佳境を迎えるサステナビリティ情報開示基準の策定と日本企業の対応

米国証券取引委員会(SEC)の気候関連開示規則が最終化、日本企業がすべきこととは

  • 2024-07-04

「財務情報だけでは企業の価値を測れない」という投資家からの要請の高まりや、気候変動が世界中の喫緊の課題となっていることなどを受けて、SASBやGRI、TCFDなど各団体が作成したフレームワークや基準をベースに、世界中で企業のサステナビリティ情報開示基準の策定が急ピッチで進められています。そして日本ではサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が2024年3月29日に国内でのサステナビリティ開示基準の公開草案を公表し、またほぼ同じタイミングで金融審議会の「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」が議論を開始しました。欧州のCSRDや米国のSECの動向も見据えつつ、日本企業がどのようにサステナビリティ情報を開示するのかの議論が佳境を迎えています。

PwC Japan有限責任監査法人では「2030年に統合思考・報告のリーディングプロバイダー」「統合監査のリーディングプロバイダー」になることを目指しており、サステナビリティ情報開示基準策定に係る最新動向を把握するとともに、PwCのグローバルネットワークを活用し、各国の開示の状況について情報収集に努めています。

連載「佳境を迎えるサステナビリティ情報開示基準の策定と日本企業の対応」では、刻一刻と形作られていく基準策定の動向を、分かりやすくお伝えします。

連載「佳境を迎えるサステナビリティ情報開示基準の策定と日本企業の対応」の第2回では、2024年3月6日にSECが気候関連開示規則を最終化、公表したことを受け、その概要と日本企業が対応すべきことについて解説します。解説を担当するのは、Public Company Accounting Oversight Board(PCAOB)でSEC監査の検査に従事した後、PwC Japan有限責任監査法人にて米国上場企業を中心に監査およびESG保証業務を提供、2023年よりサステナビリティアシュアランスグループを兼務し、法人全体におけるESG保証業務を推進しているパートナーの石橋武昭と、メガバンクや行政機関での勤務経験があり、現在PwC Japan有限責任監査法人にて監査業務に従事しながら、ESG開示・保証に関する国内外の情報収集を行う、ディレクターの平井健之です。

気候関連開示規則公表までの過程と現在の状況

公表までの過程

SECではこれまで、気候関連開示に特化した規則を策定しておらず、2010年2月に公表された気候変動関連開示に関するガイダンス(Commission Guidance Regarding Disclosure Related to Climate Change*1)が公表されているのみという状況でした。しかし近年の投資家等からの気候変動リスクの開示に対する強いニーズ、気候変動リスクの開示に関する国際的な動向、2021年に発足したバイデン政権の気候関連政策を重視する姿勢を背景に、気候関連開示規則策定に向けた動きが加速しました。

SECでは2020年5月に、SECの投資家アドバイザリー委員会(IAC)の下に設置されているInvestor as Owner Subcommitteeが、SECに対しESG情報開示をルール化するよう勧告*2を行うなど、規則策定に向けた動きがみられるようになりました。その後、バイデン政権発足後の2021年、SECは以下のように、気候関連開示規則策定への取り組みを実施していきました。

時期

取り組み

2021年2月24日*3

SEC登録企業提出書類における気候関連開示の確認実施を発表

  • SEC登録企業(上場企業)の提出書類における気候関連開示の内容確認をスタッフにて実施
  • 上場企業が2010年ガイダンスで特定された環境関連のトピックへの取り組みを提出書類から分析し、2010年から10年間の環境問題の動向を考慮の上で、2010年ガイダンスをアップデートすることが目的

2021年3月4日*4

気候とESGの問題に焦点を当てたタスクフォースの設置を発表

  • 気候、ESG関連の開示への投資家の関心の高まりに合わせて、当該タスクフォースを、ESG関連の不正行為を積極的に特定するためのイニシアチブを開発することを目的に設置
  • 幅広い経験と専門知識を結集し、既存の規制の下での気候リスクに係る開示を分析し、重大なギャップを特定することで、市場をより適切に監視し、不正行為を追求し、投資家を保護することが目的

2021年3月15日*5

気候変動開示に関する一般の意見募集

  • 2010年以降、気候変動に係るリスクおよび機会に関する情報の需要が増加。気候変動に関する一貫性、比較可能性、信頼性を担保した情報開示を促進する新たなガイダンス策定の必要性が高まり、一般から広く意見を募集

2021年7月28日*6

SECのゲンスラー議長が気候関連開示の規則案の作成を要請した旨に言及

  • 2010年ガイダンスの気候関連リスクに係る開示分析では、総じて気候関連リスクやその影響の定量化は行われておらず、投資家にとって有用性の低い定型的な表現に終始
  • 気候変動開示に関する一般意見募集では、550通以上のコメント。このうち4分の3は、強制的な開示規則の導入を支持するという回答。スタッフに対して、気候関連リスクの開示義務化に関する規則提案を指示

2021年9月22日*7

SEC登録企業に送付する可能性のある、2010年ガイダンスを踏まえた気候変動開示に関するサンプルレターを公表し、SEC登録企業が検討すべき課題を例示。例えば、CSRレポートにてより多くの気候関連開示を行っている場合にSEC提出書類においてCSRレポートと同じ気候関連の情報開示をすることをどのように考慮したか、移行リスクの開示や気候変動に関連する訴訟リスクの開示を要請する等の例示を列挙

2022年3月21日*8

気候関連開示提案を公表

SECが2022年3月に公表した気候関連開示に関する規則案(以下、当初案)では、Large Accelerated Filer(早期大規模適用会社)の2023年の報告期間の年次報告(2024年にSECにファイリングされる年次報告)から、気候関連に関する開示(温室効果ガス<GHG>排出量開示のスコープ1およびスコープ2を含む)を段階的に要請する提案となっており、2022年のうちに規則案が最終化することが期待されました。しかしながら、規則案に対しては最終的には24,000件を超えるコメントレターが寄せられ、分析に相応の時間が必要となったほか、経済界などからの反発や押し戻しを受け、最終化するまでに一定の時間を要することとなりました。

最終規則公表と公表後の現在

規則案公表から約2年が経過した2024年3月6日、SECはついに最終化した気候関連開示に関する規則(以下、最終規則)を公表しました。最終規則は、2022年3月の当初案から、開示内容や適用時期などに大きく変更があり、内容的に大幅に縮小されています。SECの採択において、5名のコミッショナーのうち2名*9,10が最終化に反対したほか、最終規則公表後に米国内において賛成と反対の双方による訴訟が複数起こされ、3月15日には第5巡回区控訴裁判所が最終規則を一時的に停止する行政処分を認める判決を下すなど、大きな注目を浴びました。

最終規則公表後のこのような状況を受け、2024年4月4日にSECは「秩序ある司法的解決を促進するため」とし、最終規則の一時停止を発表しました*11。最終規則公表後に提起された9件の訴訟については、第8巡回区控訴裁判所で1つの訴訟に統合され審理されることになりましたが、SECは一時停止することで、迅速に審理が進むこと、審理中に規則が施行された場合による不確実性を避けることができると説明しています。なおSECは、最終規則は適法であり、SECの権限の範囲内にあるとの立場は変えておらず、最終規則の有効性を法廷で積極的に主張し続け、審理の迅速な解決を期待するとしています。

最終規則公表後のこのような状況を受け、適用時期が現時点では不明確なところがありますが、対象企業は公表された最終規則の内容を把握し、公表されている適用時期に向けて準備を進めることが肝要であると考えられます。

最終規則の内容

最終規則は、気候関連の企業情報の開示を、米国内外の全てのSEC登録企業(米国発行企業および外国登録企業。以下、登録企業)に要求しています。具体的には、登録届出書や年次報告書(Form 10-KやForm20-Fなど)において、新設するセクションまたは既存の「リスク要因」「事業の説明」「MD&A」などを適切な場所に記載することになります。また、世界的に利用が進んでいる気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)における4つの柱(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)と同様の概念を採用していることが特徴です。

全般的な開示

以下の項目の開示を、登録企業に要求しています。なお、括弧内の記載は開示案からの変更点を説明しています。

  • 取締役会による監督および重要な気候関連リスクの評価と管理における経営陣の役割
    (リスク管理に責任を有する経営者の専門性についての開示要求は維持。取締役が気候関連リスクに関する専門性を有しているかどうかの開示要求は削除)
  • 気候関連リスクを識別、評価、管理するプロセス、および企業の総合的リスク管理に統合されているかどうか
    (例えば、「経営者は相対的な重大性(significance)をどのように決定するか」「重要性(materiality)をどのように評価するか」「顧客、規制当局および技術要因をどのように考慮しているか」といった気候関連リスクの識別と評価のプロセスに関する、特定の具体的な開示要求は削除)
  • 企業の事業、経営成績、財政状態に重要な影響を与える、または与える可能性が合理的に高い気候関連リスク。当該リスクが企業の戦略、ビジネスモデル、見通しに与える実際の影響と潜在的な影響
    (詳細な物理的リスクが所在する場所の開示は、物理的リスクに晒される資産や事業の地理的状況の開示という規範性のより低い要求事項に変更。リスクは、短期・中期・長期の分類から短期・長期に変更。バリューチェンに係る開示は、登録企業の事業、経営成績または財政状態に対して重要性がある場合に開示を要求)
  • 重要な気候関連リスクを緩和するため、またはリスクに適応するための活動の結果として生じた重要な支出や財務上の見積り、仮定に対する重要な影響についての定量的・定性的情報
  • 重要な気候関連リスクを緩和するため、またはリスクに適応するための活動に係る移行計画、シナリオ分析、内部炭素価格の使用などに関する開示
  • 気候関連の目標および最終ゴールに関する情報(企業のビジネス、経営成績、財務状況に重要な影響を及ぼした場合、または及ぼす可能性が合理的に高い場合に要求。重要性の要件を追加)
    ※将来予測に関する記述が含まれる移行計画、シナリオ分析、内部炭素価格の使用、目標および最終ゴールに関連する気候関連開示については、いわゆるセーフハーバー・ルールが適用される(過去の事実は除く)
  • Large Accelerated Filer(早期大規模適用会社)および Accelerated Filer(早期提出会社)は、GHG排出が重要な場合、Scope1および/またはScope2に関する情報
    ※ Scope1・2の開示は、外国公開企業の場合は、年次報告書はForm 20-Fの修正を通じて、一定期間経過後(会計年度終了後225日まで)の報告が認められる。保証報告書についても同様

GHG排出量と保証

当初案では、登録企業全体にGHG排出量のスコープ1・2の開示が要求されていましたが、最終規則ではLarge Accelerated Filer(早期大規模適用会社)および Accelerated Filer(早期提出会社)に対してのみ、重要性がある場合に開示が要求されています。さらに、当初案からの大幅な変更として、スコープ3の開示要求が削除されました。

GHG排出量情報の開示では、スコープ1・2の排出総量に加え、個々に重要性がある場合の構成ガスの開示も要求されています。また、GHG排出量の算定において使用した方法や、重大なインプットや重大な仮定に関する情報など、GHG排出量の報告に使用したプロトコルまたは基準に関する開示を要求しています。なお、スコープ1・2の開示および保証報告書については、開示までに年次報告書の提出後に一定の追加期間が与えられることになりました。例えば、外国登録企業の場合は、年次報告書はForm 20-Fの修正を通じて、一定期間経過後(会計年度終了後225日まで)の報告が認められる扱いとなっています。

GHG排出量情報に対する保証については、当初案では限定的保証から開始し、その後合理的保証に移行する案が提案されていましたが、最終規則においてはその対象企業が縮小したほか、移行期間までの期間が長く取られる内容となりました。Large Accelerated Filer(早期大規模適用会社)および Accelerated Filer(早期提出会社)に対して、限定的保証を要求することに変更はありませんが、合理的保証についてはLarge Accelerated Filer(早期大規模適用会社)に限定されました。また、限定的保証から合理的保証への移行期間も、規則案では2年のところ、最終規則では4年間とられることになりました。

財務諸表での開示

財務諸表の注記(Note)においては、異常気象およびその他の自然現象の結果として発生した資本的支出、費用、損失などの記載が要求されます。気候変動に関する財務影響指標、GHG排出量目標などに関連する費用、財務的な見積りと仮定などの開示を要求していた規則案から内容が大きく変更されています。

具体的な開示内容としては、主に以下の項目となります。

  • 異常気象およびその他の自然現象からの影響について、資産計上したコストと手数料、発生時に費用処理した支出および損失に関する個別の開示
    (資産計上したコストと手数料は、影響額の合計の絶対値が関連する事業年度末の株主資本または欠損の絶対値の1%以上である場合。50万米ドルの最低基準額<de minimis threshold>を設定)(支出および損失の開示は、影響額の合計が、関連する事業年度の税引前利益または損失の絶対値の1%以上である場合。10万米ドルの最低基準額を設定)
  • これら資本的支出、費用、損失などの金額が財務諸表のどこに表示されているかを個別に開示
  • カーボンオフセットや再生可能エネルギー証書(REC)が気候関連の目標や最終ゴールの達成計画の重要な要素である場合、関連して費用処理した金額や資産計上した金額、損失に関する定量的な開示を要求
  • 異常気象およびその他の自然現象、開示された目標または移行計画に、重要性のある影響を受けた財務上の見積りや仮定に関する定性的な開示

適用時期

最終規則では、開示項目とその適用時期、GHG排出量の保証の時期など、企業の属性に応じた段階的な適用が示されています。なお、前述したとおり、本コラム執筆時点(2024年6月17日)において、SECは最終規則の施行を一時停止している状況にあることから、実際の施行時期については注意が必要です。

適用時期(下表に記載された暦年に始まる事業年度から適用)
企業タイプ※1

開示

スコープ1・2の保証

開示
(右記以外)

重要な支出と影響※2

スコープ1・2

限定的保証

合理的保証

大規模早期提出会社
(Large Accelerated Filer)

2025年

2026年

2026年

2029年

2033年

早期提出会社
(Accelerated Filer、下記のSRC/EGCを除く)

2026年

2027年

2028年

2031年

適用なし

小規模報告企業
(Smaller Reporting Company)

2027年

2028年

適用なし

適用なし

適用なし

新興性成長企業
(Emerging Growth Companies)

2027年

2028年

適用なし

適用なし

適用なし

非早期提出会社
(Non-Accelerated Filer)

2027年

2028年

適用なし

適用なし

適用なし

※1:企業タイプの区分は、一定時点における時価総額等の複数の要件によって分類される(例:大規模早期提出会社は、時価総額7億米ドル以上<関係会社保有以外に限る>など)

※2:重要な気候関連リスクを緩和するため、またはリスクに適応するための活動の結果として生じた重要な支出および財務上の見積りや仮定に対する重要な影響についての定量的・定性的情報

日本企業が考えるべきこと

各社の現状

上記規則は、日本におけるSEC登録企業や、米国などにおけるSEC登録企業の日本子会社に対して、少なからぬ影響を与えることが予測されます。他方で、規則案から最終規則まで2年を要したこともあって各社のステージはさまざまで、最終規則が出るまで「様子見」の立場をとってきた企業から、規則案をベースに継続的に準備を進めてきた企業まで、対応状況には大きな幅が見られます。

また、最終規則の適用が当初の大方の予想よりも遅れ、Large Accelerated Filer(早期大規模適用会社)であってもスコープ1・2の開示は2026年度から、その保証(限定的保証)については2029年度から(合理的保証は2033年度から)となったため、対応準備のスピード感が掴みにくいと感じている企業もあるようです。

しかしながら、これはCEO・CFOが宣誓対象として責任を負うSECファイリングにおいて、投資家保護の観点で要求される、いわゆる「インベスター・グレード」の精度の高い数字をアカウンタビリティを持って公表する体制を整えるために、それなりの時間が必要であるという配慮に基づいたものであるとも言えます。したがって、現在は最終規則が法的なチャレンジを受けていったん停止している状態ではあるとはいえ、各社は最終規則の公表を受けて体制を整備し、GHGの集計方法やシステム仕様をデザインし、開示をイメージした準備を始めるべき段階に来ていると考えられます。

定性開示の検討

最終規則ではLarge Accelerated Filer(早期大規模適用会社)は2025年度から気候関連に関する定性情報の開示が求められます。日本の有価証券報告書でもすでに気候関連を含むサステナビリティ全般に関する定性情報の開示が要求されており、日米ともにTCFDに基づく記載内容となっていますが、記載内容については他のSEC上場企業の開示レベルやいわゆるSECリスクも踏まえたうえで、改めて検討と調整が必要と思われます。その中では、取締役や監査委員会ないし監査役会、内部監査などのガバナンスの現状の体制と運用が十分であるか、リスク・機会の識別・分析とモニタリングが業界他社と比べて大きく不足していないかなどについて、SEC弁護士への相談が必要かもしれません。

内部統制の整備

最終規則への対応にあたり、CEOやCFOが責任を負うことができるだけの「インベスター・グレード」のGHG数値を集計・報告し、来る保証に耐える体制を作るためには、財務報告で実施しているような内部統制をGHGに関しても整備・運用する必要があると考えられます。これには、各事業所でGHG排出量の計算ベースとなる証憑や計測結果を正確かつ網羅的にプロセスするだけではなく、それを集計するシステムの開発・変更・導入や運営・メンテナンス、見積数値を使う場合のモデルや仮定の決定、数値のできあがりや開示の妥当性のレビュー、報告全体に関連するガバナンスなど、多岐にわたるプロセスのルール化と文書化が必要になります。

また、財務諸表注記に含まれる気候関連関連の開示については、その初年度から従来の財務諸表・内部統制監査の対象に含まれることになります。ここでは資本的支出や費用・損失など、財務数値の延長での集計・報告になるため、既存の財務報告に係る内部統制に組み込む形をイメージしている企業が多いのではないかと思いますが、集計対象とすべき項目の定義(どういったものが「異常気象およびその他の自然現象」に該当するか)の検討は必要です。GHGの保証よりも早いタイミングでこのような内部統制への組み込みを検討する必要がある点に注意が必要です。

保証人の選定と連携

GHG保証に備えて、保証人を選定し、連携を始めることも重要です。

なお、最終規則では保証人の資格条件は明らかにされていません。これに対して、財務諸表・内部統制の監査人の条件としては、PCAOB(米国公開企業会計監視委員会)に登録し、SEC規則およびPCAOB規則に基づく厳格な独立性のルールを順守し、(日本の場合には)3年に1回のPCAOB検査を受けることを要求された会計事務所のみが担当することを許されています。将来、このような厳格な要求が気候関連開示の保証人に対しても課されるかどうか、現時点では不明なため、企業は保証人選定にあたっては慎重な検討を余儀なくされるでしょう。

開示の内容や粒度、内部統制の整備・運用を進めていくにあたって、保証人を早期に選定し、いわゆるReadiness Assessment(準備状況の評価)や、本番年度に先行して任意での保証を依頼するなどの動きも見られています。

終わりに

SEC最終規則が公表され、開示・保証までのタイムラインも明確になりましたが、開示や内部統制、保証に関する実務はまだまだ確立されていません。PwC Japan有限責任監査法人ではPwC米国と緊密に連携を取り、企業の実務を支援しています。

*1 SEC、2010年2月2日、Commission Guidance Regarding Disclosure Related to Climate Change、
https://www.sec.gov/files/rules/interp/2010/33-9106.pdf

*2 Investor-as-Owner Subcommittee of the SEC Investor Advisory Committee、2020年5月14日、Recommendation from the Investor-as-Owner Subcommittee of the SEC Investor Advisory Committee

Relating to ESG Disclosure (As of May 14, 2020)、https://www.sec.gov/spotlight/investor-advisory-committee-2012/recommendation-of-the-investor-as-owner-subcommittee-on-esg-disclosure.pdf

*3 SEC、2021年2月24日、Statement on the Review of Climate-Related Disclosure、https://www.sec.gov/news/public-statement/lee-statement-review-climate-related-disclosure

*4 SEC、2021年3月4日、SEC Announces Enforcement Task Force Focused on Climate and ESG Issues、
https://www.sec.gov/news/press-release/2021-42

*5 SEC、2021年3月15日、Public Input Welcomed on Climate Change Disclosures、
https://www.sec.gov/news/public-statement/lee-climate-change-disclosures

*6 SEC、2021年7月28日、Prepared Remarks Before the Principles for Responsible Investment “Climate and Global Financial Markets” Webinar、
https://www.sec.gov/news/speech/gensler-pri-2021-07-28

*7 SEC、2021年9月22日、Sample Letter to Companies Regarding Climate Change Disclosures、
https://www.sec.gov/corpfin/sample-letter-climate-change-disclosures

*8 SEC、2022年3月21日、SEC Proposes Rules to Enhance and Standardize Climate-Related Disclosures for Investors、
https://www.sec.gov/news/press-release/2022-46

*9 SEC、2024年3月6日、Green Regs and Spam: Statement on the Enhancement and Standardization of Climate-Related Disclosures for Investors、
https://www.sec.gov/news/statement/peirce-statement-mandatory-climate-risk-disclosures-030624

*10 SEC、2024年3月6日、Statement A Climate Regulation under the Commission’s Seal: Dissenting Statement on The Enhancement and Standardization of Climate-Related Disclosures for Investors、
https://www.sec.gov/news/statement/uyeda-statement-mandatory-climate-risk-disclosures-030624

*11 SEC、2024年4月4日、Other Commission Orders, Notices, and Information Rule (33-11280)、
https://www.sec.gov/files/rules/other/2024/33-11280.pdf

執筆者

石橋 武昭

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

Email

平井 健之

ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人

Email

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