、より充実した機能を備えたビジネスプラットフォームが登場し、群雄割拠と化す可能性も否定できません。
PwCコンサルティングがメタバース空間に再現したTechnology Laboratory
メタバース空間では、現実世界では再現が困難な環境や条件をシミュレートした研修やトレーニングを、安全かつ低コストで24時間365日、世界中のどこでも行うことができます。PwCもメタバースを活用したトレーニングを試験的に実施し、その効果を発表しています(詳細は「Ready, set, go:メタバースが創り出す新たな企業研修【前編】」参照ください)。例えばVerizonは、小売店で働く従業員向けに強盗への対処法をメタバース空間で教えています。VRヘッドマウントディスプレイを使用することでトレーニングへの没入度合いを高め、命に関わる危機を打開するための重要なステップを体験し、いざという時に正しい判断を下せるようにすることを企図しています*4。
メタバース空間でのトレーニングのニーズを抱えているのは企業だけではありません。韓国のソウル市では、市民の自転車安全教育にメタバースを活用しています。10代の若者を主たる対象に、メタバース空間にトレーニングや体験のための街を再現しました*5。レベル別(初級、中級、一般)にコースが用意され、ユーザーは自転車交通標識の知識の確認といったクイズを通じて、ゲーム感覚で安全意識の向上に役立てることができます。
米国の赤十字社はオハイオ州で、緊急事態対処のための仮想トレーニングコースを提供しています*6。火災や洪水、竜巻や猛暑、雷雨やパンデミックなど、さまざまな緊急事態に対処するためのモジュールが、それぞれ20分のコースとして用意されており、自分と家族を守る方法やストレスに対処する方法、地域の情報にアクセスする方法などを学ぶことができます。
メタバース空間とヘッドマウントディスプレイを活用することで、受講者の視線(アイトラッキング)から集中力の度合いをリアルタイムで導き出したり、パフォーマンス向上のための知見の会得をスピーディーに行ったりすることができるようになります。こうしたニーズは高まる一方で、民間企業が提供するメタバース空間でのトレーニングも充実してきています。今後は、どの企業にトレーニングやメタバース空間設計を依頼するかの判断も重要になってくるでしょう。
メタバースが注目される以前から、ゲームをはじめとする仮想空間に広告(In-Play広告)を出稿するビジネスは存在しました。これをメタバース空間へと応用した広告展開の支援が盛り上がりつつあります。広告代理店admixは、2021年に多額の増資を行い、メタバース空間でのIn-Play広告事業進出に備えています*7。最近では大阪メトロアドエラとadmixが、現実世界のデジタル屋外広告とIn-Play広告で業務提携することを発表しました*8。今後はメタバース空間でNFTビルボードを提供する、または土地所有者がNFTビルボードを購入・設置して広告収入を得るといった、インターネット上のアドネットワークのメタバース版も盛んになるかもしれません。
他にも多くの広告代理店が、メタバース空間における広告制作や配信、効果測定などを支援しています。メタバースビジネスの知識や経験が豊富な出稿企業はそう多くないため、しばらくはNFTや暗号通貨の利用に関するコンサルティングや企画提案など、広告に留まらない支援範囲の広さがものを言うかもしれません。
メタバースビジネスは開拓の余地が無限にあり、変化は激しく、目を離したらあっという間に後れをとる可能性があります。メタバースビジネスをけん引する企業の1つであるMetaは、メタバースのための通信インフラの構築に乗り出しました*9。Metaは通信インフラが未整備の国にインターネットを無償で提供しており、各国でのインターネット普及に一役買っています。仮に同社が無償でメタバースの通信インフラを提供した場合、メタバースの普及は一気に加速し、暗号通貨やNFTの取引が過熱すると予想されます。明日にも訪れるかもしれないその時、これまでにないビジネスが生まれることは想像に難くありません。
*1 Next-generation simulation technology to accelerate the 5G journey(Ericsson、2021年4月12日)
https://www.ericsson.com/en/blog/2021/4/5g-simulation-omniverse-platform
*2 NVIDIAとLockheed Martin、州および連邦森林局とタッグを組み、AIで山火事対策を実施(NVIDIA、2021年11月12日)
https://blogs.nvidia.co.jp/2021/11/12/lockheed-martin-wildfires-ai/
*3 Industrial Metaverse Expected to Propel Global Smart Manufacturing Revenue to US$540 Billion by 2025, Says TrendForce(TrendForce、2021年11月29日)
https://www.trendforce.com/presscenter/news/20211129-11029.html
*4 Protecting and empowering Verizon’s frontline workforce with Immersive Learning
(STRIVR、https://www.strivr.com/resources/customers/verizon/)
*5 Bicycle Safety Training via Virtual Ttareungi Metaverse(ソウル市、2021年12月24日)
https://english.seoul.go.kr/bicycle-safety-training-via-virtual-ttareungi-metaverse/
*6 Virtual Emergency Preparedness Programs
https://www.redcross.org/local/ohio/central-and-southern-ohio/about-us/our-work/virtual-emergency-preparedness-programs.html
*7 We raised $25 Million in Series B funding!(2021年10月26日)
https://blog.admixplay.com/we-raised-25-million/
*8 Osaka Metro ADERAとAdmix、現実世界のデジタルOOH広告と仮想世界・ゲーム内のIn-Play広告で業務提携(大阪メトロ アドエラ、2022年3月30日)
https://www.osakametro-adera.jp/wp-content/uploads/2022/03/OsakaMetro_news_220330.pdf
*9 Building metaverse-ready networks(Meta、2022年2月27日)
https://www.facebook.com/connectivity/news/metaverse-ready-networks/
Resources for Free Basics
https://www.facebook.com/connectivity/solutions/free-basics
Discover
https://www.facebook.com/connectivity/solutions/discover